ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2008.09.19

就学時検診のトラブル

 お昼休みは、南小の就学時検診。
 出かける前に、看護婦さんに、器具の準備をしてもらいます。
「替え玉、はいってるね。」
「はいはい、入ってますよー。」
替え玉とは、光源の予備ランプのことです。
 今年も100人以上の、来年小学校に上がる子供たちの検診に行きました。
 幸い、今の時期は、風邪引きや花粉症もさほど多くなく、元気な子が多いので
検診にはもってこいです。
 毎年、就学時検診の時は、お母さんも一緒に保健室に入ってもらって
かんたんな話を聞きます。
 お母さん方の、ちょっとした疑問にもお答えできますし、逆にこちらから尋ねたいこともあります。
 また、子供さんの症状によっては、その場でお母さんに簡単なアドバイスや注意をするだけで
わざわざ、耳鼻科に受診してもらわなくてもすむことも多いからです。
 そんな感じで、順調に検診がすすんできたところ、突然、ヘッド・ランプのライトが消えました。
 「あー、ちょっと待ってくださいね。」
出かける前に、ちゃんとランプの予備を確認していて良かった。
と、ランプの交換をしましたが、スイッチを入れても点きません。
 がーん、光源の機械そのものが壊れてしまった。
 ウチにかかったことがある方は、ご存知と思いますが、
耳鼻咽喉科は、最近は額帯鏡でなく、ファイバーによるヘッド・ランプを使います。
私など、もう20年前から額帯鏡使ってません。
 ハロゲンや、キセノン光源で、すごく明るく、便利です。
しかし、光源が壊れてしまっては、手も足も出ません。
 仕方なく、一旦病院に戻って、もうひとつの光源を取って、また学校に戻りました。
 いやー、新1年生の皆さん、ご父兄の皆さんには、ご迷惑をおかけしました。
ついでに、3時からのウチの外来にも、遅刻しちゃいました。
 しかし、まさか、光源そのものの予備なんて、持ってくわけないし・・・。
 ブラック・ジャックだってマントの下に、メスはいっぱい持ってるんだけど、
手術用の無影灯(手術室の天井から下がっている、でっかい電灯)は、持ち歩いてないもんなー。

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2008.09.05

夏の耳鼻科

 耳鼻咽喉科という科は、季節によって患者さんの数の変動が大きいほうだと思います。
 忙しいのは冬~春。
風邪の流行る12月くらいから忙しくなり、インフルエンザで、大忙しの1~2月。
3~4月はなんといってもスギの花粉が猛威を振るいます。
 一方で、7月後半に梅雨が明けると、患者さんは減り始めます。
長引いていた中耳炎も、副鼻腔炎もどんどん治っていき、
毎日、毎日
「ハイ、治りました。もう来なくていいですよー。」
なんてヒトばっかりになります。
 で、8月から9月は、もうヒマでヒマで、ブログなんかも外来でガンガン書けちゃうわけです。
 患者さんが来ると、子供は
「あっ、ダ-レもいなーい。」
なんて、大喜びしたり、(待合室のおもちゃを独占できますから。でもすぐ呼ばれちゃうけど・・・)
大人のヒトは
「今日は、もう、終わっちゃったんですか・・・。」
などと恐る恐る入ってくる。
 内科なんかは、そんなに年間を通じて差がないのだろうか。
まあ、風邪を引いて耳鼻科でなく内科にかかるヒトもいるから、差がないわけではないだろうが、
夏になったから、高血圧や糖尿病が治るなんてわけでもないし、少なくとも耳鼻科ほどの差はないはず。
 もっとも、同じ耳鼻科でも開業医じゃなく病院となると話は別で、
扁桃腺やら中耳炎の手術を、夏休みを利用してやろうという子供が多いので、
夏休み期間中は、病院は大忙しなのだ。
 私も、勤務医時代、7、8月は夏休みをとったことがなかった。
朝から、手術室で毎日手術ばっかし。
内科の先生が、交代で1週間も夏休みをとってるのを横目で見ながら
ほとんど土日も病院に行っていた。
 しかし、入院手術のない開業医は、この時期、これでいいの?という位まったくヒマになってしまう。
 一説によると、この時期忙しいのは皮膚科らしい。
確かに、日焼け、あせも、虫さされ、とびひ、水虫etc.みんな夏に悪くなりそうだ。
 ご存知のようにウチは、夫婦2人で耳鼻科をやってます。
昔は、どっちかが皮膚科だったら、患者さんの数が年間を通じて変動が少なく、
経営が安定するのでは・・・、なんて思った時期もありました。
 でも、今はこれでよかったと思ってます。
・・・だって、一方が、忙しく仕事に追われてる時に、もう一方がのんびりヒマそうにしてたら、
理屈はわかっていてもアタマきますよね。
 だから、夫婦円満のためには、
忙しい時はともにがんばり、ヒマな時はともにのんびり
ってのがいいのかなー、と思うわけです。

