ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2010.08.06

夏に増える耳鼻科の病気


 一般に耳鼻科は夏はヒマな科なのだが、
2つだけこの時期に増加する耳鼻科の病気がある。
 一つは慢性中耳炎、もう一つは外耳炎だ。
 どちらも、耳の外から感染が起こるので、
同じような時期に増えるわけだ。
 急性中耳炎は鼻からの耳管を経由した感染なので、
別にプールや海に入ったからなる、ということは無い。
 ところが、慢性中耳炎は鼓膜に穴があいてる状態なので
普段は乾いていても、プールやシャワーなんかで水が耳に入ると、
感染をおこし、耳だれが出ます。
 夏場は汗かくことも多いので、その辺から感染する場合もある。
 まあ、これはある程度ショウガナイ。
 一方、外耳炎も外耳道経由の感染だが、
ただ、普通に耳が水が入っただけでは、
外耳道に感染をおこすことはまず無い。
 この原因は90%以上が「耳かき」「耳そうじ」です。
 そもそも人間の耳は掃除する必要ない。
 耳かきでも綿棒でも耳そうじによって外耳道の皮膚はダメージを受けます。
 それは、外耳道には皮下組織、すなわち脂肪や筋肉などのクッションが無いから。
 しかも皮膚の上にはもともと「細菌」が常在するわけで、
そのダメージによってそれらが繁殖しやすくなるわけです。
 まあ、硬い地面には草は生えないが、耕すといっぱい雑草が生えてくる、ってイメージだ。
 なかなか、この辺誤解していらっしゃる方が多い。
「耳そうじしてますか?」
 と訊くと、胸を張って、
「一生懸命、毎日お掃除してますよ。」
  
 などと言うヒトがいる。
 まるで、
耳そうじを怠ってたみたいに思われるなんて、心外だなあ、
 という感じで。
 それがダメなんです。
 しかも、毎日のごとく耳そうじすると、だんだん知覚がマヒしてくる。
 耳の半分から奥は、痛みの神経がいっぱいで、
鼓膜なんかは触っただけで飛び上るほど痛いものだ。
 もちろん、損傷を避けるためで、鼓膜破けちゃうとマズイので、
「痛くしてある」わけだ。
 これが耳そうじによって、だんだん鈍麻してしまう。
 鼓膜やその近辺を処置しながら、
「ここ、痛いですか?」
 と訊ねると、誇らしげに
「いやいや、全然。気持ちいいくらいですよ。」
 と、余裕のスマイルで答える人もいる。
 それが、ヤバいのよ。
 そういったヒトビトに、
もう耳そうじは一生禁止です、というと、
多くは
「私から耳そうじを取り上げるなんて・・・・。
   人生の楽しみを返して。」
 などという反応を示しますが、
 ダメなものはダメなのだ。
 でも毎年夏になると、
「先生にダメって言われてたんですが、・・・・・また、やっちゃいました・・・・。」
 と、同じ患者さんが来るんだなあ。
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3件のコメント
2010.07.28

