ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.03.23

秘伝の処方

 花粉症はピークですが、鼻だけでなく目の症状を訴える方も当然たくさんいらっしゃいます。
 「目薬、出しましょうか?」
 「ああ、目薬は眼科さんのほうでもうもらってます。」
 「じゃあ、大丈夫ですね。一応カルテに書いときますので
 なんという目薬ですか。」
 「それが、何も書いてません。今、持ってますけど。」
 「えー、ちょっと見せてください。」
 なるほど、赤い蓋、緑の蓋、青い蓋のプラスチックのビンは
いわゆる汎用品で、メーカーの目薬を病院で中身を詰め替えたもの。
当然、何のラベルも表示もない。
中身はなんだか全くわからない。
容器代もかかるだろうに。(まさか患者負担ってことはないよね。)
 おー、今どきまだ、こんな医者いるんだー。
 かつて、お医者さんは処方の内容を明かさない、っていう時代がありました。
自分とこで乳鉢なんかで調合してた時代の名残りでしょうか。
軟膏や目薬を別の容器に入れ変えたり、PTPの薬の名前のとこをわざと切ったりしてました。
 軟膏、目薬なんかはかつてはラベルがあるにはあるが
一部しかくっついてなくて名札みたいにピラピラしていました。
それを、お医者さんがピッてちぎって出していたこともありました。
 しかし、時代は変わり、
患者さんの知る権利を尊重し、院外処方箋の普及もあって、
お医者さんで出た薬は、原則的にすべてわかるようになっています。
 個人的には、これ、とてもいいことだと思います。
 医療の透明性がますことにより、医療全体の質の向上につながると思います。
(まあ、抗がん剤など薬によっては簡単にはいかないものもありますが)
 実は、私が開業する時、最初は院内の処方だったのですが、
患者さんに薬の名前を知ってもらおうと、すべてに薬の名前と種類、効能などを書いた
タグをホチキスでとめて出してました。
 その後、そういう行為に対して保険点数をとってもいい、ということになり
多くの病院がやるようになって来ましたが、
ウチはその前からタダでやってました。
 その後、当院は院内処方から院外処方になったのですが、
その後も薬局にお願いして、患者さんに全部の薬がわかるようにしてもらってました。
今は点数化されたので、どこでもやってますけどね。
 患者さんにとって、自分が今飲んでる薬がわかるってことは
とても大事なことで、医者と患者の信頼関係にもつながります。
 
 そして、実は何といっても、院外処方のいい点(悪い点?)は、
プロが見るとその病院の医者のレベルがすぐわかっちゃうこと。
 いやー、毎日参考になってます(苦笑)。
納得したり、あきれたり、感心したり、ナンダこりゃーとクライ気持ちになったり・・・。
専門外のものは「ふむふむ」が多いですが、花粉症や風邪を含む感染症などは
ネガティブなサプライズが多いですね。
いやはや・・・、びっくりする処方ありますよ。
 個人的には「注射・点滴」も情報開示したほうがいいと思っていますが・・・。
反対する医者、多いだろうなー。
それでは、困るのですが。
 さて、話は戻って最初の三本のビン、患者さんが
「この赤いのはビタミン剤だっていってました。」
といってたので、花粉症にビタミンの点眼が必要かどうかはわからないが、
それはともかく、そーするとあと2本は
抗アレルギー剤と、抗菌剤、またはステロイド剤だろう。
「じゃあ、とりあえずそれ使っといてください。」
とは、言っときましたが。
 ただ、目薬の詰め替えは細菌混入の機会が増えるので、
情報開示がどうのの前に、やめた方がいいとは思いますね。

