ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.11.26

今度の日曜日、インフル外来します。


 緊急連絡です。
 先日の休日の患者さんの話、またまたブログ読者の方からのご連絡により
休日診療所が大変なことになってるようです。
 んー、このままではイカン。
 そのため、急遽、今度の日曜日当院もお手伝いすることにしました。
 医師会休日診療所の担当の方と相談した結果、
休日診療所に問い合わせがあった患者さんのうち、
インフルエンザ疑いの発熱患者さんをこちらにまわしてもらうことにしました。
まあ、問い合わせはほとんどがインフル疑いのヒトでしょうが。
 ただし、今度の日曜日は午後からCRPのアヤちゃんの結婚式のため、
お昼過ぎにはバスに乗って(しかもギター持って)
宇都宮まで行かなきゃならないので、
11時~11時半くらいで受付は打ち切りになっちゃうと思いますが、できるだけやります。
 朝、9時半からです。
 日曜日はインターネット受付は「なし」ですので、
状況をお電話で確認いただけるとよろしいかと思います。
もちろん、直接来ていただいてもけっこうですが、
インフルエンザ疑い以外の通常の初診、再診は受けませんのでご理解ください。
耳が痛い子は、もちろん診ます。
 熱が出てから数時間たってからの方が検査の正確性が出ます。
土曜の夕方、夜から、あるいは日曜日朝からの発熱の方は、
日曜の午前中にお越しください。
 日曜のお昼、午後からの発熱の方は、月曜日の受診で間に合いますから、
熱が多少高くても、なるべく夜間救急を受診しないようにしましょう。
本当に重症な方がきちんと診られなくなります。
 昨日のブログで述べたように、新型はそれほど恐れることはありません。
 この提案に対し、
二つ返事で引き受けてくれた薬局の小峰君、
そして、当院のスタッフの皆さん、
感謝です。
 やはり、今回のインフルエンザは一つの「社会的災害」ではあります。
 常々思っていることですが、医療機関は個人経営でもやはり公的な役割があります。
かつてのブログ「やり残した事」で書いたことがすこーしだけできるかも。
アフリカやアフガニスタンはそう簡単には行けなくても、
ここでは多少、役に立てるでしょう。
1分で行けるし。

3件のコメント
2009.11.25

季節性とパンデミック、どっちが怖い?


 さて、皆さんは従来型の季節性インフルエンザと
いわゆる新型インフルエンザ(パンデミック・インフルエンザ)では、
どっちが怖いと思いますか?
 「そりゃ、新型が怖いに決まってんだろ。」
 と、思ったあなた、間違いです。
 「だって、テレビで言ってたけど、死んだ人だってけっこう出てるじゃん。」
 なるほど、でもそこに情報の落とし穴があるのです。
 従来の季節性のインフルエンザで毎年何千人もの方が亡くなってます。
何百人もの子供が脳症になってます。
 でも、それは一般には報道されません。
 なぜって、当たり前だから。
肺がんや胃がんで何人死のうとニュースになんないでしょ。
健康なヒトがただの風邪で運悪く肺炎になって死んじゃっても、それもニュースにはなりません。
 もちろんインフルエンザが老人健康施設や老人病棟なんかで集団発生して、
死亡があった場合はニュースになります。
 しかし、それ以外はいわゆる「ニュース・バリュー」がありません。
 一方、新型の方は最初は「感染疑い」だけでもニュースになりました。
続いて、患者が確認され過剰な報道がありましたね。
 死亡例も最初は大々的に騒ぎましたがだんだん減っています。
 マスコミは(特に日本は)そんな体質です。
 食品の偽装問題があったときには次々にニュースで出てました。
しかし、今は全く話題になりません。
 急に無くなるわけはないので、日本のどこかでは
産地や賞味期限の偽装くらい、今でも小規模ながらあるでしょうが、
今は「ネタ」としての価値がないので報道されないだけです。
 確かに推計で感染者900万人ともいわれる新型インフルエンザは脅威ではありますが、
実は今のところ重症化は少ない。
 インフルエンザの病原性は
(毒性という言葉はやめましょう。インフルエンザは毒素を出しません。)
感染力とは別のものです。
 ウイルスがどれだけ急激に体内で増殖し、それが宿主に影響を及ぼすかです。
 「新型」インフルエンザは多くの人が免疫を持ってないので、
とりあえず罹りやすい。
 しかし、ウイルスは細胞の中でしか増殖できません。
 新型は、まだ人間の細胞で増殖した経験が少ないのでまだそのテクニックが未熟です。
もたもたしてるうちに感染した人間の作った抗体に捕らえられてしまう。
 一方、従来からある季節性のインフルエンザは、何年も流行を繰り返してきました。
人間の体の中で生きていく術(すべ)を知り尽くしているといえます。
 新型インフルエンザの症状が比較的早く改善するのはこのためです。
すぐに熱が下がるヒトが多いです。
(これはもちろん喜田先生から聞いた話を元に私が推測したものです)
 もちろん、H1N1なので、年長者が何らかの抗体を持っている可能性や
流行がまだ若年者に限られているので、
毎年インフルエンザの大半の死亡例となる高齢者の感染が少なく、
死亡率に関しては厳密な議論ができないとは思いますが。
 また、将来的にこの「新型」がヒト細胞での増殖力を増した型に変異していくことは
充分考えられますし、おそらくそうなっていくでしょう。
 かかるんなら、今のうち?
 いや、無理にかかることはないすけど。
どんな危険があるかもわかんないし。
 まあ、理想的には新型ワクチン打ったあとで軽くかかっとく、
ってことができたらベストでしょうな。

