ブログトップに戻る
2020.01.20
インフルエンザは多いですが、
そうではない発熱も少なくありません。
中耳炎や扁桃炎は耳鼻咽喉科の得意分野です。
特に小さいお子さんでは耳の痛み、のどの痛みを訴えない場合も多く。
2歳のお子さん。
39度の発熱。
保育園の同じクラスでインフルエンザが出ているそうです。
中耳炎は無く、だが診ると、ノドが特徴的に赤い。
ということで検査したところ、インフルエンザ陰性、溶連菌強陽性でした。

なので、ペニシリン系の抗生剤を10日分。
抗生剤を飲んで24時間経ち、平熱であれば登園可です。
なんでもかんでもインフルかそうで無いではなく、
熱の原因を調べることが重要です。
ちなみに溶連菌とインフルエンザの同時感染もあり得ます。
なぜならば溶連菌は細菌、インフルエンザはウイルスだから。
そして、異なるウイルス同士の同時感染は通常は起こりにくい。
なぜならウイルス間には「干渉」という現象があり、
同時に同じ細胞には感染できない仕組みがあります。
だから、例えばRSウイルスに罹っている間は、インフルエンザにはなりにくい、
ということになります。
実際に保育園などでRSウイルスが流行した場合、
その間はインフルエンザの流行は起きなかった、という論文があります。
だから論理的には、いろいろな風邪に、連続的に罹っていると、
その間は、ずっとインフルエンザに罹らない、ということなんですけど、
まあ、実際にはなかなか・・・。(^_^;)

2020.01.18
1月も中旬になりますと、当院の外来は
スギ花粉症に向けた怒涛のレーザー期間に入ります。
レーザー治療はスギ花粉の本格飛散開始前に
完了しておく必要があるので、
これから半月余り、土用の丑の日前のうなぎ屋のごとく
焼いて焼いて焼きまくる日々です。
ところで、今期の花粉飛散予測ですが、
ありがたいことに「少なめ」の予想です。

飛散の多かった昨年に比べるとかなり楽かも。

くわえて、昨年秋の台風19号、21号の影響で、
スギの花芽がかなりダメージを受けた、という報告もあります。

何となく、ニヤニヤしてしまう。
このままいけば今年のスギ花粉シーズンは
楽に行けるのではないか、という期待があります。
だが、油断は禁物。
ウマすぎる話にはえてして落とし穴があるもの。
思い出されるのは一昨年の浦和レッズ、
シーズン途中から監督がオリヴェイラに代わり、
天皇杯も優勝して、杉本健勇などの大型補強も行い、
この調子では2019年はリーグ優勝を含めた複数タイトル獲得、
そして、常勝軍団としての新たな浦和レッズ元年となる、
なんていう期待に胸を膨らませていたのでした。
蓋を開けてみれば、結果は複数タイトルどころか、無冠で、
リーグ戦に至っては最終節まで残留争いをする、
という有様でした。
ぬか喜びををして、あとでガックリするのはイヤなので、
今年のレッズには過大な期待をかけないようにし、
またそこから学んだ点として
同じように今期のスギ花粉に対しても
楽観せずにシーズンを迎えようと思いますが、
それでも、何となく例年になく気分の暗くない花粉前夜です。
あー、イカン、ニヤケてしまう・・・。
ただし、この暖冬で花粉の飛び出しが早まる可能性は大なので
その点には気をつけましょう。


2020.01.13
昨年1年を振り返ると、
眼が悪くなって、粘液嚢腫や、副耳の手術はやめたいっぽう、
子供の鼓膜チューブ留置は、他院で治らなかった中耳炎や、
遠方からの来院者などで、なんか多かった印象。
特に秋からはかなり反復性に自壊を繰り返す、重症例も多く
20耳近く、局麻の子供のチューブ留置を行ったような・・・。
さて、これはなんでしょう。

実はこの白いプラスチックのケースは、
鼓膜留置用のチューブが滅菌されてはいっていたケース。
空のケースをとっておいて、
このようにプラモデル用のビスやナットを入れるケースに流用しています。

パチッと蓋ができるので、実に都合がいい。

さあ、お正月はこれをやっつける予定でした。
ていうか、「着工」は12月初旬で、年内完成の計画だったのですが、
さすがに12月は忙しくてほとんど進まず。

先ほどのネジ類はこのビッグスケールモデル用のネジだったのです。
実はこれを完成させると
19台あるタミヤの1/12のF1モデルシリーズをコンプリートすることになります。
(バリエーションモデル及びF1以外のカーモデルを除く。)

