ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

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2009.02.04

備えあれば

 さて、今年もあのいやな季節がやってきます。
そう、スギ花粉症。
 いまや国民病とも言われますが、今年もかなり飛びそうです。
 花粉の飛散量は前年の夏の気温、日照で決まることが近年わかってきました。
昨年は、梅雨明けが早く猛暑でしたが、お盆過ぎに天候不順になったので
花粉の量は平年よりやや多目くらい、というのが私の予想です。
 花粉症は初期治療といって、症状の出る前から薬を飲むことで
アレルギー反応の発現を抑えることが出来ます。
その効果のピークまでに2週間ほどかかるので、
花粉が飛び始める2週間前から飲むのがベストといわれてます。
 患者さんが薬を取りに来ます。
「花粉症の薬をください。」
「どれくらい、出しましょうか?」
「どれくらい出せるんですか?」
「いくらでも出せますよ。」
というと、初めての患者さんはびっくりされます。
 7~8年前ですか、それまで「2週間が限度」だった健康保険の規定が変わって
「医師が必要と認める期間まで」
と、処方箋の限度日数が変わりました。
 当院では、基本的に血液検査をしてるので
スギ花粉症なら2ヶ月間、ヒノキもあれば3ヶ月間をまとめて処方します。
だって、それだけ必要と考えられますからね。
 もちろん、病院の収入とすれば、1~2週間にいっぺん通院してもらった方が
利益が上がります。薬局も、現在は薬価差益(薬の仕入れ値と売値の差)が
原則0円なので、調剤料が稼げないので長期処方は不利です。
でも、患者さんにとってどっちがいいかといえば、長くもらっといたほうがいいに決まってます。
忙しくて薬を取りにいけず、花粉症のピークの肝心な時に薬が切れちゃったら大変です。
そもそも、花粉症の頃の耳鼻科は混んでるので、余りかかりたくありません。
 そんなわけで、当院では必要な分を2ヶ月でも3ヶ月でもまとめて持ってってもらう方針です。
自分がかかるならそういう病院のほうがいいですからね。
患者さんも、受診の手間ばかりではなく、再診料、処方箋料の点で助かるはず。
1年に一回しか会わない花粉症患者さんはいっぱいいます。
 年に一回来て、昨年の状況を聞き、今年は昨年と比べて花粉の量がどうだから、
去年より薬を増やそう、、減らそう、あるいは強くしよう、弱くしよう、などと相談して
今年の分を持ってってもらうのです。
もちろん、花粉症の一般的な注意事項や、最新のトピックスもお伝えします。
 そもそも花粉が飛び出したら、外出は控えたほうがいいので、
そんな時、病院なんか来るべきではありません。
花粉症の治療で病院に来たって、鼻の処置や吸入はあまり意味が無いばかりか
かえって発作を誘発しちゃうので、副鼻腔炎などの感染症を併発した人しか行いません。
 もちろん、薬を飲んでいてコントロールの悪い人や、合併症を起こした人は受診してもらい、
原因と対策を相談します。
 さあ、恐怖のシーズンはもう目前です。
まだ薬とリに来てない人、早く来てくださいね。

