2008.06.17
ここんとこ、中耳炎でかかってるK君(0歳)。
耳を診て、お母さんに、
「うーん、あまり調子よくないなー。水、抜けませんねー。少し、腫れてるし。」
[emoji:v-209]「あー、そうですか・・・。」
「K君、昨日までナンバー2だったけど、昨日ナンバー1の子にチューブ入れちゃったので
K君が、ナンバー1に繰り上がりました。」
[emoji:v-209] 「・・・(がーん!)」
0歳、1歳で中耳炎を反復する子、すごく多いです。[emoji:v-511]
急性中耳炎と滲出性中耳炎の間を行ったり来たりして、なかなか水が抜けません。
内服でよくならなければ、鼓膜切開をしますが、
それでも、繰り返し水がたまっちゃう子がよくいます。
で、いよいよコントロールできないようならチューブを入れるわけです。
「この子はチューブ入れなくちゃダメかもなーランキング」ナンバー1のSちゃんに
昨日手術しちゃったので、
K君が、現在のナンバー1になっちゃったわけです。
トップ5に何週かランクインすると、手術になることが多いです。
特にナンバー1の座に着くと、ほとんどの子が手術になります。
M太郎君も、その保育園の同級生双子のS君もしばらくナンバー1をはった末、
チューブ留置しちゃいました。
もちろん、ランク下位から、急上昇して手術になっちゃう子もいますし、
しばらくナンバー1を続けたが、無事ランキング外になった子もいます。[emoji:v-330]
やはり、チューブを入れると、乳幼児の中耳炎は劇的に改善します。
毎週2回は来てた子が、月一回くらいになります。
しかも、月一回チューブをチェックするだけなので、お母さんは楽です。
夜中に痛がって泣いたり、発熱で保育園に呼び出されることがなくなるからです。
先週、今週と、Mちゃん、Rちゃん、Sちゃんと大物(?)が、相次いでチューブを入れました。
さて、K君の運命やいかに。
0歳なのにおっさん顔のK君、がんばって、なんとかランクアウトしてくれー。
2008.06.16
先日、同窓会のブログで、胃がんの手術なんかは、地方中核病院の部長クラスが一番うまい、
という話をしました。
何しろ、数多くの症例をこなしてる医者が、いいわけです。
ただ、世間一般では
大学病院>市中病院>一般開業医
という意識があって、この公式がすべての疾患に適応されると思ってる人がいる。
確かに、まれな症例とか、特殊な機器・設備がないと出来ない治療ってのは、大学病院に行くべきです。
でも、一般的な疾患は、やはりその手のものを最も多く扱ってる病院で見てもらうのが、安心です。
例えば耳鼻科でいうと扁桃腺の手術を大学教授にしてもらうほど危険なことはありません。
扁桃摘出術は、耳鼻科の研修医が比較的早い時期に習得する手術です。
しかし、ポピュラーな手術ではありますが、術後の出血などで致命的な合併症を起こすこともあり
やはり、術者の熟練と、施設、スタッフの経験が必要です。
通常、こういった手術は、大学病院で行われることはなく、
逆に、一般の市中病院では年間100人以上行われることもまれではありません。
私もかつて、いやんなるほど取りました。
以前、某大学(群馬大ではありませんよ)の教授が、執刀した扁桃腺の手術で
退院後、自宅で大出血を起こし、
(その手術した病院が遠方だったため)群馬大の関連病院で緊急手術を行い
10リッターくらい輸血してなんとか一命を取り留めた、という話を聞きました。
おそらく、その教授は何10年も、扁桃摘出術やったことがなかったんでしょうね。
指導医がつく分、研修医が執刀する方が、まだ、安全でしょう。
まさか、教授の手術では、あれこれ口や手を出すわけには行きませんからね。
同じような意味で、子供の中耳炎があります。
これは、もちろん大学病院に行くことはありませんが、市中病院で見ることも少ないです。
外来担当医が、曜日ごとに変わるとこでは、無理でしょう。
やはり、ウチみたいな開業医が、数こなしてて、一番技術的には高いんでしょうね。
今日、午前中にウチで耳にチューブ入れる手術をした1歳のSちゃんも、いろんな病院回って
「もう、使う薬がない。」
なんて、いわれたそうですが、
外来で、ほかの患者さんの合間に
0歳、1歳の子に局所麻酔で長期留置型の鼓室チューブ留置術やってると聞いたら、
病院の先生方は信じないかもね。
2008.06.13
溶連菌感染症が流行ってますねー。
毎日毎日たくさんの患者さんを診断しています。
溶連菌感染症をご存じない方のために、簡単にご説明します。