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2009.03.17

本能的処方

 「托卵(たくらん)」というのをご存知ですか。
カッコウなどが、ホオジロ、モズなどの他の種類の鳥の巣に卵を産みつけ、
育てさせるというもの。
カッコウの卵は早く孵化し、雛の成長も早いので
もともといる卵や雛を巣から蹴落としてしまいます。
 親は自分よりはるかに大きくなった雛にせっせと餌を運ぶのですが、
どうも、雛の口をあけたときの色を見ると、
餌をあげなくてはいられなくなってしまうみたいです。
あいてる口の色を見ると、それが自分の子供かどうかなんてのは、どっかいっちゃうみたいで。
 げに、本能とは恐ろしいもの。
 小児科の先生の中にもそれとよく似た習性を持つ人がいるみたいです。
 今日かかった、7ヶ月の赤ちゃん、ハナが多いので
耳だれで受診した2つ上のお兄ちゃん(当院でチューブ入れてます)といっしょに受診しました。
この赤ちゃん、水曜日の午後に熱が出ましたが、当院は水曜午後休診なので、
近くの小児科にかかったそうです。
「それで、インフルエンザ、Bだって言われました。」
「あー、そう、わかって良かったね。でも、大変だったね。この歳だとタミフルも飲めないしね。」
「ええ、でもわりと早く熱が下がってよかったです。」
「そりゃ良かったですね。」
「メイアクトが効いたんですね。」
「!?メイアクト?」
「この子はまだタミフルが飲めないからって、メイアクトとクラリスが出ました。」
「メイアクトとクラリスが同時に!!」
 もともと、このセンセイ、抗生剤が大好きでどんな患者さんにも
抗生剤を出すので有名。
そのたびにコッチで患者さんに説明するので、疲れるったら。
 しかし、診断がつかないならまだしも
(いや、それでも0歳代の子供に初診で憶測で抗生剤出すのはマズイけど)
「インフルエンザB型」って自分で言っといて抗生剤、しかも2剤、しかも0歳児!
 おそらく、ホオジロの親が
「この子は自分の子ではない、
でもこの口をみると餌を運ばずにはいられなくなる」、
と同じように、このセンセイは
「この子はインフルエンザの発熱だ、
でも発熱の子をみると抗生剤を処方せずにはいられない」、
とういう、「本能」というか「呪縛」みたいなものにとらわれてるに違いない。
「インフルエンザなんだから、とりあえずメイアクトもクラリスもいらないから。
インフルエンザのあとは、ハナやセキが続くものなので、少し経過みましょう。
また、熱が上がったら、診てみましょうね。」
 それにしても「殺菌的」な抗生剤のメイアクトと「静菌的」な抗生剤のクラリスは
併用しない、って原則があるんですけどね。

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2009.03.03

メドレー・リレー

 相変わらず、発熱の患者さんが多いです。
 インフルエンザや、溶連菌は子供が学校や保育園でもらうと
家族内にリレーのように感染が広がります。
 中には、保育園に行ってるY君みたいに一人で
最初「インフルエンザA型」、
治ったと思ったら、「溶連菌感染症」
その後すかさず「インフルエンザB型」になり、
こないだから「急性中耳炎」の治療中です、なんてかわいそうな子もいる。
 さしずめ「個人メドレー」ってとこですね。
 先日、来たFさんのお家はH君、Yちゃん、T君の3人兄弟です。
先週初めに一番下のT君が発熱、「インフルエンザB型」でした。
 続いて、Yちゃんが熱を出して来院。
「あー、感染っちゃったのね。」
とのどをみると、いや、こりゃ違うぞ。
診断は「溶連菌感染症」。
 おやおや、まあ、と思ってたら次の日にお兄ちゃんが熱発。
「どっちかねー。」とのどをみると
「うーん、こりゃ、溶連菌じゃないね、インフルエンザの検査しましょう。」
で、調べると果たして「インフルエンザ」。
しかし何と「A型」!
また、別口をもらってきちゃったんだ。
 3人3様の感染症で、いずれも出席停止。
お父さんは頭を抱えてましたね。
家にいる3人がお互い感染らないようにせねば。
しかも、両親も。
 で、今日、最後に「A型」になった一番上のH君が、治癒証明書をもらいに来院。
「あー、元気になったねー、よかったねー。」
で、のどをみると、
「あれ、ひょっとして、溶連菌、感染ってるかも。」
調べてみると、これがバッチリ「陽性」。
 「出席停止」は残念ながら、延長になりました。

