ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

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2009.02.24

インフルエンザの「グリグリ」

 一旦、下火になったインフルエンザがまた流行ってきました。
今は、ほとんどがB型ですね。
 B型はA型に比べて高熱が出ない場合があるので、
そうと知らずに撒き散らしちゃうこともあるようです。
 先日来た、子供の患者さん。
「午後から熱が出てきました。」
「あー、周りにインフルエンザいます?」
「先週金曜日に、上の子が高熱を出して小児科かかったんですが、
翌日来て下さいといわれ、土曜日にインフルエンザの検査したけど陰性でした。
もう4日目なんですけど、まだ上の子は熱でてるんですよ。」
「ふーん、同じヤツですかねー。調べてみようか。」
ということで「グリグリ」。
「あー、薄いですがB型出てますね。インフルエンザですね。」
「えーーーーっ。」
と、驚くお母さん。
「6時間待たなくても、出るときゃ出るんですよ。
すると、多分上の子もインフルエンザだったみたいですね。」
「ええー、でも、陰性でしたよ。」
「どうやって検査してました?」
「鼻に、ちょこっと、あー、そういえばさっき先生がやったのとずいぶん違うかも。」
 そうなんです。
インフルエンザの検査、ちょこっと鼻に綿棒の先を入れたくらいでは出ないこともある。
鼻水が多いと、綿棒が鼻水だけ吸ってしまうから、出来れば鼻をよく吸引してから
(まあ、小児科では吸引できないからよく鼻をかませてから)
綿棒を鼻の突き当りまで入れてグリグリしないと正確に出ません。
 私は綿棒の端っこを折り曲げて「へ」の字の形にして、鼻の中を見ながら奥まで入れます。
途中で折り曲げると手が邪魔にならず、綿棒の先が見えるからです。
そして両鼻に一回づつ、鼻の奥の上咽頭という場所に突き当たるのを確認して「グリグリ」。
この「両鼻の奥のグリグリ」が、大事なのだ。
 実は、今シーズンあるメーカーが「新製品です」といって持ってきた綿棒があった。
従来品よりやわらかくなってて、鼻に入れやすい、という触れ込みでした。
ところが、試したところこれが全然ダメ。
上咽頭まで入れると、やわらかいので、そのまま曲がってどんどんのどの方へ入っちゃう。
突き当たらないので「グリグリ」が出来ないのです。
なので、ボツ!
臨床の場を知らないメーカーの失敗作でした。
 しかし、実際にあの手の綿棒使ってる先生、いるんだろうか?
いるとしたら、多分そこんちは、インフルエンザの診断率、低いかも。

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2009.02.21

花粉症の市販薬(グッズ編)

