ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

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2009.03.27

嚥下のリハビリ(その2)

(これはつづきです。その1からお読みください。)
 とりあえず、起きられるようになんないと。
 栄養チューブを鼻から入れて、検査結果が出るまで安静にさせられていたので
起き上がることも出来なくなちゃったのだ。
カロリーの面からは足りてるので、生物学的には生きているが、人間としてはこれではまずい。
 耳鼻科に転科して調べても、やはりこれ、とういう異常は見当たらず、
まあ、内科であれだけ調べてるし。
 文献を調べても、あまり参考になることが見当たらない。
ついに私は5000円もする「嚥下障害」なんていう、本まで買っちゃったが、ダメ。
 看護師さんとあれこれ作戦を立てる。
 当時、この手のリハビリのプロトコールなんてものは皆無だった。
 そして、手探りで、たどり着いたのが「トロミ」。
 ある朝、当直明け、
「先生、患者さんが食べなかった朝ごはん食べますか。」
「おー、食べる食べる。」
何せ、研修医は金がない。
当直ったって、病院から朝飯が出るわけではないので、こういうのは大歓迎。
 看護婦さんの控え室で食べさせてもらった。
「あれ、センセイ、生卵あまってますよ。」
「しまった、あせって食べたらご飯にかけるの忘れた。ショーユかけて飲んじゃうか。」
つるつるつる、ごくっ。
お、ナンカ、ひらめいた。
これだこれこれ。
こーいうツルリと入るものがいいのでは!
 そのころ、患者さんの食べ物の性状は「かたい」⇔「やわらかい」しかスケールがなかった。
病院食は「かたさ」「塩分」「カロリー」「添加物」などで細かく分類されてたが
嚥下に関しては「粘りけ」「トロミ」が重要だったのです。
 つまり、モノがかたまりでつるっと入っていけば
気管に入ってむせることが少ないわけです。
 最近の嚥下指導では「トロミ」は最重要ファクターで
かなり細かく研究されてるらしいです。
我々も、何とかそこにたどり着いたので、何とか解決の糸口が見つかったわけです。
 そして、リハビリ。
当時はリハビリ専門の部門がなかったので
整形のリハビリの人をよんで、独自のメニューを作ってもらいました。
マーゲン・チューブ(鼻から胃に入れる栄養チューブ)を抜き、
ベットの角度を上げ、少しづつ動く範囲を増やしていきました。
 毎日、ベッドサイドに行くたびにTさんの表情が豊かになります。
「どうですか、Tさん。大分、動けるようになったみたいですね。」
「いやー、センセイ。いつも、歩けー歩けーと言われてるので、
軍隊時代に行軍訓練をさせられてる夢を見ちゃいましたよ。」
なんて、言われたけど、歩けるようになったTさんはどんどん元気になり、
トロミ食も、功を奏して、経口摂取が可能になりました。
 約1ヶ月後、Tさんは、めでたく退院しました。
もちろん、自分の足で歩いて。
 今だったら、きちんとしたプログラム、ガイドラインがあるのでしょうが、
当時は何も参考になるものがありませんでした。
 その時思ったのは、人間は治る力がある、ということです。
治療といえば、それまで薬と手術のことだ、と思ってたのですが、
その薬や手術にしても、人間の治癒力の助けをしてるに過ぎないんだなということに
改めて気づかされました。
 そして、薬や手術やその他、リハビリ、生活指導等を用いて、
人間の「治る力」を最大限に発揮させるような状況を作ってあげるのが
医者をはじめとする「医療者」の役割なんだなーと感じたわけです。
そこが機械の修理と人間の治療の違うとこなんだよなー。
 地道にこつこつとリハビリを指導する理学療法士、作業療法士などの皆さん、
すばらしいなーと思います。
 自分の足で歩いたり、自分の口からご飯食べるって、大事なことですよね。

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2009.03.27

嚥下のリハビリ(その1)