子供のころからの夢が、もうすぐ叶いそうでしたが、
お正月中はここまででした。
その後、先週、完成しましたので、後ほどアップします。


2020.01.09
インフルエンザの流行は続いていて、
毎日2ケタにはなりませんが数人の陽性者が出ます。
ところで、ときどきネツが出て病院に行ったけど検査してくれなかった、
という方がいます。
以前の検査キットは半日待たないと陽性にならない、
ということでしたが、
最近は改善され、すぐ反応が出ます。
今日も昨夜は熱はなく10時に熱計ったら37.8℃、
という方が来ましたが、11時前の検査でもすぐ陽性。
逆に、熱が出て2,3時間で検査して陰性で、
翌日熱が続くので再検査、という人での陽性者はほとんど見ません。
ところで、昨年イナビルのネブライザー溶液というものが発売になりました。
吸入薬のイナビルを懸濁液にして、
10分から15分吸入する、というものです。
日本小児科学会の
「2019/2020シーズンのインフルエンザ治療指針」によれば
この薬は充分なデータがなく、検討中、
ということになっています。
だが、そもそも、内服のタミフルが安全につかえるのに、
わざわざ値段も高く手間もかかり、
効果も不明確なこの薬を使うという選択肢は
まず、ないでしょう。
さらにイナビルは海外での第Ⅱ相試験において
プラセボ(偽薬)と有意な有効性が得られなかったことにより
海外での発売が中止となり、
使用できるのはわが国のみとなっています。
しかも、多くの患者さんは気道症状として、
セキや、のどの過敏を合併している方が多く、
イナビルやリレンザなどの吸入薬そのものが、
上手く吸入できない場合があります。
リレンザは1日2回で5日間なので、
1,2回失敗してもチャンスがありますが、
イナビルは吸入も懸濁液もワンチャンスなので、
セキのある人や、子供さんに対しては選ぶ意味がないと思われます。
まあ、仮に失敗して薬の効果が不十分でも、
健康な人ならインフルエンザはいずれ治っちゃう病気なんですけど。

2020.01.06
今日から仕事始め。
ある程度予想されていたことだが、
初日の午前中は予想を上回る激混み。
午前中半日の受付で来院者116人を数え、
仕事終わったのは午後2時15分過ぎ。
いそいで昼食をとり、午後3時からの午後の外来に向け、
10分間だけ仮眠をとる。
だが、午後の待ち人数は40人台。
これも予想していたが、予想以上に空いてるなあ。
そして、現在午後5時の時点で待合室が空っぽになった。
なので、こうやってブログ書いています。
人間の考えることは同じと見えどうしても集中しがちだが、
いくらなんでも午前、午後の差が多すぎだな。
何か、調整の方法はないものか。
午前中に来た人も、午後でも大丈夫な
緊急性のない方が大部分であったし。
お正月休みに大渋滞した高速道路や
観光地周辺の道路は今頃ガラガラでしょうね。

2019.12.27
2019年も残りわずか。
今年の診察は例年通り12月30日の午前中まです.
そして、年明けは、これも例年通り1月4日までお休みですが、
5日が日曜日なので例年より1日多く6連休になります。
今年の年末は月曜日から土曜日までフルにあり、
しかも翌月曜日が予備日的にあるので、
患者さんが分散され、
年末の混雑はかなり緩和されているので、
そこはありがたい。
天皇誕生日が無くなったのも大きいと思います。
でも、28日土曜日と、最後の30日は
それなりに混むだろうなあ。
年明けの6日も。

2019.12.22
ゾレア見送りで、今のところ花粉症の「注射薬」はありません。
かつて、皮下注射していた「皮下免疫療法(SCIT)」は、
「舌下免疫療法(SLIT)」に、ほぼ全面的に置き換わっていますから、
これもなし。
思い出されるのは花粉症のシーズン、一発で治るという注射。
これは脂溶性ステロイド剤の皮下注射なので、
絶対やっちゃダメですよ。

学会からも注意喚起が出て、
まともな医者はまあ、やっていないと思いますが、
大都会や、または逆にド田舎には「ヤクザな医者」がいますので、
くれぐれもご注意ください。
失明なんかしてからでは、遅いですから。
ところで、もう一個ありました。
ヒスタグロビンはヒスタミン加ヒト免疫グロブリン製剤、
ノイロトロピンはワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液、
なにやらアヤシイ。

これらは良くメカニズムがわからないまま「変調療法」という、
これまたよくわからない名前で、
かつては花粉症の治療に用いられていました。
実はワタシも大学のアレルギー外来ではけっこう使いました。
だが、その後、「効かない」ということがわかり、
今では花粉症治療のガイドラインからも削除されています。
しかもこの注射、全然効かないくせに、かなり痛い(らしい。)(>_<)
当時はわからなかったとはいえ、
注射した患者さんには、ホント申し訳ないです。
この注射、他科ではまだ使う疾患もあるらしい。
その辺の知見は無いのですが、ホントに効くのかしら。
ともかく、花粉症にはほぼ効かないのでお間違いなく。

