ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

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2009.12.07

インフルエンザで、最近よく訊かれる事


 ライブ終わって日曜日の朝、電話がなる。
「あ、先生ですか。ブログで見たんですけど、
インフルエンザの外来やるって。
で、うちの子今朝から耳が痛いって言ってるんですけど
それも診てもらえるんですか。」
「ええ、もちろん、いいですよ。」
「ありがとうございます。ところで二日酔いのほうは大丈夫ですか。」
「!!・・・・・はあ、だ、大丈夫です・・・。」
 そーいや、ブログにそんなこと書いたっけ。
しかし、いきなり電話で直に訊かれるとは・・・。
 てなわけで、日曜日はまたインフルエンザ臨時外来をやりました。
いや、二日酔いではなかったです。
ライブのおかげで声はガラガラでしたが。
 ピークは過ぎたようですが、けっこう来ましたね。
最後の子はインフルエンザでなく「溶連菌感染症」だったですが。
 高校生→中学生→小学生と来て、
ここんとこ小さい子のインフルエンザがやや増えてるのが気になります。
 ウチはまだ大丈夫ですが、
市内ではもうタミフルドライシロップがない病院もあるみたいで・・・・。
 まあ、病原性は季節型より低いとはいえ、
今後変化する可能性は大いにありますし、
小さい子の場合、中耳炎なんかを合併してくることが
少なからずありますので要注意です。
 さて、最近よく訊かれるんですが
「家族でインフルエンザが出て、その後少しだけ微熱があったのだがそのまま治まった。
どうすればいいのか?検査は?治療は?」
ということがあります。
 以前書いたように、発熱等の症状でインフルエンザ感染が明らかであれば
検査の必要なくタミフル、リレンザなのですが、
逆に熱がなければ検査は原則必要ないですが、やっても多くは「陰性」です。
 その場合にはタミフル、リレンザは必要ありません。
 インフルエンザはウイルス感染ですから、
状況によって、感染の程度に差が出ます。
 例えば「水ぼうそう」でも、全身に水泡ができ高熱が続く人もいれば、
3,4個ポツポツ出ただけで治っちゃう人もいます。
 さらには、かかった覚えはないが血液検査をすると抗体ができていた、
なんていう「不顕性感染」もあるわけです。
 インフルエンザウイルスも最終的には「抗体」が処理して治るわけですから、
熱が下がっちゃえばそれでいいわけです。
 溶連菌みたいに菌が残って、慢性化するってことはありません。
 ただ、「水ぼうそう」や「おたふくかぜ」みたいに
血液検査をしてかかったかどうか調べることが
今のとこはできないので、
はっきりしなかった人は予防接種をする意味はあります。
 このところ寒くなって合併症を起こす確率も増えているので
特に小さい子供にとっては、まだまだ油断できないインフルエンザです。

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2009.12.02

今度の日曜日もインフル外来します。


 さて、先日「今度の日曜日、インフル外来します
で、お知らせしたとおり、結婚式の前にインフルエンザ外来をしました。
 最初に来たのがいつもウチでかかっていて、
チューブ留置術までしたことある「おなじみさん」だったのでビックリ。
 それほどたくさんの患者さんでごった返すということは無く、
待ち時間もほとんど無く淡々と過ぎました。
 後で、聞けば日赤のほうはかなり混んでたとのことなので、
情報を伝えてこっちに回って貰うようにしとけば良かったかと思いました。
 どうせなら、普段インフルエンザ見慣れてない救急の先生よりこっちのほうが専門ですし、
何より、発熱者の間で長く待たされると、インフルエンザでなかった方まで
その場でインフルエンザに感染、ってこともけっこうありそうだ。
 それから、先日の日曜日ははインフルエンザ疑いでかかった子の中に、
急性中耳炎が2人もいました。
 2人とも小さい子なので、本人の訴えも無く、回りからは気づかれなかったのですが、
1人の子はすでに片方の鼓膜が破けて少し膿が出ていました。
 もちろんインフルエンザ検査は陰性。
 確かに幼小児の発熱で最も原因として多いのは風邪で、
インフルエンザも広くは、この範疇ですが、
次に発熱の原因として多いのが中耳炎ですから、
耳鼻咽喉科医が担う役割は多いなー、と感じます。
 今回の中耳炎の子にしても、フツーにいけば耳鼻科までまわってくるのは
もう少し時間がかかってしまうわけで、ラッキーでしたね。
 で、ややインフルエンザ減ってきたようですが、
まだまだ出てますので
今週末の日曜日、再び、インフルエンザ外来をやります。
 インフルエンザ疑いの発熱の方は9時半から12時の間、受診できます。
 問題は、前日「CRP」のライブなので、
私が日曜日に二日酔いから立ち直ってるかどうか、なんですが。