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2009.02.02

タミフルの消えた冬

 毎日毎日インフルエンザの検査をし、説明し、タミフルやらリレンザを出し、
あー大変だなーと思うが、今年は薬が確保されてるので助かる。
 5~6年も前になるか、インフルエンザの大流行の年に、薬が無くなっちゃった年があった。
 確か、タミフル、リレンザが出たばっかり。
それとほぼ同時に迅速診断キットが発売され、インフルエンザの治療は大きく変化した。
 タミフル、リレンザは正確にはインフルエンザを殺す薬ではなく、インフルエンザウイルスの増殖を阻止する薬。
これが、めちゃめちゃ効くので医療関係者は驚愕したのだった。
フツーなら5~7日続く熱が1~2日で下がる。
 ところが、これが流行期の真っ只中、突然品切れになっちゃったんです。
卸のヘリコ堀越君に
「なんか、関西でタミフル品薄なんだって?大丈夫?」
「いやー、先生、こっちは大丈夫ですよ。」
と胸を張った彼の舌の根も乾かないうち・・・
「先生、スイマセン、突然なくなりました。」
「がーん。」
 どうも、タミフルがなくなちゃったのは、まとめて抱え込んじゃった病院があるせいだったらしく、
似たようなことがインフルエンザワクチンで起きた年もありました。
 とすると、薬局の在庫が問題になってくる。
インフルエンザは猛威を奮い、備蓄はどんどん減っていく。
 副院長と薬剤師と相談して、タミフルの投与日数を減らすことにした。
タミフルは5日間投与が原則だが、先ほども書いたように1~2日で熱が下がる場合が多い。
そこで、まず3日処方に切り替え、その後2日処方になった。
その時点で熱が下がらなければ追加を出す、ということで。
 ところが、それでもどんどん無くなる。
まず最初に、子供用のドライシロップがなくなった。
 またまた、薬剤師と相談して、大人用のカプセルを割って中身を出し、
量を計った上で、味付けに乳糖を入れて調剤してもらうようにした。
かなり、薬局的にはメンドクサイ作業だ。
この、薬剤師の小峰君、実は私と同級生だ。
顔と酒癖は悪いが、こういうときは頼りになる。
時々、オレのボトルを黙って飲んじゃう分(?)、こーゆー時はいやな顔ひとつせずやってくれる。
 日曜日に電話がかかってくる。
「今、病院の救急でインフルエンザと診断されたんですけど、薬はないので
どっか、勝手に病院探してくださいって言われたんです。」
全く、2時間も待ってそれじゃあ、かわいそ過ぎる。
「まだ、ウチありますからきてください。」
 終いにはカプセルもなくなった。
 もし自分がかかったら、飲もうと机の中にしまっていたタミフルがあった。
最後の時には
「あー、やっぱりインフルエンザ出てますね。」
「先生、まだタミフルあるんですか?」
「もう、ありません。さっき、終わりました。
でもここに僕用にとっといたのがあるんで、これ、飲んでください。」
って、ちゅうちょ無く患者さんにあげちゃいました。
だって、自分とその患者さんのどっちがよりタミフルが必要かといえば、
どう考えても患者さんでしょ。
 それからは毎日「タミフル探し」です。
 薬局によってはまだ在庫のあるところもある。
そこで、毎朝毎朝事務員に、足利中の調剤薬局にすべて電話をかけてもらい
その日のタミフルの在庫量を確認するようにしました。
 検査でインフルエンザが出たら、朝在庫のあったとこにもう一度電話で確認して
「今から、○○さんという患者さんがタミフルの処方箋を持ってそちらに伺うのでお願いします。」
そして患者さんには
「××町の△△薬局にお願いしましたからすぐ行ってください。」
と、紹介する。
 だって、患者さんに自分でさがせったって、そりゃ無理でしょ。
 ところが、そこでとんでもない問題が起きました。
在庫を、教えない薬局があったのです。
「あるかどうかはお教えできません。」
それは、自分の近くの医院から言われてるのか、薬剤師の自己判断なのか。
中には、「先生にほかの病院からの処方箋では出さないように言われてます。」
などという、ふざけた返答をする薬局もあった。
「なんじゃ、そりゃ!」
 そもそも院外処方箋というのは、日本全国どこに行っても通用する処方箋で
薬があれば調剤しなきゃいけないという法律があるのじゃ。
 そんなことを薬局に命ずる医者も医者だが、それを受ける薬剤師もどアホウだ。
 薬は、病院のためのものでも薬局のためのものでもない、
必要としてる患者さんのためのものじゃないか。
 そういう非常時になるとホント本性が出るってのが、よーくわかりました。
今でも、どこの病院の薬局がどうだったかちゃんと覚えてるぞ。
あそこと、あそこと・・・。(いやーオレ、暗いっすか?)
一方、そんな中、気持ちよく協力してくれたところもある。
実名出しちゃうと、今井病院の前にある「いちご薬局」の薬剤師のクボイさん、その節はお世話になりました。
 そんなある朝、薬局の小峰君から電話がありました。
「オグラ先生、昨日タミフルドライシロップ1瓶だけ入荷したんだ。」
「お♪ラッキー。」
「でも、ゴメン、●○小児科から処方箋が来て出しちゃった。」
「いや、いや、そりゃ良かったじゃん。全然オッケーだよ。必要な人のとこにいったんだから。」
「で、もう無いの。」
「あっそー。早いね。」
「それがあの先生、5日分バッチリ処方箋出すんだよ。」
「教えてあげればよかったじゃん。」
「んで、電話したんだけど全然聞いてくんねえの。能書きには5日間って書いてあるって。」
残念、まあ、しょうがない。また、電話でタミフル探しだ。
しかし、あのセンセイんとこ院内処方なのになー。
 と、そんなわけで、その冬は散々でした。
 最近は薬の供給は安定してるらしいですが、リレンザはちょっと品薄という噂も。
気になるのは新型インフルエンザが発生した時、
ちゃんと各医療機関が、個人の利益ではなく、社会全体の利益を考えて行動してくれるか
ということ。
 過去の経験から、この点、実は、かなり心配、です。

