ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

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2009.09.29

試験、合格しました。


 先日、札幌まで行って受験してきた「日本禁煙学会認定指導医試験」に
私と妻とそろってめでたく無事合格しました。
 ああー、よかったー。
 休診にして行った以上、「結果を出さねば」というプレッシャーがあり、
また、副院長だけ受かって私が落ちてたらカッコ悪いなーなんてのもあったりして。
 試験前は、なんとなく受かるんじゃないの、なんていう楽観論に支配されてましたが、
いざ、会場に行くと、受験生モード全開の先生方にびっくり。
 しかも200人を越える受験者。
 試験会場も、試験開始ぎりぎりまでみんなテキストを放さず、
ウチはテキスト2人で1冊というセコイ体制なので、
待ち時間手持ちぶたさで落ち着かなかった。
 試験は結構できたと思ってはいたが、
法令関係の問題が意外と多く、苦戦したので、心配はありました。
 でも、落ちたから、医者ができないわけじゃなし、
次の試験は来年9月、会場が四国は愛媛松山だって言うんで、
落ちたら、今度は道後温泉、ポンジュースじゃー、と思ったのですが。
 そもそもこの試験を受けるきっかけは当院が禁煙外来を始めたことに端を発します。
禁煙外来は検査機械をそろえ施設基準を認可してもらい、保険診療ができるのですが、
我々は医学部でも研修医時代も「禁煙学」というものを系統的に学んだことがありません。
 禁煙外来に資格は要らないけど
お金もらってやる以上、やはりきちんと勉強したいと思いました。
そして、この試験のことを知り、やっぱ取っといた方がいいだろう、
っていう事で受験に至ったのです。
 今朝、学会からメールが来てて、
試験結果が発表になりました、とのこと。
しかし、そこには結果は書いてない。
 合格者66名はホームページから閲覧できます、って、
合格者66人しかいないのかよ。
ざっと200人以上は受けてたのに。
(ちなみに私の受験番号は152番、副院長は150番。)
こっそりホームページを開き、2人の名前を確認しました。
 合格率なんと3割強、よく受かったもんだ。
 「最初からこんな合格率だって知ってれば、もっと勉強してたよねー。」
なんて、妻はのんきなこと言ってますが。
 思い返せば受験当日、試験前のセミナーからも出題される、
ってことで一生懸命ノートとリながら聴いたわけです。
 その講義の始まる前に、何やら小さい金属の箱を机に並べる妻。
「なに、それ。」
「これ、ミントのキャンディー。あたし、この手の講義すぐ眠くなっちゃうから。
こっちがスースーするやつで、こっちがもっとスースーするやつ。
舐める?」
「いや、いい。」
 で、講義が始まって少しして横にいる妻に小声で話しかける。
「ねーねー、今の患者さんの話さー、・・・・ん?あれ。」
もう寝てるじゃん。
あわてて袖を引っ張る。
「(小声で)こら、起きろ。飴舐めろ。」
 ま、その後はずっと起きてたみたいですが。
 そんなこんなで無事合格してよかったです。
別にこれで、収入が増えるとかじゃないんですけどね。
 日本禁煙学会の「禁煙キャンペーンコマーシャルコンテスト」の入選作品の動画を
当院のホームページに掲載しました。
「小倉耳鼻咽喉科」のホームページを開いていただき横の「禁煙外来」の
ボタンをクリックしていただけると見られます。
なかなか傑作ぞろいですので是非一度ご覧ください。