Pの悲劇

 昨夜は足利日赤で耳鼻咽喉科のカンファレンスでした。
 3か月に一回の割合で、
足利の耳鼻咽喉科の開業医と足利日赤の耳鼻咽喉科の医師で、
症例を持ち寄ってああだ、こうだ意見交換をする。
 内科や小児科の開業医の先生も熱心な先生は出席する。
(その代わり、耳鼻科医も全員出るわけではなく、いつも出るヒトは決まってるけど)
 もちろん、飲み食いする会ではなく、
病院の会議室でキチンとお勉強をする会です。
 夜7時から始まり、2時間半くらい。
 さて、昨夜取り上げられた症例で、気管支異物がありました。
 1歳代の子で、ピーナッツと大豆の2症例でした。
 気管支異物は幼児と老人に多いわけですが、
子供の異物で注意しなきゃならないのは、何といっても「豆類」です。
 これらは、声門を通過して気管に入り、
運が悪いと、そのまま 窒息して死んでしまう か、
蘇生してもいわゆる 植物状態 になってしまう事が少なくありません。
 治療は耳鼻科で気管支鏡で摘出するわけですが、
全身麻酔のムズカシイ手術です。
 ともかく、ここで声を大にして言いたいのは、
子供の口にそんなもんを入れてはイカン!
ということ。
 事故は未然に防げます。
 今回1例目はほかのお母さんがおやつにあげたピーナッツ、
2例目は保育園で保育士さんがあげた煮豆だったそうです。
 新米お母さん(?)はともかく「保育士」はやべーだろ。
 いや、このお母さんも自分の子じゃないから、もしなんかあった時には、
相当悲劇的な状況になったかもしれないのだ。
 今度、幼稚園講演会があったら気管支異物の話をしようか。
 そういえば、以前、まだウチの子が小さい頃、家族旅行で電車に乗った。
 その時、近くに座ってたおばあちゃんが、
「あら、かわいいわねえ、はいどうぞ。」
と、お菓子の袋をくれたのだ。
 その瞬間、そばで見ていた、我々両親の顔色が変わった。
 なんと「バターピーナッツ」。
 二人とも耳鼻科医である我々夫婦は、
 「ピーナッツの悲劇」 を多くこの目で見て知っている。
 あわてて、子供の手からひったくるように奪い、
「ああ、ありがとうございます。あとでいただこうねー(汗)。」
と、バッグに素早くしまった。
 ずーっと、そうやって来たので、
いまだに我が子はピーナッツは食べません。
(もうすっかり大きいから別に大丈夫なんだけど。)
 それにしても、子供のピーナッツは本当に怖いです。
 皆さんもくれぐれもご注意を。
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2010.07.16

ニンニク注射って、どうよ


 医学関係のサイトで「カンファレンス」という掲示板があります。
 普通の掲示板と同じでスレッドが立って、読者がレスしていくというものですが、
書き込みが医者に限られており、内容は「医学的」なものから
「日常診療のトラブル」「経営問題」「医療行政」等さまざまなのですが、
けっこうおもしろくて、時々読んでいます。
 まあ、会員制ですが厳密ではないので
医者でないヒトが紛れ込んでることもないとはいえないみたいですけど。
 そこで、最近取り上げられてた話題の一つに
「ニンニク注射」がありました。
 ある先生が外勤でいってる先のクリニックで、
ニンニク注射なるものを始めたが、
自分としては、勤務先の意向とはいえ、
こんな意味の無いものを患者さんに勧める気がしない、
というものでした。
 そーいや、ニンニク注射って最近時々聞きますね。
 あれは、もちろん、「ニンニク」なんかではなく、
(そんなもん注射したら大変だ)
ビタミン剤ですね。
 まあ、いわゆる「ニンニク臭」がするので、
ニンニクの滋養強壮効果とイメージをだぶらせてるのが、得してる所なんでしょうね。
 静脈注射で、注射後すぐ肺から呼気中にニオイ成分が出てきて、
自分でもニンニクのニオイを感じます。
 その辺も「効いた感」に一役買ってると思う。
 それを利用して耳鼻咽喉科では「静脈性嗅覚検査」いわゆる
「アリナミンテスト」として、古来行われておりました。
 ちなみに、現在当院ではやってません。
 このにおいは結局「呼気」中のニオイなので、
嗅覚障害の部位診断にあまり役立たないので。
 まあ、今日の主題はそれではない。
 さて、この掲示板に書き込まれたお医者さんたちの意見をまとめると
①そんな、効果の無い(あるいは不確実な)ものを医者としてやるべきではない
という意見と
②おそらく効果は無いが害もない、保険外診療なので患者さんが望めばやってもいいんじゃない
という意見に分かれました。
 本心から、効果がある、と考えているお医者さんはほとんどいないようですね。
 そして、インターネットで「ニンニク注射」を検索すると・・・・
 出るわ出るわ。
 ナゼカ、新宿や池袋あたりのあやしい(?)クリニックが多いかも。
 疲労回復、スポーツ選手も愛用、企業戦士を支援、二日酔いもスッキリ、
などのうたい文句が踊っています。
 ニンニクが入ってるわけではありません、と書きながら、
「ニンニク」のイラストが多数登場していたり。
 ここのセンセイたちは②のカテゴリーの意見のヒトなんだろうなあ。
 ちなみに耳鼻咽喉科の「アリナミンテスト」の点数は薬剤、注射器代、手技量、判定料込みで45点、
ということは保険外、自費では450円です。
 御参考までに。
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2010.07.15

