ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.05.20

忙しい日

 月曜日は忙しかったなー。
 午前中が1時10分までかかったが1時半から養護学校の検診。
現地まで20分以上かかるので、昼メシ抜きで看護婦さんと車で行く。
 養護学校の検診は人数は少ないが、手間がかかる。
 なんせ半分は車椅子やストレッチャーだし、20パーセントは病棟まで往診だ。
 去年も書いたけど、ここで
「ハイ、耳垢。耳鼻科行って取ってもらって。」
と、いうわけにはいかない。
養護学校の健診
 人工呼吸器ついて、寝返りもうてないような子が、耳垢とリに耳鼻科にかかれるわけは無い。
 今年も、鉗子やら異物鈎(耳用のフック)やら、持ち込んで無料の耳垢とりサービスです。
おかげで、健診でひっかかった子はナシです。
 3時に健診が終了後、即座に病院にとってかえし、午後の外来。
 これが、ナゼカ混んでる。
 昼メシ抜きで腹へったなー、と頑張って延々と続く外来をこなし
終わったのは午後8時半近く。
 その後、風呂に入ったり何だかんだで11時過ぎにやっと夕食。
「ああー、疲れたー。いただきまーす。」
と、冷蔵庫から出した缶ビールを開けようとすると、いきなり病院の電話が・・・。
 げげげ、と思ったが、しょうがない。
 3歳の子供の耳痛、発熱。
太田の人で、近くの耳鼻科はどこもつながらないので、足利までかけたらしい。
解熱鎮痛の座薬があるというので、
とりあえずそれ使って明日耳鼻科受診でも大丈夫です、と説明するのだが
どうしても診てほしい、という強い希望で、診察することに。
 とりあえず、缶ビールを冷蔵庫に戻し、代わりにノン・アルコール・ビールを出してくる。(涙)
 結局、太田の伊勢崎よりの方から来た患者さんを診たのは、
12時15分前で、診察が終わって本物のビールが飲めた時は日付が変わってました。
 グイッと飲んで、やっと一息。
あー、明日も健診があるのかー。
いや、今日でした。

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2009.04.11

哀愁のケフラール

 昨日も、まだまだインフルエンザ。
しかもB型もいたが、夕方来た患者さんは久々にA型でした。
今日も、B型が出たし、まだ続くのかよー、こんなに暖かいのに・・・・。
 さて、今日かかった、初診の赤ちゃん。
問診票の、飲んでる薬のところに「ケフラール」。
「尿管逆流症って、いわれてる?」
「ハイ。」
んなら、いいです。
 ケフラールって薬、私が医者になった頃(およそ4半世紀近く前か!)に出た抗生物質で、
それこそ、めちゃめちゃ売れた薬だと思います。
 いわゆる「セフェム系」の抗生物質で、当時ホントによく効いた。
時まさしく、抗生物質バブルの頃で、
何でもかんでも「とりあえず」抗生剤、って頃だった。
 その甲斐(?)あって、その後急速に耐性化が進み、
いまや、殆ど臨床的には役に立たないという、
逆に場合によっては耐性菌を元気にさせるので、使わない方がいいこともある、という薬だ。
 でも、この「尿管逆流症」には効くらしい。
私、専門外なのでよくわかりませんが、一応、論文取り寄せて読んだことがあります。
英語の論文だったけど、書いたのは日本の研究者でした。
 だから、今、この薬をそれ以外に使うことは、まず、無い。
(それでも20数年前と同じに効くと思って出してるナサケナイ医者もいたりするが。)
続いて、ヒットした「セフゾン」って抗生物質も、今や相当効かない薬になってます。
コッチは「黄色ブドウ球菌」に対する抗菌力があるので、「とびひ」なんかでは、
まだけっこう使われてますが、中耳炎なんかでは完全に出番ないですね。
 だから、そうやって処方されてる「ケフラール」を見ると、
昔は、一世を風靡した歌手が、いまや売れなくなって場末のドサまわりやってるみたいで
妙な哀愁があります。
ギャラ(=薬価)も、相当安くなったしね。