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2009.09.25

都合のいいデータ

 
 昨日、インフルエンザ出てないですね、なんて書いたら
今日午前中いきなり陽性者現る。
 うーん、油断禁物。
 さて、新型インフルエンザのおかげで、いろんな便乗商法が出ている。
 マスクや消毒薬のメーカーはまあ、売り上げ伸ばしてるでしょう。
こういうのは別に便乗とは言いませんね。
 先日、街でお茶屋さんの店先に
「緑茶うがいで新型インフルエンザに立ち向かおう」
なんてポスターが貼ってありました。
 うーん、効果は・・・・、
 あまりないでしょう。
 そもそも、インフルエンザ対策としては、手洗い、マスクは非常に有効だが、
うがいは、さほど意味がありません。
ウイルスは粘膜についたらすぐ侵入しちゃうので。
 でも、実害はないので、そんなに問題はない。
 インフルエンザに効く、なんていうニセの薬やサプリメントなんか出ちゃったら困りますけど。
(スギ花粉のときはけっこうあるんだ、この手が。)
 困るのは製薬メーカーが医者をだまそうとしていろんな資料を持ってくる。
 某メーカーが、
「インフルエンザのネズミにこの薬を投与したら、
死亡率が明らかに激減しました。」
なんて、データを持ってくる。
 その薬はいわゆる去痰剤で、耳鼻科でも内科小児科でも日常的にヤマほど使ってる薬だ。
いい薬で安全性も高いけどインフルエンザウイルスに効くというのは、マユツバだ。
 よくデータを見ると、この実験でのラットへの投与量は体重1キログラム当たり40ミリグラム。
おいおい、この薬、通常人間の大人で1回15ミリグラムだぞ。
体重60キログラムの大人なら、2400ミリグラム飲ませてるってことになる。
インフルエンザに効果あっても、ほかどっかおかしくなるよ、
そもそもそんなにいっぱい、どんぶりで薬飲めっつーの?
錠剤にして1回160錠の計算だ。
 別のメーカーはわが社の薬をタミフルに併用すると明らかに効果が倍増します。
って持ってくるグラフでは、確かに有効率が倍近くでてるんだけど、
よく見ると、n(エヌ=検体数)が6人とか8人とかだったりする。
 実験した人数が1桁のデータなんか信用できるわきゃねえ。
 メーカーの上層部のブレーンがこういうデータをでっち上げて
それを社員に洗脳し、いや、中にはわかってやってる社員もいるのだが、
ともかくアホな医者をだまして、自社の薬を使わそうとする。
 先の40ミリグラムのメーカーの人は、良心的な人なので
ホントかよーと、データを見てるオレに突っ込まれる前に
「いや、これ、とんでもない量なんで、普通飲めないんですけどね。」
と、自ら白状したけど。
(でも一応必ず紹介しろと上から言われてんだろう。)
 先日はある抗生物質メーカーが
「日本で新型インフルエンザの死亡率が低いのは抗生物質を一緒に出す医療機関が多いからだ。」
なんて、データを持ってきた。
 違うだろ。
 医療保険の整ってる日本は、初期の段階から病院にいって治療するケースが多い一方、
海外では、医療費が高く、所得水準も低いので、重症化してから受診するケースが多く、
日本のように初期から洗練された医療が受けられないせいだ。
 最初っから、インフルエンザや発熱にバンバン抗生物質出して、
いざ二次感染って時に、薬の効かない耐性菌しか残ってない方が、もっと怖いぞ。
 ただでさえ、かぜ薬だ、とか、熱があるから、と称して
盲目的に必要のない抗生物質を出すアホな医者が多い我が国。
メーカーももっと医者を教育して正しく薬を使わせるようにしないと、
あっという間に薬が効かなくなって、自分の首をしめることになるぞ。
(もうすでに、その薬、かなり効かなくなってるけど)
 インフルエンザに関しては、医者もメーカーも私利私欲でなく
社会全体の利益を考えて取り組んでいただきたい。

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2009.09.24

新型インフルエンザとタミフル


 インフルエンザはマスコミの話題が先行してるワリに
この辺では、今のとこ比較的落ち着いてる。
 発熱者もそれなりにいるんだけど、
先週今週は実際に当院でインフルエンザが陽性で出た人はいなかった。
この連休中も急患で何人か検査しましたが。
 しかし普段は、何となく、病院に行くとインフルエンザがうつるから、
かからないでガマンする、なんて人もいるみたいで
外来は不気味にすいてます。
 ただ、どうみても、インフルエンザではないのだが、
「心配だから検査してくれ」とか、もっと困るのは
「インフルエンザの検査をしないと、幼稚園や職場に来ないでくれといわれる」
人が少なからずいるようです。
 中には「魔女狩り」のような仕打ちを受けた保育士さんもいました。
 特に幼稚園や保育園の先生方がきちんとした知識を持ってない、
ということが見受けられます。
(まあ、それについて、間違ったいい加減な助言をする医者もいるみたいですが。)
 必要なら、私、出張してお話してもいいですよ。
 しかし、合併症のない方で亡くなられた方が出たので、
心配は心配です。
 ただ、それを受けてか、簡易検査で陰性でも、タミフル出していい、
ということになって、大丈夫か知らん、という気持ちです。
 タミフルの投与は、検査で陰性でも、周囲の状況や、本人の容態から考えて
インフルエンザの疑いが充分強い、といった状況において認められるのであって
何でもかんでも、タミフル出しとけ、というわけではない。(はずだ。)
 これが、一人歩きすると、大変なことになります。
 一つは、タミフルの枯渇化です。
 日本は世界の大半のタミフルを保有してるというが、
実際にインフルエンザでない人にバンバン出せばたちまち在庫がなくなるでしょう。
同じ人に2回、3回と処方される可能性もあるわけだし。
 もう一つは、インフルエンザウイルスの耐性化です。
 すでに、昨シーズン、従来型のインフルエンザにタミフル耐性株が
多く発見されている。
 濫用によって、新型インフルエンザのタミフル耐性が進めば、
ワクチンが充分に用意されてない今、
重大な事態になりかねない。
 それにしても、タミフルは危険であるので処方すべきでない、
と一時盛んに主張してたマスコミは
最近全くその点に触れませんが、どうしちゃったんでしょうね。