 昨日の夜は「嚥下研究会」という学会に出席して話を聴いてきました。
学会、研究会はちょくちょく行くのですが、大体「アレルギー関係」か「感染症関係」が主です。
昨日は、初めてだったのですが、若い女の人が多いのでびっくりしました。
なるほど、介護やリハビリ関係の人が聴きに来るので、若い女性が多いんだー。
時代は、こういう方向なんだなー、と思いました。
 嚥下、リハビリ、ときいて思い出したのは
20年以上前に大学病院で受け持った患者さんのことでした。
 「オグラさん、この患者さんを受け持ってください。」
教授に呼び出されじきじきに頼まれたTさんは、ある耳鼻科の開業医の先生のお父さん。
もう80歳以上のご高齢です。
 主訴は「嚥下障害と誤嚥」つまり物をうまく飲み込めず、気管の方に入ってしまうのです。
 えー、嚥下障害、困ったなー。と、思いました。
当時、医者になってまだ3年目。
嚥下障害に対する知識も経験もなかった。
 「じゃあ、オグラさん、頼みましたよ。」
ウチの教授(当時)は、医局員をすべて「さん」付けで呼ぶ礼儀正しい人でした。
 患者さんはすでに2ヶ月前から、第1内科に入院しており、
いろいろ調べたけど、わかんないので耳鼻科へ、と廻されたのです。
 さっそく1内にいって、カルテを見せてもらいました。
「うわー、内科のカルテはいっぱい書いてあるなー。」
オペ記事主体の耳鼻科のカルテとはえらい違いだ。
 そこには身長体重から始まって、瞳孔、結膜、眼球運動から
皮膚、呼吸音、心音、腹部、各腱反射等々、ありとあらゆる所見が網羅されており
ページをめくると、血液、尿の検査が何ページにもわたってずらりと並んでいる。
そして心電図、レントゲン、CT、エコー・・・・ともかくあらゆる検査が列挙されていた。
良く、こんなにやったもんだ。
 病室に行って、Tさんの顔を見て、
これから耳鼻科に転科して私が診ますのでよろしく、と挨拶してきた。
 で、内科の前の受け持ちの先生に
「じゃあ、明日ベッド用意しときますから、お願いします。」
と言ったら、
「じゃあ、ストレッチャーでお迎えお願いします。」
とのこと。
「ん?この人、歩けないんですか?」
「はい。」
「何で?」
「何でったって、ハテ、何でだろう?ねえねえ、看護婦さん何でこの人歩けないの?」
 おいおい、冗談じゃねえ。
カルテの一番最初に
「Admssion on foot」って、書いてあるじゃん。(独歩にて入院って意味です。)
この、じいちゃんは、歩って入院したんだぜ。
検査、検査でずっと安静臥床してたので、歩けなくなちゃったんだ。
ったく、もう。
 今では考えられないが、当時の内科なんてそんなもんだった。
 よし、オレが何とか食えるようにしたる。
 その日から、手探りの嚥下障害治療が始まったのだった。
(つづく)

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2009.03.23

秘伝の処方

 花粉症はピークですが、鼻だけでなく目の症状を訴える方も当然たくさんいらっしゃいます。
 「目薬、出しましょうか?」
 「ああ、目薬は眼科さんのほうでもうもらってます。」
 「じゃあ、大丈夫ですね。一応カルテに書いときますので
 なんという目薬ですか。」
 「それが、何も書いてません。今、持ってますけど。」
 「えー、ちょっと見せてください。」
 なるほど、赤い蓋、緑の蓋、青い蓋のプラスチックのビンは
いわゆる汎用品で、メーカーの目薬を病院で中身を詰め替えたもの。
当然、何のラベルも表示もない。
中身はなんだか全くわからない。
容器代もかかるだろうに。(まさか患者負担ってことはないよね。)
 おー、今どきまだ、こんな医者いるんだー。
 かつて、お医者さんは処方の内容を明かさない、っていう時代がありました。
自分とこで乳鉢なんかで調合してた時代の名残りでしょうか。
軟膏や目薬を別の容器に入れ変えたり、PTPの薬の名前のとこをわざと切ったりしてました。
 軟膏、目薬なんかはかつてはラベルがあるにはあるが
一部しかくっついてなくて名札みたいにピラピラしていました。
それを、お医者さんがピッてちぎって出していたこともありました。
 しかし、時代は変わり、
患者さんの知る権利を尊重し、院外処方箋の普及もあって、
お医者さんで出た薬は、原則的にすべてわかるようになっています。
 個人的には、これ、とてもいいことだと思います。
 医療の透明性がますことにより、医療全体の質の向上につながると思います。
(まあ、抗がん剤など薬によっては簡単にはいかないものもありますが)
 実は、私が開業する時、最初は院内の処方だったのですが、
患者さんに薬の名前を知ってもらおうと、すべてに薬の名前と種類、効能などを書いた
タグをホチキスでとめて出してました。
 その後、そういう行為に対して保険点数をとってもいい、ということになり
多くの病院がやるようになって来ましたが、
ウチはその前からタダでやってました。
 その後、当院は院内処方から院外処方になったのですが、
その後も薬局にお願いして、患者さんに全部の薬がわかるようにしてもらってました。
今は点数化されたので、どこでもやってますけどね。
 患者さんにとって、自分が今飲んでる薬がわかるってことは
とても大事なことで、医者と患者の信頼関係にもつながります。
 