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2008.08.21

禁煙の秘策

 20日の夜は、禁煙治療の講演会に行ってきました。
 新しい、禁煙治療薬が出たのでそれに関連する講演会です。
キリン・チャレンジ「日本対ウルグアイ」は、録画で後で見ればいいやー、と出かけました。
(後で見て、がっかりしたけど・・・。)
 講演自体は、目新しいニュースはなかったんですけど、
んー、禁煙治療、がんばらねば、と思うところがありました。
 今日の講演では出なかった話題ですが、
禁煙治療は、今後、予防医療がメインになってくると思います。
 喫煙が「病気」である以上、予防医療は最も本質的、根源的治療であるわけです。
 特に、今日の講演でもありましたが、
日本では中高年の喫煙率は、特に男性では、かなり減少傾向にあります。
 一方、若者や女性の喫煙率は、増加しています。
 禁煙が進まないのは、ニコチン依存症の治療が困難だからですが
最初からタバコを吸わなければ、依存も何もないわけです。
 だから、新たな喫煙者を抑制することが、一番大事なことだと思います。
 さて、それには、どうすればいいか。
 実は、私は答えを知ってます。(おおー!)
 若者に、子供のうちから「タバコを吸うこと=カッコ悪いこと」というイメージを植えつける事です。
 若者がタバコを吸うのは
タバコを吸う⇒大人である⇒カッコいい
という、流れから始まることが多いと思います。
 ガキは、早く大人になって周りと差をつけたいもの、
オレなんか、もうタバコ吸ってんだもんねー、オメーらガキじゃん。
と、言いたい、思われたい。
 だから若者に、喫煙の健康に及ぼす影響なんか説明したところで
たいした効果はありません。
 かく言う、私もそうでした。
「もう、タバコくらい吸えるもんね。大人ですから。」
と、タバコに手を出したのでした。
健康に良くない事なんか百も承知です。
最初はケムくて、うまくなかったし・・・。
 しかも、かつては映画やテレビドラマで、俳優たちがかっこよくタバコを吸ってたわけだ。
スティーブ・マックウィーンとかクリント・イーストウッドとか
「太陽にほえろ」(もちろんカッコいいのはボスじゃなくってジーパンだよ)とか。
ポパイだってパイプ吸ってたし、エイトマンのピンチの時に吸う「強化剤」はタバコ型だった。
(ちと、古いっすね。)
 だから今度は逆に
タバコを吸う⇒ガキっぽい、ダサい⇒カッコ悪い
という、方程式を若者に植えつけることが出来れば
喫煙率は劇的に減ります。
 やっぱ、テレビドラマとかで、キムタクあたりがそーゆー役をやるべきだ。
もちろん、キムタクだけでなく、他の若者に影響力のある男優、女優が
コトあるごとに、タバコ嫌いのヒーロー、ヒロインを演じる。
 もちろん、洋画も影響力が大きいので、ジョニー・デップやキャメロン・ディアスにもやってもらう。
 ここで、大事なことは、それをメインにすえないこと。
あー、大人が、説教してるなーと気づけば、若者にはかえって逆効果だったりする。
だから、政府広報みたいに「タバコは健康に良くないので、やめましょう。」
とか「未成年の喫煙は法律で禁じられています。」
などと、カメラに面と向かって棒読みされても全然ダメ。(特にスポーツ選手とかが)
 全然カンケーないストーリーの中で、タバコ吸うイヤな奴が出てきて
タバコ嫌いの主人公と敵対して
自然と、タバコに対する「負のイメージ」が視聴者に定着するようにするわけだ。
 SFでもアドベンチャーでもラブ・ストーリーでも学園モノでも刑事ドラマでも。
みんな、そーゆーのが(本筋とは無関係に)チラッと盛り込まれてる。
一種の「サブリミナル効果」ですね。
 キムタクがドラマで着たシャツとか、つけてた腕時計とかが急に大人気になっちゃう事態を見ると
これは、効果あると思いますよ。ロレックスのエクスプローラⅠは品薄、価格は高騰しましたね。
 そーいえば映画「スピード」でキアヌ・リーブスがつけてたGショックもブレイクしましたよねー。
 この方法、絶対いいし、これしかないといってもいいくらい。
だって、我々世代が「タバコ⇒カッコいい大人」というイメージを植えつけられたのって
やっぱ、テレビや映画だったような気がするから、その逆をすればいいんじゃない?
 映画、テレビドラマ製作者の間で、こーゆー動きが広まればいいんだけど
でも、その辺の、いわゆる「ギョーカイの人たち」って、
結構ヘビー・スモーカーだったりするんだよねー。