 され、いよいよグッズ編。
 様々なものがあり、私の知らないものも多いので、
何か質問があったらあとでコメント欄ででも投稿してください。
 まず、定番、「マスク」です。
 いうまでもなく絶対有効だし、これなしで花粉症の方がシーズンを過ごせるはずがありません。
薬のコマーシャルかなんかで、マスクしてメガネして鼻グスグスやってた人が、
薬を飲んだとたんに、すっきりしてマスクもメガネも吹っ飛び
ニコニコ微笑みながら空に舞い上がっちゃうようなイメージのものがありますが、トンデモナイ。
 どんな薬を飲もうと、どんな治療をしようとマスクをはずしてはいけません。
 マスクの種類としてはガーゼマスクより、不織布で出来た花粉症用マスクの方が優れています。
また、鼻のところにワイヤーが入った形でもいいですが、立体型のスヌーピーみたいなマスクの方が
より良いようです。
 ポイントは鼻のところ。ここがしっかりしてないと、ダメです。
極端な話、口は出てても鼻がかくれてれば良い。というわけです。
 ガーゼマスクでもしないよりは全然いいですが、
一旦はずしたあと間違って裏返しにかけるとやばいですよ。
もちろん毎日洗濯ですが、外に干したら絶対ダメです。
やはり使い捨てタイプがお勧めです。
 次、「メガネ」。
これは、ゴーグルタイプのものが出てますが、
普通のメガネでもひさしのある帽子と組み合わせるとかなりいいです。
目は、鼻と違って空気を吸い込みませんから、落下してくるのを防げばいいわけです。
コンタクトの人は、この時期メガネに変えてくださいね。
 「静電気防止スプレー」などで、花粉が衣服につくのを防ぐのは有効ですが、
フリースやニットでなく、ナイロンなどのウインドブレーカーを羽織るようにすれば、
それで十分です。マフラーも危ないです。
 「花粉除去スプレー」はおそらくアルコールで花粉を脱水・分解するものですね。
洗濯物についた花粉がどれくらい処理されるかは手元にデータがありません。
花粉はかなり丈夫なので、一旦乾いた洗濯物がまた湿るくらいスプレーしないと
完全な処理は難かしいかもしれませんね。
その前に「天気がいい日は外に洗濯物を干さない」、が基本です。
 「空気清浄機」は室内の花粉除去に少しは効果があると思いますが、
問題は
「空気中に浮遊している花粉しか除去できない」
という点です。
花粉は室内では落下して床や家具の上に落ちたり、静電気でカーテンなどに付着します。
それが、何かの拍子に舞い上がって(何ヶ月も)症状を起こしますから、
やはり一旦室内に入り込んだ花粉を完全に処理するのは、
タバコの煙のようなわけにはいかないです。
 スポーツ選手が良く使う「鼻腔拡張テープ」、鼻づまりには効果あるでしょう。
ただ、外出の時はより奥まで花粉を入れてしまうので室内や寝る時に使います。
 「鼻腔クリーム」は、鼻の回りに塗って、そこに花粉をくっつけて鼻の中に入れない、
というものらしいですが、鼻で息する以上、「マスクなしで」とはいかないでしょうなー。
鼻の中に塗っては、かえて花粉が長く鼻の中にとどまるので逆効果ですよ。
 えー、質問のあった「鼻うがい」ですが、
鼻の粘膜は敏感なので、浸透圧の異なった液体で洗うと繊毛が痛みます。
すると花粉の鼻の中の処理能力が低下するので、花粉症が悪化します。
また、中耳炎などを起こす恐れもあるので、あまりお勧めできません。
「鼻洗浄機」も同じですね。
 「布団乾燥機」「衣類乾燥機」、これらはイチオシです。
ともかく花粉シーズン、布団や洗濯物を外に干すのは厳禁です。
「空気清浄機」を買うんだったら断然コッチを先に買うべきです。
 えー、まだなんかありましたっけ?
 NASAの開発した光ファイバーがなんたら発光ダイオードを鼻に入れて、なんてのもあったけど
かなりマユツバで手を出すべきではないと思います。
よく読むとNASAは全然関係なかったりするし、
アメリカなんとかかんとか申請中ってのも怪しい。
 まあ、大事なのは「花粉対策に王道なし」。
花粉症をよく知り、なめずにきちんと取り組んでください。
くれぐれも、商品のイメージだけで、ヘンなものをつかまされないように。

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2009.02.20

花粉症の市販薬(健康食品編)