溶血性連鎖球菌という細菌の感染によって起こります。
症状は、発熱とのどの痛みで、風邪に似ています。
重症な場合は舌がイチゴ状に腫れたり、全身に発疹が出たりします。
しかし、風邪はウイルス感染ですが、こちらは細菌です。
抗生物質を10~14日のんで完全に除菌しないといけません。
細菌はウイルスと違い、体に残ることがあります。
溶連菌が残った場合、繰り返し扁桃腺が腫れて高熱が出る習慣性扁桃炎になることがあります。
もっと、怖いのは扁桃に溶連菌が常にいることによって、
体の離れた場所に病気を起こすことがあります。
これを、病巣感染といい、具体的には腎炎や、この間ブログに書いた掌蹠膿庖症などがあります。
こういった場合に扁桃腺を取る手術をしなければなりませんが
腎炎になってしまった場合など、手術をしても完治が難しいこともあります。
診断は、のどを見て特有の所見から疑いがあれば、迅速キットを用いて検査をします。
10~15分くらいで、すぐその場で結果が出ます。
のどの所見は耳鼻科医が見れば、かなりわかるのですが、
大事なことは常にそういうものに疑いを持つことで、
どうかなーと思うものでも調べてみると陽性、ってことが結構あります。
最近困っちゃうのは、最初小児科にかかってて、抗生物質が出ちゃってる場合。
のど見るとそれなりに疑わしいが、抗生物質のせいで検査しても結果が出ない。
抗生物質は風邪ならいらないが、溶連菌だったらここで切るわけにいかない。
小児科医がすぐ抗生物質を出すのは、やっぱ、自分の診断に自信がないからでしょうね。
もし、扁桃炎(溶連菌)だったら困るから、中耳炎だったら困るから・・・etc.
先日来た患者さんで、小児科でヘルパンギーナといわれて薬飲んでました、という方が来ました。
おお、ヘルパンギーナとはあの某先生も診断力がアップしたじゃん。
で、処方を見ると「トミロン」!
抗生物質じゃん。
「ヘルパンギーナっていわれたんだよね、確かに。」
「はい、でも2次感染を予防するために、抗生剤出しとくから、
熱がある間は飲んでね、っていってました。」
ああ、2次感染、
俺も若い頃自分の診断に自信がない頃、そんな言い訳を言って抗生剤出したことあったなー。
なんか自分の、恥ずかしい過去を暴かれたような気まずい気持ちになりました。
まったくの、詭弁です。お恥ずかしい。
まあ、昔はそれでもよかったんだけど、耐性菌が蔓延するこの時代に
まだそんなこと言ってる医者がいるとは・・・。
ヘルパンギーナ、手足口病の類は高熱が出ますが、ほっとけば2日以内に必ず解熱します。
ウイルス性ですからもちろん抗生剤はまったく効かないばかりか、
耐性菌を増やしたり、合併症を隠蔽するので飲まない方がいいです。
絶対、熱下がるからもっと自信もって診療してくれー。
2008.06.09
皆さん、病院、どうやって選んでますか[emoji:v-100]。
家から近い、病院がきれい、先生が優しい、看護婦さんが明るい、受付の子がかわいい、
親の代からかかっている、駐車場がとめやすい、etc.etc.。
いろんな要素がありますね。
中には、先生が怖くて叱ってもらうとこがいいなんてM趣味の人や
看護婦さんやスタッフが美人だと気が散るからいや、
なんて人もいるかもしれませんが、少数派でしょうね。
込んでる病院は大変なので、すいてるとこがいいという人もいるでしょうが、
あまりガラガラだと
「ここで、大丈夫か?」
と、不安になったりするかもしれません。[emoji:v-40]
まあ、そんな中で皆さんがおそらく、間違いなく重要な選択基準としてあげるだろう要素に
「評判のいい病院」
というキーワードがあります。
もちろん当院も日夜、それを目指して精進してるわけです。
しかし、巷で評判がいい病院が、必ずしもホントにいい病院でない場合もあったりするのです[emoji:v-363][emoji:v-362]。
医者や、医療関係者、病院関係者、薬屋さんなんかで飲み会なんかがあると必ずといっていいほど
「○○医院さ、あそこ、どう?やばくない?」
「あー、あそこまずいよねー。」
とか
「××クリニックかかってたっていう患者さんが来てさー。」
「あー、ウチも来た、△△だろ、困っちゃうよねー。何で、みんなあんなとこかかるんだろねー。」
「いやー、わかんないんじゃない?」
などという話題が出ます。
実は、専門家が見ればわかるが、患者さんには見抜けない医療の質の差ってのは存在します。
こういったことは、どこの町にもあるようで
他の町で開業してる先生と話をしたときにも