夏風邪ばかりじゃあありません

 先日来院された若いお母さん。
 先週のどが痛く熱が出て内科に行ったら、「夏風邪」といわれ薬が出た。
 すぐ熱が下がったが、また発熱、のどが痛くなったので来ました、とのこと。
 ふーん、なるほど、あれかなあ、と思いのどを診ると、
一見して、やっぱり。
 で、念のため検査をすると「溶連菌反応」がばりばりハンパなく出てる。
 
「おやおや。」
 この手の事は、それほど珍しいことではないけど。
 今回のポイントは
①夏風邪と思ったのに(?)抗生剤を出してしまったこと。
②溶連菌感染症を忘れていたこと。
 確かにこの時期ヘルパンギーナをはじめとする夏風邪大流行です。
(注:「夏風邪」とは、この時期に流行するヘルパンギーナ、手足口病、プール熱等のことで、
夏場にかかる風邪ではない ので、ご注意。
RSウイルスだったら、真夏にかかっても「冬風邪」です。)
 夏風邪は高熱が出るが、基本的に薬はいらないので、ほっとけばいい。
 抗生剤がなければ、症状が取れずに再診すれば溶連菌もわかるでしょう。
 ホントに夏風邪なら、抗生剤飲んでも飲まなくてもそのまま済んじゃったことでしょう。
 そもそも大人で高熱が出ればヘルパンギーナじゃないかも、と考えてもいいのだが。
 そして、家族、特に子供が熱を出してなかったかを訊きます。
 1歳、3歳の子がこの2週間以内に発熱したという。
 本日来院して、上の子は陰性でしたが、昨日1歳になった下の子が「溶連菌強陽性」。
 お母さんが、親子の接触の度合いから考えて、
うつるとすればこの子です、といってただけの事はある。
 今はほとんど症状ないんですけどね。
 まあ、ちょっと回り道したけど、発見されて良かったですね。
 だから、風邪のヒトはいきなり抗生剤のんじゃダメだって。
(別に溶連菌関連にかかわらず、ですよ。)
 いまだに、幼小児や普段健康なヒトの「風邪」に抗生剤出すお医者さんもいるので。
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2010.06.01

世界禁煙デーと無煙映画大賞

 昨日、5月31日は「世界禁煙デー」、今週は「禁煙週間」です。
 私の父が「心筋梗塞」で急逝したのは57歳、私が高2の時でした。
 肥満も高血圧も無かった父の心筋梗塞には「タバコ」が、最大の要因だったと思います。
 母が亡くなったのは78歳ですが、
 やはり喫煙のため慢性肺疾患で入退院をくりかえし、在宅酸素療法を行なった末でした。
 妻のお父さんもヘビースモーカーでしたが、肺の病気からは生還したものの、
 今はやはり喫煙が原因とみられる病気で、失明の危機にさらされている現状です。
 喫煙の影響は、肺がん、喉頭がんだけでなく、
全身のあらゆる臓器に及びます。
 家庭や職場、公共の場所における「受動喫煙」も深刻な問題です。
 当院も、禁煙外来を行なっており、
 昨年は試験を受けて2人とも禁煙専門医に合格しました。
禁煙専門・認定指導者」「禁煙外来・禁煙クリニック一覧」←クリックしてご覧ください。
 タバコの無い世の中が早く来るといいですね。
 ところで我々の所属する禁煙学会にこんなリンクがあります。
無煙映画大賞」←クリックすると見られます。
 まあ、映画のタバコ、ここまでよくチェックしたなー、という印象ですが、
確かに、映画やドラマのイメージって大きいのでこういう突っ込みを入れることは
意味があるのかもしれません。
 かつては、「タバコ⇒カッコイイ大人の男」というイメージがあったのは事実で、
青少年の喫煙開始の動機としても多かったでしょう。
 これを「タバコ⇒どうしょうもないダメダメ人間」というイメージに変えて、
タバコを吸わないかっこいいヒーローを対比させる、ってのはアリかも知れない。
 そーいや、「鉄腕アトム」、「鉄人28号」と並ぶアニメヒーローの古典
「エイトマン」では、電子頭脳のオーバーヒート(?)を抑える「強化剤」っていう
タバコ型のものを吸引していた。
 これが吸えないとピンチになっちゃうという「ヤク中」みたいなアブナイ設定だったなあ。
 今では、ちょっと考えられないですね。
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2010.05.09