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2008.08.10

「できる」患者、「できない」医者

 昨日のブログに書いた、Sさんが、日曜日の朝、診察に訪れる。
 「昨日は、すいませーん。」
 「今日は、どうですか。」
 「まだ、熱が高いです。」
 「じゃあ、診てみようねー。」
 案の定、中耳炎は無い。
まあ、内科・小児科の先生に耳の診察をさせるほうが無理な話なので
この結果は、もちろん想定内です。
 で、のどを診てみると、ありゃりゃー、やっぱこりゃ溶連菌かもなー。
実は、これを怖れていた。
 溶連菌感染は、扁桃腺が腫れるわけだが、耳のほうに痛みが放散するので
昨日の電話で、熱が高く、耳とのどが痛いが、鼻・咳はない、と聞いたとき
かなりの確率で溶連菌感染を思い浮かべました。
 検査をしたら、やっぱり「陽性」。
 よかったねートミロン飲まなくて。
 
 溶連菌は抗生物質を先飲んじゃうと、検査しても正確な反応が出ないので、
溶連菌だかなんだかわかんなくなっちゃいます。
 一方、溶連菌は、抗生物質がよく効くのでトミロンなど抗生物質をのむと、症状がすぐよくなる。
しかし、菌が完全に除菌されるまで10日から2週間かかるといわれてるので、
その間は抗生物質をのみ続けなきゃならない。
 症状がよくなったからといって薬をやめて菌が残ると、
慢性扁桃炎や、慢性腎炎、掌蹠膿疱症なんかになっちゃうことがあるわけだ。
 
 耳鼻科医や「できる」小児科医が診れば、のどの所見から推測されるので
まず、薬を飲む前に検査をします。
 困るのは、今回の例もそうだが、まず小児科なんかで
「熱があるので、抗生剤」
なんてコトで、なんも考えずに抗生物質が出ちゃったりする場合。
 で、今回は、検査をして、バッチリ「溶連菌」出たので
抗生物質を2週間飲むことになりました。
 しかし、そういった意味では、今回のSさんは、「患者として、できる。」
Sさんいわく
そもそも、「中耳炎」という、内科医の言葉を信じるとしても
「トミロンはないですよねー、と思った。」
おおーこれはますます「できる」!
 そのとおり、トミロンは急性中耳炎の第一選択薬ではありません。
 なぜなら、グラム陰性菌には、よく効くが、グラム陽性菌には弱いから。
耐性インフルエンザ菌が出たときは、第一選択ですが、
肺炎球菌にはやや劣ります。
ちと専門的な話になっちゃいました。
 でも、ケフラールやセフゾン、ラリキシン、リカマイシンよりは、まだましか。
しかし、こういった「患者さんにかえって害を及ぼす」薬を出す医者、まだ多いです。
 かくして耐性菌は増え、医療費は上昇する。
 