「ウチの近くにも内科の先生いるんだけど、注射も処方もめちゃくちゃだね。
まあ、あの先生は放射線科出身で、
内科のトレーニングなんて全然してないからしょうがないけどね。」
「で、その医院どうなの。」
「どうもこうも、患者さんがっちりかかえてるし、今やその先生、医師会の重鎮だよ。」
やれやれ。
確かに、商売上手ってのはありますねー[emoji:v-61]。
何年か前、ウチに日赤に以前いた先生から患者さんのの紹介がありました。
その先生は、以前日赤の耳鼻科にいた先生ですが、その時はもう、遠くのほかの病院に変わっていました。
その先生のお母さんが館林に住んでるんですが、
耳の具合が悪くなったので、息子である先生に相談したところ
ウチともう一軒の耳鼻科を勧められたそうです。
これは、うれしかったですね。[emoji:v-411]
何しろ、同業者ですから、どこの病院がどの程度のことやってる、というのはわかってるわけですから、その中でウチを推薦してくれた、しかも自分の母親をっていうのは、すごく光栄です。
これからも、プロにも認められる医療を続けられるよう、努力していきたいと思います。
2008.06.06
今日、受診したお年よりは、耳が痛いとの訴え。
本年4月に心臓の手術で某病院に入院。そのときに、耳が変だったので耳鼻科も受診した。
耳垢のせいといわれ、取ってもらったそうだが、
耳に水の薬を入れたりして、大変だったとのこと。
しかも、その後、ずっと耳の具合が悪いという。
どれどれ診てみましょう、ってんで耳を覗いてみると
ドッカーンとでっかい耳垢が穴をふさいでる。[emoji:v-12]
「耳垢とってもらったんですよねー。」
「ああ、でもそこの病院は、週一回土曜日だけ東京から先生が来るんで、
なかなか、かかれんのです。」
おお、なるほど、話が見えてきたぞ。
そういえば、手前にちょっととったようなあとがある。
昨日の話の続きになるが、医者にはそれなりの技術が必要だ。
特に、耳鼻科など外科系は、いっくら勉強して頭でわかっていても
たとえば、鼓膜が見えなければ診断にならない。
そこの耳鼻科は研修医のバイトかもしれませんね。
実は、耳垢とるのはすっごく難しい。
特に、耳の穴の小さい赤ちゃん[emoji:v-511] と、あばれる幼児[emoji:v-205]、お年寄りのガチガチの耳垢[emoji:v-509]は
研修医では手に余る。
耳垢水つけてる時点で、すでにその様子がわかる。
耳垢水とは、硬くなった耳垢をふやかして、取りやすくする薬なんだけど
私は最近あまり使いません。
あとが荒れてしまうし、耳だれが出ているようなものがわからなくなってしまうからです。
顕微鏡下に、異物鉤というフックと大、中、小の吸引管、耳の手術用の鉗子などを使って、ほとんど取ります。
でも、研修医の頃は、すぐ耳垢水に頼ってました。
でも、なかなかとれねーんだ、これが。[emoji:v-388]
今回の先生も、苦労した末、あきらめちゃったんですかねー。
私のときは、次に行く先輩の先生に
「スイマセン、取れなかったんで、次、お願いします。」
とお願いしてましたが。
今は、何でも一通りできるようになって、良かったなーと思います。
耳垢のとりかたなんてのは、教科書に書いてないし、簡単そうに見えて、なかなか奥が深い。
奥が深いっていっても、耳垢なんだから突き当たりは鼓膜までだけど。
(いや、もちろん、そういう意味じゃなくて・・・。)
2008.06.06
研修医の違法なバイトが、摘発されました。
多分、氷山の一角なんだと思います。
基本的には、黙認されてたんでしょう。
基本的に、医者はみんな国家試験をパスしています。
私立の医学部など、コネや金で入れるという噂もありますが、
国家試験はそーゆーのがないから、どこの病院の医者でも、とりあえず大丈夫、ってのは
残念ながら、幻想です。
国家試験レベルですぐ医者が出来るかというと、これがとんでもない。
自動車教習所を出て、免許取りたての初心者ドライバーは、危ないですが、
医者の場合はそんなもんじゃない。
路上教習どころか、教習所内も走ったことがない、講義は受けたけど
自動車に触ったこともない、というレベルです。
注射一本、した経験がありません。
そこで一般には大学病院の医局に入り、タコ部屋のような過酷な修行をするわけです。
勤務時間なんて、あってないようなもの。
ほとんど毎日病院に、泊まってるような状態で、労働基準法もへったくれもありません。
今思い返しても、よくあんなキビシイ生活に耐えられたもんだ、と思います。