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2009.01.31

レーザーの季節

 インフルエンザが猛威を振るう中(俺もかかったんだからホント猛威だ)
毎日毎日、花粉症のレーザー治療が多い。
 花粉症の発症前に、鼻腔の粘膜をレーザーで焼いておくと症状が軽くなります。
この治療は、花粉が飛び出す前に済ませておくことが必要なので
1月が治療のピークなのだ。
 鼻の中に局所麻酔剤のガーゼを入れて、15分~20分しみこませる。
そして、その後レーザーで鼻の中の粘膜を焼くわけだ。
 多少痛みを感じる人もいるが、粘膜が焼けるので「くさい」と訴える人は多い。
しかし、昨日の患者さんは
「蒲焼きのにおいがする。」
と言ってた。
あんたの鼻はウナギか?
 保険がきいて手術点数は1000点くらいだから数千円で出来ます。
 実は、当院は多分この界隈では一番早くレーザーを導入してます。
そこらへんの総合病院より前からレーザー手術やってました。
と言うのは、大学病院にいた頃アレルギー性鼻炎を専門に研究してて、
まだレーザーの機械が市販される前から、メーカーとともにその開発に携わってたのです。
当時は、まだもちろん保険適応はなく、大学の研究としてやってました。
 それで、開業当初、まだろくに患者さんもいないのに採算も考えず
数百万もするレーザー、買っちゃったわけです。
(もちろん月々数万のリース契約ですけど。)
 そーいや、20年近く前、テレビで花粉症の究極の治療としてレーザー手術が紹介されてました。
当時、やっと保険適応されたか、されないか位だったかと思いますが、
紹介されてたのは耳鼻科医ではなく、東京の形成外科かなんかで、
驚いたのは、保険外で十数万の値段を提示してたこと。
あくどいなー。
しかも、耳鼻科医でないので多分充分奥まで焼いてないだろうし。
 まあ、当院はそんなわけで、もう延べ1000人以上の鼻は焼いたと思います。
(何とか、元は取りましたね。)
 正直、手間かかってメンドくさいのだが、スギ花粉症を少しでも楽にしてあげたいので
頑張って毎日毎日何人も焼いてます。
なるほど、7月の土用丑の日の頃のウナギ屋って、こんな感じなんだろうか?

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2009.01.25

2009年インフルエンザ闘病記(続き)

 さて、一夜明けて、ナンカ体が痛いなー、と熱を測ると38・2度。
 熱が出た、ダメだ、とういうことで、外来はお休み。
水曜日は午前中だけなので、診療制限をして副院長にお願い。
幸い、手術も入ってなかった。
 何とか朝飯食って、タミフル飲んでひたすら寝る。
ともかく、食って寝るしかないのよ、治療といえば。
モノがインフルエンザなら、注射や点滴があるじゃなし、
ただひたすら体が抗体を増産して、ウイルスを駆逐するのを待つばかり。
そして、タミフルがウイルスの増殖をストップしてくれれば、
あとはそのウイルスだけ処理すればお終い、なはずだ。
 ゆっくり本でも読むかと、思ったが、それどこじゃない。
体も頭も痛いし、苦しくて体の置き場もない感じ。
ただただ、布団をかぶってヒーヒーいってました。
 ところが、昼になっても、夕になっても熱が下がらず。
ついに38・9度まで。
夜は風呂に入る元気も出ず、そのまま寝たが1~2時間おきに目が覚める。
翌、木曜日も38・4度。
で、その日も休み。
 医者になって25年、病気で仕事を休んだことは多分10回もないはず。
しかも、2日以上休んだのは、医者になって2年目に水ぼうそうになった時以来では・・・。
水ぼうそうやインフルエンザは患者さんに感染っちゃうので
腰痛症の時みたいに、薬で抑えて外来ってわけにもいかないし。
 それにしても、この治らなさは、一体、どうなっちゃったのだ。
少なくとも、タミフルは効いてないようだ。
5年前のときは、診断ついてタミフル飲んだら翌朝はもう何ともなかった。
 そこで、ははあ、Aソ連型耐性株だな、これは、と気づいた。
 インフルエンザにはA型、B型があるのは皆さんご存知のとおり。
その中にも細かい分類があるが、A型には「香港型」と「ソ連型」という代表的な株があります。
そのうち、「ソ連型」の方に、今年タミフル耐性の株が多くを占めるという厚労省の報告がありました。
 リレンザにしときゃ良かった。
もう遅い。
タミフルにしろリレンザにしろ、ウイルスの増殖を抑える薬なので、初期に使わなければ意味がない。
 それにしても、私の抗体は、どーした。やけに仕事が遅いぞ。
ソ連だろうが、香港だろうが、北朝鮮だろうが私の体にはいっぱい抗体の備蓄があったはずだが・・・。
やっぱ、歳のせいか・・・。
 というわけで、たっぷり2日半も休んで、金曜日には熱も下がったので外来に出ましたが、
体はフラフラ。毎日食べるのはしっかり食べて、ひたすら寝てたのに体重はかえって減っていた。
もちろん、患者さんに万一感染ってしまうと申し訳ないので、
新型インフルエンザ用に当院に備えてあったN95マスクという、特殊なマスクを1日中かけてました。
 何とか、回復しましたが、大変な経験をしました。
それにしても、耐性ウイルス、困りましたね。
 それもこれも、きちんとタミフルを使ってこなかったことのツケでしょう。
横流ししたり、漠然とだらだら飲んだり。
中でも、家族にインフルエンザ感染者が出たら、予防で全員1日1カプセル飲みましょうなんて、
馬鹿なこと言う医者もいたらしい。
(予防投与は健常者には、しちゃだめですよ。)
そんなことするから耐性化が進んじゃったんでしょう。
タミフル、いい薬だったのに、残念です。
まあ、香港型や、B型には依然するどく効きますので、まだまだお世話になりますが。
 今後は自分の抗体を過信せず、B型にかかんないように、毎日、摂生に努めます。
普段の外来も、この時期くらいはマスクしとくかなー。