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2009.12.01

師走の花粉症


 今日から「師走」。
「師走」は各月の古称の中でも、ダントツに知名度が高いだろう。
「皐月」や「弥生」はまだしも「文月」や「長月」はあまり日常に出てこない。
「師走を迎えてあわただしいですが・・・」なんてのはよく聞くが
「卯月になり新年度を向えて・・・」なんてのは聞いたことが無い。
 ここんとこ、毎日インフルエンザの話しばっかですが、
今日は別の話を。
 最近、外来でよくあるパターン。
「なんか、先週から、くしゃみやノドがイガイガして、せきや鼻水が出ます。」
「ああ、そうですか診てみましょう。」
「お願いします。」
「ノドなんともないなー。熱はどうですか。」
「熱っぽい感じもなくは無いですが、計ってみると熱はありません。」
「ハナ診てみましょう。あ、こりゃ、花粉症ですね。」
「花粉!ブタクサですか?」
「いえ、ブタクサはとっくに終わってます。原因はスギです。」
「えー!もう、スギなんですか?」
 実は「もう、スギ」ではなく「今が、スギ」なのだ。
 スギはご存知のように春先2月下旬から3月を中心として4月上旬まで花粉を飛ばします。
 ところが、今頃、花粉を飛ばすことがあります。
 スギの花粉は夏の間に作られます。
そして一冬越して、来春あたたかくなってくると飛散するわけです。
 一方、11月後半の気候はちょうどスギが花粉を飛ばす3月の気温に近い。
 今年のように11月の前半に寒い日が続き、その後気温が上がると
スギは「だまされて」花粉を飛ばしちゃうことがあります。
 もちろん、量も少ないし、期間も短く、範囲も限定されています。
 ただし、もともとスギ花粉に対する体質が「強い」ヒトが、
「運悪く」ハマッちゃうと、発症しちゃうわけです。
 もうそろそろ終わると思いますが、思い当たるフシのあるヒトは、ご用心を。

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2009.11.26

今度の日曜日、インフル外来します。


 緊急連絡です。
 先日の休日の患者さんの話、またまたブログ読者の方からのご連絡により
休日診療所が大変なことになってるようです。
 んー、このままではイカン。
 そのため、急遽、今度の日曜日当院もお手伝いすることにしました。
 医師会休日診療所の担当の方と相談した結果、
休日診療所に問い合わせがあった患者さんのうち、
インフルエンザ疑いの発熱患者さんをこちらにまわしてもらうことにしました。
まあ、問い合わせはほとんどがインフル疑いのヒトでしょうが。
 ただし、今度の日曜日は午後からCRPのアヤちゃんの結婚式のため、
お昼過ぎにはバスに乗って(しかもギター持って)
宇都宮まで行かなきゃならないので、
11時~11時半くらいで受付は打ち切りになっちゃうと思いますが、できるだけやります。
 朝、9時半からです。
 日曜日はインターネット受付は「なし」ですので、
状況をお電話で確認いただけるとよろしいかと思います。
もちろん、直接来ていただいてもけっこうですが、
インフルエンザ疑い以外の通常の初診、再診は受けませんのでご理解ください。
耳が痛い子は、もちろん診ます。
 熱が出てから数時間たってからの方が検査の正確性が出ます。
土曜の夕方、夜から、あるいは日曜日朝からの発熱の方は、
日曜の午前中にお越しください。
 日曜のお昼、午後からの発熱の方は、月曜日の受診で間に合いますから、
熱が多少高くても、なるべく夜間救急を受診しないようにしましょう。
本当に重症な方がきちんと診られなくなります。
 昨日のブログで述べたように、新型はそれほど恐れることはありません。
 この提案に対し、
二つ返事で引き受けてくれた薬局の小峰君、
そして、当院のスタッフの皆さん、
感謝です。
 やはり、今回のインフルエンザは一つの「社会的災害」ではあります。
 常々思っていることですが、医療機関は個人経営でもやはり公的な役割があります。
かつてのブログ「やり残した事」で書いたことがすこーしだけできるかも。
アフリカやアフガニスタンはそう簡単には行けなくても、
ここでは多少、役に立てるでしょう。
1分で行けるし。