2019.12.21
昨日来られた11歳の男の子。
昨日38℃の発熱、今朝は37℃。
学校や家庭にインフルエンザの人はいましたか、の問いに、
月曜日に妹がインフルエンザA型陽性。
だが、彼自身も、その時熱がなかったにもかかわらずインフルエンザ検査、
結果、当然陰性。
しかし、予防投与として自費でイナビルを処方され、
吸入したそうです。
なんですと?(@_@)
インフルエンザの予防投与は、保険適応は無く、
当然自費なのですが、
その対象は限られています。
それらは以下に該当する方です
①65歳以上の高齢者
以上に該当しない人の予防投与は、たとえ自費であっても、
適応外処方となり、通常は認められません。
安易な抗ウイルス剤の投与は、ウイルスの耐性化につながります。
ただでさえ、日本はインフルエンザ薬使い過ぎといわれているのに。
けっきょくこの男の子はインフルエンザAが陽性で、
タミフルのジェネリックを処方し、5日間の出席停止になりました。
毎日のようにマスクもせずに
インフルエンザウイルスを浴びてるはずのワタシですが、
予防接種予約のヒトのキャンセルが出たもんで。
やっと昨日、ワクチンを接種しました。
ところで、インフルエンザ予防投与対象の65歳以上の高齢者って、
意外ともうすぐなんですけど・・・・・。

2019.12.20
いったい日本の医者のうち、どれくらいの割合が
抗生物質を使うとき、対象となる原因菌の種類を想定してるんでしょうか。
他科のことは知らないが、耳鼻科領域では
想定される菌はある程度限られています。
多くの人が誤解していることだが、
細菌感染とは、誰かにもらった菌が発病することよりも、
普段自分が「飼っている」菌が、
何らかの機転で感染症を起こすことの方が多い。
たとえば、傷が化膿した、などという場合は、
皮膚の表面にもともといる菌が繁殖するのだから、
想定される菌は「黄色ブドウ球菌」が最も多い。
中耳炎や副鼻腔炎は鼻腔内にいる菌が
無菌的な中耳腔や、副鼻腔に侵入し、増殖して起こるので、
鼻の中にいる「肺炎球菌」「インフルエンザ菌」「モラクセラ」
のどれかであることがほとんどなのです。
口腔内はもともと菌がいる環境なので、
そこで増殖するのは侵襲性の強い「溶連菌」が多いのだが、
「溶連菌」にしても咽頭、鼻腔、皮膚に常在することがある細菌です。
扁桃周囲膿瘍や急性副鼻腔炎において、
しばしば「嫌気性菌」が起炎菌になることがあります。
ぺプトストレプトコッカス、フソバクテリウム、バクテロイデスなど、
普段はお目にかかることのあまりない菌が、
嫌気培養すると起炎菌として検出される。
通常の検査では検出されないので、
嫌気性菌を疑って検査する必要があります。
こいつらは、どっから来たのか?
なんてことはない、これらもワレワレが普段「飼ってる」菌なのです。
細菌はウイルスと違い細胞外でも自活できるので、
ワレワレは体の内外のいたるところにそいつらを飼っています。
だが、微生物というものはすべからく1匹や2匹では何もできない。
一定の条件のもとに急激に、大量に増殖する場合に、
宿主の身体になにか危害を加えることがあり、
それを「感染症」というのわけです。
ペスト菌やコレラ菌は病原性、侵襲性が高く、
少数でも侵入したら要注意だが、
ワレワレが日常相手にする細菌感染は
そういった「顔なじみ」の菌によって起こる。
だから、その知ってる菌のうち、
今回はどいつが悪さしてるかを推定し、
抗菌剤を選択することは、感染の起きている場所と症状を考えれば、
それほど難しいことではありません。
たとえば、鼻腔に常在し、急性中耳炎や副鼻腔炎、
ときに気管支炎、肺炎の原因菌となる頻度の高い肺炎球菌、
これらは現時点では7~8割がマクロライド系抗生物質に対して、
耐性です。
つまり、効かない。
風邪のたびにクラリスやエリスロマイシンを出す内科、小児科医は、
そのこと知ってるんでしょうか?
風邪はウイルスなのでクラリスやエリスロマイシンは全く効かないばかりか、
そういった抗生剤の投与により、
それに対して耐性を持つ肺炎球菌が一層元気になって、
中耳炎、副鼻腔炎などの二次感染を起こしやすくなる、
ということを考えたことがあるだろうか?
さらに、そういった無意味な抗生剤を出すことが、
世の中の薬剤耐性菌を増やすことにつながるということを
わかってるのか?
ワレワレの身体にはいろんな菌が常在していて、
それらはお互いけん制し合い、また体の免疫機構もあるので、
特定の菌が爆発的に増えることは無いが、
抗生物質でライバルの菌が死んでしまえば、
生き残った菌はのびのびと増殖することができ、
二次感染を引き起こすのです。
当院ではなるべく細菌の培養検査を行い、
薬歴を見、また、兄弟から分離された菌検査の内容を参考にして
原因菌にアタリをつけて、抗生剤を処方します。
たぶんこの子の中耳炎は肺炎球菌だろうなあ、とか、
先週まで、この薬を飲んでいたのでモラクセラが出そうだ、とか。
ずっと〇〇小児科にかかっていたから
多分出るのはPRSPかBLNARだろう、とか・・・・・。(^_^;)
かなり、当たりますよー。
そんなわけで、今日も鼓膜切開したり、
チューブ入れたりの年末なのであった。