それでも、一日でも早く手に職をつけたいので、
朝から晩まで仕事、勉強します。
外来を、診察時間外に開けてもらって、症状と検査と処方箋の内容をひたすらノートに書き写したり、夜は、ナースルームに詰めていて、急患があれば手術に入れてもらう。
もちろん見学ですが、運がよければ助手をさせてもらえます。
手術室の看護婦さんに「また、今日も先生なの?」と、あきれられました。
病棟の採血は率先してやり(患者さん、下手でスイマセンでした)
医局会の残り物の食事を、夜食代わりに食べて(場合によっては翌日の朝食も)体力を蓄える。
なんせ、給料はほとんどありません。
確か、私が医者になってはじめてもらった給料は9万円を割っていた。
昭和60年ですから、今とそんなに物価変わらないです。
しかも、日給月給(いわゆる日雇いと同じ)で、社会保険も労働保険もありませんでした。
自分で、国保負担です。
休日出勤も、残業手当も通勤手当も何もなし。
もちろん、ボーナスもありません。
でも当時も、当直や手術の手伝いなんていうバイトは、科によっては、結構あったようです。
しかし、群大の耳鼻科はそういうのがまったくなかったので、
私自身は当直バイトの経験をしたことはありませんでした。
ただ、半年たつと週一回、関連病院の耳鼻科の昼間の外来診療をやりに出ることが出来、
多少の収入増となります。
基本的に、研修医は下宿代や、光熱費、食費、書籍代(大体コピーで済ます)などを差し引くと、
ぎりぎりの生活で余分なお金はありません。
医局旅行とか、病院の宴会、なんて時は、医局から借金をしてました。
1年間の大学の研修を終えて、外病院に出ると収入が増えるので、
それまでの1年間は無利子で貸してくれるのです。
2~30万は借金したかなー。
今の研修医はどうなんでしょうね。
数年前に、研修医制度が変わったので詳しいことは知りません。
ただ、結構きわどく危ないケースは夜間には、今も昔もあるんでしょうね。
研修医1人で当直ってのは、自分の専門外の患者さんが来るわけですから
かかる方も診る方もお互い怖いすね。
個人的には、夜間病院にはかかりたくないもんだと思ってます。
2008.06.02
日曜日なんだけど、今日は学会。
10時までに宇都宮の済生会病院に行かなきゃ、ということで朝早く起きなきゃーと昨夜から気にしていたが
朝6時の急患の電話で、あっさり起こされました。[emoji:v-281]
やれやれ。[emoji:v-395]
日本耳鼻咽喉科学会認定の専門医というのはこの間、お話しましたが、
2年前に補聴器相談医っていう資格が出来ました。
私もばっちり講習を受けてなんとかこの資格を取ったわけです。
足利では2人だけです。
6年間に3回の講習参加が、更新の条件なので朝、早々と出かけたわけです。
まあ、私今まで全部でてるので、更新自体は楽勝ですが、
補聴器に対してはまだまだ勉強不足なので。
10時から12時まで講義、その後午後は栃木県地方部会という学会なので
お弁当を食べて、そのまま午後に備えます。
学会場で、お弁当食べるのは、むなしいです。
まして、今日は、なんていい天気。[emoji:v-278]
病院のカンファランス・ルームは日当たりの悪い、裏手にあり、暗い。[emoji:v-292]
でも、まあ、いろいろ勉強になりました。
それにしても、今日聞いた補聴器のケース・スタディでびっくりするような話がありました。
実際に病院に来た患者さんの例を紹介して、適合した補聴器を考える、というものですが
その中に、以前40万もする補聴器を購入したが、聞こえないので
「もう、補聴器はこりごりだ。」
と、来院したお年寄りのケースです。
検査データが示され、このように調整、指導してうまくいった、というケースでした。
そのとき会場から出た質問
「最初に買った補聴器屋さんでは、調整をしなかったんですか。」
そう、もっともな質問だ。それに対して
「病院から、補聴器屋さんに3回も紹介状を書いて調整を依頼したが、結局やってもらえなかった。
仕方なく、調整ソフトを買って、病院で調整した。」
という答え。
聞けば40万の補聴器は、最初から全然患者さんに合せた設定がなされてなかったという。
うーん、考えられないような悪徳業者っているんだなー。[emoji:v-388]
ちなみに、補聴器の有効性がわかったその患者さんは、
反対側の耳にも補聴器装用を希望。
難聴の程度が同程度の反対の耳の補聴器は18万円で、出来たとのこと。
こういう話聞くと、がっかりですね。まったく・・・。