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2009.11.25

季節性とパンデミック、どっちが怖い?


 さて、皆さんは従来型の季節性インフルエンザと
いわゆる新型インフルエンザ(パンデミック・インフルエンザ)では、
どっちが怖いと思いますか?
 「そりゃ、新型が怖いに決まってんだろ。」
 と、思ったあなた、間違いです。
 「だって、テレビで言ってたけど、死んだ人だってけっこう出てるじゃん。」
 なるほど、でもそこに情報の落とし穴があるのです。
 従来の季節性のインフルエンザで毎年何千人もの方が亡くなってます。
何百人もの子供が脳症になってます。
 でも、それは一般には報道されません。
 なぜって、当たり前だから。
肺がんや胃がんで何人死のうとニュースになんないでしょ。
健康なヒトがただの風邪で運悪く肺炎になって死んじゃっても、それもニュースにはなりません。
 もちろんインフルエンザが老人健康施設や老人病棟なんかで集団発生して、
死亡があった場合はニュースになります。
 しかし、それ以外はいわゆる「ニュース・バリュー」がありません。
 一方、新型の方は最初は「感染疑い」だけでもニュースになりました。
続いて、患者が確認され過剰な報道がありましたね。
 死亡例も最初は大々的に騒ぎましたがだんだん減っています。
 マスコミは(特に日本は)そんな体質です。
 食品の偽装問題があったときには次々にニュースで出てました。
しかし、今は全く話題になりません。
 急に無くなるわけはないので、日本のどこかでは
産地や賞味期限の偽装くらい、今でも小規模ながらあるでしょうが、
今は「ネタ」としての価値がないので報道されないだけです。
 確かに推計で感染者900万人ともいわれる新型インフルエンザは脅威ではありますが、
実は今のところ重症化は少ない。
 インフルエンザの病原性は
(毒性という言葉はやめましょう。インフルエンザは毒素を出しません。)
感染力とは別のものです。
 ウイルスがどれだけ急激に体内で増殖し、それが宿主に影響を及ぼすかです。
 「新型」インフルエンザは多くの人が免疫を持ってないので、
とりあえず罹りやすい。
 しかし、ウイルスは細胞の中でしか増殖できません。
 新型は、まだ人間の細胞で増殖した経験が少ないのでまだそのテクニックが未熟です。
もたもたしてるうちに感染した人間の作った抗体に捕らえられてしまう。
 一方、従来からある季節性のインフルエンザは、何年も流行を繰り返してきました。
人間の体の中で生きていく術(すべ)を知り尽くしているといえます。
 新型インフルエンザの症状が比較的早く改善するのはこのためです。
すぐに熱が下がるヒトが多いです。
(これはもちろん喜田先生から聞いた話を元に私が推測したものです)
 もちろん、H1N1なので、年長者が何らかの抗体を持っている可能性や
流行がまだ若年者に限られているので、
毎年インフルエンザの大半の死亡例となる高齢者の感染が少なく、
死亡率に関しては厳密な議論ができないとは思いますが。
 また、将来的にこの「新型」がヒト細胞での増殖力を増した型に変異していくことは
充分考えられますし、おそらくそうなっていくでしょう。
 かかるんなら、今のうち?
 いや、無理にかかることはないすけど。
どんな危険があるかもわかんないし。
 まあ、理想的には新型ワクチン打ったあとで軽くかかっとく、
ってことができたらベストでしょうな。