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2009.01.25

2009年インフルエンザ闘病記

 わ、私としたことが、とんだ不覚。
 火曜日の朝、あ、風邪引いたかも。
熱もくしゃみも咳もないが、何となく体の異変を感じました。
 思い当たる節はある。
日曜日の夜、酔っ払ってリビングで寝てしまい、ストーブも消え、部屋が寒くなって
ソファーの上で目覚めたのが3時前。
 大河ドラマとかで、お侍が酒盛りをする場面があると、
つい、自分も日本酒を出してきて冷でどんどん飲んじゃう、という悪いくせがあります。
ドラマで、ぐい飲みやお猪口じゃなくて、お皿みたいな杯で飲んでますよね。
あれが、カッコよくて似たような器を手に入れてからつい、やってしまいます。
あの日もそうだった・・・。
 失敗したなー、と思っても覆水盆に返らず。
昼休みは、銀行に用事があったがその後は午後の診察まで仮眠をとって回復を図ったわけです。
 しかし、夕方どんどん体調が悪くなり、
熱はなかったが「これは、ヤバイ。」と妻に検査を依頼。
結果は「インフルエンザA型」。
 何たることだ。
「インフルエンザ、流行ってますから、みんなうつらないように注意してくださいね。」
なんて、職員の前で言ってたのに・・・。
 インフルエンザになったのは5年ぶりくらい。
そもそも、私はめったにインフルエンザにならない。
 仕事柄、インフルエンザの患者さんに多く接するため免疫が相当ついて、
通常の接触ではまず感染しない。
5年前は、娘がインフルエンザになり、しかも土、日とずっと同じ部屋にいたため。
土曜日の時点で娘の検査結果が陰性だったので、「インフルエンザではない」と判断して接してたために、感染っちゃいました。
 それまでは、医者になってから予防接種などしなくても、
一回もインフルエンザにならなかったんですけどねー。
とりあえず、翌年から予防接種をするようになりました。
去年は、でもまた予防接種サボっちゃったんですが、感染らなかった。
今年は、注射したんですけどね。
 毎日、何人もインフルエンザの患者さんを診てると、
毎日インフルエンザウイルスは体に入ってきてます。
それを抗体がウイルスが増殖する前に処理してくれるので、発病には至らないわけです。
 ところが、うたた寝をして、その防御システムに緩みがでました。
インフルエンザウイルスがその隙を見逃さず、あっという間に私の体の中で増殖を開始したのです。
 しまったー、と思った時にはすでに遅い。
ウイルスの増殖のスピードは猛烈なので、抗体による処理はすぐには間に合いません。
 んで、火曜の夕方はタミフルもらって、診察は打ち切り、お風呂入ってメシ食って、即、寝ました。
まあ、抗体豊富な私の体、一晩寝れば何とかなるでしょ、とそのときは考えてたんですが・・・。
(続く)

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2009.01.19

ヒブ・ワクチンって何?

 今日かかったお子さんで、先日、小児科で予防接種をしました、という方がいました。
「何の予防接種でしたか。」
ときいたところ、「ヒブ(Hib)ワクチンです。」
との、ことでした。
 おー、ヒブ・ワクチンはじまったか。
 ヒブ(HIB)・ワクチンというのは
B型インフルエンザ菌(Haemophilus Influennzae TypeB)に対するワクチンのことです。
 インフルエンザ菌については、先日のブログでご説明しました。
2008年12月16日「インフルエンザではありません」参照。
 さて、ヒブ・ワクチンについて、またまた混乱と質問が来そうなので
説明しときますね。
 B型インフルエンザ菌とは小児の髄膜炎を起こす菌として大変重要。
欧米ではこのワクチンは多くは義務化され、公費で受けられるようになってるらしい。
日本では、昨年12月に発売されたばっかです。
まだ今のところ、個別、自費です。
日本は予防接種後進国なのです。
 もちろん、インフルエンザですので、インフルエンザ・ウイルスとは関係なく
よって、病気としてのインフルエンザにも関係ありません。
 と、ここまで来て、私のブログを読んでる人や、当院で中耳炎の治療をした子供のお母さんは
こう、思われるかもしれません。
「いつも、うちの子、中耳炎になるし、オグラ先生が原因はインフルエンザ菌だっていってた。
とすると、このワクチン打てば、中耳炎にならなくなるのかしら。」
 なるほど、デキるお母さんならばそう思うかも。
 しかし、残念ながら答えは「NO」です。
 実はインフルエンザ菌には大きく分けて2種類のグループがあります。
ひとつは細胞の周りに「夾膜(きょうまく)」を持つものです。
夾膜は、菌の周りを覆う物質でドイツ語では「Kapsel/カプセル」といいます。
この夾膜のタイプにいくつかあり、Bタイプの菌が髄膜炎や、急性喉頭蓋炎を起こすので問題になります。
これが「HIB」です。
 一方、夾膜を持たないタイプもあり、これが小児の鼻の中に常在し、
中耳炎や気管支炎の原因になります。
抗生物質が効くタイプと効かないタイプ(BLNARといいます)があり、
私がいつも「あー、このこの菌はインフルエンザ菌だね。」って言ってるのはこっちなわけです。
 だから「ヒブ・ワクチン」を打てば、髄膜炎は防げますが、
インフルエンザ菌による中耳炎には無効です。
同じインフルエンザ菌なんですが、別ものなんですね。
 メンドくさいですね。
去年の学会に行ったとき、中耳炎の講演者にこの事について会場で質問してる先生がいました。
 と、いうわけで、個人的にはこれによって抗生物質の濫用が減れば、
BLNARも減って、治りにくい中耳炎が減る、ってことになれば大歓迎なんですが。
 それにしても、この名前のわかりにくさはナントカならんか。
不勉強な臨床家や、マスコミの取り上げ方によっては、混乱しそうな気が・・・。
 うーん、聞かれて説明するのメンドくさいですね。
 まず、インフルエンザ・ウイルスと、インフルエンザ菌の違いについて説明し、
(インフルエンザ・ウイルスにもA型、B型があるので、なおややこしい。
A型にもソ連型、香港型があり、その他に鳥インフルエンザなんつーのもあるし)
 その上で、「夾膜のあるHibと、夾膜のないインフルエンザ菌(NTHi)の違いを説明し
そしてその中でも、抗生物質が効く奴と、効かないBLNARの説明をしなくては。
 そうそう、中耳炎起こす方をA型というのではありませんよ。
夾膜のあるタイプにA型、B型、C型・・・とあり、このうち病原性があるのがB型(Hib)。
子供の中耳炎を起こすのは「夾膜なし」で「NTHi」と呼ばれるタイプで、こん中にもいろんな型があるわけです。
 もうちょっと言うと、耐性菌にはBLPARって奴がいて、別のメカニズムでやっぱ抗生物質の効かない奴もいる。
実は、こっちの方がBLNARより先だったんですけどね。
その話もあるんですが、すると長いのでまた別の機会にしときます。
 ねー、やっぱ、混乱しそうでしょ。
 