 それにしても一番の話題は
 「昨日のロスタイム、あれはダメですよねー。」

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2008.07.20

連休、急患です。

 昨夜は、モヤモヤ気分のまま飲み会に突入し、飲みすぎで本日は二日酔いです。
 お昼過ぎにやっと回復してきた頃、急患の電話。
 中学校の教頭先生からで、生徒がサッカーの試合中に鼻骨骨折したとのこと。
病院にいったが、レントゲンで骨折は確認できたが、
耳鼻科医がいないので手術できないといわれたとのこと。
 緊急で手術ということになりました。
 そこに、急性副鼻腔炎の小学生の急患からの電話があり、やはり診察しました。
 以前も、ブログに書いたように、急患は原則的に診ます。
 電話は自宅のリビングと寝室で病院の電話番号で鳴ります。
小倉弘之名義の自宅の電話番号もタウンページに載ってます。
(多分市内では、ウチだけです。)
 急患は、開業した時に、「診なければいけない」、と決めてました。
と、いうより当然「診るもの」と思ってました。
 それは、死んだ親父の影響です。
 57歳で急死した父は耳鼻科医でした。
電話は、今の小倉耳鼻咽喉科と同じ21-2600ですが、当時は自宅の電話番号も共通でした。
自宅と病院の切り替えスイッチがあって、診察から帰ってくると父はそのスイッチを
病院から、自宅に切り替えます。
 夕食後、テレビなど見てると、たまに電話が鳴り、
「やれやれ、急患だ。」
といいながら、白衣を羽織って、病院に行っている姿を見てきました。
 時には、我々子供が寝てから電話があったようで
夕べは夜中に大変だった、などということが朝食の話題となることもありました。
 今、当院に来られている患者さんでも、以前父に急患で診てもらい、大変助かった、という話を聞くこともあります。
40年も前のことでも、覚えているものなのですね。
 そんなわけで、急患は開業当初から診られる体制になってます。
(でも、ホーム・ページに緊急時の対応法が書いてあるので、
すぐ電話せずに、まずはそっちを見て、試してみてね。)
 今日の患者さんは、中学校のサッカー部のゴール・キーパー。
ボールを抱えにいって鼻を蹴られたという。
なるほど、しっかり折れてました。
 当院の内装を見て
「浦和レッズ、好きなんすか?」
と、訊かれたので、
「そうだよ、好きなチームとかあるの?」
と訊いたら
「鹿島アントラーズっす。」
とか言うので
「あー、俺アントラーズ嫌いなんだよねー。治すのやめちゃおかなー。」
とも言いましたが、
もちろん、ちゃんとキレイに整復しましたよー。

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2008.07.19

新人スタッフ、ご紹介いたします

 先の「コスプレ・ドクター」のブログでも紹介した求人ですが、
この度、めでたく2名の方が新たなスタッフとして加わりました。
 今回2名の募集に30名近い応募があり、選考に大変苦慮いたしました。
惜しくも採用に至らなかった皆様、大変申し訳ありませんでした。
 向かって右が伊藤百合香さん、左が武井麻理さんです。
P7180098_ks.jpg
 昨日17日から、来て頂いております。
患者さんの人気も上々のようです。
 これで、小倉耳鼻咽喉科医院も常勤医師2名、正職員8名の大世帯になりました。
 耳鼻科は季節商売なので12月から4月は忙しい時期、7月から10月はド暇な時期です。
はっきりいって、この時期そんなに人員必要ないんすけど、逆にヒマな時期なら
バッチリ仕事を教えられるんで、この時期の募集にしたわけです。
(また、今入れば12月にはボーナス満額出ますから、やる気も出ますからね。)
 名札のとおり「研修中」の二人、何かと至らぬ点はあるかと思いますが
きっとすぐ、お役に立てる日がまいりますので、よろしくお願い申し上げるしだいでございます。

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2008.07.03

「ロックな」耳鼻科

 ブログタイトルの「ロックな耳鼻科」ですが、そもそも「ロックな」とは何だ?
 もちろん私、大のロックファンですが、
「ロックな」といった場合には、もちろん必ずしも音楽だけの事を言ってるわけではないです。
 ロックはポピュラーミュージックの1ジャンルですが、
もともとはリズム&ブルースあたりから生まれた、ビートの激しい音楽。
ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」という曲が
ロック(アンド・ロール)の第1号といわれてます。
 しかしその後、ロック・ミュージックは若者たちに熱狂的に受け入れられていきます。
その過程で、若者が持つ社会への疑問や不満を代弁する形でメッセージ色を強めていきました。
 大人たちが言ってることは、必ずしも正しくない。
地位や権力のあるものに都合よく作られてる社会の仕組みはおかしい。
世界のみんなが幸せにならなければいけない。
もっと、物事の本質を自分たちの目で見て判断しよう、
という考えです。
 私は、思春期の頃、こういうモノに出会っちゃったので、
今でも自分の生き方にロックが、多大な影響を与えています。
 昨日書いた、「国境なき医師団」なんて、まんまロックですよねー。
 だから私は日々、医者という仕事をしながらも
 偉い先生が言ったって、現場にそぐわなければ間違ってる。
常に、弱者の目線、立場に立って考える。
自己の利益ではなく、社会の利益を考える。
他の人がそうしてるから、自分もそうしなくてはならない、ということはない。
 などということを、考えてます。
 地球上のみんなが幸せにならなきゃいかんのじゃ。ラブ&ピースじゃ。
 うーん、これもひとつの宗教なのか?
 ま、ともかく 明日もロケン・ロールなんだぜベイベー。