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2009.02.25

インフルエンザの予防接種の疑問

 相変わらずB型インフルエンザ多いなー、と思ってたら、今日またAも出たりして。
まあ、寒くなって少し花粉症のスパートが遅れたのは、
いいことだが、その分インフルエンザが逆戻り。
 さて、よく質問を受けるのでご説明しますが
「予防接種しててもかかるのか?」
という問題。
 答え「かかります。」
 なんだ、じゃあ意味ないじゃん、何でだー。
詐欺じゃねーか。
 その疑問にお答えしましょう。
 さて、予防接種というのはかの偉大なジェンナーさんが実用化したものだが、
病原体を体に認識させて、その「抗体」を作らせる、ってのが原理だ。
 たとえば「おたふく」「はしか」なんかにかかった人は、もう同じ病気にはかからない。
おたふくウイルス、はしかウイルスに対する「抗体」ってのができるので、
ウイルスが進入してくると、それって感じで抗体が動員され、処理しちゃうわけだ。
 だからインフルエンザウイルスを不活化したワクチンを注射することによって、
体がこのウイルスを認識し、抗体をつくり始めるわけだ。
子供は大人に比べてウイルス経験が少ないので、2回接種して、
ああ、抗体つくんなきゃ、という気にさせるわけだ。
 で、予防接種すると数週間で体はインフルエンザウイルスの「抗体」をつくる。
シーズンになり、本物のインフルエンザウイルスが体に入ってくると、
「お、来やがったな、オメエのことはすでに知ってるぜ。これでも食らえ。」
と攻撃して退治しちゃうわけです。
 ところが・・・
 一時にあまり大量のウイルスが入ってくると、抗体の処理能力が
ウイルスの増殖スピードに追いつかず、結果的にウイルスに押し切られてしまいます。
これが「感染」です。
 ただ、抗体をすでに持ってれば、最終的には準備してない人より回復は早いはずです。
 軽い、感染は防げるし、かかっても治りは早い、ので予防接種は効果があります。
 しかし・・・
 ウイルスと抗体はそれぞれ1対1対応、つまり型が違うと効果がありません。
たまに、厚労省の予測と実際に流行するウイルスの型が
微妙にずれちゃうこともないわけではありません。
 型といっても、予防接種は通常A型を2種類(ソ連型、香港型)とB型を1種類ブレンドしてあります。
メーカーが違っても、この方はいっしょです。
ただ、例えば同じソ連型の中にも細かい型がありこれがずれちゃうことがあるわけです。
 ちなみに今年話題になった「タミフル耐性ソ連A型」はちゃんとワクチン効く型だそうです。
 そして・・・
 寝不足や過労、かぜや不摂生などによってからだの抵抗力が落ちると
抗体の産生が弱まります。
そういう時も抗体の力が足んなくて「感染」しちゃうわけです。
(今年のオレのパターンだ・・・。)
 ちなみに新型インフルエンザが怖れられてるのは、
人類がまだ感染したことがないので、抗体をつくった経験がない、からです。
まあ、インフルエンザには違いないのでいずれ抗体はできるし、
映画「宇宙戦争」のエイリアンみたいに、いきなり全滅ってことはないのですが。
(宇宙戦争、観たことありますか?SF映画の古典でわたしの好きな映画のベスト10に入ります。
数年前、トム・クルーズかなんかでリメイクされましたね。)