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2009.11.25

(ベルリンの壁崩壊とは関係のない)ソ連の消滅の話

 新型インフルエンザワクチンの予約を開始しております。
 今回対象者は未就学児童(1歳以上)です。
 実際問題として一体、何本入荷するかわかんないですが、
とりあえず希望者は木曜日までに予約してください。
 もちろん「新型」にもうかかっちゃったヒトは必要ありません。
 さて私が10月19日付で書いたブログ「従来型インフルエンザと新型インフルエンザ
を覚えておられるでしょうか。
 ここで、疑問として
今回「新型H1N1」が出たので今までの「Aソ連型H1N1」と「A香港型H3N2」は
今シーズン以降どうなるんだろうということを書きました。
 マスコミでも全く触れられてなかったもので。
 この疑問について、この間の専門医講習会で講師の先生2人がコメントしてました。
 現段階では推測の域を出ないが、従来のAソ連型H1N1は消えるだろう。
B型はもちろん残るが、A香港型H3N2は、消えるかもしれないし、残るかもしれない、
とのことです。
 まあ、私の予測もそうでした。
 病院でやってるいわゆる「簡易検査」はA型とB型の区別はできますが
ソ連型と香港型の区別はできません。
まして同じH1N1であるソ連型と新型の区別もできません。
 しかし、私はこのA型は全部新型ですと患者さんに説明してきましたが、
この間の講習会で提示されたPCR検査のデータを見ると、やはりほぼすべて新型でしたね。
 わずかにB型も出てましたが。
実際に足利市でもB型の報告がありました。
 じゃあ、今年はB型も流行ってるの、っていうとそうではありません。
 実はAにしろBにしろ、インフルエンザは一年中出てるはずです。
 でも流行期で無いといちいち検査をしないので、
普通の風邪として処理されてるわけです。
流行期でなければ、重症化も少ない。
 今年は、こんな形で新型インフルエンザが流行ってるので
検査をすると、たまたまB型がひっかっかって来る、ということに過ぎません。
 そして毎年、B型や香港型に先行して流行するソ連型が殆ど出てないとすれば
新型にとって変わられる可能性は高いでしょう。
 「Aメキシコ」っていう名前になるのかしら。
 だから、このままソ連型が新型に取って代わられれば
今打ってるワクチンのAソ連型の成分はまあ、意味が無い。
でもA香港はビミョーとしても、少なくともB型に関しては大いに意味があるわけです。
 つまり今年の予防接種はB型とA型が別になっちゃったわけですね。
 メンドクサイ。