 さて、今回はその他の民間療法、花粉対策グッズについてのお話です。
 どんなものがあるかなー、と少し検索したら、出るわ出るわで、とてもすべては網羅できません。
主なものについてお話します。
 まずは、食品、サプリメント系。
 花粉症に効く、と最近ブームなモノに「ポリフェノール」があります。
ポリフェノールとは単一の物質ではなく、いろんな物質の総称です。
例えば「糖質」とかみたいな。そんなかに「ブドウ糖」とか「麦芽糖」とかあるわけですね。
 まあ、カテキンやフラボノイドといった物質が「抗酸化作用」があるため、
心臓病の予防にいいとか言われてるわけですが
「抗アレルギー作用」もあり、花粉症にも効く、
ということで、特に「甜茶」はブームです。
 で、どうかというところですが
「有効であるが、効果が出るかはあまり期待できない。」
と思います。
 例えば、焚き火にバケツの水をかければ消えます。
しかし、ビル火災でガンガン燃えてる時に、バケツ1杯の水をかけても何もおきないでしょう。
 効果というのはそういうもので、有効成分があるから効く、というものでは必ずしもありません。
一説にはワインのポリフェノールが花粉症に効果を出すのには
毎日ワインを40本は飲まなければならない、という試算もあります。
 まあ、そういった成分を含んだものを積極的に摂るようにする、という姿勢はいいですが、
「甜茶で花粉症を乗りきる。」というのはどう考えても無謀です。
 さて、そういった市販の食品などの中で、
学会できちんとデータをとって有効性が確認されてるものが一つだけあります。
 それは「ヨーグルト」です。
 リンパ球にはTh1とTh2があり、アレルギーのバランスをとっています。
Th1は主に感染に対して防御機構を強化させ、
Th2が優位な状態ではアレルギーが起こりやすいといわれてます。
 近年、感染症の減少と、抗生物質の幼少時からの多用による腸内細菌叢の破壊は
特に子供にTh2優位な状態を作り、アレルギー疾患の発症を増加させてるといわれてます。
この辺はいわゆる「衛生仮説」という理論の裏づけと考えられています。
簡単に言うと
「クリーンすぎる環境で育つとアレルギーの発症が多い」
という説です。
これ説明すると長くなるので、また別の機会に。
 ともかくヨーグルトにより腸内細菌の状態を改善することは、
「Th/Th2バランスを改善しアレルギーの発症を抑える」ことがわかっています。
 だから、別に「カスピ海ヨーグルト」でなくてもいいんです。
グリコでも明治でも、ヤクルトもOKです。
別に1日に40本飲まなくてもいいみたいです。
 ただ、やはり花粉症のときだけ飲むのではダメで、毎日こつこつ飲む。
さすがにヨーグルト飲んでれば花粉症は平気、ってほどは無理でしょうが、
アレルギー体質がひどく、ダニ、ホコリのアレルギーもあったり
アトピーもありなんて方はある程度の体質改善が期待できます。
 また、肉中心の食生活を魚中心に変えるのも、Th1/Th2バランスの改善に役立つといいます。
 以前、ある患者さんが花粉エキス入りで花粉症に効く、という漢方薬だか健康食品を
通販かなんかで購入して、飲んでました、とやってきました。
年配の女の方でしたが、あー、だまされちゃったのね。
値段を訊くと、これが結構な値段。
詳しくは覚えてないが、1万円以上したんじゃないか。
一説にはこういうものは高いものほどだまされやすいとか。
 花粉を飲んでも、花粉症は治りません。
 やっぱり、怪しげなものは一度耳鼻科で相談してから、がいいですよ。
甜茶入りミント飴くらいならいいですけどね。
 次回「グッズ編」です。

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2009.02.18

花粉症の市販薬(点眼薬編)

さて、予告どおり「点眼薬編」です。
 お断りしておきますが、私は耳鼻科医なので、「目薬」は門外漢です。
はっきり言って、よく分かりませんので、以下はある眼科の先生に聞いた話です。
いや、そこらへんの先生ではなく、有名な大学の第一線の教授で
ちゃーんと大阪まで聞きにいったアレルギーの学会で聞いたものです。
 えー、いきなりですが
「市販の点眼薬で、お勧めできるものは殆どない。」!
 いや、だから、これは私が言ったわけではないですから・・・・。
市販の点眼薬は、やはり血管収縮剤が入ってるので、連用によって
効果の減弱や、充血の悪化があるようですね。
まあ、血管は鼻ほど豊富ではないので、副作用も点鼻薬ほどではないようですが。
また、多くの物質が混合されてるのでかえって良くない、とのことでした。
 ともかく、涙液に近いあまり薬の入ってない目薬を、洗うように大量にさす、のがいいそうです。
もちろん、防腐剤なんかの入ってない、使い捨てタイプがいいみたいです。
ともかく人工涙液でジャブジャブ何回も洗う。
 しかし、「アイボン」とかいう、カップを眼に当ててじゃぶじゃぶ洗うやつ、あれは良くない。
目の周りの皮膚についた花粉を目の中に洗い落としちゃうからだそうです。
 おー、なるほど。
 前回お話した「インタール」、目薬としては効きます、とお話しましたが、
市販の点眼にも配合されてるものがあります。
ただし、量的に病院で出る「ナマの」インタールよりは少ないみたいので、効果は弱そうです。
 病院で処方される目薬は現在「第2世代の抗ヒスタミン薬」が、主流です。
これは、インタールのような「アレルギー反応抑制」の効果だけでなく、
「抗ヒスタミン剤」の持つ「かゆみを抑える効果」を併せ持つので、
より、効果が良くなってます。
 また、重症例には「ステロイド剤」の目薬も処方されます。
実は「第2世代の抗ヒスタミン薬」の目薬より値段が安くて、強力なのですが、
感染症の悪化や、眼圧の上昇などの副作用もありますので、
使用には注意が必要です。
 まずは「第2世代の抗ヒスタミン剤」の点眼をメインに、といえるでしょう。
 ということで、たまに使うくらいなら市販の点眼でもOKだが、
重症で、毎日何回も使う場合には病院の点眼の方がいい、というとこでしょうか。
 さて、次回は「その他の民間療法」についてお話します。