「耳鳴り」の悩み

 今年はスギ花粉が記録的に少なく、
季節性インフルエンザの流行もなかったため、
花粉症時期の患者さんの数は、例年に比べてかなり少なく、
200人を超える日は数えるほどしかなかった。
 しかし、4月の異常気象のせいか、連休前後はなんか混んでましたねー。
 連休明けもすごかったけど、連休前の30日がピークで、250人近く。
 たぶん、いつもはインターネットで待ち人数を見て、
受付やめるとかの人も多いのだろうが、
「連休だ」ってんで、来院しちゃったんでしょうね。
 それでも結構「キャンセル」いましたけど。
 しかし、そんな日に「何年も前から耳鳴りがして」なんていう方が来られたりするのだ。
 「耳鳴り」
 これが難しい。
 一般的には「内耳性難聴」つまり音を聞き取る神経が機能低下してると、
起こることが多い。
 壊れたマイクが、がりがりノイズを発するみたいなものが耳鳴りだ。
「内耳性難聴」は、発症してすぐならば回復する場合も多い。
「突発性難聴」などは、その代表だ。
 しかし、その「突発性難聴」にしろ、約1ヶ月以上経過したものは、
回復は難しい。
 音を感じ取る神経が、死んじゃってるためだ。
 体の細胞はかなり「再生」する。
 傷だって治るし、骨だって折れてもまたくっつくし。
 でも、神経細胞はそうはいかない。
 失明しちゃった人は見えるようにならないのと同じだ。
 そんなわけで、
「難聴のある耳鳴りは残念ながら治りません」
ということを、時間をかけて説明して、納得していただくわけだ。
 これがなかなかツライんです。
 説明に時間もかかるけど、
何とかして欲しい、
という患者さんの期待にこたえられないところが。
 いや、世の中に
「適応症に耳鳴りのある薬剤」
はあるが、
「耳鳴りが治る薬」
は今のところ無いのが現状。
 古ーい薬で「ス○ミ○A」なんて薬があって、
市販薬の「小○製薬」の「ナ○ピ○ン」も同じ成分だけど、
今、臨床試験したら保険の適応症通るかどうか・・・。
 まあ、「効くと思って飲めば効くかも」というレベルなので、
神社のお守りみたいなもの。
 ちょっと私はそれを売る自信ないので、
処方したことは、ありません。
 鼓膜に注射して、薬を入れる、
なんてのも以前は結構やりましたが、
やっぱ、よくなる率は、お守りと同等かそれ以下なので、
最近は、やっていません。
 「耳鳴りの特効薬」できればノーベル賞もんだが。
 まあ、「治る耳鳴り」もありますし、
「耳鳴り」が「重大な病気の前駆症状」なんてこともありますので、
「耳鳴り」の方は、やっぱり一度は病院、かかってくださいね。
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2010.04.29

「肺炎球菌ワクチン」についてのお話~その3


 第3章 肺炎球菌ワクチンについて
 肺炎球菌には90種類以上の型が報告されています。
 これは表面抗原の違いで、同じ肺炎球菌でも違う服を着てるわけです。
 この型によって効くワクチンが違ってくる。
 例えば、インフルエンザのワクチンで、
ソ連型も新型も「H1N1」なのに従来型のワクチンは、
新型には効かない、という話は昨年の経験でご存知でしょう。
 今回認可になってる肺炎球菌ワクチン「プレベナー」は
7価のワクチンです。
 ということは90種類のうち7種類にしか効果が無い、ということです。
 なーんだ、たった90分の7なのー、と思うでしょ。
 しかし、90種類といってもその頻度、病原性から、すべてが重要というわけではないので
このワクチンによって「侵襲製の高い肺炎球菌感染症の75%に効果あり」といわれています。
 実は現在「13価」のワクチンが開発中で、
こちらですと、90%程度になるようです。
 「肺炎球菌ワクチン」には以前から主として高齢者用の「ニューモバックス」という製品があります。
 こちらは「23価」のワクチンです。
 23種類の肺炎球菌に対して免疫をつけることができます。
 じゃあ、これ打てばいいじゃん、と思いますが、
実はそうはいかないんです。
 一般に「2歳以下」の子供では免疫機構が未熟なため、
通常のこのタイプの「多糖体ワクチン」では、免疫がつかないのです。
 そこで、この「プレベナー」では特殊な技術で乳幼児にも
免疫がつくようになってるので、「2ヶ月の赤ちゃん」から打てるようになっています。
 「13価」のワクチンはまだできてないので、
とりあえず「7価」を打っといて、2回目以降は「13価」に乗り換え、って事は可能です。
 本来こういったワクチンは「公費」で集団接種し、
地域の保健状態を改善するのが理想ですが、
今のところ「自費」接種です。
 1回1万円程度、奨励されるスケジュールだと4回接種ですから、
費用対効果を考えます。
 適応としては「肺炎球菌による侵襲型感染症の予防」ということになっており、
これは「細菌性髄膜炎」「菌血症」「侵襲性肺炎」をさすので、
「中耳炎」は、入っていません。
 先ほどの「75%」をカバーも、「中耳炎」に限ると「60%強」になっちゃうみたいです。
 しかも、もちろん「肺炎球菌の中耳炎の60%」ですから、
肺炎球菌による中耳炎が全体の40%とすると
雑な計算で「急性中耳炎の4分の1位に効果」ってことですかね。
 だから、これ打てば中耳炎に対してはある程度の効果は期待できますが、
中耳炎にならなくなる、ってわけではないです。
 
