2009.12.08
今日来た患者さん。
「子供が先日RSウイルスといわれまして。」
「ああ、RSね。風邪ですね。」
さて、RSウイルスって何でしょう。
「RS」。
車好きの人なら、思い出すのは
1980年代に日産が伝説のGT-R以来のツインカム搭載のスカイラインを発表したとき
「RS」のネーミングでした。
これは「レーシング・スポーツ」の略でしたね、前原先生。
まあ、全然関係ないですね。
じゃあ「RS」は、何?
「レッズ・サポーター」でも「ローリング・ストーンズ」でも
「リクライニング・シート」でもないぞ。
「Respiratory Syncytial ウイルス」で「RSウイルス」。
名前は難解ですが、要するに風邪のウイルスです。
我が国では2歳代までに国民の100%がかかり、
「セキやハナなどの風邪」の原因ウイルスとして非常にポピュラーです。
「Respiratory」は「呼吸器の」という意味です。
感染を繰り返すごとに症状は軽くなりますが、
終生免疫はできないので、大人でもかかります。
まあ、子供だったらほぼ毎年、かかってる子の方が多い位です。
ウイルスに対する薬はなく、去痰剤程度で対症療法をします。
もちろん抗生物質は無効です。
まあ、大きい子や大人は薬なしでも「寝てれば治る」風邪です。
ただし、そんなわけで母体からの移行免疫が十分でないので、
0~1歳の乳児、特に通常はあまり風邪を引かない6ヶ月未満の赤ちゃんに初回感染をした場合、
気管支炎、細気管支炎、肺炎などが重症化することがあり
しばしば入院治療を必要とします。
そこで、インフルエンザの簡易検査みたいな
迅速検査キットが「3歳以下の入院患者」に限って使われます。
まあ、3歳以上は検査する意味ないですから。
家に新生児がいれば、ってのはあるかも知れないが、
感染は飛沫もあるが、接触が多いとされてるので、
赤ちゃんに近づかなければ防げるはずです。
ところで、今回の子、5歳で外来患者さんなんだけど、
そこの病院は何で検査したんだろう。
もともと、保険通らないから、患者実費か病院負担の無料サービスなんでしょうけど、
そこまでして、やる意味あんのかしら。
お母さんは聞いたことないウイルスの名前言われて
またまた「新手」のウイルスかと思い
相当びびったらしいですけど。
2009.12.02
さて、先日「今度の日曜日、インフル外来します」
で、お知らせしたとおり、結婚式の前にインフルエンザ外来をしました。
最初に来たのがいつもウチでかかっていて、
チューブ留置術までしたことある「おなじみさん」だったのでビックリ。
それほどたくさんの患者さんでごった返すということは無く、
待ち時間もほとんど無く淡々と過ぎました。
後で、聞けば日赤のほうはかなり混んでたとのことなので、
情報を伝えてこっちに回って貰うようにしとけば良かったかと思いました。
どうせなら、普段インフルエンザ見慣れてない救急の先生よりこっちのほうが専門ですし、
何より、発熱者の間で長く待たされると、インフルエンザでなかった方まで
その場でインフルエンザに感染、ってこともけっこうありそうだ。
それから、先日の日曜日ははインフルエンザ疑いでかかった子の中に、
急性中耳炎が2人もいました。
2人とも小さい子なので、本人の訴えも無く、回りからは気づかれなかったのですが、
1人の子はすでに片方の鼓膜が破けて少し膿が出ていました。
もちろんインフルエンザ検査は陰性。
確かに幼小児の発熱で最も原因として多いのは風邪で、
インフルエンザも広くは、この範疇ですが、
次に発熱の原因として多いのが中耳炎ですから、
耳鼻咽喉科医が担う役割は多いなー、と感じます。
今回の中耳炎の子にしても、フツーにいけば耳鼻科までまわってくるのは
もう少し時間がかかってしまうわけで、ラッキーでしたね。
で、ややインフルエンザ減ってきたようですが、
まだまだ出てますので
今週末の日曜日、再び、インフルエンザ外来をやります。
インフルエンザ疑いの発熱の方は9時半から12時の間、受診できます。
問題は、前日「CRP」のライブなので、
私が日曜日に二日酔いから立ち直ってるかどうか、なんですが。
2009.11.26
緊急連絡です。
先日の休日の患者さんの話、またまたブログ読者の方からのご連絡により
休日診療所が大変なことになってるようです。
んー、このままではイカン。
そのため、急遽、今度の日曜日当院もお手伝いすることにしました。
医師会休日診療所の担当の方と相談した結果、
休日診療所に問い合わせがあった患者さんのうち、
インフルエンザ疑いの発熱患者さんをこちらにまわしてもらうことにしました。
まあ、問い合わせはほとんどがインフル疑いのヒトでしょうが。
ただし、今度の日曜日は午後からCRPのアヤちゃんの結婚式のため、
お昼過ぎにはバスに乗って(しかもギター持って)
宇都宮まで行かなきゃならないので、
11時~11時半くらいで受付は打ち切りになっちゃうと思いますが、できるだけやります。
朝、9時半からです。
日曜日はインターネット受付は「なし」ですので、