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2009.03.31

夏来にけらし

春過ぎて夏来にけらしプール熱 衣干すなよ 天の香具山
【解釈】プール熱だなんて、春が過ぎて夏が来ちゃったみたいだよ、
    でも(まだ実際はスギやヒノキの花粉が飛んでるから)洗濯物は天の香具山に干しちゃダメだよ。
【解説】元歌、持統天皇の歌は「万葉集」では「・・・夏来(きた)るらし」ですが
    「新古今和歌集」「百人一首」では「・・・夏来にけらし」になってます。
    「けらし」は「ける+らし」のつまったもので「~したようだ。」の意で過去の推量を表します。
  〔用法〕インフルエンザになりけらし⇒インフルエンザになったようだ
      あの二人は出来けらし⇒あの二人はデキてるみたいよ
      けらし明太子⇒したようだ明太子
 花粉症もヤマを越えたか、外来もだいぶ落ち着き、特に午後はガラガラです。
しかし、インフルエンザは、まだ出る。
 患者さん発生記録はまだ更新を続け、3月も終わろうというのに
一人もインフルエンザなし、の日はまだです。
さすがに毎日2ケタの患者さんが「陽性」だった頃に比べれば、
最近は1ケタですが、それでも最低一人は「陽性」が出てる。
今日も何人かいましたねー。
 おまけに最近は「咽頭結膜熱」の陽性者もちらほら出てきて、困ったもんだ。
この病気、俗に「プール熱」というアデノウイルスの感染症ですが、
名前のとおり、夏に流行るもの。
扁桃腺が腫れ、高熱が5日から1週間出ますが、抗生剤は無効です。
最近は迅速キットでインフルエンザや溶連菌みたいに外来でその場でわかります。
 インフルエンザと花粉症とアデノウイルスをいっしょに診るって、
最近は季節感がないのー。
この間は手足口病もいたし。
 まあ、最近は冬でもエダマメでビール飲んでるけど、
やっぱ、旬のものは、その季節に味わいたいもの。
 やっぱ、アデノは夏だよねー。
いや、別に自分がかかるんじゃなくて。

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2009.03.27

嚥下のリハビリ(その2)