 ちなみに「ヒブ・ワクチン」の「ヒブ」を「HIB」でなく「HIV」と、誤表記すると、
Human Immunodeficiency Virus」となり
これは、何と「エイズ・ウイルス」のことになっちゃうんですけど・・・。
ま、こっちと間違う奴は、いねーか。

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2009.01.10

インフルエンザの話

 先日のインフルエンザのブログに誤解を招くような記述があるとのご指摘がありました。
インフルエンザの時、内科では治療できないような印象を与える、とお叱りを頂きました。
そのようなことは筆者の本意ではなく、大変申し訳ない、ということで、
内容を改めてきちんとインフルエンザのお話をします。
 先日、来院した子供さん(0歳、10代ではない)がインフルエンザを疑ってある医療施設にかかった時
「ウチはタミフルを出さないから検査もしない」
といわれたそうです。
 これ、ヘンですよね。 インフルエンザは周りの人にうつる病気ですし、
経過を見るうえでもインフルエンザかどうかは重要なポイントです。
タミフルについては、いろいろな見解があるので(後で書きます)
出す、出さないは意見の分かれることですが、検査はするべきでしょう。
 さて、インフルエンザの診断ですが、これは鼻の1番奥の上咽頭という場所から
粘液を取って調べます。5~15分でその場で結果が出ます。
鼻の一番奥7~8センチも綿棒を入れるのは、確かに小さい子供では大変です。
まあ、耳鼻科なら簡単に確実にこの検査が出来るわけです。
その時、思ったのが、この小児科の先生はインフルエンザの検査をするのが負担なのかも、
ということです。
 熱が出たけどインフルエンザも心配なので小児科に行きました。という患者さんがいたので
インフルエンザならむしろ耳鼻科でいいんですよ、ということを言いたいわけです。
 さて、タミフルの話です。
この薬、いわゆる異常行動でマスコミでも大きく取り上げられました。
その後、因果関係が調べられましたが、現時点での結論は「不明」ということです。
 タミフルは幼弱マウスで、脳への移行が多いという実験から、1歳未満は投与しない、
ということになってます。血液脳関門といって、通常の薬剤は脳に移行しない仕組みがあるのですが
赤ちゃんはこのシステムが不完全と考えられるからです。
ちなみに「アルコール」はこれを容易に通過する「薬剤」なので酔っ払っちゃうわけです。
 すると、異常行動については、この辺との因果関係がありそうなのですが、
インフルエンザ自体の高熱や、もちろん脳症によってそのようなことがおこる場合があり
難しいところです。
厚生労働省は1年間にわたる調査の結果「因果関係は認められない」としながらも
「関連を完全に否定できない。」として、取り消す予定だった10代に対する使用不可を今シーズンも延長しました。
 当院の方針ですが、原則10代はリレンザで、それ以外はタミフルを出します。
リレンザはその薬効、薬理がタミフルに類似しているため、
異常行動が出ないのは、その使用症例数が圧倒的に少ないため、という考えもありますが、
今のところ使ってよし、なのでそのことも説明した上で処方しています。
もちろん0歳代はタミフルを使いませんが、リスクによっては月齢を考慮して出す場合もあります。
11ヶ月が全部ダメで、1歳0ヶ月が急に全部大丈夫、ってことはありませんから。
また10代でも、過去の使用経験があったりした場合、家族と相談の上処方することがあります。
アマンタジンは使いません。
 アマンタジン(シンメトレル)はもともとパーキンソン病の治療薬ですが
A型インフルエンザに限って効果が認められ、タミフルより先に認可されましたが。
当初より耐性誘導が早く、もともとパーキンソン病の薬ですので副作用の面でも問題が多く、
今日の治療薬としては適当でありません。
 タミフルは発売前、ほとんど耐性誘導がない、といわれてましたが、
どっこい、最近は着々と耐性化が進んでいます。
そりゃ、ウイルスですから。
デンマークなどではかなりのウイルスがタミフルが効かなくなってるとのことですし、
日本でも増えてます。タミフルはいい薬なので、大事に使わなければなりません。
 家族にインフルエンザが出たから、家族全員タミフルを飲んで予防しましょう、
なんてことは、絶対ダメです。肝心な時に効かなくなりますよ。
 もちろんこういった説明を聞いてもなお、タミフル飲みたくない、という人には出しません。
インフルエンザはタミフルを飲まなければ治らない病気ではありません。
ただタミフルによって5日間以上続く熱が1~2日で下がるので、
使えるものは使った方が楽ですし、合併症の危険も減らせます。
 タミフル、リレンザは実はインフルエンザウイルスを殺す薬ではありません。
ウイルスの増殖を抑える薬なので、発症後48時間以内が使い時です。
だから、インフルエンザの検査の結果は、翌日電話で、っていうのはトンデモない話です。
飲み始めは早ければ早いほどいい。
 もちろん、当院の方針もあくまで「現時点で」推奨される治療法であり、
今後、新しい事実や、エビデンスによって変化する可能性は充分にあります。
医学会において、昨日の常識は、今日の禁忌、なんてことはしばしばありますから。
 そういう意味では、かつては熱が高ければ解熱剤、というのは「常識」でしたが、
インフルエンザのときは「禁忌」であることがわかってきました。
インフルエンザのときに解熱鎮痛剤を使うと、インフルエンザ脳症発症のリスクが高くなります。
これは、一応「ボルタレン」という薬について「因果関係アリ」と出たようです。
その他の解熱剤に対しては不明ながらも、使わないのが原則。
ロキソニンも類似薬剤なので、やめておきましょう。
唯一アセトアミノフェン(カロナール等)は大丈夫といわれてます。
 さて、これからがインフルエンザのシーズン。
予防接種をしていても、「濃い」接触をすればほとんどの場合感染します。
予防接種によって得られた、抗体のウイルス処理能力が、
ウイルスの増殖力に追いつかないからです。
 マスク自体はウイルスは素通しですが、飛沫を浴びることを防いだり、
鼻やのどの粘膜を、保温、保湿するという意味では大変効果があります。
そしてうがいより、大事なのは手洗い。
睡眠を十分にとって、体力の低下を防ぐ。
 そして、インフルエンザになったら、まず人にうつさないように。
ゆっくり休みましょう。
ウイルスをやっつけるのはタミフルでもリレンザでもなく、
あなた自身の体が作る「抗体」なのですから。
 最後に、貴重なご意見をお寄せくださった方、ありがとうございました。
また、よろしく、お願いします。

 