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2009.11.24

インフルエンザキットの功罪


 新型インフルエンザ、いつまで続くんでしょうね。
 毎日、検査、説明の繰り返し。
 同じことをいちいち説明しなきゃなんないのは、花粉症のときと同じ。
 まず、新型であること、学校への届出、休む期間、証明書について。
そして、感染の様式、マスク・手洗いの必要性、食事・寝室・トイレの注意。
抗ウイルス薬の説明、タミフルとリレンザの同じ点と違う点、服薬期間。
合併症・重症化について気をつける症状、解熱剤の考え方、併用薬。
家族に発症した場合、不顕性感染、予防接種の考え方。
 これらのことを患者さんの反応を見ながらもれなく話さねばならん。
 たまたま、一緒に結果が出た人は2人まとめて聞いてもらったり。
これも花粉症のときと同じだー。
 おかげで声がガラガラだー。
 まあ、この新型から
「因果関係が明らかでインフルエンザと診断できる」ものについては
簡易検査をしなくてもタミフル、リレンザを出していいことになったのは助かります。
この8月に出た通達です。
 ところが、昨日の休日、昼飯食ってると病院の電話が
「もしもし、Tですが、子供が熱を出しまして・・・。」
「ああ、お姉ちゃんが5日前、お母さんが2日前にインフルエンザでしたから
インフルエンザでしょうね。」
「それで、昨夜救急で病院かかって・・・。」
「夜間かかったのか、インフルだからタミフルかなんか出たですね。」
「それが、検査陰性で、明日熱があれば、またかかるようにと。」
「いや、それもうインフルだから薬出していいのよ、小さい子だし。
じゃあ、休日診療所に電話して、もう検査要らないから診察だけで、タミフル出してもらって。」
「それが電話したら50人待ちで・・・。」
 そりゃ、しかたがない、ってことで
患者さんに来てもらって診察してタミフル出しました。
薬剤師さんとこにも電話して来てもらって。
もちろん診察で中耳炎、その他の発熱の原因等の無いことをチェックしますが
インフルエンザの簡易検査はしませんでした。
 そもそも、これは、その救急の医者が、きちんと
「インフルエンザです」、と診断すれば
もっと簡単に済んだ話。
 厚労省の8月の通達を知らないのか、
こんなん症状も状況も、インフルに決まってるじゃん。
 まして小さい子だし、何より 翌日も休日 だってことはわかってるはず。
 その前も、夜間に救急病院かかったのに、
3時間も待たされて検査陰性ですと返された園児がいた。
そこんちも1日前にウチでお兄ちゃんがインフルエンザと診断されてる。
こういう子は検査いらないでしょ。
 検査キットができてから確かに診断は簡単になったけど、
医者は、いや人間は何千年も前からインフルエンザを診断してきたわけだ。
 まさに検査結果だけ見て患者さんをみない医者って事です。

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2009.11.23

専門医講習会、大変勉強になりました。


 そんなわけで、土日は専門医講習会で仙台に行ってきました。
 いやー、いろいろ勉強になったです。
 1日目は、好酸球性疾患を中心にアレルギーとの関連の話をいくつかと、
ショートステイ・サージェリー、つまり日帰りや短期入院手術の話を聞いてきました。
 この分野は次々に新しい知見や技術、器具なんかが開発されてる分野なので、
最新の講演を聴くと大変タメになります。
 中には、おー、あの機械使ってみたいなー、なんて手術器具もあるんですが、
「これはまだ日本に輸入されてなくもちろん保険も通りません」、
などという話で、悔しかったりする。
 まあ、花粉症や、アレルギー性副鼻腔炎などの話で、
以前と違った概念や新しい治療の方法・方針も
いっぱい聞いてきたので、これは即実践したいと思います。
 だから、当院の治療指針もモノによって微修正が入ります。
今までと違う説明、投薬もあります。
医学って難しいですね。
 2日目は、ウイルス性疾患の話をいくつか聞いてきましたが、
なんといっても、いわゆる「新型インフルエンザ」のすばらしい話を聞いてきました。
 演者は日本のインフルエンザ、ウイルス関連では第1人者の喜田先生でした。
 このセンセイ、初めて話を伺いましたが、スゴイです。
 まず、話がわかりやすい。
 アタマ悪い人ほど話が難しくわかりにくい。
難しい話をわかりやすく説明できるってのは「できる」人の証拠です。
 そして、モノの見方がすばらしい。
 この方は、話を聞くと研究室でパソコンやってるんではなく
アラスカやモンゴルや中国に自ら出かけていって、
そこで、渡り鳥の糞や死体を調べたり、豚を実際に解体したりしてる
現場の人、なのだ。
 だから、モノを見て、考える、
その筋道が非常にしっかりしてる。
 だから、厚生労働省の役人や政治家のダメなとこが我慢ならない。
こんな事やってちゃダメだ、とはっきり指摘する。
ホントはもっといいたいことイッパイあるんでしょうが、
公の場なのでやんわり皮肉交じりに言ってましたが・・・。
 ともかく、私が、インフルエンザに対して持ってた疑問やなんかが、
この先生の話を聞いてことごとく、氷解した。
 「やっぱり」、とか、「なるほど」、とか、「ごもっとも」、とかの連続でした。
 結局、今のままのインフルエンザ対策ではダメってことです。
 なぜ、新型インフルエンザはすぐ熱が下がるのか、
なぜ、新型の予防接種は1回でいいのか(1回でいいんです!)、
なぜ、鳥インフルエンザは高病原性になったのか、
なぜ、新型インフルエンザは豚から始まったのか、
なぜ、今のままのインフルエンザ対策ではダメなのか、
今後季節型インフルエンザはどうなっていくと考えられるのか、
 みーんな、納得のいく説明ですべて理解できました。
 今後、機会あるごとに、外来での説明や当ブログでお話します。
 どうして、こういうことが、マスコミできちっと伝えられないんだろ。
 ちなみに、今回の「新型」インフルエンザという名前は正しくないそうです。
正しくは「パンデミック・インフルエンザ」と呼ぶべきなのですが、
適当な訳がないまま、「新型」とよばれるようになってしまったとか。
 このウイルスが確認された時、喜田先生はこのワクチンを従来の季節性ワクチンに
組み込むべきだと主張したそうですが、
厚労省がわけのわからん理屈をつけて却下したらしい。
 その時にきちんとワクチン対策ができてれば、
現在のワクチン騒動は防げた可能性が高いですね。