(これはつづきです。その1からお読みください。)
 とりあえず、起きられるようになんないと。
 栄養チューブを鼻から入れて、検査結果が出るまで安静にさせられていたので
起き上がることも出来なくなちゃったのだ。
カロリーの面からは足りてるので、生物学的には生きているが、人間としてはこれではまずい。
 耳鼻科に転科して調べても、やはりこれ、とういう異常は見当たらず、
まあ、内科であれだけ調べてるし。
 文献を調べても、あまり参考になることが見当たらない。
ついに私は5000円もする「嚥下障害」なんていう、本まで買っちゃったが、ダメ。
 看護師さんとあれこれ作戦を立てる。
 当時、この手のリハビリのプロトコールなんてものは皆無だった。
 そして、手探りで、たどり着いたのが「トロミ」。
 ある朝、当直明け、
「先生、患者さんが食べなかった朝ごはん食べますか。」
「おー、食べる食べる。」
何せ、研修医は金がない。
当直ったって、病院から朝飯が出るわけではないので、こういうのは大歓迎。
 看護婦さんの控え室で食べさせてもらった。
「あれ、センセイ、生卵あまってますよ。」
「しまった、あせって食べたらご飯にかけるの忘れた。ショーユかけて飲んじゃうか。」
つるつるつる、ごくっ。
お、ナンカ、ひらめいた。
これだこれこれ。
こーいうツルリと入るものがいいのでは!
 そのころ、患者さんの食べ物の性状は「かたい」⇔「やわらかい」しかスケールがなかった。
病院食は「かたさ」「塩分」「カロリー」「添加物」などで細かく分類されてたが
嚥下に関しては「粘りけ」「トロミ」が重要だったのです。
 つまり、モノがかたまりでつるっと入っていけば
気管に入ってむせることが少ないわけです。
 最近の嚥下指導では「トロミ」は最重要ファクターで
かなり細かく研究されてるらしいです。
我々も、何とかそこにたどり着いたので、何とか解決の糸口が見つかったわけです。
 そして、リハビリ。
当時はリハビリ専門の部門がなかったので
整形のリハビリの人をよんで、独自のメニューを作ってもらいました。
マーゲン・チューブ(鼻から胃に入れる栄養チューブ)を抜き、
ベットの角度を上げ、少しづつ動く範囲を増やしていきました。
 毎日、ベッドサイドに行くたびにTさんの表情が豊かになります。
「どうですか、Tさん。大分、動けるようになったみたいですね。」
「いやー、センセイ。いつも、歩けー歩けーと言われてるので、
軍隊時代に行軍訓練をさせられてる夢を見ちゃいましたよ。」
なんて、言われたけど、歩けるようになったTさんはどんどん元気になり、
トロミ食も、功を奏して、経口摂取が可能になりました。
 約1ヶ月後、Tさんは、めでたく退院しました。
もちろん、自分の足で歩いて。
 今だったら、きちんとしたプログラム、ガイドラインがあるのでしょうが、
当時は何も参考になるものがありませんでした。
 その時思ったのは、人間は治る力がある、ということです。
治療といえば、それまで薬と手術のことだ、と思ってたのですが、
その薬や手術にしても、人間の治癒力の助けをしてるに過ぎないんだなということに
改めて気づかされました。
 そして、薬や手術やその他、リハビリ、生活指導等を用いて、
人間の「治る力」を最大限に発揮させるような状況を作ってあげるのが
医者をはじめとする「医療者」の役割なんだなーと感じたわけです。
そこが機械の修理と人間の治療の違うとこなんだよなー。
 地道にこつこつとリハビリを指導する理学療法士、作業療法士などの皆さん、
すばらしいなーと思います。
 自分の足で歩いたり、自分の口からご飯食べるって、大事なことですよね。

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2009.03.27

嚥下のリハビリ(その1)

 昨日の夜は「嚥下研究会」という学会に出席して話を聴いてきました。
学会、研究会はちょくちょく行くのですが、大体「アレルギー関係」か「感染症関係」が主です。
昨日は、初めてだったのですが、若い女の人が多いのでびっくりしました。
なるほど、介護やリハビリ関係の人が聴きに来るので、若い女性が多いんだー。
時代は、こういう方向なんだなー、と思いました。
 嚥下、リハビリ、ときいて思い出したのは
20年以上前に大学病院で受け持った患者さんのことでした。
 「オグラさん、この患者さんを受け持ってください。」
教授に呼び出されじきじきに頼まれたTさんは、ある耳鼻科の開業医の先生のお父さん。
もう80歳以上のご高齢です。
 主訴は「嚥下障害と誤嚥」つまり物をうまく飲み込めず、気管の方に入ってしまうのです。
 えー、嚥下障害、困ったなー。と、思いました。
当時、医者になってまだ3年目。
嚥下障害に対する知識も経験もなかった。
 「じゃあ、オグラさん、頼みましたよ。」
ウチの教授(当時)は、医局員をすべて「さん」付けで呼ぶ礼儀正しい人でした。
 患者さんはすでに2ヶ月前から、第1内科に入院しており、
いろいろ調べたけど、わかんないので耳鼻科へ、と廻されたのです。
 さっそく1内にいって、カルテを見せてもらいました。
「うわー、内科のカルテはいっぱい書いてあるなー。」
オペ記事主体の耳鼻科のカルテとはえらい違いだ。
 そこには身長体重から始まって、瞳孔、結膜、眼球運動から
皮膚、呼吸音、心音、腹部、各腱反射等々、ありとあらゆる所見が網羅されており
ページをめくると、血液、尿の検査が何ページにもわたってずらりと並んでいる。
そして心電図、レントゲン、CT、エコー・・・・ともかくあらゆる検査が列挙されていた。
良く、こんなにやったもんだ。
 病室に行って、Tさんの顔を見て、
これから耳鼻科に転科して私が診ますのでよろしく、と挨拶してきた。
 で、内科の前の受け持ちの先生に
「じゃあ、明日ベッド用意しときますから、お願いします。」
と言ったら、
「じゃあ、ストレッチャーでお迎えお願いします。」
とのこと。
「ん?この人、歩けないんですか?」
「はい。」
「何で?」
「何でったって、ハテ、何でだろう?ねえねえ、看護婦さん何でこの人歩けないの?」
 おいおい、冗談じゃねえ。
カルテの一番最初に
「Admssion on foot」って、書いてあるじゃん。(独歩にて入院って意味です。)
この、じいちゃんは、歩って入院したんだぜ。
検査、検査でずっと安静臥床してたので、歩けなくなちゃったんだ。
ったく、もう。
 今では考えられないが、当時の内科なんてそんなもんだった。
 よし、オレが何とか食えるようにしたる。
 その日から、手探りの嚥下障害治療が始まったのだった。
(つづく)