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2009.02.24

インフルエンザの「グリグリ」

 一旦、下火になったインフルエンザがまた流行ってきました。
今は、ほとんどがB型ですね。
 B型はA型に比べて高熱が出ない場合があるので、
そうと知らずに撒き散らしちゃうこともあるようです。
 先日来た、子供の患者さん。
「午後から熱が出てきました。」
「あー、周りにインフルエンザいます?」
「先週金曜日に、上の子が高熱を出して小児科かかったんですが、
翌日来て下さいといわれ、土曜日にインフルエンザの検査したけど陰性でした。
もう4日目なんですけど、まだ上の子は熱でてるんですよ。」
「ふーん、同じヤツですかねー。調べてみようか。」
ということで「グリグリ」。
「あー、薄いですがB型出てますね。インフルエンザですね。」
「えーーーーっ。」
と、驚くお母さん。
「6時間待たなくても、出るときゃ出るんですよ。
すると、多分上の子もインフルエンザだったみたいですね。」
「ええー、でも、陰性でしたよ。」
「どうやって検査してました?」
「鼻に、ちょこっと、あー、そういえばさっき先生がやったのとずいぶん違うかも。」
 そうなんです。
インフルエンザの検査、ちょこっと鼻に綿棒の先を入れたくらいでは出ないこともある。
鼻水が多いと、綿棒が鼻水だけ吸ってしまうから、出来れば鼻をよく吸引してから
(まあ、小児科では吸引できないからよく鼻をかませてから)
綿棒を鼻の突き当りまで入れてグリグリしないと正確に出ません。
 私は綿棒の端っこを折り曲げて「へ」の字の形にして、鼻の中を見ながら奥まで入れます。
途中で折り曲げると手が邪魔にならず、綿棒の先が見えるからです。
そして両鼻に一回づつ、鼻の奥の上咽頭という場所に突き当たるのを確認して「グリグリ」。
この「両鼻の奥のグリグリ」が、大事なのだ。
 実は、今シーズンあるメーカーが「新製品です」といって持ってきた綿棒があった。
従来品よりやわらかくなってて、鼻に入れやすい、という触れ込みでした。
ところが、試したところこれが全然ダメ。
上咽頭まで入れると、やわらかいので、そのまま曲がってどんどんのどの方へ入っちゃう。
突き当たらないので「グリグリ」が出来ないのです。
なので、ボツ!
臨床の場を知らないメーカーの失敗作でした。
 しかし、実際にあの手の綿棒使ってる先生、いるんだろうか?
いるとしたら、多分そこんちは、インフルエンザの診断率、低いかも。

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2009.02.13

ウチの先生って、どうよ。

 先日、私が過去に書いたブログについて、ある看護師の方からコメントを頂きました。
右にある「最近のコメント」欄をクリックするとご覧になれます。
 かわいそうなのはこの方が日々疑問とストレスを感じながらお仕事されてることですね。
 医療機関に勤めてる場合、特に看護師さんなんかだと
「ウチの先生の実力」が、何となくわかっちゃうと思います。
 「あー、こんな治療じゃダメだな。」
 とか
 「こんな検査は必要ないだろ。」
 とか
 「ウチの先生は金儲けのことしか考えてないみたい。」
 とか
 「かわいそうに、ウチなんか来ないで○○病院行けばいいのに。」
 てなとこで仕事してる人、看護師さん、事務員さん、薬剤師さんはツライですね。
仕事に張り合いが出ません。
サラリーのために働いてるとはいえ、
やはり、患者さんのためになってる、という満足感は大事なモチベーションです。
 患者さんの良くなった笑顔を見るのは何よりの幸せですし、
他院にかかっていて、知り合いに噂を聞いてウチの病院に来た、なんて人が来ると
「よかったですねー、ここに来て。」と、心から喜べる。
 そういうところで仕事したいものですよね。
 と、ここまで書いて、急に、ウチ、大丈夫かいな、と気になったりして。
一体、職員は私の実力を信用してんだろうか・・・。
 そーいや、ちょっと前、近くの某同業者のとこに勤めてる女の子がウチかかってたなー。
実はそこの職員で当院にかかってる人は過去にも何人かいた。
いろんな事情で、コッチ来るのもまあ、わかるなー、とは思いましたが。
まさか、ウチの職員がむこうにかかってるってことは、ないと思うけど・・・・。
 当院の職員は、
地域に貢献する医療機関に勤めている、という自信と誇りを持って勤務していただいてる、
と、信じたい、・・・です。