 まあ、怖いのは「髄膜炎」とかです。
 考え方としてはこれは「保険」みたいなものですから、
リスクが高いお子さんは積極的に受けるべき。
 中耳炎はオレが何とかするけど、
「髄膜炎」「菌血症」になったら死んじゃうこともあるんだから。
 つまり、保育園児や、上に保育園、幼稚園の兄弟アリ、喘息あるいは喘鳴を起こしやすい
「2歳以下」のお子さんは打った方がいい。
 小さい子ほど重要です。
 0歳代で保育園行ってる、なんてお子さんは是非受けるべきでしょう。
 5歳以上は原則的にそれほどの意味はないと思います。
 当院でも予約を開始しますので、
受付にご相談ください。
 安全性についてですが、副反応は他のワクチンに比べ高率で、
接種部位の腫脹・硬結は8割に、
発熱は30~40%の子で出るようです。
 全体で何らかの副反応が出る率は初回で89.5%、
追加免疫を含めた累計では98.3%というかなりの数字が出ています。
 まあ、腫れて熱が出るのは普通、と考えていいようです。
(おまけ)
 以前書いたので、このブログの読者の皆さんは
ご存知と思いますが、
 「細菌性髄膜炎」のもう一つの重要な起炎菌は「インフルエンザ菌」ですが、
これは「ヒブ」といわれる「夾膜型インフルエンザ菌B型」で、
「急性中耳炎」を起こす「非夾膜型インフルエンザ菌」とは別物なので、
「ヒブワクチン」は「髄膜炎の予防」には有効ですが、
「急性中耳炎の予防」には無効ですのでお間違えないように。
 未読の方は過去のブログ「ヒブ・ワクチンって何?」(←クリック)を、ご一読ください。
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1件のコメント
2010.04.27

「肺炎球菌ワクチン」についてのお話~その2


 肺炎球菌の話の続きです。
 第2章 肺炎球菌の耐性化
 近年「PRSP」というものが問題になっています。
 これは「ペニシリン耐性肺炎球菌」のことで、
いわゆる「薬の効かない菌」のことです。
 抗生物質を飲むと菌が死んで、中耳炎や肺炎が良くなります。
 中耳や肺からは菌がいなくなりますが、鼻腔からは菌は消えません。
 