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2008.12.27

子供が熱を出した時

 朝、外来に行くと受付のノムちゃんがへらへら笑ってます。
「おはよう、どしたの?」
「先生、インターネットの受付、100人越えてます。」
「げー、そりゃ笑うしかないわ。」
 ご存知のように当院はインターネットから受付が出来ます。
待ち人数を見ながら受診していただく訳ですが、100人待ちかー。
70人、80人待ちとかいうと、泣きそうになりますが、100人越えるともう笑うしかないわな。
しかし、診療開始時間と同時に受付しても、100何番てのはただ事じゃない。
 さて、
「熱があって、小児科で中耳炎っていわれて、治療してたんですけど・・・。」
なんていって初診でかかる人は、結構多い。
「あっ、そーですか。(・・・ナンカ、やな予感。)」
「うーん、なんともないですね。」
「えー中耳炎で、鼓膜がはれてるからって、抗生物質を飲んで点耳もしてたんですけど。
で、治ってないから耳鼻科行けって、さっき言われました。」
 うーむ・・・・。
 以前私が勤務してた病院は、耳鼻科と小児科nの外来は廊下をはさんで向かい合わせでした。
外来の診察をしてると、時々、突然小児科外来の看護婦さんが飛び込んできます。
「ちょっと、先生お願い。」
彼女は患者さんの子供を抱えてます。
「おー、ちっと待っててね。」
診ていた患者さんの診察が終わると、看護婦さんはその子を抱っこして
診察椅子に座ります。
「何歳?熱はいつから?」
「1歳半、4日前から39度下がんなくて○×小児科から紹介です。」
「ふーん、今日の外来は?」
「S先生です。」
「どれどれ、うーん、お、当たり、S先生も確率上がってきたか。」
「はーい、じゃあ、耳鼻科の受付してきまーす。」
 子供の熱発は、中耳炎が原因であることが多い。
一般的に言って、38.5度の熱が3日続いた場合、
1歳以下なら70%、4歳以下でも40%が中耳炎が原因といわれてます。
 私がいたそこの病院では、小児科医が中耳炎を疑うと、
看護婦さんが、子供だけ抱えて、廊下を挟んだ耳鼻科外来に飛んできます。
お母さんも小児科外来に置いたままです。
そこで、私が診て中耳炎があれば、耳鼻科で診るので、改めて耳鼻科の受付をするわけです。
なければ、小児科に戻します。
総合病院は、診療科ごとに初診料がかかってしまいますから、
中耳炎がなければ、耳鼻科はタダなので患者さんは助かります。
 小児科の先生と相談して、そういうシステムにしました。
今、思ってもこのシステムは良かったと思います。
 面白いのは、中耳炎の小児科医の的中率です。
その病院は、小児科の評判が高く、先生が5~6人もいましたが、
中耳炎に関しては、平均5~6割、若い先生は3割位の的中率です。
ベテランの先生で、7割くらい当ててくる先生がいましたが、まあ上出来でしょう。
 「おー、今日はあの先生か、多分はずれだな」、とか、「お、この先生腕を上げたな」、とか。
また、小児科医にとっても、すぐ答えが出るので、診断力アップになります。
 まあ、それくらい、小さい子の耳を診るのは難しい。
耳鼻科医でも、5年目以下だと、きちんと診断できないことがあります。
 当時、その病院のベテランの小児科の先生が診て、中耳炎はない、といったのだが
何回も、我が子の中耳炎を経験しているお母さんが、
どうも、怪しいので、と耳鼻科を受診したら、案の定中耳炎だった、ということもありました。
 母親の印象の方が、小児科医の診断を上回ることは珍らしくありません。
 そんなわけで、小児科の先生が中耳炎がわからないのはしょうがない、
でもなー点耳薬はないだろ。
そもそも、鼓膜に穴が開いてなければ、点耳薬は意味がない。
外耳道の菌を奥に流し込んだり、
耳だれが出たときわかんないから使わない方がいいことのほうが多いです。
意味のない、抗生物質飲ませるのも、問題ですな。
耐性菌が増えて、肝心な時に薬が効かなくなる怖れもある。
 そういえば、この間、中三川先生からの中耳炎はバッチリあたりでした。
(先の先生、こっちは最近10戦くらい連敗中です。)
ウチの外来のスタッフも、すごいですねー、といった雰囲気でしたが、
当のお母さんは、中耳炎だからすぐ耳鼻科に行けって言われて
それが、中耳炎だというだけで、何がすごいの?という顔でした。