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2009.03.23

秘伝の処方

 花粉症はピークですが、鼻だけでなく目の症状を訴える方も当然たくさんいらっしゃいます。
 「目薬、出しましょうか?」
 「ああ、目薬は眼科さんのほうでもうもらってます。」
 「じゃあ、大丈夫ですね。一応カルテに書いときますので
 なんという目薬ですか。」
 「それが、何も書いてません。今、持ってますけど。」
 「えー、ちょっと見せてください。」
 なるほど、赤い蓋、緑の蓋、青い蓋のプラスチックのビンは
いわゆる汎用品で、メーカーの目薬を病院で中身を詰め替えたもの。
当然、何のラベルも表示もない。
中身はなんだか全くわからない。
容器代もかかるだろうに。(まさか患者負担ってことはないよね。)
 おー、今どきまだ、こんな医者いるんだー。
 かつて、お医者さんは処方の内容を明かさない、っていう時代がありました。
自分とこで乳鉢なんかで調合してた時代の名残りでしょうか。
軟膏や目薬を別の容器に入れ変えたり、PTPの薬の名前のとこをわざと切ったりしてました。
 軟膏、目薬なんかはかつてはラベルがあるにはあるが
一部しかくっついてなくて名札みたいにピラピラしていました。
それを、お医者さんがピッてちぎって出していたこともありました。
 しかし、時代は変わり、
患者さんの知る権利を尊重し、院外処方箋の普及もあって、
お医者さんで出た薬は、原則的にすべてわかるようになっています。
 個人的には、これ、とてもいいことだと思います。
 医療の透明性がますことにより、医療全体の質の向上につながると思います。
(まあ、抗がん剤など薬によっては簡単にはいかないものもありますが)
 実は、私が開業する時、最初は院内の処方だったのですが、
患者さんに薬の名前を知ってもらおうと、すべてに薬の名前と種類、効能などを書いた
タグをホチキスでとめて出してました。
 その後、そういう行為に対して保険点数をとってもいい、ということになり
多くの病院がやるようになって来ましたが、
ウチはその前からタダでやってました。
 その後、当院は院内処方から院外処方になったのですが、
その後も薬局にお願いして、患者さんに全部の薬がわかるようにしてもらってました。
今は点数化されたので、どこでもやってますけどね。
 患者さんにとって、自分が今飲んでる薬がわかるってことは
とても大事なことで、医者と患者の信頼関係にもつながります。
 