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2009.11.14

テオドール、どうでしょう?


 最近は院外処方が一般的になって、
患者さんが飲んでる薬が、本人にも第3者にもわかるようになりました。
 これは大変良いことで、複数の医療機関にかかる場合とか、
前医での治療歴がある場合など、必要不可欠な情報が得られます。
 また、専門家が見ると
「おお、この先生はできる!」
とか
「こんなのダメに決まってるじゃん。アホか。」
とか(実はこっちが意外と多い)
「へえ、この病気は今こんな治療するんだ。」
などと参考になることが多い。
 その中で、最近これってどうなの?と思ってることがある。
 それは、喘息(特に小児)の治療で使われる「テオドール」という薬だ。
 私は、耳鼻咽喉科専門医なので、もちろん喘息は専門ではない。
 しかし、耳鼻科の中での専門はアレルギーだし、
喘息を合併した子の、診察も治療もかなりしたことがある。
 そういった、研究会で話を聞いたり文献にも目を通す。
 で、最近の、特にこの5、6年で喘息治療の方針が大きく変わってきたのだ。
 昨今はいろんな疾患に「ガイドライン」というものができて
「この病気は、段階に応じてこんな治療法を選択していきましょう」
なんていうマニュアルみたいなもんがある。
 これは主に一般医を対象にした「指南書」で
耳鼻科領域の「アレルギー性鼻炎」「花粉症」「中耳炎」などのガイドラインなんてのは、
私なんかにとっては
「何をいまさら」
という内容なのだが、
自分の専門外の分野については、いちいち目を通すようにしている。
 それによると、現在「喘息治療の基本方針」は
「発作の予防」と「気道炎症の改善」が根幹で
その中心になるのが
「オノン」などの(お、どっかで聞いたことある薬!)アレルギーを抑える薬と
「吸入ステロイド」なのだ。
 気管支拡張作用を持つ「テオドール」は、かつて喘息治療の花形だったが
今や、あまり推奨されなくなっている。
 理由は「喘息治療の概念の変化」とテオドールの「副作用」の問題だろう。
 薬には血中濃度によって「有効域」と「中毒域」がある。
実は、テオドールはこの幅が大変狭い薬なのだ。
 つまり、少ない量では効かないが、多くするとけいれんなどを起こしやすい。
 しかも「発熱」や、「他の薬剤(特に問題になるのはマクロライド系の抗生剤)との相互作用」で
血中濃度の上昇をきたしやすい。
 「風邪」に基づく「喘息様気管支炎」で使用した場合、
熱が出てる場合が多いし、抗生剤が併用されることも多い。
 多くの副作用が報告される中、メーカー側も事故を怖れて
たびたび注意文書を発し、数年前には体重あたりの投薬量を見直して、
より少ない量での換算票に差し替えてきた。
 つまり
「もう、あんまり使わないで。」
ってことらしい。
 ところが、
ウチで治療中の子が、喘息発作みたいの起こして
「この間○○小児科で喘息って言われて薬が出ました。」
って、お薬手帳を見ると、「テオドール」。
このセンセイ、いつもこれだ。
 「ううむ。」
 これが私の専門領域ならああだこうだ言えるんですが、
「喘息」ってなると・・・・・。
 「なんか薬の説明受けた?」
「いえ。」
「うーん・・・。」
・・・・・どうなんだろ。
 以前からテオドール使ってる子ならまだしも、
まるっきり初めてで、これは・・・。
 もちろん、使い慣れてる、ってのはあるけど
医学の常識はどんどん変わる。
昨日の治療法が、今日は禁忌だった、なんてこともある世界だ。
 以前の創傷治療もそうだが、解熱剤にしろ、咳止めにしろ
昔とは180度考え方の変わったものはざらだ。
 せめて、一言使用理由の説明をしてもらえれば・・・。
 やっぱ、医者は常に知識をアップ・トゥ・デイトしとかないとまずい。
 そういや「風邪による急性胃腸炎」つって、
いつも下痢止めの「ロペミン」出してる小児科医もいるんだが、
これも、どうなんだろ。
 いやー、専門じゃないからよくわかんないけど、ちょっとオレは出さないよ。