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2009.02.05

あんな医者、こんな医者

 昨晩はS病院の小児科のS先生と会食。
この先生、学会を機に知り合いになったんだけど、ホントいい先生です。
 診療方針といい、人柄といい、こーゆー先生が近くに開業してればなー、と思います。
 季節柄インフルエンザなんかの話題も多かったです。
特に、私がインフルエンザになった話はウケました。
 その時にも、した話なんだけど、このあいだ来た患者さん(大人、男性)で、
「近医にかかったがのどが痛く、熱が下がらないので来ました。」
という方がいた。
「何ていわれたんですか。」
「インフルエンザの検査をしたんですが、陰性でインフルエンザではないといわれました。」
「ふむふむ。」
「でも、タミフル飲んでください、といわれタミフルと解熱剤が出ました。」
なんじゃ、そりゃー。
で、診てみると「急性扁桃炎」しかも扁桃周囲膿瘍の一歩手前だった。
 何のためにインフルエンザの検査をしたかわかりませんね。
特に家族や職場にもインフルエンザの人はいなかった、って説明したんですけどねー、と言ってた。
まったく、とんでもない医者がいます。
 発熱の患者が来れば、はいタミフルなんっつて、ろくに説明も指導もしてないんだろうなー。
 S先生は子供の感染症もきちんと対応しており、風邪では絶対抗生物質を出しません。
当たり前なんですけど、そういう当たり前のことがわかってない医者が多いのも事実です。
「僕は抗生物質も出さない、熱も下げない、咳も止めない、外来で点滴もしない、
おまけに入院患者の抗生物質はビクシリンなので売り上げが上がらず
院長にはいい顔されないんですよー。」
と笑ってました。
 そんな話で昨夜は盛り上がり、夜遅くまで飲んでました。
 んで、気持ちよく今日の外来を始めると、
滲出性中耳炎の治療中の子が、
「先週、土曜日に熱が出て小児科に行って検査したらインフルエンザでした。」
「ああ、そうでしたか。」
「でもこの子0歳で、まだタミフル飲めないってことで熱が続いちゃいました。」
「そうねー、1歳未満は脳への移行の関係からタミフルダメなんだよね。
でも、インフルエンザはタミフルとか飲まなくちゃなんない病気じゃないからね。」
「ええ、それで、代わりに抗生物質が出ました。」
「!?代わりに、抗生物質が?」
あわてて、お薬手帳を受け取るとメイアクト4日分。
しかも、能書きどうりの通常量だ。BLNARとPRSPの乳児に。
また、ここにも困った医者が・・・。
「あのね、この子はインフルエンザなんだから、インフルエンザの治療をすればいいのよ。
タミフル飲めなけりゃ、水分・栄養補給と保温・保湿・安静で、経過観察だ。
インフルエンザに抗生物質なんておたふくの時に水ぼうそうの薬のむようなもんだ。
むしろウイルス同士だからそっちのが近いかも。(そんなことは無いけど)
0歳児がこんな、半端な抗生物質の飲みかたしたら、中耳炎治んなくなっちゃうぞ。」
てなことを、お母さんに怒ってもしょうがない。
 そもそも0歳の子に熱だけでその日に抗生物質を出すだけでもおかしい。
しかも、この場合はインフルエンザ陽性と出てるのに・・・。
 おまけにこの先生、その前にインフルエンザにかかったその子お姉ちゃんが
別の救急病院でタミフルが出なかったので(その病院はタミフル出さない派)
「何で、タミフル出さないんだー。」
と怒って、何故かやはりメイアクトを処方したという。
 S先生、やっぱこの近くで開業しませんか?