 実は、お母さん、それがすごいことなんですよー。

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2008.12.21

子供の鼓膜チューブ留置術

 この1週間は、やたら子供の鼓膜切開とかチューブ留置手術が多かった。
 やはり、年内にナントカしたいという、お母さんとお医者さんの思惑が作用してんだろうなー。
特に、幼稚園児のチューブ留置が3件もありました。
 そういえば、トモキ君のお母さん、コメントありがとうございました。
勝手に書いちゃってスイマセンでした。
(バックナンバー『師走でおわす』参照)
 大学病院には、子供の中耳炎なんかほとんど来ませんから、
大きな病院の先生は、子供の中耳炎の実態がわかりません。
 私が、研修医で大学にいたとき、
以前全身麻酔で入れた子供のチューブが外来で抜けないので、
全身麻酔でとることになりました。
いくらなんでも、そりゃねーだろ、と思ったけど、
誰もあばれる子供のチューブを抜くことが出来なかったのです。
大学病院のレベルなんて、子供の中耳炎に対してはそんなもんです。
 私もその頃は、まだ何も出来ない研修医でした。
 やがて、何年もトレーニングをし、様々な耳鼻咽喉科の手術や処置の技術を身につけました。
大きな病院で、医長になり、たくさんの手術を術者としてやるようになりました。
チューブを入れるのも、かなり上手くなったと思っていましたが、
子供の手術はすべて全身麻酔でした。
 そんなある時、ある子供の手術をしました。
両方の耳にチューブを入れ、扁桃腺とアデノイドを切除する手術です。
ごくありふれた手術ですが、その時チューブを入れようと鼓膜切開してビックリしました。
 鼓膜はペナペナで中耳の向こう側に張り付いていて切開するのも大変です。
しかも、切開しても中耳にスペースがないので、チューブが入りません。
そう、まさにトモキ君と同じような鼓膜だったのです。
 私はそれまで、そんな鼓膜をみたことがありませんでした。
しかも、外来の診察では、それがわからなかったのです。
患者さんは、別の医療機関から手術目的で紹介されてきた子だったので、
ろくに、観察もせず、手術予定を組んでしまったのです。
 まことにお恥ずかしい話ですが、私はそのときの手術記録に書いた文章を覚えています。
「チューブが入れられるような鼓膜ではない。」
 今の私だったら、「全麻までかけて、何いってんだこのヘボ医者が。」と罵倒するとこです。
 あの時私にもっと技術があれば、と悔やまれます。
 その後、開業してまだ間もない頃、ある子供の診察をしました。
名古屋のほうの耳鼻科で中耳炎の治療をしていたが、引っ越してきたのでこちらで診てほしい、
ということでした。
両方の耳にチューブが入っています。
「どちらの病院で手術したのですか?」
「その先生のとこです。」
「外来で?」
「はい外来で、鼓膜麻酔で。」
 おー、こんな子供にも局所麻酔でチューブいれられるんだー、すげー。
正直、ビックリしましたし、また、自分でも考えていたことなので
何とかこの技術を身につけたいと思いました。
 そして、いろいろ、工夫、努力し、経験をつんで、 今ではすべての年齢の子供に
局所麻酔でチューブを入れられるようになりました。
 この技術のいいとこは、何より、外来で手術出来るので、
コストやリスク、時間、手間の面ではるかに有利です。
入院、全身麻酔となると、術前に採血、胸のレントゲン、心電図、術後は点滴です。
特に全身麻酔のリスクの高い0歳児などは助かります。
 もうひとつ、入れたチューブの管理もできます。
大きな病院で全身麻酔でチューブを入れても、
チューブがつまったり耳垢が固まってしまうと、処置が出来ません。
外来で、チューブ管理が出来れば、処置だけでチューブの状態を戻すことが出来ます。
 特に近年、滲出性中耳炎だけでなく、乳幼児の難治性、反復性の中耳炎に
チューブを入れると、ウソみたいに中耳炎を起こさなくなります。
 まあ、どんな子にも入れられる、といっても難しい子は難しいので
そういう手術の前は、かなりのプレッシャーです。
トモキ君のときは前の晩、夢見ちゃいました。
 あー、この子、やっぱチューブだなー、でも、あばれるし、大変そうだなー、
と思っていた患者さんの手術が終わると
「この子は、もうこれで大丈夫。」とほっとするのだが、
また少しすると、新手のツワモノが現れるんだよなー。