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2009.02.17

花粉症の市販薬(点鼻薬編)

 さて、今回は「点鼻薬編」です。
 市販の内服では、鼻づまりにはあまり効果がない、という話をしました。
 そこで「点鼻薬」の登場なんですが、まず結論を。
「市販の点鼻薬は使うべきではない。」
 おおー、我ながら何て大胆な結論なんだ。
さて、ご説明しましょう。
 市販の点鼻薬にはすべて成分として「血管収縮剤」が入っています。
成分名だと「塩酸ナファゾリン」とか「塩酸テトラヒドロゾリン」とかいう奴です。
病院だと「プリビナ」とか「ナシビン」とかいう名前で処方されることがあります。
 鼻はもともと血管が豊富でしかも粘膜下の浅いところを通っています。
だから、血管収縮剤を点鼻すると、血管の流れがせき止められて
すぐに鼻が通ってきます。
 しかし、血管は流れてなんぼ。
4~5時間たつと血管が再疎通してまた血液がどっと流れ込みます。
そうすると一時的に鼻づまりが悪化し、また元に戻ります。
 ところが、これを繰り返すと血管の収縮が悪くなり、血管の拡張が逆に遷延します。
つまり、使えば使うほど鼻づまりが悪化する、という状態に陥るのです。
 だから、市販の点鼻薬の注意書きには
「1週間以上連続して使用しないでください。」
と書いてあるのだが、読む奴ぁいねえ。
 そして「点鼻薬地獄」にはまり、5月になっても6月になっても鼻づまりが治らない。
という「シャブ中」みたいな経過をたどるのだ。
 ともかく、1週間で治るはずのない花粉症に血管収縮剤を使うべきではない。
こういった副作用に無知な内科医、たまには耳鼻科医までが
この手の薬を処方するのは全くもって情けないが、
少なくとも製薬会社の薬剤師、薬のデザイナーはこの副作用を熟知してるはずなので、
こういった薬を出すについては、何となく製薬会社の悪意が見え隠れする。
まあ、市販薬、即効性がないと使ってもらえないので、
こういった成分を入れざるを得ない、と言えないこともないのだが。
 さて、数年前から抗アレルギー成分、前回説明した「アレルギー反応を抑制する薬剤」が
市販薬にも認可されました。
成分名では「クロモグリク酸ナトリウム」病院では「インタール」という名前で処方される薬です。
 数種類の点鼻薬に配合されてます。
「抗アレルギー剤配合」などとうたってあります。
 しかし、問題点が二つ。
 一つは、インタール点鼻、たいして効かないです。
(おお、言っちゃっていいの?)
 インタールは初めての抗アレルギー作用を持った薬で、私が学生時代に発売されました。
講義で先生が、「全く新しい作用のアレルギーの薬は出た。」と興奮気味に話してたのを覚えてます。
(おかげでソディウム・クロモグリケイトなんて教科書にもまだ載ってない薬の一般名を
暗記しなければなりませんでした。)
 この薬、まずは「気管支吸入薬」続いて「点眼薬」「点鼻薬」が発売されました。
(内服薬は実用化に至りませんでした。)
この薬、吸入薬はかなり効きます。
点眼も、結構効きます。
しかし、点鼻は、殆ど効きません。
 この辺が、薬の難しいとこ。
理論と実際は必ずしも一致しないのです。
 かくて、「インタール」は吸入ではいまだ大事な薬、点眼ではまだ生き残ってる。
内科の先生は、吸入薬のインタールが効くので、点鼻も効くかと思って出すことはあるでしょう。
しかし、耳鼻科医で点鼻でインタールをメインに使う先生がいたら、
よっぽど薬に無知か製薬会社にリベートでももらってるかどっちかだ。
(副作用が極めて少ないので、子供や、重度糖尿病の人に使うことが無いとはいえませんが、
メインの点鼻薬ってことはありえませんぜ。)
 病院で使う薬で点鼻薬といえば90%以上、ステロイド剤です。
点鼻ステロイドは、効果も確実で、全身作用も少ないので花粉症の点鼻薬としては
唯一無二といってよい薬です。
 もう一つの問題点は、インタール配合の点鼻薬にも市販薬の場合は
「血管収縮剤」が配合されてるということ。
先に述べたように血管収縮剤は1週間以上連続して使ってはいけない薬、
一方、抗アレルギー剤は1~2週間後から効果が出てくる薬、です。
これ、矛盾してますね。
 さて、まとめます。
スギ花粉のシーズン中、市販の点鼻薬を何回か使ってそれで何とかなっちゃう人はそれでOK。
しかし、毎日使い続けて2本目を買うようになってしまった人、
鼻づまりがだんだん取れなくなっちゃう人
などは、耳鼻咽喉科を受診して相談した方がいいでしょうね。
鼻づまりの原因が、今使ってる点鼻薬のせい、ってことは結構多いですよ。
 次回は点眼薬編をお送りします。