2件のコメント
2009.02.02

タミフルの消えた冬

 毎日毎日インフルエンザの検査をし、説明し、タミフルやらリレンザを出し、
あー大変だなーと思うが、今年は薬が確保されてるので助かる。
 5~6年も前になるか、インフルエンザの大流行の年に、薬が無くなっちゃった年があった。
 確か、タミフル、リレンザが出たばっかり。
それとほぼ同時に迅速診断キットが発売され、インフルエンザの治療は大きく変化した。
 タミフル、リレンザは正確にはインフルエンザを殺す薬ではなく、インフルエンザウイルスの増殖を阻止する薬。
これが、めちゃめちゃ効くので医療関係者は驚愕したのだった。
フツーなら5~7日続く熱が1~2日で下がる。
 ところが、これが流行期の真っ只中、突然品切れになっちゃったんです。
卸のヘリコ堀越君に
「なんか、関西でタミフル品薄なんだって?大丈夫?」
「いやー、先生、こっちは大丈夫ですよ。」
と胸を張った彼の舌の根も乾かないうち・・・
「先生、スイマセン、突然なくなりました。」
「がーん。」
 どうも、タミフルがなくなちゃったのは、まとめて抱え込んじゃった病院があるせいだったらしく、
似たようなことがインフルエンザワクチンで起きた年もありました。
 とすると、薬局の在庫が問題になってくる。
インフルエンザは猛威を奮い、備蓄はどんどん減っていく。
 副院長と薬剤師と相談して、タミフルの投与日数を減らすことにした。
タミフルは5日間投与が原則だが、先ほども書いたように1~2日で熱が下がる場合が多い。
そこで、まず3日処方に切り替え、その後2日処方になった。
その時点で熱が下がらなければ追加を出す、ということで。
 ところが、それでもどんどん無くなる。
まず最初に、子供用のドライシロップがなくなった。
 またまた、薬剤師と相談して、大人用のカプセルを割って中身を出し、
量を計った上で、味付けに乳糖を入れて調剤してもらうようにした。
かなり、薬局的にはメンドクサイ作業だ。
この、薬剤師の小峰君、実は私と同級生だ。
顔と酒癖は悪いが、こういうときは頼りになる。
時々、オレのボトルを黙って飲んじゃう分(?)、こーゆー時はいやな顔ひとつせずやってくれる。
 日曜日に電話がかかってくる。
「今、病院の救急でインフルエンザと診断されたんですけど、薬はないので
どっか、勝手に病院探してくださいって言われたんです。」
全く、2時間も待ってそれじゃあ、かわいそ過ぎる。
「まだ、ウチありますからきてください。」
 終いにはカプセルもなくなった。
 もし自分がかかったら、飲もうと机の中にしまっていたタミフルがあった。
最後の時には
「あー、やっぱりインフルエンザ出てますね。」
「先生、まだタミフルあるんですか?」
「もう、ありません。さっき、終わりました。
でもここに僕用にとっといたのがあるんで、これ、飲んでください。」
って、ちゅうちょ無く患者さんにあげちゃいました。
だって、自分とその患者さんのどっちがよりタミフルが必要かといえば、
どう考えても患者さんでしょ。
 それからは毎日「タミフル探し」です。
 薬局によってはまだ在庫のあるところもある。
そこで、毎朝毎朝事務員に、足利中の調剤薬局にすべて電話をかけてもらい
その日のタミフルの在庫量を確認するようにしました。
 検査でインフルエンザが出たら、朝在庫のあったとこにもう一度電話で確認して
「今から、○○さんという患者さんがタミフルの処方箋を持ってそちらに伺うのでお願いします。」
そして患者さんには
「××町の△△薬局にお願いしましたからすぐ行ってください。」
と、紹介する。
 だって、患者さんに自分でさがせったって、そりゃ無理でしょ。
 ところが、そこでとんでもない問題が起きました。
在庫を、教えない薬局があったのです。
「あるかどうかはお教えできません。」
それは、自分の近くの医院から言われてるのか、薬剤師の自己判断なのか。
中には、「先生にほかの病院からの処方箋では出さないように言われてます。」
などという、ふざけた返答をする薬局もあった。
「なんじゃ、そりゃ!」
 そもそも院外処方箋というのは、日本全国どこに行っても通用する処方箋で
薬があれば調剤しなきゃいけないという法律があるのじゃ。
 そんなことを薬局に命ずる医者も医者だが、それを受ける薬剤師もどアホウだ。
 薬は、病院のためのものでも薬局のためのものでもない、
必要としてる患者さんのためのものじゃないか。
 そういう非常時になるとホント本性が出るってのが、よーくわかりました。
今でも、どこの病院の薬局がどうだったかちゃんと覚えてるぞ。
あそこと、あそこと・・・。(いやーオレ、暗いっすか?)
一方、そんな中、気持ちよく協力してくれたところもある。
実名出しちゃうと、今井病院の前にある「いちご薬局」の薬剤師のクボイさん、その節はお世話になりました。
 そんなある朝、薬局の小峰君から電話がありました。
「オグラ先生、昨日タミフルドライシロップ1瓶だけ入荷したんだ。」
「お♪ラッキー。」
「でも、ゴメン、●○小児科から処方箋が来て出しちゃった。」
「いや、いや、そりゃ良かったじゃん。全然オッケーだよ。必要な人のとこにいったんだから。」
「で、もう無いの。」
「あっそー。早いね。」
「それがあの先生、5日分バッチリ処方箋出すんだよ。」
「教えてあげればよかったじゃん。」
「んで、電話したんだけど全然聞いてくんねえの。能書きには5日間って書いてあるって。」
残念、まあ、しょうがない。また、電話でタミフル探しだ。
しかし、あのセンセイんとこ院内処方なのになー。
 と、そんなわけで、その冬は散々でした。
 最近は薬の供給は安定してるらしいですが、リレンザはちょっと品薄という噂も。
気になるのは新型インフルエンザが発生した時、
ちゃんと各医療機関が、個人の利益ではなく、社会全体の利益を考えて行動してくれるか
ということ。
 過去の経験から、この点、実は、かなり心配、です。