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2009.08.28

インフルエンザワクチンについてわかってること


 新型インフルエンザのワクチンについての問い合わせがここんとこ多いです。
 結論としては
「現段階では確実なことはほとんどわかりません。」
というところです。
 どれくらいの数がいつ入るのか、料金も何もわかりません。
 わかってることは、多分相当少ない本数しか生産されないため
圧倒的に足んなくなるだろうということ。
 当然、危険度の高い人、透析や慢性肺疾患、妊婦などが優先されるわけですが
その順位も基準もまだ未定です。
「ノアの箱舟」か「蜘蛛の糸」かといった事態にならないようにしなければなりません。
まあ、フツーの健康な人は接種しないもの、と考えてください。
 でも、多分いろいろ混乱するんだろーなー。
 大事なことは、地域の医療機関が正しい知識を持って適切な対応をすることだと思います。
 しかし、医療機関の昨年までの通常のインフルエンザの対応を見ると
こりゃ、相当ヤバイなーと思わざるを得ません。
以前「本能的処方」「よくみて、よく考えよう
なんかで書いたような見識しかないお医者さんがいると思うと・・・・。
 そーいや、この間NHKの「クローズアップ現代」で新型インフルエンザの特集をやってました。
その番組で、インフルエンザの疑いが強い子供が来院して検査を受ける場面を放送してました。
お医者さんが子供の鼻にちょこっと綿棒を入れるのですが、せいぜい2,3cmだけ。
そして「このように疑いが強くても結果が陰性のことがあります。」
というナレーションが入る。
 おいおい、そんな検査じゃ陰性で出るにに決まってるぞ。
テレビ見てて思わず突っ込みいれたくなりました。
綿棒は7~8cm、鼻の突き当りまで入れないと検査の信頼度が上がらないです。
 まあ、この夏の低温で、来シーズンはスギ花粉があまり飛ばないだろうことが救いですが
この冬は、相当がんばらねばと思っています。
 あ、あともう一点インフルエンザワクチンについてほぼ確定的な事項があります。
今年はレッズの優勝はまず無いので、
当院の「レッズ優勝記念インフルエンザ予防接種半額セール」も多分無い、ということですね。
   くーーーー(泣)。

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2009.05.20

忙しい日

 月曜日は忙しかったなー。
 午前中が1時10分までかかったが1時半から養護学校の検診。
現地まで20分以上かかるので、昼メシ抜きで看護婦さんと車で行く。
 養護学校の検診は人数は少ないが、手間がかかる。
 なんせ半分は車椅子やストレッチャーだし、20パーセントは病棟まで往診だ。
 去年も書いたけど、ここで
「ハイ、耳垢。耳鼻科行って取ってもらって。」
と、いうわけにはいかない。
養護学校の健診
 人工呼吸器ついて、寝返りもうてないような子が、耳垢とリに耳鼻科にかかれるわけは無い。
 今年も、鉗子やら異物鈎(耳用のフック)やら、持ち込んで無料の耳垢とりサービスです。
おかげで、健診でひっかかった子はナシです。
 3時に健診が終了後、即座に病院にとってかえし、午後の外来。
 これが、ナゼカ混んでる。
 昼メシ抜きで腹へったなー、と頑張って延々と続く外来をこなし
終わったのは午後8時半近く。
 その後、風呂に入ったり何だかんだで11時過ぎにやっと夕食。
「ああー、疲れたー。いただきまーす。」
と、冷蔵庫から出した缶ビールを開けようとすると、いきなり病院の電話が・・・。
 げげげ、と思ったが、しょうがない。
 3歳の子供の耳痛、発熱。
太田の人で、近くの耳鼻科はどこもつながらないので、足利までかけたらしい。
解熱鎮痛の座薬があるというので、
とりあえずそれ使って明日耳鼻科受診でも大丈夫です、と説明するのだが
どうしても診てほしい、という強い希望で、診察することに。
 とりあえず、缶ビールを冷蔵庫に戻し、代わりにノン・アルコール・ビールを出してくる。(涙)
 結局、太田の伊勢崎よりの方から来た患者さんを診たのは、
12時15分前で、診察が終わって本物のビールが飲めた時は日付が変わってました。
 グイッと飲んで、やっと一息。
あー、明日も健診があるのかー。
いや、今日でした。