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2009.11.13

査定くらっちまった


 「オノン」という薬があります。
 ロイコトリエンというアレルギーを起こす物質をブロックする薬で、
適応症は「気管支喘息」と「アレルギー性鼻炎」。
 最近は発売されて年数が経ったので、
いわゆるジェネリック薬の製造販売が認められています。
要するに特許期間が切れたので、コピー薬を他のメーカーも作っていいというわけです。
一般名「プランルカスト」といいます。
 当院は院外処方ですが、ジェネリック薬は患者さんの希望により
先発品に変えて処方していいですよ、という形にしてます。
 先日戻って来た、保険審査でこの「プランルカスト」が大量にカットされちゃいました。
 理由は病名漏れ。
 「オノン」は「気管支喘息」と「アレルギー性鼻炎」の両方の適応があるが、
同じ薬ではあるが、後発品「プランルカスト」は「気管支喘息」の適応しかないため。
 全く同じ薬でなんでこんなことがあるかというと、
「オノン」は発売時にまず「気管支喘息」の適応をとり、その後、臨床試験をして
遅れてアレルギー性鼻炎の適応が追加になったわけです。
 この時間差があるから、「気管支喘息」の「プランルカスト」は許可になっても、
「アレルギー性鼻炎」では「オノン」は通っても「プランルカスト」は保険が通らない。
 もちろんその辺はわかってたので、病名のチェックなんかはしてましたが、
常識的に考えて、まあ、大丈夫でしょうとは思ってました。
「オノン」で出しても、薬局でジェネリックに変更される場合がほとんどなので、
すべてチェックできてなかったこともあります。
 カットされると、病院のほうがその差額をすべて負担します。
薬局や、もちろん患者さんには負担なし。
 けっこう痛いですね。
件数が多いし、薬の性質上長期に出すことの多い薬なので、かなりの金額です。
 しかも、適応症は同じ薬なのでその後「プランルカスト」は臨床試験等をしなくても、
時間が経過すれば自動的に適応追加になります。
 その適応追加になったのがなんと、先月なのだ。
 それが、今月になって急に過去数ヶ月分に遡ってきられちゃいました。
 だから先月分からは、この薬、「アレルギー性鼻炎」で、堂々と保険が通るわけです。
 うーセコイぞ、意地悪すぎ。
先月からOKだってこと知ってて、その前までをカットしてるわけでしょ。
 例えていうなら、見通しのよい道幅の広い道路を、
流れにのって70km/時で走ってたら
スピード違反でつかまっちゃった。
しかもその道は来月から制限速度が80km/時に変更されることが、
すでに決まってる、みたいな。
 もともと政府としては、医療費を削減するためにジェネリック薬を推進する運動してるわけなのに。
 まあ、こちらに非はあるので、泣き寝入りですが、
もっと無駄な薬使ったり、いい加減な処方したりしてるやつらを何とかしろー、
と、心の中で叫んだりします。

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医療系をまとめました。
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