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2008.07.02

やり残した事

 私が医者になってもう25年近くになります。
大学を出て、国家試験に合格し、大学病院や、地方病院で研修し、
その後は、逆に大学病院や、地方病院で、研修医や新人医師の指導、教育を行い
足利の地で、妻と開業してからもう12,3年。
 理想の医療を求めて、やってきたつもりですが、やり残した事もないわけではありません。
 
 国境なき医師団、ていうのをご存知でしょうか。
 何年か前、ノーベル平和賞もらいましたね。世界各地の災害や紛争の起こった地域に行き
ボランティアで医療サービスを提供する、医者、看護師、薬剤師、助産師などからなる医療チームです。
 実は、こーゆーのに、若い時、参加したかった。
 医者の仕事はさまざまですが、患者さんの健康、命を救うこと、
というシンプルな命題に立ち返れば、
そういう場所にこそ、地球上で最も医療が求められているわけです。
 本当は、そういう仕事、やりたかったのですが、
私が高校2年の時、父を急死という形で、亡くしているので
卒業後は、一刻も早くお金を稼いで、家計を助けなければなりませんでした。
母は無職で、弟はまだ学生でしたし、私自身が借りた奨学金の返済もあり、
あまりそういったことに目を向ける余裕はありませんでした。
 しかし、今になって、若いうちに何かやっておきたかったなー、という後悔があります。
 今となっては、開院の銀行ローンの返済がまだ10年以上もあるので、
今の仕事をほっぽり出して、そんなとこに行けるわけもなく、
子供もまだ、学生ですし、
そもそも、私の体力的にも無理でしょう。
 卒業後に、大学院に進んで学位をとらなかったことについては、
これっぽっちも後悔してませんが
(意味のない基礎的な実験で博士号取ったって、医療の何の役にも立ちません。
名刺に「医学博士」ってはいるだけ。そんな時間があれば急患の手術見学した方がまし。)
医者としての資格を、そういった極限的な状況で生かしたかった、ということに対する後悔は
今もあります。
 だから、今でもその後悔を少しでも軽くするために
国境なき医師団に毎月わずかですが、寄付金を払い込み、
自分自身は、急患の電話は夜中でも必ず取るようにしています。