 そして、実は何といっても、院外処方のいい点(悪い点?)は、
プロが見るとその病院の医者のレベルがすぐわかっちゃうこと。
 いやー、毎日参考になってます(苦笑)。
納得したり、あきれたり、感心したり、ナンダこりゃーとクライ気持ちになったり・・・。
専門外のものは「ふむふむ」が多いですが、花粉症や風邪を含む感染症などは
ネガティブなサプライズが多いですね。
いやはや・・・、びっくりする処方ありますよ。
 個人的には「注射・点滴」も情報開示したほうがいいと思っていますが・・・。
反対する医者、多いだろうなー。
それでは、困るのですが。
 さて、話は戻って最初の三本のビン、患者さんが
「この赤いのはビタミン剤だっていってました。」
といってたので、花粉症にビタミンの点眼が必要かどうかはわからないが、
それはともかく、そーするとあと2本は
抗アレルギー剤と、抗菌剤、またはステロイド剤だろう。
「じゃあ、とりあえずそれ使っといてください。」
とは、言っときましたが。
 ただ、目薬の詰め替えは細菌混入の機会が増えるので、
情報開示がどうのの前に、やめた方がいいとは思いますね。

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2009.03.19

ガマンしちゃイカン

 忍ぶれど 次々出にけり 我がくしゃみ 花粉症かと 人の問うまで
 【解釈】今まで花粉症であることを隠してガマンしてきたが、
      くしゃみが連発で出てしまい人に気づかれてしまった
      「花粉症なのですか」と人に尋ねられるほどに。
 【解説】「忍ぶ」は「隠す」「ガマンする」ですね。しかし花粉症はガマンしてはいけません。
     マスクしないでいると、かえってくしゃみが連発で出て、周りの人に迷惑をかけます。
     この歌の構造は「倒置法」です。
     「忍んでたんだけど、花粉症かと人の問うまで、次々と~出にけり」という構造ですね。
     和歌には多い手法で「ちはやぶる 神代も聞かず・・・」などでも使われています。
     印象を強めたり、ドラマチックな展開になります。
  〔用例〕「愛しています、心からあなたを。」
      「大キライだ、花粉症なんて。」
      「もしもし、今?耳鼻科、小倉。ちょー混んでるし。」
 昨日は各地で卒業式が行われたはずです。
良い天気でポカポカ暖かく、
「ああ、お母さん方、ちゃんとマスクしてったかなー。」
と、朝から不安で仕方ありませんでした。
 昨年も、早くからきちんと薬を飲み、マスク、帽子、ウインドブレーカーもかかさず、
ずっと調子良かった花粉症の患者さんが、
娘の卒園式で、半日マスクをしなかったばっかりに、その後ずっと症状が続いた、
ということがありました。
 花粉症、アレルギーとは免疫の暴走です。
体に全く無害な「花粉」を「体に有害な物質」と誤解し、
くしゃみで吹っ飛ばそう、鼻水や涙で洗い流そう、ハナを詰まらせて体に入らないようにしよう、
としてるわけです。
 花粉症の人は花粉に対する抗体という物質を持っています。
抗体はマスト細胞という白血球にくっつきます。
これは、まあ地雷みたいなもんでここに花粉がくっつくと
マスト細胞が破裂して、くしゃみや鼻づまりを起こす化学伝達物質を撒き散らすわけです。
 抗体は血液中をめぐってますが、スギ花粉襲来の情報を受けると
鼻や目の粘膜に集結します。
「地雷」を敷設してスギ花粉の侵入に備えるのです。
さらに花粉をいっぱい吸い込むと体が指令してこの「地雷」の数を増やします。
軍備を増強するわけです。
そうすると少しでも花粉が来ると次々に爆発。
 場合によっては花粉以外の刺激でも「誤爆」します。
温度変化とか、機械的刺激とか。
お風呂から出たあとにくしゃみ止まんないとかね。
 一旦、この戦争状態になっちゃうと、武装解除までかなり時間がかかります。
 だから花粉症は、「ひどくなったら薬を飲む」ではダメです。
「症状が出ないようにコントロールしていく」のが大事。
 半日くらい、大丈夫だろう、と甘く見ると命取りです。