2019.12.19
このほど、花粉症の新しい治療薬が認可されました。
アレルギー性鼻炎としては初の生物学的製剤「ゾレア」です。

このブログを読まれる方は医療関係者の方ばかりではないので、
生物学的製剤について簡単に説明します。
簡単に説明するの、ムズカシイな。
この薬はヒトの抗体のクローンでして、
そもそも抗体とは、特定の微生物を攻撃するために生体が作る物質。

たとえば、おたふくかぜにかかると、
体がそのおたふくかぜウイルスを認識して、
そのウイルスだけを攻撃する物質(=抗体)ができます。
それによっておたふくかぜは治り、
身体がその抗体を作り続ける間は、おたふくかぜにはかからない。
抗体にはいくつかの種類がありますが、
そのうちIgE抗体というグループはもともと寄生虫を攻撃する抗体ですが、
これが、まちがって反応するのがアレルギーです。
花粉やダニ、ハウスダストを敵と誤認して、
くしゃみで吹っ飛ばそう、、鼻水で洗い流そう、鼻を詰まらせて侵入を防ごう、
とするのがアレルギー性鼻炎です。

このアレルギーをおこすIgE抗体を攻撃するように、
プログラムしたIgE抗体をクローンによって大量生産したのが
ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤とよばれるもの。
攻撃する側も、される側もIgE抗体なので、混乱しますが、
ミサイル迎撃ミサイルと思ってもらうとわかりやすい。
湾岸戦争でイラクのスカッドを撃墜したパトリオットのような
ミサイル防衛システムです。
つまりこれを注射することにより、体が作ったIgE抗体が、
ことごとく撃墜され、スギ花粉が来てもアレルギー反応が起きないという仕組み。

問題点はいくつかあり、
アレルギーをおこすIgE抗体は体が作り続けるので、
注射はシーズン中約2週間ごとに打ち続けなければならないこと。
そしてさらに問題は、そのお値段。
例えばゾレア皮下注用150mgでは1瓶当たり4万6422円であり、
1回当たり600㎎を2週間ごと投与するとなると、1か月で37万円余り、
花粉症のシーズンは2か月~2か月半なのでざっと100万円。
仮に3割負担でも薬剤費だけで30万以上、
診察代、検査代、注射手技量もこれに加わる計算です。
もっと問題なのはこれを保険適応にすると、
その分の医療費、すなわちのこり7割が健保の負担になるということ。
これ、この間話題になったこの話と矛盾していますよね。

一応、中央社会保険医療協議会で花粉症への適応は了承されたものの、
製薬会社側から承認をひとまず留保したい、との申し出があり、
今シーズンの保険適応はない見通しですが、
現時点でスギ花粉症にこの薬は無いだろう、という印象です。
もともと、喘息では重症例に限って適応になっていて、
実際に使われている製剤ではありますが、
喘息では死んじゃう人もいる一方、
スギ花粉症の重症例ったってたかが知れてる。
中央社会保険医療協議会のガイドラインでは、
「厳密な」施設、患者、管理の適応基準が定められていましたが、
ざっと見た限りでは、それほど「厳密」には見えませんでした。
そもそも患者基準のスギRASTスコアがクラス3以上、なんて。
IgE値はクラス0~6までに分類されますが、
当院で検査したスギ花粉症患者さんのざっと9割が、
クラス3以上です。
過去にスギ花粉抗原の除去と回避を行った上で、
医療機関で「鼻アレルギー診療ガイドライン」に基づき、
鼻噴霧用ステロイド薬・ケミカルメディエーター受容体拮抗薬による治療を受けたものの、
コントロール不十分な鼻症状が1週間以上持続したことが診療録、問診等で確認できる、
なんて基準がありますが、
スギ花粉抗原の除去と回避が十分なされれたなら、
重症化することは絶対にありません。
まあ、このクスリ、大金持ちが自費で使うのはけっこうだが、
保険適応にして庶民に負担を求めることはありえないでしょう。