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2008.06.27

ウエイト・アンド・シー~愛ある医療

 本日午前中来院した1歳ちょいの女の赤ちゃん。
土曜日に熱が出たそうで、某小児科を受診。
昨日今日になり、鼻水が増えたため来院しました。
 小児科かー・・・。[emoji:v-277]
「で、なんか薬飲んでましたか?」
「いえ、何もお薬は出ませんでした。」
 小児科の先生は、顔色、発疹、口の中、聴診など丁寧にチェックして
機嫌もよくハナ、せきもない、とのことで
「突発性発疹かもしれませんね。とりあえず、今緊急にお薬を飲むことはないでしょう。」
と、お話されたとのこと。
発疹は出ませんでしたが、熱は2日程度で下がったそうです。
 むむむっ。できる![emoji:v-278]
 「その、小児科どちらの先生ですか?」
「中三川先生です。」
 あー、やっぱり。さすがですねー。[emoji:v-290]
 ウェイト・アンド・シーという言葉があります。
「とりあえず、何もしないで、経過を見守る。」という方針です。
考えられる経過を説明し、出て来る結果によっての対処法を教える。
 しかし、そのためには注意深い観察と、患者さんに対する愛が求められます。
 「じゃあ、とりあえず薬出しとくよ。」
というのは、いかにも簡単だが、無責任です。
必要がない薬は出さない、というのは実はかなり勇気がいります。
 患者さんは、何かしてもらおうと思って病院を訪れる。
薬が必要ないとわかっても、それを納得してもらうのは至難の業です。
やはり、自分の見立てに自信がないと出来ません。
 それに引き換え、昨日時間外に診た小4の患者さんが昼間かかったという小児科はひどかった。
 ウチには夜、急に耳が痛くなってかかったわけですが、
その日の朝、熱が高いので某小児科受診。
お母さんお話だと
「悪い菌がいないか検査をする。」
といわれたので、溶連菌の検査くらいはしたらしい。
 で、それは出なかったけど、抗生物質のんでくださいといわれたという。
 溶連菌でないならば、抗生物質は必要ないわけで、ここもおかしいんだけど
もっと、すごいことがある。
 その子を見ると、目がまっかっか。
咽頭結膜熱(プール熱)といって、アデノウイルスの感染症で
高熱、のどの痛み、結膜炎をきたす病気が、今 はやってます。
「先生は、目のことについて何か言いませんでしたか?」
「いえ、先生、目は見なかったみたいです。」
「?。だって、処方箋のここに目薬でてるじゃない。」
「いえ、これは薬局に行ったら薬剤師さんに目が赤いといわれ、
薬剤師さんが先生に電話して目薬を追加する指示をもらったんです。」
「・・・・・(唖然)。」
 薬剤師さんが、カウンター越しに一見してわかる目の異常に、その先生が気づかなかったのか。
しかも、診察しないで目薬出してるし。[emoji:v-293]
 早速、この子にアデノウイルスの検査をしたら、果たして陽性反応。
学校伝染病なので、出席停止になることなど長々説明しました。
 そもそも、この子の中耳炎だって、
風邪なのになぜかステロイドの点鼻を出し、どんどん使わせたために
鼻の中の菌が増えて耳に感染を起こした疑いが強い。
この先生、どこでどう間違えたかステロイドの点鼻を、0歳の子から使わせる。
大人でもアレルギー性鼻炎で1日2回までだし、まして風邪の時は禁忌だ。
 まったく、もう。[emoji:e-262]
 という一件が昨夜あってがっかりしてるところに、
別の小児科の先生の真摯な診療姿勢をうかがわせる話を聞いたため
今日は、なんか気分がいいです。[emoji:v-290]
そして、自分もそういう医者でありたいと思いました。
 
 でも、この2人の先生、点数上は明らかに後者の先生のほうが儲かる仕組み。
保険診療の矛盾ですね。[emoji:v-16]

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2008.06.26

職員募集のお知らせ

 このたび求人をすることになりました。
 昨年スタッフが一人辞めて、ナントカ残りのスタッフでやりくりしてきましたが
今年の花粉症の時、忙しくてもうだめだ、
と言うことになりまして、このたび2名ほど募集をかけることになりました。
 受付や、検査、事務などいろいろなことをやってもらうスタッフなのですが、
結構大事なことに、
「暴れる子供を、いかに固定するか。」
ということがあります。
 耳鼻科に子供さんがかかる場合、通常はお母さんが抱っこして体を抱え
頭持ちが一人、足押さえが一人、と言う体勢です。
しかし、子供さんによっては4人、5人がかりで抑えることもあるわけです。
 初めて耳鼻科にかかったお母さんは
「すみません、こんなに暴れる子、いないでしょう。」
と、恐縮しますが、我々は平然と
「いや、フツーです。っていうか、この程度は序の口です。」
と、お答えします。
 いつもかかってる子が、たまの土曜日お父さんと来たりするともっと大変です。
最近のお父さんは、一般に優しいですから
「ほーら、○○ちゃん、お医者さんにモシモシしてもらおうねー。」
などと、甘い考えでやってきます。
すると、子供は
「ウギャー、ビャー。」
と大暴れ、看護婦さんに
「お父さん、手が出ないようにもっとしっかり抑えてください。」
と、注意されます。お父さん、あっという間に汗だくです。
「(はあ、はあ)いつも(はあ、はあ)こんなに、大変(うっく、コンニャロ、動くな)なんですか?」
「今日はまだマシ、この間鼓膜切開したときはもっとたいへんでしたよ。」
「ひえー(ゼイ、ゼイ)まじっすかー。」
「ギャーーー。」
「うおおおーっ。」
 で、お父さんは家に帰って奥さんに言うわけです。
「いやー、子供を医者に連れてくの、大変だなー。」
奥さん、にっこりして
「でしょ、でしょー。いつも大変なんだから。」
という感じで、夫婦の相互理解が深まるわけです。めでたし、めでたし。
 話題が、それました。
 そんなわけで、今度の日曜日の新聞の折り込みチラシに募集の広告が出ますので、
子供が好きで、腕力に自信のある(?)方は、奮ってご応募ください。
経験、資格は不問です。
ブログ、見ました、と言ってもらえると好印象?

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医療系をまとめました。
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