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2009.01.25

2009年インフルエンザ闘病記(続き)

 さて、一夜明けて、ナンカ体が痛いなー、と熱を測ると38・2度。
 熱が出た、ダメだ、とういうことで、外来はお休み。
水曜日は午前中だけなので、診療制限をして副院長にお願い。
幸い、手術も入ってなかった。
 何とか朝飯食って、タミフル飲んでひたすら寝る。
ともかく、食って寝るしかないのよ、治療といえば。
モノがインフルエンザなら、注射や点滴があるじゃなし、
ただひたすら体が抗体を増産して、ウイルスを駆逐するのを待つばかり。
そして、タミフルがウイルスの増殖をストップしてくれれば、
あとはそのウイルスだけ処理すればお終い、なはずだ。
 ゆっくり本でも読むかと、思ったが、それどこじゃない。
体も頭も痛いし、苦しくて体の置き場もない感じ。
ただただ、布団をかぶってヒーヒーいってました。
 ところが、昼になっても、夕になっても熱が下がらず。
ついに38・9度まで。
夜は風呂に入る元気も出ず、そのまま寝たが1~2時間おきに目が覚める。
翌、木曜日も38・4度。
で、その日も休み。
 医者になって25年、病気で仕事を休んだことは多分10回もないはず。
しかも、2日以上休んだのは、医者になって2年目に水ぼうそうになった時以来では・・・。
水ぼうそうやインフルエンザは患者さんに感染っちゃうので
腰痛症の時みたいに、薬で抑えて外来ってわけにもいかないし。
 それにしても、この治らなさは、一体、どうなっちゃったのだ。
少なくとも、タミフルは効いてないようだ。
5年前のときは、診断ついてタミフル飲んだら翌朝はもう何ともなかった。
 そこで、ははあ、Aソ連型耐性株だな、これは、と気づいた。
 インフルエンザにはA型、B型があるのは皆さんご存知のとおり。
その中にも細かい分類があるが、A型には「香港型」と「ソ連型」という代表的な株があります。
そのうち、「ソ連型」の方に、今年タミフル耐性の株が多くを占めるという厚労省の報告がありました。
 リレンザにしときゃ良かった。
もう遅い。
タミフルにしろリレンザにしろ、ウイルスの増殖を抑える薬なので、初期に使わなければ意味がない。
 それにしても、私の抗体は、どーした。やけに仕事が遅いぞ。
ソ連だろうが、香港だろうが、北朝鮮だろうが私の体にはいっぱい抗体の備蓄があったはずだが・・・。
やっぱ、歳のせいか・・・。
 というわけで、たっぷり2日半も休んで、金曜日には熱も下がったので外来に出ましたが、
体はフラフラ。毎日食べるのはしっかり食べて、ひたすら寝てたのに体重はかえって減っていた。
もちろん、患者さんに万一感染ってしまうと申し訳ないので、
新型インフルエンザ用に当院に備えてあったN95マスクという、特殊なマスクを1日中かけてました。
 何とか、回復しましたが、大変な経験をしました。
それにしても、耐性ウイルス、困りましたね。
 それもこれも、きちんとタミフルを使ってこなかったことのツケでしょう。
横流ししたり、漠然とだらだら飲んだり。
中でも、家族にインフルエンザ感染者が出たら、予防で全員1日1カプセル飲みましょうなんて、
馬鹿なこと言う医者もいたらしい。
(予防投与は健常者には、しちゃだめですよ。)
そんなことするから耐性化が進んじゃったんでしょう。
タミフル、いい薬だったのに、残念です。
まあ、香港型や、B型には依然するどく効きますので、まだまだお世話になりますが。
 今後は自分の抗体を過信せず、B型にかかんないように、毎日、摂生に努めます。
普段の外来も、この時期くらいはマスクしとくかなー。