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2009.02.16

花粉症の市販薬(内服薬編)

 
 気がついたら、ブログを初めてはや1年。
昨年の2月15日からなので2年目に入りました。
 300本以上、よく書きました。
読者も次第に増えて、いろいろご意見もいただき、有難いかぎりです。
 さて今日からちょっと花粉症の市販薬、民間療法の話をしましょう。
 第1回は、飲み薬編。
 花粉症の内服薬、病院の薬と市販薬では何がどう違うんでしょう。
 まず第1は眠気の問題です。
市販薬は、その主成分は「第1世代の抗ヒスタミン薬」です。
一般名で言うと「マレイン酸クロルフェニラミン」
病院では「ポララミン」という名で処方されることがあります。
 かなり古くからある薬で、それなりに鼻水を止める力もあるのですが、
相当強力に「眠気」を催します。
その眠気は
「あたかも眠気の底なし沼に、無理やり引きずり込まれるような眠気」で
あまり心地よいものではありません。
 そのため、市販薬にはほぼすべてに「カフェイン」が含まれてます。
いわば「徹夜で眠いので、コーヒーをがぶがぶ飲んで眠気をさます」という感じでしょうか。
 一方、病院では「第2世代の抗ヒスタミン薬」が中心です。
眠気は出るものもありますが、一般に軽く、中には全く眠気が出ないという薬もあります。
この薬は眠くならないので、航空機のパイロットが飲んでもいいそうです。
 ただし、薬の効果と眠気の間にはある程度比例関係がありますから、
眠くないけど、効かないでは困りますし、効くけど、眠くて飲み続けられないのも不都合です。
自分の体質と、症状の強さにあった薬を選ぶことが大事です。
 二つ目は、効果です。
「第1世代の抗ヒスタミン剤」は鼻水を止める効果はありますが、
いわゆる「アレルギー反応」を抑制する効果はありません。
 スギ花粉などのアレルギーの原因物質の侵入に対し、
リンパ球や白血球は様々な化学物質を放出して情報を伝達します。
それによって、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー反応が起こるのです。
 第2世代の抗ヒスタミン薬にはこの「化学物質の放出」を抑制する効果があります。
ただ、この効果は薬を飲み始めて1~2週間後にピークになるので、
花粉症の症状が出る前から飲むとよいといわれています。
すなわち、続けて飲むことによって、薬の効果が良くなる、というこの作用は市販薬にはありません。
むしろ市販薬では連用すると、効果が減弱する、ということもあります。
 また、この作用によって、市販薬では効果のない「鼻づまり」にもある程度の効果が期待できます。
 ただ、鼻づまりはヒスタミンとは異なる、
ロイコトリエンやトロンボキサンという物質によって引き起こされることが多いですから
「抗ロイコトリエン薬」や「抗トロンボキサン薬」を併用するとよりよい効果が得られます。
これらの薬剤は市販薬には全くありません。
 以上をまとめると、
花粉症のシーズン何回か市販薬を飲めば大丈夫、という方はそれでOKです。
しかし、眠気が困る、とか、
シーズン後半に症状が抑えられなくなる、とか、
鼻づまりがひどくて夜、寝苦しい、といった方は、
病院に受診して適切なお薬を処方してもらうといいと思います。
 さて次回は「点鼻薬編」ですよ。

