ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2020.05.21

老人性鼻漏

昨日コメント欄にご質問いただきました。

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当方、脳出血で片麻痺。お風呂から出ると、鼻水がとまらない。
耳鼻科にかかったことはありません。
片麻痺だと鼻も麻痺になるのでしょうか?
1時間位鼻水がでます。体が温まるから?
貴院に通院してみたい気もしますが、診察は2階なのでしょうか?

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さて、実際に診察したわけではないので

確定的なことは言えませんが、

今のところ診断名はおそらく「老人性鼻漏」、

片麻痺との直接的な関連はありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

老人性鼻漏とは、あんまりな病名ですが、

病態は鼻粘膜の機能低下です。

英語の「Old Man’s Drip」の訳です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼻の役割としてはニオイをかぐことは大変重要な働きですが、

もっと重要な役割に呼吸する空気の管理があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼻の中は広い空間の中に鼻甲介というヒダが張り出しており、

吸気、呼気はその隙間を通っていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼻粘膜の総表面積は片側で160~180平方センチメートルとかなり広く

しかも血管が浅いところに走っているので

ここに空気が接触しながら通ることにより、

吸い込まれた空気に加温、加湿が行われ、

気管、肺にダメージを与えないようになっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、肺からやってくる呼気は高温多湿です。

これが鼻粘膜を通るとき、鼻粘膜のほうが温度が低いので

飽和水蒸気圧の関係で、水が出ます。

コップに水滴がつく「結露」と同じ現象です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼻粘膜はこれらの水分を吸収する働きがありますが、

加齢によりその機能は低下し、

また血管の委縮により鼻腔の温度が下がり、

より「結露」しやすくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お風呂に入ったり、熱いラーメンをすすったりすると、

高温の蒸気が鼻の中に入ってきて、そこで冷えて結露します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体が温まるからではなく、

鼻が冷えているからです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 むしろ、体が温まって、血管が拡張し、

鼻の温度が上がった方がいいわけですが、

高齢者は、末梢循環が悪く、なかなか血管が拡張しません。

高血圧や、動脈硬化のある方、冷え性の方は、

特にそういった傾向があります。

脳出血を起こされたということは、

末梢循環不全があることが想定されますので、

その意味では関係がある、といえます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その意味で「足湯」は効果があるといわれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いっぽうで、鼻腔の血管から漏出する水分ではないので、

普通に鼻水やアレルギー性鼻炎のクスリとして用いられる

抗ヒスタミン剤などは効果がありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事のたびに水っぱなが止まらなくなる、ということで

来院される年配の方は多いのですが、

アレルギー性鼻炎の合併のない方は、

なかなか、治療が困難です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また食事性のうち、刺激物による知覚神経刺激が

副交感神経反射を起こし、鼻腺からの分泌が起こる場合もあります。

これは、冬、寒いところで冷たい空気が入った時に起こる

水パナと同様のメカニズムです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さらに高齢者の場合は、鼻腔粘膜の線毛機能が低下しているので、

鼻粘膜上にたまった水分が、後方へと運ばれることなく、

そのまま外にたれてしまう、

ということになりやすいのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このように老人性鼻漏はなかなか改善がムズカシイ。

末梢の血管を拡張する漢方薬が有効との報告もありますが、

決め手にはなかなかならないようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マスクなどで鼻粘膜の乾燥、温度低下を防ぐ、

末梢血管の循環を促すように手足を温めたり、運動を行う、

などの方法で、様子を見てゆく、というところでしょうか。

 

 

 

 

 

 

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