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2009.03.17

本能的処方

 「托卵(たくらん)」というのをご存知ですか。
カッコウなどが、ホオジロ、モズなどの他の種類の鳥の巣に卵を産みつけ、
育てさせるというもの。
カッコウの卵は早く孵化し、雛の成長も早いので
もともといる卵や雛を巣から蹴落としてしまいます。
 親は自分よりはるかに大きくなった雛にせっせと餌を運ぶのですが、
どうも、雛の口をあけたときの色を見ると、
餌をあげなくてはいられなくなってしまうみたいです。
あいてる口の色を見ると、それが自分の子供かどうかなんてのは、どっかいっちゃうみたいで。
 げに、本能とは恐ろしいもの。
 小児科の先生の中にもそれとよく似た習性を持つ人がいるみたいです。
 今日かかった、7ヶ月の赤ちゃん、ハナが多いので
耳だれで受診した2つ上のお兄ちゃん(当院でチューブ入れてます)といっしょに受診しました。
この赤ちゃん、水曜日の午後に熱が出ましたが、当院は水曜午後休診なので、
近くの小児科にかかったそうです。
「それで、インフルエンザ、Bだって言われました。」
「あー、そう、わかって良かったね。でも、大変だったね。この歳だとタミフルも飲めないしね。」
「ええ、でもわりと早く熱が下がってよかったです。」
「そりゃ良かったですね。」
「メイアクトが効いたんですね。」
「!?メイアクト?」
「この子はまだタミフルが飲めないからって、メイアクトとクラリスが出ました。」
「メイアクトとクラリスが同時に!!」
 もともと、このセンセイ、抗生剤が大好きでどんな患者さんにも
抗生剤を出すので有名。
そのたびにコッチで患者さんに説明するので、疲れるったら。
 しかし、診断がつかないならまだしも
(いや、それでも0歳代の子供に初診で憶測で抗生剤出すのはマズイけど)
「インフルエンザB型」って自分で言っといて抗生剤、しかも2剤、しかも0歳児!
 おそらく、ホオジロの親が
「この子は自分の子ではない、
でもこの口をみると餌を運ばずにはいられなくなる」、
と同じように、このセンセイは
「この子はインフルエンザの発熱だ、
でも発熱の子をみると抗生剤を処方せずにはいられない」、
とういう、「本能」というか「呪縛」みたいなものにとらわれてるに違いない。
「インフルエンザなんだから、とりあえずメイアクトもクラリスもいらないから。
インフルエンザのあとは、ハナやセキが続くものなので、少し経過みましょう。
また、熱が上がったら、診てみましょうね。」
 それにしても「殺菌的」な抗生剤のメイアクトと「静菌的」な抗生剤のクラリスは
併用しない、って原則があるんですけどね。

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2009.03.16

花粉はどんな時に多いの?