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2009.05.01

新型インフルエンザについて(その2)

 さて、インフルエンザの話を、もう少ししときますかね。
 今回のインフルエンザは「H1N1」です。
 インフルエンザウイルスにはその表面に2種類の蛋白抗原があります。
1つはヘマグルチニンでこれはウイルスが細胞に侵入する時に使います。
もう一個がノイラミニダーゼといい、増殖したウイルスが細胞から出るときに使います。
 これに種類がありヘマグリチニンの「H」を取って「H1,H2,H3・・・」
ノイラミニダーゼの「N」をとって「N1,N2・・・」とあり、この組み合わせで名前がついてます。
Hが16種類Nが9種類あるといわれてますので
理論的には16×9=144種類のウイルス型があるわけです。(実際にはまだないですが)
 実は「H1N1」はAソ連型といわれる、毎年流行るおなじみのインフルエンザです。
もう一つの流行するA型はA香港型でこれは「H3N2」です。
 ということは、今回の新型インフルエンザは
インフルエンザ迅速キットでA型に陽性が出て、
タミフル、リレンザは多分、効く。
ということが推測されます。
 もちろん、迅速キットでは新型か従来のソ連型かはわかりません。
そもそも、ソ連型と香港型の区別もできず「A型」ということがわかるだけです。
 新型インフルエンザになるかも、といわれてたのは
「鳥インフルエンザ」といわれている「H5N1」というウイルスです。
これは、強毒性であることがすでに知られてます。
 というのは「H5」ってヤツは、全身の細胞に侵入できる。
 先に「H」は細胞に侵入する時に使う、って話をしましたが、
「H5」や「H7」ってヤツは全身の細胞で増殖できる。
しかし、「H1」や「H3」は気道、呼吸器の細胞にのみ侵入できる、ということです。
 ということは、今回の「新型」は理論的には「弱毒性」で、
致死率6割を越えるといわれる「鳥インフルエンザ」ほど強力ではないはず。
 ただ、従来型のインフルエンザで、毎年我が国でも1000人近くの人が亡くなっており
合併症や2次感染などインフルエンザが原因となった数を加えるとその10倍になります。
 今回の「新型」が弱毒型であっても、免疫を持ってないわけですから、
かかっちゃう人の数は相当数にのぼり
その結果、死亡者数もかなり多くなるとは考えられます。
 だから、ポイントは、きっちり診断して、それ以上広げない。
 今回のインフルエンザは「新型」っていっても、
普通の健康な人がかかっても、タミフル飲んでフツーに治っちゃうと思います。
でも、感染を広げてはいけない。
 いつものインフルエンザのとき、いい加減な診断や、いい加減な隔離で
どんどん流行が広がっちゃうので、きちっと事情のわかってる人が
適切な処置を講じて、みんなが、まじめにそれを守ることですね。
 さて、たまたま「豚インフルエンザ」が一足早く「ヒト⇒ヒト感染」を獲得して
新型インフルエンザとなったわけですが、
もちろん「鳥インフルエンザ」も、まだいつ新型インフルエンザになるかもしれません。
こっちは、相当怖いと思います。
 そういえば、本日も当院でインフルエンザ陽性者が1人出ました。
「B型」だったので、少なくとも新型の可能性は、なしです。