 そして、実は何といっても、院外処方のいい点(悪い点?)は、
プロが見るとその病院の医者のレベルがすぐわかっちゃうこと。
 いやー、毎日参考になってます(苦笑)。
納得したり、あきれたり、感心したり、ナンダこりゃーとクライ気持ちになったり・・・。
専門外のものは「ふむふむ」が多いですが、花粉症や風邪を含む感染症などは
ネガティブなサプライズが多いですね。
いやはや・・・、びっくりする処方ありますよ。
 個人的には「注射・点滴」も情報開示したほうがいいと思っていますが・・・。
反対する医者、多いだろうなー。
それでは、困るのですが。
 さて、話は戻って最初の三本のビン、患者さんが
「この赤いのはビタミン剤だっていってました。」
といってたので、花粉症にビタミンの点眼が必要かどうかはわからないが、
それはともかく、そーするとあと2本は
抗アレルギー剤と、抗菌剤、またはステロイド剤だろう。
「じゃあ、とりあえずそれ使っといてください。」
とは、言っときましたが。
 ただ、目薬の詰め替えは細菌混入の機会が増えるので、
情報開示がどうのの前に、やめた方がいいとは思いますね。

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2009.03.17

本能的処方

 「托卵(たくらん)」というのをご存知ですか。
カッコウなどが、ホオジロ、モズなどの他の種類の鳥の巣に卵を産みつけ、
育てさせるというもの。
カッコウの卵は早く孵化し、雛の成長も早いので
もともといる卵や雛を巣から蹴落としてしまいます。
 親は自分よりはるかに大きくなった雛にせっせと餌を運ぶのですが、
どうも、雛の口をあけたときの色を見ると、
餌をあげなくてはいられなくなってしまうみたいです。
あいてる口の色を見ると、それが自分の子供かどうかなんてのは、どっかいっちゃうみたいで。
 げに、本能とは恐ろしいもの。
 小児科の先生の中にもそれとよく似た習性を持つ人がいるみたいです。
 今日かかった、7ヶ月の赤ちゃん、ハナが多いので
耳だれで受診した2つ上のお兄ちゃん(当院でチューブ入れてます)といっしょに受診しました。
この赤ちゃん、水曜日の午後に熱が出ましたが、当院は水曜午後休診なので、
近くの小児科にかかったそうです。
「それで、インフルエンザ、Bだって言われました。」
「あー、そう、わかって良かったね。でも、大変だったね。この歳だとタミフルも飲めないしね。」
「ええ、でもわりと早く熱が下がってよかったです。」
「そりゃ良かったですね。」
「メイアクトが効いたんですね。」
「!?メイアクト?」
「この子はまだタミフルが飲めないからって、メイアクトとクラリスが出ました。」
「メイアクトとクラリスが同時に!!」
 もともと、このセンセイ、抗生剤が大好きでどんな患者さんにも
抗生剤を出すので有名。
そのたびにコッチで患者さんに説明するので、疲れるったら。
 しかし、診断がつかないならまだしも
(いや、それでも0歳代の子供に初診で憶測で抗生剤出すのはマズイけど)
「インフルエンザB型」って自分で言っといて抗生剤、しかも2剤、しかも0歳児!
 おそらく、ホオジロの親が
「この子は自分の子ではない、
でもこの口をみると餌を運ばずにはいられなくなる」、
と同じように、このセンセイは
「この子はインフルエンザの発熱だ、
でも発熱の子をみると抗生剤を処方せずにはいられない」、
とういう、「本能」というか「呪縛」みたいなものにとらわれてるに違いない。
「インフルエンザなんだから、とりあえずメイアクトもクラリスもいらないから。
インフルエンザのあとは、ハナやセキが続くものなので、少し経過みましょう。
また、熱が上がったら、診てみましょうね。」
 それにしても「殺菌的」な抗生剤のメイアクトと「静菌的」な抗生剤のクラリスは
併用しない、って原則があるんですけどね。