 春の田の ガーゼマスクの目をあらみ わが衣手は ハナにぬれつつ
【解釈】:春の田に出てみたら、花粉対策のためにしてきたガーゼマスクの目が粗いので
     時間とともに花粉を吸い込んでしまい、袖で鼻水をぬぐうのでぬれてしまった。
【解説】:ガーゼマスクは、目が粗く、花粉を通すことがあるばかりでなく、
    表面に花粉が付着しやすく構造上、鼻の穴が出やすいので、
    花粉症のときには立体型、不織布のマスクがお勧めです。
    ちなみに「目をあらみ」の「~を・・・・・み」は古文で使われる言い回しで
    「~が・・・・・なので」と訳します。
    試験に良く出るので、必ず覚えてください。
   〔用例〕「瀬を速み」⇒「流れが速いので」
       「ハナを多み」⇒「ハナが多いので」
       「てんどをよしみ」⇒「てんどがよしなので」
 さあ、今日は花粉が多いぞー。
 コメントの方で、幼稚園の先生からご質問がありました。
 質問「どんな日に花粉が多いの?」
 スギ花粉は、最初はパラパラ飛んだり飛ばなかったりですが、
ある日を境に連続的に飛ぶようになります。
 ただし、飛ぶ量は一定ではありません。
 雨の日はもちろん飛びません。
晴れていても、気温が低く冬型の強い日はそれほど多くありません。
気温が低いとスギは花芽を閉じて花粉が飛ばないようにするからです。
 春先は周期的に天気が変わります。
雨が上がったあと、南風が吹いて気温がぐっと上がる日があります。
こういう日が要注意です。
しかも、そういう日は雨の日に飛ぶ予定だった花粉もまとめて飛ぶので
大量飛散の日になります。
 天気予報で、4月上旬の暖かさです、とか
昼間はコートが要らないでしょう、とか
絶好の洗濯日和です、とか
ポカポカと気持ちよくお散歩でもしたくなる陽気です、
などといってたら、
 花粉症の人は
絶対、コートを脱いではいけません。
絶対、洗濯物を干してはいけません。
絶対、お散歩しないでください。
 質問「どんな時間帯に花粉が多いの?」
 花粉は朝が少ないです。
特に雨が降ったあとは、花芽が湿ってるので日が昇って乾いてから飛び出します。
お昼過ぎから3時4時くらいまでが花粉のピークです。
花粉症の小学生はお昼休みに外で遊ぶのは控えましょう。
ひどい子は午後の体育も休ませます。
その後、時間とともに花粉量は次第に減ってきます。
 しかし、油断禁物。
 実は、日没後の7時から9時くらいの時間帯に再び花粉量が増加します。
 何でー?
 花粉は暖かい日に多く飛ぶので、地面が温められた上昇気流によって
上空に舞い上げられます。
ある調査によると上空800メートル位のところに花粉が多いそうです。
 それが、日没後、地面が冷えると降ってくる。
 だから、日が暮れて寒くなったからと油断してマスクなしで外に出ると危険です。
 こういう話を外来でちゃんとしてくれるお医者さんは少ないんじゃないでしょうか。
当院では、この話を毎年のべ何百回もしています。
ほかにも花粉症の注意事項をしゃべりまくります。
もう、声ガラガラだー。

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2009.03.13

春の野に出でて

 
君がため、春の野に出でて若菜摘む 我が衣手で鼻をかみつつ 
 花粉症のシーズンはいよいよ本番を迎えようとしてます。
今年も花粉が多いのですが、2月後半雨が多かったので
スギの木的には、在庫がたまってるので、3月後半一気に在庫放出しそうで怖いです。
 しかし、困るのは幼稚園、保育園の先生方の花粉症に対する認識の低さ。
 近年、花粉症の発症は低年齢化が進み、4歳5歳での発症も もはや珍しくありません。
花粉症治療の基本はなんといっても花粉を吸わないこと。
たくさん花粉を吸っちゃうと、どんな薬も無力です。
しかも、なかなかもとの状態には戻らない。
 それが、幼稚園、保育園の先生が
「はーい、今日はお天気がいいので、みんなお部屋にいないで お外で遊びましょう。」
なんて。
 ふざけんじゃねー。
 あんたらは花粉症がどんなに大変な病気か全然わかってない!
 みんな、鼻も目もグズグズ、ハレハレで中耳炎になって鼓膜切ったり、副鼻腔炎になったり・・・。
 
 「はーい、最近はインフルエンザが流行ってるので
みんな、このインフルエンザ患者さんがいっぱいいるお部屋に入りなさい。
マスクをはずすのを忘れちゃダメよ。」
 なんて、言うか?
 それと同じじゃ。
いや、インフルエンザのほうが治る分、まだましかも。
熱出れば出席停止になるし、その後はもう感染らないし。
 ホント頼みます。
幼稚園、保育園の先生方、
天気のいい日に、花粉症の子供たちを外で遊ばせないで。
 ちなみに冒頭の歌、原作はもちろん百人一首の光孝天皇の歌。
まあ、この際の「若菜」はいわゆる「春の七草」なので、春といってもまだ七草がゆの頃、
もと歌は「雪は降りつつ」だし
その季節には、まだスギ花粉は飛んでないすけどね。