状況をお電話で確認いただけるとよろしいかと思います。
もちろん、直接来ていただいてもけっこうですが、
インフルエンザ疑い以外の通常の初診、再診は受けませんのでご理解ください。
耳が痛い子は、もちろん診ます。
熱が出てから数時間たってからの方が検査の正確性が出ます。
土曜の夕方、夜から、あるいは日曜日朝からの発熱の方は、
日曜の午前中にお越しください。
日曜のお昼、午後からの発熱の方は、月曜日の受診で間に合いますから、
熱が多少高くても、なるべく夜間救急を受診しないようにしましょう。
本当に重症な方がきちんと診られなくなります。
昨日のブログで述べたように、新型はそれほど恐れることはありません。
この提案に対し、
二つ返事で引き受けてくれた薬局の小峰君、
そして、当院のスタッフの皆さん、
感謝です。
やはり、今回のインフルエンザは一つの「社会的災害」ではあります。
常々思っていることですが、医療機関は個人経営でもやはり公的な役割があります。
かつてのブログ「やり残した事」で書いたことがすこーしだけできるかも。
アフリカやアフガニスタンはそう簡単には行けなくても、
ここでは多少、役に立てるでしょう。
1分で行けるし。
2009.11.14
最近は院外処方が一般的になって、
患者さんが飲んでる薬が、本人にも第3者にもわかるようになりました。
これは大変良いことで、複数の医療機関にかかる場合とか、
前医での治療歴がある場合など、必要不可欠な情報が得られます。
また、専門家が見ると
「おお、この先生はできる!」
とか
「こんなのダメに決まってるじゃん。アホか。」
とか(実はこっちが意外と多い)
「へえ、この病気は今こんな治療するんだ。」
などと参考になることが多い。
その中で、最近これってどうなの?と思ってることがある。
それは、喘息(特に小児)の治療で使われる「テオドール」という薬だ。
私は、耳鼻咽喉科専門医なので、もちろん喘息は専門ではない。
しかし、耳鼻科の中での専門はアレルギーだし、
喘息を合併した子の、診察も治療もかなりしたことがある。
そういった、研究会で話を聞いたり文献にも目を通す。
で、最近の、特にこの5、6年で喘息治療の方針が大きく変わってきたのだ。
昨今はいろんな疾患に「ガイドライン」というものができて
「この病気は、段階に応じてこんな治療法を選択していきましょう」
なんていうマニュアルみたいなもんがある。
これは主に一般医を対象にした「指南書」で
耳鼻科領域の「アレルギー性鼻炎」「花粉症」「中耳炎」などのガイドラインなんてのは、
私なんかにとっては
「何をいまさら」
という内容なのだが、
自分の専門外の分野については、いちいち目を通すようにしている。
それによると、現在「喘息治療の基本方針」は
「発作の予防」と「気道炎症の改善」が根幹で
その中心になるのが
「オノン」などの(お、どっかで聞いたことある薬!)アレルギーを抑える薬と
「吸入ステロイド」なのだ。
気管支拡張作用を持つ「テオドール」は、かつて喘息治療の花形だったが
今や、あまり推奨されなくなっている。
理由は「喘息治療の概念の変化」とテオドールの「副作用」の問題だろう。
薬には血中濃度によって「有効域」と「中毒域」がある。
実は、テオドールはこの幅が大変狭い薬なのだ。
つまり、少ない量では効かないが、多くするとけいれんなどを起こしやすい。
しかも「発熱」や、「他の薬剤(特に問題になるのはマクロライド系の抗生剤)との相互作用」で
血中濃度の上昇をきたしやすい。
「風邪」に基づく「喘息様気管支炎」で使用した場合、
熱が出てる場合が多いし、抗生剤が併用されることも多い。
多くの副作用が報告される中、メーカー側も事故を怖れて
たびたび注意文書を発し、数年前には体重あたりの投薬量を見直して、
より少ない量での換算票に差し替えてきた。
つまり
「もう、あんまり使わないで。」
ってことらしい。
ところが、
ウチで治療中の子が、喘息発作みたいの起こして
「この間○○小児科で喘息って言われて薬が出ました。」
って、お薬手帳を見ると、「テオドール」。
このセンセイ、いつもこれだ。
「ううむ。」
これが私の専門領域ならああだこうだ言えるんですが、
「喘息」ってなると・・・・・。
「なんか薬の説明受けた?」
「いえ。」
「うーん・・・。」
・・・・・どうなんだろ。
以前からテオドール使ってる子ならまだしも、
まるっきり初めてで、これは・・・。
もちろん、使い慣れてる、ってのはあるけど
医学の常識はどんどん変わる。
昨日の治療法が、今日は禁忌だった、なんてこともある世界だ。
以前の創傷治療もそうだが、解熱剤にしろ、咳止めにしろ
昔とは180度考え方の変わったものはざらだ。
せめて、一言使用理由の説明をしてもらえれば・・・。
やっぱ、医者は常に知識をアップ・トゥ・デイトしとかないとまずい。
そういや「風邪による急性胃腸炎」つって、
いつも下痢止めの「ロペミン」出してる小児科医もいるんだが、
これも、どうなんだろ。
いやー、専門じゃないからよくわかんないけど、ちょっとオレは出さないよ。