ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.09.25

都合のいいデータ

Pocket

 
 昨日、インフルエンザ出てないですね、なんて書いたら
今日午前中いきなり陽性者現る。
 うーん、油断禁物。
 さて、新型インフルエンザのおかげで、いろんな便乗商法が出ている。
 マスクや消毒薬のメーカーはまあ、売り上げ伸ばしてるでしょう。
こういうのは別に便乗とは言いませんね。
 先日、街でお茶屋さんの店先に
「緑茶うがいで新型インフルエンザに立ち向かおう」
なんてポスターが貼ってありました。
 うーん、効果は・・・・、
 あまりないでしょう。
 そもそも、インフルエンザ対策としては、手洗い、マスクは非常に有効だが、
うがいは、さほど意味がありません。
ウイルスは粘膜についたらすぐ侵入しちゃうので。
 でも、実害はないので、そんなに問題はない。
 インフルエンザに効く、なんていうニセの薬やサプリメントなんか出ちゃったら困りますけど。
(スギ花粉のときはけっこうあるんだ、この手が。)
 困るのは製薬メーカーが医者をだまそうとしていろんな資料を持ってくる。
 某メーカーが、
「インフルエンザのネズミにこの薬を投与したら、
死亡率が明らかに激減しました。」
なんて、データを持ってくる。
 その薬はいわゆる去痰剤で、耳鼻科でも内科小児科でも日常的にヤマほど使ってる薬だ。
いい薬で安全性も高いけどインフルエンザウイルスに効くというのは、マユツバだ。
 よくデータを見ると、この実験でのラットへの投与量は体重1キログラム当たり40ミリグラム。
おいおい、この薬、通常人間の大人で1回15ミリグラムだぞ。
体重60キログラムの大人なら、2400ミリグラム飲ませてるってことになる。
インフルエンザに効果あっても、ほかどっかおかしくなるよ、
そもそもそんなにいっぱい、どんぶりで薬飲めっつーの?
錠剤にして1回160錠の計算だ。
 別のメーカーはわが社の薬をタミフルに併用すると明らかに効果が倍増します。
って持ってくるグラフでは、確かに有効率が倍近くでてるんだけど、
よく見ると、n(エヌ=検体数)が6人とか8人とかだったりする。
 実験した人数が1桁のデータなんか信用できるわきゃねえ。
 メーカーの上層部のブレーンがこういうデータをでっち上げて
それを社員に洗脳し、いや、中にはわかってやってる社員もいるのだが、
ともかくアホな医者をだまして、自社の薬を使わそうとする。
 先の40ミリグラムのメーカーの人は、良心的な人なので
ホントかよーと、データを見てるオレに突っ込まれる前に
「いや、これ、とんでもない量なんで、普通飲めないんですけどね。」
と、自ら白状したけど。
(でも一応必ず紹介しろと上から言われてんだろう。)
 先日はある抗生物質メーカーが
「日本で新型インフルエンザの死亡率が低いのは抗生物質を一緒に出す医療機関が多いからだ。」
なんて、データを持ってきた。
 違うだろ。
 医療保険の整ってる日本は、初期の段階から病院にいって治療するケースが多い一方、
海外では、医療費が高く、所得水準も低いので、重症化してから受診するケースが多く、
日本のように初期から洗練された医療が受けられないせいだ。
 最初っから、インフルエンザや発熱にバンバン抗生物質出して、
いざ二次感染って時に、薬の効かない耐性菌しか残ってない方が、もっと怖いぞ。
 ただでさえ、かぜ薬だ、とか、熱があるから、と称して
盲目的に必要のない抗生物質を出すアホな医者が多い我が国。
メーカーももっと医者を教育して正しく薬を使わせるようにしないと、
あっという間に薬が効かなくなって、自分の首をしめることになるぞ。
(もうすでに、その薬、かなり効かなくなってるけど)
 インフルエンザに関しては、医者もメーカーも私利私欲でなく
社会全体の利益を考えて取り組んでいただきたい。

2件のコメント

コメント/トラックバック (2件)トラックバック用URL:

  1. SECRET: 1
    PASS: efe95a807e5deb9dd4194e802a173217
    アボネット様よりご紹介(?)いただきました。
    ありました。とんでもない便乗商法。
    こういうのこそ、とりしまって欲しいです。
    http://houhen.jugem.jp/?eid=7301

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    これはすごい、どこで見つけたんですか?
    公開していいですかね。

管理人にのみ公開されます

医療系をまとめました。
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  
最近の投稿 最近のコメントカテゴリー アーカイブ