1件のコメント
2009.03.03

メドレー・リレー

 相変わらず、発熱の患者さんが多いです。
 インフルエンザや、溶連菌は子供が学校や保育園でもらうと
家族内にリレーのように感染が広がります。
 中には、保育園に行ってるY君みたいに一人で
最初「インフルエンザA型」、
治ったと思ったら、「溶連菌感染症」
その後すかさず「インフルエンザB型」になり、
こないだから「急性中耳炎」の治療中です、なんてかわいそうな子もいる。
 さしずめ「個人メドレー」ってとこですね。
 先日、来たFさんのお家はH君、Yちゃん、T君の3人兄弟です。
先週初めに一番下のT君が発熱、「インフルエンザB型」でした。
 続いて、Yちゃんが熱を出して来院。
「あー、感染っちゃったのね。」
とのどをみると、いや、こりゃ違うぞ。
診断は「溶連菌感染症」。
 おやおや、まあ、と思ってたら次の日にお兄ちゃんが熱発。
「どっちかねー。」とのどをみると
「うーん、こりゃ、溶連菌じゃないね、インフルエンザの検査しましょう。」
で、調べると果たして「インフルエンザ」。
しかし何と「A型」!
また、別口をもらってきちゃったんだ。
 3人3様の感染症で、いずれも出席停止。
お父さんは頭を抱えてましたね。
家にいる3人がお互い感染らないようにせねば。
しかも、両親も。
 で、今日、最後に「A型」になった一番上のH君が、治癒証明書をもらいに来院。
「あー、元気になったねー、よかったねー。」
で、のどをみると、
「あれ、ひょっとして、溶連菌、感染ってるかも。」
調べてみると、これがバッチリ「陽性」。
 「出席停止」は残念ながら、延長になりました。

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2009.02.25

インフルエンザの予防接種の疑問

 相変わらずB型インフルエンザ多いなー、と思ってたら、今日またAも出たりして。
まあ、寒くなって少し花粉症のスパートが遅れたのは、
いいことだが、その分インフルエンザが逆戻り。
 さて、よく質問を受けるのでご説明しますが
「予防接種しててもかかるのか?」
という問題。
 答え「かかります。」
 なんだ、じゃあ意味ないじゃん、何でだー。
詐欺じゃねーか。
 その疑問にお答えしましょう。
 さて、予防接種というのはかの偉大なジェンナーさんが実用化したものだが、
病原体を体に認識させて、その「抗体」を作らせる、ってのが原理だ。
 たとえば「おたふく」「はしか」なんかにかかった人は、もう同じ病気にはかからない。
おたふくウイルス、はしかウイルスに対する「抗体」ってのができるので、
ウイルスが進入してくると、それって感じで抗体が動員され、処理しちゃうわけだ。
 だからインフルエンザウイルスを不活化したワクチンを注射することによって、
体がこのウイルスを認識し、抗体をつくり始めるわけだ。
子供は大人に比べてウイルス経験が少ないので、2回接種して、
ああ、抗体つくんなきゃ、という気にさせるわけだ。
 で、予防接種すると数週間で体はインフルエンザウイルスの「抗体」をつくる。
シーズンになり、本物のインフルエンザウイルスが体に入ってくると、
「お、来やがったな、オメエのことはすでに知ってるぜ。これでも食らえ。」
と攻撃して退治しちゃうわけです。
 ところが・・・
 一時にあまり大量のウイルスが入ってくると、抗体の処理能力が
ウイルスの増殖スピードに追いつかず、結果的にウイルスに押し切られてしまいます。
これが「感染」です。
 ただ、抗体をすでに持ってれば、最終的には準備してない人より回復は早いはずです。
 軽い、感染は防げるし、かかっても治りは早い、ので予防接種は効果があります。
 しかし・・・
 ウイルスと抗体はそれぞれ1対1対応、つまり型が違うと効果がありません。
たまに、厚労省の予測と実際に流行するウイルスの型が
微妙にずれちゃうこともないわけではありません。
 型といっても、予防接種は通常A型を2種類(ソ連型、香港型)とB型を1種類ブレンドしてあります。
メーカーが違っても、この方はいっしょです。
ただ、例えば同じソ連型の中にも細かい型がありこれがずれちゃうことがあるわけです。
 ちなみに今年話題になった「タミフル耐性ソ連A型」はちゃんとワクチン効く型だそうです。
 そして・・・
 寝不足や過労、かぜや不摂生などによってからだの抵抗力が落ちると
抗体の産生が弱まります。
そういう時も抗体の力が足んなくて「感染」しちゃうわけです。
(今年のオレのパターンだ・・・。)
 ちなみに新型インフルエンザが怖れられてるのは、
人類がまだ感染したことがないので、抗体をつくった経験がない、からです。
まあ、インフルエンザには違いないのでいずれ抗体はできるし、
映画「宇宙戦争」のエイリアンみたいに、いきなり全滅ってことはないのですが。
(宇宙戦争、観たことありますか?SF映画の古典でわたしの好きな映画のベスト10に入ります。
数年前、トム・クルーズかなんかでリメイクされましたね。)