 こういった菌はヒトからヒトにうつります。
 しかし、鼻の中なら別に何の症状も出ないので、もらってもそれとはわかりません。
 特に、保育園、それも年齢の小さい子供たちのクラスでは頻繁にこのようなことが起こります。
 幼小児の4割がこういった「潜在的病原菌」を普段から持ってるといわれますが、
これが「集団保育の子供たち」では9割にもなるといいます。
 近年、こういった菌の中に抗生物質が効かない菌が増えてきました。
 菌の耐性化は偶然起こるものですが、
いったん耐性化した菌は、ヒトからヒトへとうつります。
 抗生剤を使ったとき、耐性菌だけが生き残るので、
やがて、感染の主要な菌になっていきます。
 このような耐性菌が増えた理由は抗生物質の濫用です。
 本来、風邪はウイルス感染ですから、抗生物質は無効です。
 最近の考え方だと熱が39度だろうと40度だろうと
それだけでは原則的に抗生物質は使いません。
 しかし、かつてはそうではなかった。
 耐性菌の増加は
安易に「念のため」とか「とりあえず」で抗生物質を出していた我々医者の責任です。
 中耳炎を起こすから「予防」のため、なんてのもダメです。
 抗生剤飲んでても中耳炎になりますし、
そのためにかえって治りにくくなることもあります。
 まさか今はいないでしょうが、
兄弟で「溶連菌」の子が出ると、
症状の無い兄弟全員に抗生剤を飲ませるセンセイもいたらしいです。
 大分前に「MRSA」というものが話題になりました。
 これは「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」のことで、
やはり薬が効かない「耐性菌」です。
 しかし、「MRSA」が「PRSP」と大きく違う点があります。
 それは「MRSA」は「弱毒性」という点です。
 同じブドウ球菌でも「MRSA」は、通常の健康な人に感染症を起こすことはまずありません。
 低体重新生児、ガン末期、などの免疫力の弱い人に感染を起こすので
主として病院内の「院内感染」が問題になります。
 ところが「PRSP」はそんなことは無く、健康な人にも
どんどん感染症を起こしてきます。
 近年、中耳炎が治りにくくなってるのはこのためで、学会でも問題になっています。
 中耳炎で問題になってるって事は、
中耳炎そのものがべらぼうに多いからなので、
同じ肺炎球菌の「重症感染症」も治りにくくなってることが推測されます。
 中耳炎であれば鼓膜切開などの手術もありますし、
すぐに生命の危険は無いわけですが、
こういった菌が「髄膜炎」「菌血症」「肺炎」などを起こした場合は深刻です。
 そのため、小さい子の肺炎球菌の制御は大きな意味があるわけです。
 第3章ではいよいよ肺炎球菌ワクチンについて説明します。
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2010.04.27

「肺炎球菌ワクチン」についてのお話~その1


 最近、問い合わせの多い「肺炎球菌ワクチン」ですが、
ここで、ご説明しましょう。
 今回から数回にわたってご説明しますので、
興味のある方は、是非お読みください。
第1章 肺炎球菌とは
 私が、医学生の頃「細菌学」の授業の最初に聞いた話です。
 その、最初に教授が言ったことは、
「諸君は細菌というと、赤痢菌やペスト菌を連想するだろうが、
そんな菌に日常遭遇することはまずありません。」
 要するに「細菌」には3つのグループがあり
①体に入れば必ず病気を起こすもの(赤痢菌、ペスト菌etc.)
②通常は病原性を持たないもの(いわゆる常在菌)
③場所によっては「常在」するが、臓器に進入して病気を起こすもの
に分けて考えることができる。
 我々が通常の臨床で遭遇するのは③のグループの菌が多い。
 そんなわけで、講義の第1回は 「黄色ブドウ球菌」 だった。
んで、次に習ったのが「溶連菌」として有名な 「溶血性連鎖球菌」。
 もう、30年も前の話だが良く覚えています。
 肺炎球菌は、この③のグループに属する菌で、
その名のとおり「肺炎」の原因菌としては最重要ですが、
ヒトの鼻咽腔に「常在」することがあり、特に幼小児と老人で問題になります。
「中耳炎」の原因菌としては頻度がもっとも多い菌です。
 肺炎球菌が引き起こす病気として、もっとも危険なのは
「細菌性髄膜炎」 です。
 発症率は 5歳未満の10万人に2.9人 といわれていますが、
3分の1程度は死亡や重い後遺障害が残るといわれており大変危険です。
「細菌性髄膜炎」の原因としては「インフルエンザ菌B型(ヒブ)」の方が
頻度は高いですが、重症度は肺炎球菌のほうが高いといわれています。
 次に 「菌血症」 があります。
 発症率は 5歳未満の10万人に328人
 菌が血液の中に入ることによって多くの臓器にうつります。
 そしてもちろん 「肺炎」 です。
これはぐぐっと頻度は上がります。
 で、「中耳炎」 ですが、これはさらに3桁くらい頻度が上がります。
 まあ、そんなわけで「肺炎球菌感染症」を日頃一番診てるのは我々耳鼻科医なんです。
 毎日のように、
「うーん、こりゃ、肺炎球菌ですね、」
というセリフを口にしてます。
 肺炎球菌はインフルエンザ菌と並んで急性中耳炎の2大起炎菌ですが、
インフルエンザ菌と比べて、臨床症状が激しいのが特徴ですね。
 そして、その「肺炎球菌」が、近年、大きく変貌しています。
 ~第2章に続く
 次回は近年の肺炎球菌の問題点についてお話します。
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2010.04.16