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2009.03.03

メドレー・リレー

 相変わらず、発熱の患者さんが多いです。
 インフルエンザや、溶連菌は子供が学校や保育園でもらうと
家族内にリレーのように感染が広がります。
 中には、保育園に行ってるY君みたいに一人で
最初「インフルエンザA型」、
治ったと思ったら、「溶連菌感染症」
その後すかさず「インフルエンザB型」になり、
こないだから「急性中耳炎」の治療中です、なんてかわいそうな子もいる。
 さしずめ「個人メドレー」ってとこですね。
 先日、来たFさんのお家はH君、Yちゃん、T君の3人兄弟です。
先週初めに一番下のT君が発熱、「インフルエンザB型」でした。
 続いて、Yちゃんが熱を出して来院。
「あー、感染っちゃったのね。」
とのどをみると、いや、こりゃ違うぞ。
診断は「溶連菌感染症」。
 おやおや、まあ、と思ってたら次の日にお兄ちゃんが熱発。
「どっちかねー。」とのどをみると
「うーん、こりゃ、溶連菌じゃないね、インフルエンザの検査しましょう。」
で、調べると果たして「インフルエンザ」。
しかし何と「A型」!
また、別口をもらってきちゃったんだ。
 3人3様の感染症で、いずれも出席停止。
お父さんは頭を抱えてましたね。
家にいる3人がお互い感染らないようにせねば。
しかも、両親も。
 で、今日、最後に「A型」になった一番上のH君が、治癒証明書をもらいに来院。
「あー、元気になったねー、よかったねー。」
で、のどをみると、
「あれ、ひょっとして、溶連菌、感染ってるかも。」
調べてみると、これがバッチリ「陽性」。
 「出席停止」は残念ながら、延長になりました。

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2009.02.26

よくみて、よく考えよう

 いや、インフルエンザすごいですねー。
今日午前中だけで、陽性者10数人!すべてB型!
しかし、そのほかに、中耳炎や溶連菌感染症も、それぞれ数人、混在。
 先日、小児科のS先生と話しをした時、S先生が
「最近の若い医者は、所見をみて診断する能力が落ちている。」
と、いってました。
 近年、迅速検査の普及で、診断の方法が変わってきました。
すぐ、その場で答えが出ます。
 以前S先生に、なんで耳鼻科医は中耳炎の所見がわかるの?ときかれました。
 わたしの答は
「鼓膜切開するからです。」
というものでした。
 外から見てあれこれ考えて、お母さんにも説明して、それで鼓膜切開すると答あわせが出来ます。
ああ、あの鼓膜の向こうはこうなってたのかー。
そして、経験値が上がり、鼓膜所見と実際の中耳の状態との関係がつかめてくるのです。
 じゃあ、インフルエンザやRSウイルス、溶連菌も、その場で答あわせが出来れば、
診断の訓練になるのではないか、迅速検査でかえって診断力が上がるんじゃないの?
とも思えます。
 S先生に言わせると
「たいしてみもしないで、すぐ迅速検査しちゃうから。」
ということでした。
 なるほど、耳鼻科医が鼓膜切開する前は、何回も鼓膜をみて適応を考えます。
よく診て、考えて、これはしたほうがいいだろう、となったらお母さんにも納得してもらって手術をします。
何せ、人の体にメスを入れるわけですから、慎重にならざるを得ません。
 鼻やのどに綿棒を入れるのは、もっとずっと簡単です。
だから、あれこれ考えるより先に調べてみよう、となるわけです。
 以前はインフルエンザなどはペア血清といって、時間をおいて2回採血し、
その変化を比べなければ正確な診断は出来ませんでした。
 どうも、この辺に問題があるらしい。
 問題集をやって答あわせをするのではなく、先に解答集を見ちゃうみたいです。
 なるほど・・・。
 今日来た患者さん。
わたしではなく、妻が診たんですが、
昨日お昼に熱が出て、のどが痛いといって某小児科を受診。
「熱が出てすぐでは、インフルエンザの検査が出来ないから夕方来てください」といわれ
夕方、再診。
結果、インフルエンザ検査は「陰性」。
「でも、疑わしいのでタミフル飲んでください。」
と言われ、タミフル出たそうです。
不安になったお母さんが、帰って子供ののどをみると、まっかっかで白いポチポチが・・・。
で、本日当院受診。
診断「溶連菌感染症」。
 うーん、お母さんの方が、のどよくみてるんじゃ、ダメだな。
ちなみにこの先生わたしより年上ですから「最近の若い医者は」というのは当てはまらないかも。
 タミフルは飲んでなかったそうで、
まあ、今後インフルエンザにかかることなんかもあるかもしれないんで、とっといて下さい、
と妻が説明してました。
 やれやれ。