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2009.02.15

東風(こち)吹けど、匂いおこすなスギの花

 昨日、(14日)花粉飛びましたね。きっと。
 朝、イヌの散歩行くと、雨上がりで生暖かい。
んー、花粉飛ぶな。
私自身は花粉症はないが、長年の勘でわかっちゃうのだ。
 耳鼻科医になってから、やたら天気、気象に詳しくなります。
花粉症にしろ、インフルエンザにしろ、プール熱、ヘルパンギーナ、手足口病etc.
耳鼻科の病気の診断には季節的な背景が大事。
(もっとも、最近は真冬に手足口病をみるけど。)
 天気予報は、毎日必ず見る。
特に、天気図が良くわかるようになる。
今日は晴れです、とかではなく、低気圧がどうの、等圧線がどうの、
で天気がイメージとしてつかめるようになる。
 週間天気も大事。
特に、これから花粉症の季節は、1週間分の天気くらいは暗記してないとダメ。
毎日ドキドキしながら天気予報見てますね。
あー、こりゃ週末は大変だぞー、とか。
 スギ花粉は前年の夏の気温、日照で決まりますので、夏も天気が気になります。
個人的には、夏は暑いほうが好きだったのですが、スギ花粉が夏の気温に影響すると知ってからは、
暑い夏は、心情的に複雑です。
真夏から、来年の春の花粉を気にしてるって人は花粉症の方でも少ないかも。
 まあ、そんなわけで、今日からは家族のために、
花粉症のない私も、外出の際には帽子、ウインドブレーカーは必ず着用します。
今日も花粉が多そうです。
患者さんの皆さんも、ちゃんとガードしてくださいね。

 
 

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2009.02.13

ウチの先生って、どうよ。

 先日、私が過去に書いたブログについて、ある看護師の方からコメントを頂きました。
右にある「最近のコメント」欄をクリックするとご覧になれます。
 かわいそうなのはこの方が日々疑問とストレスを感じながらお仕事されてることですね。
 医療機関に勤めてる場合、特に看護師さんなんかだと
「ウチの先生の実力」が、何となくわかっちゃうと思います。
 「あー、こんな治療じゃダメだな。」
 とか
 「こんな検査は必要ないだろ。」
 とか
 「ウチの先生は金儲けのことしか考えてないみたい。」
 とか
 「かわいそうに、ウチなんか来ないで○○病院行けばいいのに。」
 てなとこで仕事してる人、看護師さん、事務員さん、薬剤師さんはツライですね。
仕事に張り合いが出ません。
サラリーのために働いてるとはいえ、
やはり、患者さんのためになってる、という満足感は大事なモチベーションです。
 患者さんの良くなった笑顔を見るのは何よりの幸せですし、
他院にかかっていて、知り合いに噂を聞いてウチの病院に来た、なんて人が来ると
「よかったですねー、ここに来て。」と、心から喜べる。
 そういうところで仕事したいものですよね。
 と、ここまで書いて、急に、ウチ、大丈夫かいな、と気になったりして。
一体、職員は私の実力を信用してんだろうか・・・。
 そーいや、ちょっと前、近くの某同業者のとこに勤めてる女の子がウチかかってたなー。
実はそこの職員で当院にかかってる人は過去にも何人かいた。
いろんな事情で、コッチ来るのもまあ、わかるなー、とは思いましたが。
まさか、ウチの職員がむこうにかかってるってことは、ないと思うけど・・・・。
 当院の職員は、
地域に貢献する医療機関に勤めている、という自信と誇りを持って勤務していただいてる、
と、信じたい、・・・です。

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2009.02.06

始業時間を遅らせる意味って?

 今週、朝、犬の散歩に行くと、登校する小学生の姿が見えない。
最初は休校かと思ったが、火曜日から今日で4日目なので、さてはあれだなと思い当たる。
 おそらくはインフルエンザ等の流行により「始業時間を遅らせる措置」をやってるわけだ。
 これ、全く誰が考えたんだか。
私自身はあまり効果があるとは思えないのだが。
 そもそもインフルエンザの流行を断ち切りたいのなら土日を絡めて3~4日休校にすれば早い。
大体インフルエンザ1~2日の間隔で感染ってくんだから、3日休めば鎮火する。
 流行するのはインフルエンザの子が学校に来るからで、
始業時間が遅れれば、
ちょっと具合悪いけど短い時間だから行っちゃおうか
なんて子供が増えれば、かえって感染が広がる。
 どう考えても、学級閉鎖や、学校閉鎖に踏み切れない学校側の
日和見的な、お役所的な、お茶濁しの対策といった感じは否めない。
給食だけは食べてもらわないと面倒だ、みたいな。
 夫婦共働きで、子供を送り出してから仕事に行く、なんて家庭は困るだろうな。
いっそ休みのほうが対応しやすいんじゃないかなー。
 満員電車やバスで通学してるなら、時差通学で感染の機会は減るけど、
この田舎じゃあ、その辺はカンケーないでしょ。
教室で全員にマスク配るくらいのことはしてんのかな。
してねーだろーなー。