ジェネリック医薬品ってどうよ

 最近ジェネリック薬を希望される患者さん結構いますね。
 「ジェネリック薬」とは、医薬品の発売から年数がたって、
特許が切れたため、開発メーカー以外にも製造を許された「後発品」です。
 いわゆる「コピー薬」で、かつては通称「ゾロ」といわれてました。
 「主成分」は「先発品」と同じですが、
製薬会社の開発にかかったコストや、
認可をとるために必要な様々なテストがカットされ、
データの提出が免除されるので、
「先発品」に比べ、安い価格になってるわけです。
 厚労省は医療費削減の一つの目玉として、
近年、ジェネリック薬を大いに推奨してるのは周知のことです。
 当院も患者さんの要望によって薬局でジェネリック薬に変えてもいいですよ、
という趣旨の処方箋を出しています。
 
 かつては「ゾロ」は安く仕入れられるので
「儲け」が多く開業医が利益重視で使っていた時代がありました。
 最近は「薬価差」が無くなり、院外処方が普及したため、
薬で利益を稼ごう、というお医者さんはまあ、あまりいないでしょう。
(そもそも医者が設け主義では困りますが。)
 だから、以前のように
「ゾロばっかり使ってる医者はちょっとなあ…」
というイメージは今はありません。
 多くの先生が積極的に「後発品」を使っています。
 ただし、一般的にはお医者さんは本当はジェネリック薬、
あんまり好きではないのではないか、と思います。
 問題はジェネリック薬は「先発品」と完全に同じ薬ではない、
という点です。
 「主成分」が、同じならばいいので、薬の製法上違う成分もあったりするわけです。
 特に子供用のドライシロップ製剤などは「主成分」はもちろん大事ですが、
「味付け」の成分も大きな要素を占めます。
 だから、当院は必ず「味見」をして、先発品と遜色ないものを
近くの薬局にはお願いしています。
 たとえば抗生剤の「クラリス」「クラリシッド」は、もともと、とても苦い薬で、
開発したメーカーは、発売後、研究に研究を重ね、3回味付けを変更して、
今の味になっています。
 ところが「後発品」は、主成分は同じでも
味付けの「秘技」はコピーできないので、
かなり飲みにくい薬になっています。
 また、もう一点はメーカーにより製品の質にばらつきがある、ということもあります。
 まあ、中にはちょっと怪しいメーカーもあるので、
完全に「コピー」しきれて無い奴もあるようで。
 実際にステロイドの軟膏を「ジェネリック」に変えたら、
ぐんと効きが良くなって、実はステロイドの濃度は同じだが基材が違ったので
元の薬より吸収良くなって実質的には強いステロイドを使ってることになっていた、
なんて噂も聞きます。
 また、皮膚に貼る気管拡張剤のテープも、基材が違って、
血中濃度が通常より高く上がってしまい、その分早く下がってしまうということもあるようです。
 そんなこともあって、薬剤師さんになるべく信頼できるメーカーの製品を勧めてもらうようにしています。
 最近は「先発品メーカーの子会社」や「先発品メーカー」そのものが
「ジェネリック医薬品」を作っているところも多く、
まあ、この辺なら信頼できるかなー、と思っています。
 ただ、処方箋はどこの薬局に持って行ってもОKなので、
なかなか難しい面もあるのですが。
 あと、心配なのは、ジェネリックが優遇されてくると、
メーカーはワリの悪い新薬の開発より、
リスクの無いジェネリック生産に走るようになり
良い薬ができないのでは、ということも感じます。
 まあ、適切に使えば、これはメリットも大きいわけで、
我々も勉強しますので、皆さんも正しい知識を持って使用してください。
「センセイ、なんでも最近は『ジェネリック』とかいういい薬が出たんだって?」
「いや、ジェネリック、薬の名前じゃありませんから。」
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