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2009.02.25

インフルエンザの予防接種の疑問

 相変わらずB型インフルエンザ多いなー、と思ってたら、今日またAも出たりして。
まあ、寒くなって少し花粉症のスパートが遅れたのは、
いいことだが、その分インフルエンザが逆戻り。
 さて、よく質問を受けるのでご説明しますが
「予防接種しててもかかるのか?」
という問題。
 答え「かかります。」
 なんだ、じゃあ意味ないじゃん、何でだー。
詐欺じゃねーか。
 その疑問にお答えしましょう。
 さて、予防接種というのはかの偉大なジェンナーさんが実用化したものだが、
病原体を体に認識させて、その「抗体」を作らせる、ってのが原理だ。
 たとえば「おたふく」「はしか」なんかにかかった人は、もう同じ病気にはかからない。
おたふくウイルス、はしかウイルスに対する「抗体」ってのができるので、
ウイルスが進入してくると、それって感じで抗体が動員され、処理しちゃうわけだ。
 だからインフルエンザウイルスを不活化したワクチンを注射することによって、
体がこのウイルスを認識し、抗体をつくり始めるわけだ。
子供は大人に比べてウイルス経験が少ないので、2回接種して、
ああ、抗体つくんなきゃ、という気にさせるわけだ。
 で、予防接種すると数週間で体はインフルエンザウイルスの「抗体」をつくる。
シーズンになり、本物のインフルエンザウイルスが体に入ってくると、
「お、来やがったな、オメエのことはすでに知ってるぜ。これでも食らえ。」
と攻撃して退治しちゃうわけです。
 ところが・・・
 一時にあまり大量のウイルスが入ってくると、抗体の処理能力が
ウイルスの増殖スピードに追いつかず、結果的にウイルスに押し切られてしまいます。
これが「感染」です。
 ただ、抗体をすでに持ってれば、最終的には準備してない人より回復は早いはずです。
 軽い、感染は防げるし、かかっても治りは早い、ので予防接種は効果があります。
 しかし・・・
 ウイルスと抗体はそれぞれ1対1対応、つまり型が違うと効果がありません。
たまに、厚労省の予測と実際に流行するウイルスの型が
微妙にずれちゃうこともないわけではありません。
 型といっても、予防接種は通常A型を2種類(ソ連型、香港型)とB型を1種類ブレンドしてあります。
メーカーが違っても、この方はいっしょです。
ただ、例えば同じソ連型の中にも細かい型がありこれがずれちゃうことがあるわけです。
 ちなみに今年話題になった「タミフル耐性ソ連A型」はちゃんとワクチン効く型だそうです。
 そして・・・
 寝不足や過労、かぜや不摂生などによってからだの抵抗力が落ちると
抗体の産生が弱まります。
そういう時も抗体の力が足んなくて「感染」しちゃうわけです。
(今年のオレのパターンだ・・・。)
 ちなみに新型インフルエンザが怖れられてるのは、
人類がまだ感染したことがないので、抗体をつくった経験がない、からです。
まあ、インフルエンザには違いないのでいずれ抗体はできるし、
映画「宇宙戦争」のエイリアンみたいに、いきなり全滅ってことはないのですが。
(宇宙戦争、観たことありますか?SF映画の古典でわたしの好きな映画のベスト10に入ります。
数年前、トム・クルーズかなんかでリメイクされましたね。)

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医療系をまとめました。
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