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2009.02.05

あんな医者、こんな医者

 昨晩はS病院の小児科のS先生と会食。
この先生、学会を機に知り合いになったんだけど、ホントいい先生です。
 診療方針といい、人柄といい、こーゆー先生が近くに開業してればなー、と思います。
 季節柄インフルエンザなんかの話題も多かったです。
特に、私がインフルエンザになった話はウケました。
 その時にも、した話なんだけど、このあいだ来た患者さん(大人、男性)で、
「近医にかかったがのどが痛く、熱が下がらないので来ました。」
という方がいた。
「何ていわれたんですか。」
「インフルエンザの検査をしたんですが、陰性でインフルエンザではないといわれました。」
「ふむふむ。」
「でも、タミフル飲んでください、といわれタミフルと解熱剤が出ました。」
なんじゃ、そりゃー。
で、診てみると「急性扁桃炎」しかも扁桃周囲膿瘍の一歩手前だった。
 何のためにインフルエンザの検査をしたかわかりませんね。
特に家族や職場にもインフルエンザの人はいなかった、って説明したんですけどねー、と言ってた。
まったく、とんでもない医者がいます。
 発熱の患者が来れば、はいタミフルなんっつて、ろくに説明も指導もしてないんだろうなー。
 S先生は子供の感染症もきちんと対応しており、風邪では絶対抗生物質を出しません。
当たり前なんですけど、そういう当たり前のことがわかってない医者が多いのも事実です。
「僕は抗生物質も出さない、熱も下げない、咳も止めない、外来で点滴もしない、
おまけに入院患者の抗生物質はビクシリンなので売り上げが上がらず
院長にはいい顔されないんですよー。」
と笑ってました。
 そんな話で昨夜は盛り上がり、夜遅くまで飲んでました。
 んで、気持ちよく今日の外来を始めると、
滲出性中耳炎の治療中の子が、
「先週、土曜日に熱が出て小児科に行って検査したらインフルエンザでした。」
「ああ、そうでしたか。」
「でもこの子0歳で、まだタミフル飲めないってことで熱が続いちゃいました。」
「そうねー、1歳未満は脳への移行の関係からタミフルダメなんだよね。
でも、インフルエンザはタミフルとか飲まなくちゃなんない病気じゃないからね。」
「ええ、それで、代わりに抗生物質が出ました。」
「!?代わりに、抗生物質が?」
あわてて、お薬手帳を受け取るとメイアクト4日分。
しかも、能書きどうりの通常量だ。BLNARとPRSPの乳児に。
また、ここにも困った医者が・・・。
「あのね、この子はインフルエンザなんだから、インフルエンザの治療をすればいいのよ。
タミフル飲めなけりゃ、水分・栄養補給と保温・保湿・安静で、経過観察だ。
インフルエンザに抗生物質なんておたふくの時に水ぼうそうの薬のむようなもんだ。
むしろウイルス同士だからそっちのが近いかも。(そんなことは無いけど)
0歳児がこんな、半端な抗生物質の飲みかたしたら、中耳炎治んなくなっちゃうぞ。」
てなことを、お母さんに怒ってもしょうがない。
 そもそも0歳の子に熱だけでその日に抗生物質を出すだけでもおかしい。
しかも、この場合はインフルエンザ陽性と出てるのに・・・。
 おまけにこの先生、その前にインフルエンザにかかったその子お姉ちゃんが
別の救急病院でタミフルが出なかったので(その病院はタミフル出さない派)
「何で、タミフル出さないんだー。」
と怒って、何故かやはりメイアクトを処方したという。
 S先生、やっぱこの近くで開業しませんか?

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医療系をまとめました。
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