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2008.12.16

インフルエンザではありません

 さて、寒くなり、中耳炎の患者さんが増えてきました。
 「あー、T君の中耳炎の培養の結果来てますよ。えーと・・。」
 む・・・、一瞬つまる私。
 「あのね、T君の中耳炎、原因菌はインフルエンザ菌でした。」
 「えー、ウチの子、インフルエンザなんですかー。」
 と、驚くお母さん。
 ほら、来た。
だからやなんだよ、この菌、ナントカしてくれよ。
 あわてて説明します。
「えーとね、T君はインフルエンザじゃないです。
予防接種とかしてるあれね、あれはインフルエンザ・ウイルスで、これはインフルエンザ菌なんです。全く別物です。」
 そう、中耳炎の起炎菌として、常にランキング・ナンバー2の座を守ってるインフルエンザ菌、
名前が同じなので、いつもインフルエンザ・ウイルスと間違われるので
説明が、厄介です。
 何故、こんなことになったかというと、
もともと「インフルエンザ」という病気は恐ろしい感染症として古くから知られていました。
しかし、その原因は不明でした。
19世紀になり、細菌学が発達した時に、
いろいろな感染症は細菌によってもたらされるということがわかってきました。
 そこで「インフルエンザ」の病原体探しが始まったわけです。
そして、インフルエンザの患者さんから大量に検出されたグラム陰性桿菌が
インフルエンザの病原体だろうとして「インフルエンザ菌」と名づけられてしまったのです。
 インフルエンザの病原体はインフルエンザ・ウイルスですが、
当時は細菌よりずっと小さい「ウイルス」という存在が知られてなかったのでした。
 このことを説明するのに大変な労力を要する。
おまけに、最近は「BLNAR」という、抗生剤に耐性を持ったインフルエンザ菌も増えており、
これの説明にもかなりの時間を食う。
 ちなみに、中耳炎の起炎菌の1位は「肺炎球菌」ですが、これも、
「えー、ウチの子、肺炎なんですか?」
というお母さんに、肺炎も起こしますけど、中耳炎も起こすんですよ、と説明しなきゃなんないし、
この肺炎球菌にも「PRSP」という耐性菌が増えている。
 しかも、この1位、2位の菌で子供の中耳炎の原因菌の8割以上を占めるのだ。
 毎日毎日、繰り返し、たくさんの人に説明してる。
あー、めんどくせえ。
 昔(今もいるかも知れんが)J2のどっかのチームに
「小野シンギ」という選手がいたが、この人も
「いや、小野シンジじゃなくて小野シンギです。」などと、苦労しただろーなー。
 まったく、このインフルエンザ菌、ナンカ別の名前に代えてくれませんかー。
 そーいえば、中耳炎の起炎菌ランキング3位の「モラクセラ・カタラーリス」は
10年位前までは「ブランハメラ・カタラーリス」と呼ばれてたのだが、なぜか学名が変わったのだ。
こっちは、別に変えなくても困ってなかったんだが・・・。
 ちなみに、インフルエンザそのものの語源はラテン語の「影響」という意味の単語
英語では「インフルエンス」ですね、そっから来てます。
これは、この病気の原因を昔の人が、天体や寒気の「影響」と考えたことに基づくといわれてます。
ご参考までに。

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