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2009.04.30

新型インフルエンザについて

 
パンデミックとかエンデミック、エピデミックなんて言葉は
大学時代、「公衆衛生学」の授業で習いました。
「懐かしいー」なんていってる場合ではないぞ。
 さて、今回の豚インフルエンザは一応、新型インフルエンザと認定されたようです。
 WHOもフェーズ5を宣言し、いよいよパンデミックか、というところですが、
心配なのは、情報が正確に伝わり、正確に認識されるか、というところ。
 我が国でも、この調子だと近々患者発生、となる可能性は高い。
 その時の、国、地方自治体、医療機関、会社、学校その他もろもろの対応が
きちんと行くかどうか。
 何せ、見えない相手だからその辺が大変。
 狂牛病や鳥インフルエンザなどでも、間違った認識で見当違いの反応をしたり、
納豆ダイエットでいきなり納豆がスーパーから消える国だから、
今後、相当慎重に行かないと、大変なことになりますよ。
 そもそも、ウイルスってのがまず難しいヤツです。
 病原微生物として、よく細菌(バクテリア)との混同が見られますけど
ウイルスは細菌よりずーっと小さいもんで、
そもそもウイルスは生物ではない。
 細胞を持たず、それ単体では増殖できない。
 例えば、細菌を培地といって、栄養のある場所(寒天を引いたシャーレなど)におけば
増殖してコロニーをつくる。
 ところが、ウイルスはいくら栄養があっても動物の体の外では増殖できない。
他の動物の細胞内に侵入してはじめて増殖することができます。
 簡単に言うとウイルスは殻に入った遺伝子そのもの。
 生物はDNAに書かれた遺伝情報によって自己を複製しますが、
ウイルスはその遺伝情報だけを持って渡り歩いてるのだ。
他の動物の細胞に侵入し、そこにあるものを使って自らの複製をつくる。
そして、増殖して細胞を破り、またそれぞれが別の細胞に侵入する。
 例えて言うと、ある料理のレシピだけ持ってる人が、
マンションに入ってきて、勝手にある家に上がりこんで、そこんちの冷蔵庫を勝手にあけて
よそのキッチンを勝手に使って自分の好きな料理を作って、食い散らかしていくようなもの。
 いやー、こりゃ迷惑だわ。
 ちなみに免疫とは、一回そんな被害にあったマンションの住民が覚えていて
「あー、あのヒトよー。ダメダメ、追い出しましょう。」
といって、料理を作る前に追い出しちゃうこと。
 ワクチンとは、本人ではないが、写真とか扮装で
「こんな風体の人が来たら、危ないので追い返してください」
と予習すること。
 で、今回の新型インフルエンザで困るのは、誰もまだそいつを見た事がないので
とりあえず、マンションに入り、家の中まですぐ入っちゃうって事。
 ただ、どれくらい侵入しやすいとか、どれくらい食い荒らされるかは、まだわかんないわけだ。
つまり、ウイルスで問題になるのは
1.ウイルスの感染力
2.ウイルスの毒性

の2点です。
 まだ、この辺正確にわかってません。
またその毒性なんかも途中で変化する場合もあります。
最初は、サラダくらいだったけど、途中からフルコース作るようになっちゃったとか
または、その逆とか。
 いたずらに騒ぎすぎるのはいけないが、甘く見るのはもちろんダメです。
 きちんとした情報のコントロールが大事でしょうね。
 かつての「タミフルが消えた冬」のことを考えると(過去の私のブログを見てください)
すっごい不安です。
 大体、インフルエンザだけど0歳でタミフル飲めないからメイアクトを出します、
なんてことを言う医者がいるくらいだから・・・。

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2009.04.11

哀愁のケフラール

 昨日も、まだまだインフルエンザ。
しかもB型もいたが、夕方来た患者さんは久々にA型でした。
今日も、B型が出たし、まだ続くのかよー、こんなに暖かいのに・・・・。
 さて、今日かかった、初診の赤ちゃん。
問診票の、飲んでる薬のところに「ケフラール」。
「尿管逆流症って、いわれてる?」
「ハイ。」
んなら、いいです。
 ケフラールって薬、私が医者になった頃(およそ4半世紀近く前か!)に出た抗生物質で、
それこそ、めちゃめちゃ売れた薬だと思います。
 いわゆる「セフェム系」の抗生物質で、当時ホントによく効いた。
時まさしく、抗生物質バブルの頃で、
何でもかんでも「とりあえず」抗生剤、って頃だった。
 その甲斐(?)あって、その後急速に耐性化が進み、
いまや、殆ど臨床的には役に立たないという、
逆に場合によっては耐性菌を元気にさせるので、使わない方がいいこともある、という薬だ。
 でも、この「尿管逆流症」には効くらしい。
私、専門外なのでよくわかりませんが、一応、論文取り寄せて読んだことがあります。
英語の論文だったけど、書いたのは日本の研究者でした。
 だから、今、この薬をそれ以外に使うことは、まず、無い。
(それでも20数年前と同じに効くと思って出してるナサケナイ医者もいたりするが。)
続いて、ヒットした「セフゾン」って抗生物質も、今や相当効かない薬になってます。
コッチは「黄色ブドウ球菌」に対する抗菌力があるので、「とびひ」なんかでは、
まだけっこう使われてますが、中耳炎なんかでは完全に出番ないですね。
 だから、そうやって処方されてる「ケフラール」を見ると、
昔は、一世を風靡した歌手が、いまや売れなくなって場末のドサまわりやってるみたいで
妙な哀愁があります。
ギャラ(=薬価)も、相当安くなったしね。