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2009.01.25

2009年インフルエンザ闘病記

 わ、私としたことが、とんだ不覚。
 火曜日の朝、あ、風邪引いたかも。
熱もくしゃみも咳もないが、何となく体の異変を感じました。
 思い当たる節はある。
日曜日の夜、酔っ払ってリビングで寝てしまい、ストーブも消え、部屋が寒くなって
ソファーの上で目覚めたのが3時前。
 大河ドラマとかで、お侍が酒盛りをする場面があると、
つい、自分も日本酒を出してきて冷でどんどん飲んじゃう、という悪いくせがあります。
ドラマで、ぐい飲みやお猪口じゃなくて、お皿みたいな杯で飲んでますよね。
あれが、カッコよくて似たような器を手に入れてからつい、やってしまいます。
あの日もそうだった・・・。
 失敗したなー、と思っても覆水盆に返らず。
昼休みは、銀行に用事があったがその後は午後の診察まで仮眠をとって回復を図ったわけです。
 しかし、夕方どんどん体調が悪くなり、
熱はなかったが「これは、ヤバイ。」と妻に検査を依頼。
結果は「インフルエンザA型」。
 何たることだ。
「インフルエンザ、流行ってますから、みんなうつらないように注意してくださいね。」
なんて、職員の前で言ってたのに・・・。
 インフルエンザになったのは5年ぶりくらい。
そもそも、私はめったにインフルエンザにならない。
 仕事柄、インフルエンザの患者さんに多く接するため免疫が相当ついて、
通常の接触ではまず感染しない。
5年前は、娘がインフルエンザになり、しかも土、日とずっと同じ部屋にいたため。
土曜日の時点で娘の検査結果が陰性だったので、「インフルエンザではない」と判断して接してたために、感染っちゃいました。
 それまでは、医者になってから予防接種などしなくても、
一回もインフルエンザにならなかったんですけどねー。
とりあえず、翌年から予防接種をするようになりました。
去年は、でもまた予防接種サボっちゃったんですが、感染らなかった。
今年は、注射したんですけどね。
 毎日、何人もインフルエンザの患者さんを診てると、
毎日インフルエンザウイルスは体に入ってきてます。
それを抗体がウイルスが増殖する前に処理してくれるので、発病には至らないわけです。
 ところが、うたた寝をして、その防御システムに緩みがでました。
インフルエンザウイルスがその隙を見逃さず、あっという間に私の体の中で増殖を開始したのです。
 しまったー、と思った時にはすでに遅い。
ウイルスの増殖のスピードは猛烈なので、抗体による処理はすぐには間に合いません。
 んで、火曜の夕方はタミフルもらって、診察は打ち切り、お風呂入ってメシ食って、即、寝ました。
まあ、抗体豊富な私の体、一晩寝れば何とかなるでしょ、とそのときは考えてたんですが・・・。
(続く)

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