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2009.02.24

インフルエンザの「グリグリ」

 一旦、下火になったインフルエンザがまた流行ってきました。
今は、ほとんどがB型ですね。
 B型はA型に比べて高熱が出ない場合があるので、
そうと知らずに撒き散らしちゃうこともあるようです。
 先日来た、子供の患者さん。
「午後から熱が出てきました。」
「あー、周りにインフルエンザいます?」
「先週金曜日に、上の子が高熱を出して小児科かかったんですが、
翌日来て下さいといわれ、土曜日にインフルエンザの検査したけど陰性でした。
もう4日目なんですけど、まだ上の子は熱でてるんですよ。」
「ふーん、同じヤツですかねー。調べてみようか。」
ということで「グリグリ」。
「あー、薄いですがB型出てますね。インフルエンザですね。」
「えーーーーっ。」
と、驚くお母さん。
「6時間待たなくても、出るときゃ出るんですよ。
すると、多分上の子もインフルエンザだったみたいですね。」
「ええー、でも、陰性でしたよ。」
「どうやって検査してました?」
「鼻に、ちょこっと、あー、そういえばさっき先生がやったのとずいぶん違うかも。」
 そうなんです。
インフルエンザの検査、ちょこっと鼻に綿棒の先を入れたくらいでは出ないこともある。
鼻水が多いと、綿棒が鼻水だけ吸ってしまうから、出来れば鼻をよく吸引してから
(まあ、小児科では吸引できないからよく鼻をかませてから)
綿棒を鼻の突き当りまで入れてグリグリしないと正確に出ません。
 私は綿棒の端っこを折り曲げて「へ」の字の形にして、鼻の中を見ながら奥まで入れます。
途中で折り曲げると手が邪魔にならず、綿棒の先が見えるからです。
そして両鼻に一回づつ、鼻の奥の上咽頭という場所に突き当たるのを確認して「グリグリ」。
この「両鼻の奥のグリグリ」が、大事なのだ。
 実は、今シーズンあるメーカーが「新製品です」といって持ってきた綿棒があった。
従来品よりやわらかくなってて、鼻に入れやすい、という触れ込みでした。
ところが、試したところこれが全然ダメ。
上咽頭まで入れると、やわらかいので、そのまま曲がってどんどんのどの方へ入っちゃう。
突き当たらないので「グリグリ」が出来ないのです。
なので、ボツ!
臨床の場を知らないメーカーの失敗作でした。
 しかし、実際にあの手の綿棒使ってる先生、いるんだろうか?
いるとしたら、多分そこんちは、インフルエンザの診断率、低いかも。

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