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2009.04.07

インフルエンザ、もうちょっと

 
 インフルエンザも沈静化、昨日は2人だけ、今日はまだ出てないぞ。
 医師会から週間インフルエンザ発生の報告書が来た。
足利市内でインフルエンザの発生を知るために
昨年から、足利市内の医療機関が連携してインフルエンザ患者の発生状況を
毎日カウントし、医師会に報告する。
 医師会ではそれをまとめて、1週間分の患者数、年齢分布、地域を報告書にして
各医療機関に届けてくれる。
 それによると先週1週間の足利市内のインフルエンザ発生は41人。
おー、ずい分減ったのー。
 ん、待てよ。
「看護婦さん、ウチでインフルエンザ陽性、先週何人だっけ。」
「ええと、11人です。」
 そうだよねー、毎日1~2人出てたから。
 と、いうことは、市内のインフルエンザ発生の4人に1人はウチで診断してるんだ。
4人に1人はいくらなんでも、比率が高すぎる。
 やっぱ、見落とし多いんじゃねーの?
 インフルエンザばっかりが当院に来るとも思えない。
「先週、熱が出て小児科かかったんですけど、インフルエンザではありませんでした。」
あー、そう。
まあ、いいか、とも思うんだが、やっぱそん中にはインフルエンザの場合も少なからずあったろうな。
鼻の入り口にチョコッと綿棒入れたくらいじゃきちんと判定できないぞ。
もちろん、インフルエンザはタミフルやリレンザ使わなくちゃ治んない病気じゃないし、
熱下がっちゃえば、それでいいんだけどね。
 ただ、じゃあ、ってんで抗生剤出す先生が多いので、それだけはカンベンしてよ。
インフルエンザはもちろん、風邪だって抗生剤は無効なんだから。
 でも、患者さんはその抗生剤で熱が下がったと誤解してんだよなー。
 
 さて、今日こそはインフルエンザいないかと思ったら、夕方、最後の最後でまたB型出ました。
 あーあ。

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2009.03.31

夏来にけらし

春過ぎて夏来にけらしプール熱 衣干すなよ 天の香具山
【解釈】プール熱だなんて、春が過ぎて夏が来ちゃったみたいだよ、
    でも(まだ実際はスギやヒノキの花粉が飛んでるから)洗濯物は天の香具山に干しちゃダメだよ。
【解説】元歌、持統天皇の歌は「万葉集」では「・・・夏来(きた)るらし」ですが
    「新古今和歌集」「百人一首」では「・・・夏来にけらし」になってます。
    「けらし」は「ける+らし」のつまったもので「~したようだ。」の意で過去の推量を表します。
  〔用法〕インフルエンザになりけらし⇒インフルエンザになったようだ
      あの二人は出来けらし⇒あの二人はデキてるみたいよ
      けらし明太子⇒したようだ明太子
 花粉症もヤマを越えたか、外来もだいぶ落ち着き、特に午後はガラガラです。
しかし、インフルエンザは、まだ出る。
 患者さん発生記録はまだ更新を続け、3月も終わろうというのに
一人もインフルエンザなし、の日はまだです。
さすがに毎日2ケタの患者さんが「陽性」だった頃に比べれば、
最近は1ケタですが、それでも最低一人は「陽性」が出てる。
今日も何人かいましたねー。
 おまけに最近は「咽頭結膜熱」の陽性者もちらほら出てきて、困ったもんだ。
この病気、俗に「プール熱」というアデノウイルスの感染症ですが、
名前のとおり、夏に流行るもの。
扁桃腺が腫れ、高熱が5日から1週間出ますが、抗生剤は無効です。
最近は迅速キットでインフルエンザや溶連菌みたいに外来でその場でわかります。
 インフルエンザと花粉症とアデノウイルスをいっしょに診るって、
最近は季節感がないのー。
この間は手足口病もいたし。
 まあ、最近は冬でもエダマメでビール飲んでるけど、
やっぱ、旬のものは、その季節に味わいたいもの。
 やっぱ、アデノは夏だよねー。
いや、別に自分がかかるんじゃなくて。

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医療系をまとめました。
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