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2009.11.25

(ベルリンの壁崩壊とは関係のない)ソ連の消滅の話

 新型インフルエンザワクチンの予約を開始しております。
 今回対象者は未就学児童(1歳以上)です。
 実際問題として一体、何本入荷するかわかんないですが、
とりあえず希望者は木曜日までに予約してください。
 もちろん「新型」にもうかかっちゃったヒトは必要ありません。
 さて私が10月19日付で書いたブログ「従来型インフルエンザと新型インフルエンザ
を覚えておられるでしょうか。
 ここで、疑問として
今回「新型H1N1」が出たので今までの「Aソ連型H1N1」と「A香港型H3N2」は
今シーズン以降どうなるんだろうということを書きました。
 マスコミでも全く触れられてなかったもので。
 この疑問について、この間の専門医講習会で講師の先生2人がコメントしてました。
 現段階では推測の域を出ないが、従来のAソ連型H1N1は消えるだろう。
B型はもちろん残るが、A香港型H3N2は、消えるかもしれないし、残るかもしれない、
とのことです。
 まあ、私の予測もそうでした。
 病院でやってるいわゆる「簡易検査」はA型とB型の区別はできますが
ソ連型と香港型の区別はできません。
まして同じH1N1であるソ連型と新型の区別もできません。
 しかし、私はこのA型は全部新型ですと患者さんに説明してきましたが、
この間の講習会で提示されたPCR検査のデータを見ると、やはりほぼすべて新型でしたね。
 わずかにB型も出てましたが。
実際に足利市でもB型の報告がありました。
 じゃあ、今年はB型も流行ってるの、っていうとそうではありません。
 実はAにしろBにしろ、インフルエンザは一年中出てるはずです。
 でも流行期で無いといちいち検査をしないので、
普通の風邪として処理されてるわけです。
流行期でなければ、重症化も少ない。
 今年は、こんな形で新型インフルエンザが流行ってるので
検査をすると、たまたまB型がひっかっかって来る、ということに過ぎません。
 そして毎年、B型や香港型に先行して流行するソ連型が殆ど出てないとすれば
新型にとって変わられる可能性は高いでしょう。
 「Aメキシコ」っていう名前になるのかしら。
 だから、このままソ連型が新型に取って代わられれば
今打ってるワクチンのAソ連型の成分はまあ、意味が無い。
でもA香港はビミョーとしても、少なくともB型に関しては大いに意味があるわけです。
 つまり今年の予防接種はB型とA型が別になっちゃったわけですね。
 メンドクサイ。

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2009.11.24

インフルエンザキットの功罪


 新型インフルエンザ、いつまで続くんでしょうね。
 毎日、検査、説明の繰り返し。
 同じことをいちいち説明しなきゃなんないのは、花粉症のときと同じ。
 まず、新型であること、学校への届出、休む期間、証明書について。
そして、感染の様式、マスク・手洗いの必要性、食事・寝室・トイレの注意。
抗ウイルス薬の説明、タミフルとリレンザの同じ点と違う点、服薬期間。
合併症・重症化について気をつける症状、解熱剤の考え方、併用薬。
家族に発症した場合、不顕性感染、予防接種の考え方。
 これらのことを患者さんの反応を見ながらもれなく話さねばならん。
 たまたま、一緒に結果が出た人は2人まとめて聞いてもらったり。
これも花粉症のときと同じだー。
 おかげで声がガラガラだー。
 まあ、この新型から
「因果関係が明らかでインフルエンザと診断できる」ものについては
簡易検査をしなくてもタミフル、リレンザを出していいことになったのは助かります。
この8月に出た通達です。
 ところが、昨日の休日、昼飯食ってると病院の電話が
「もしもし、Tですが、子供が熱を出しまして・・・。」
「ああ、お姉ちゃんが5日前、お母さんが2日前にインフルエンザでしたから
インフルエンザでしょうね。」
「それで、昨夜救急で病院かかって・・・。」
「夜間かかったのか、インフルだからタミフルかなんか出たですね。」
「それが、検査陰性で、明日熱があれば、またかかるようにと。」
「いや、それもうインフルだから薬出していいのよ、小さい子だし。
じゃあ、休日診療所に電話して、もう検査要らないから診察だけで、タミフル出してもらって。」
「それが電話したら50人待ちで・・・。」
 そりゃ、しかたがない、ってことで
患者さんに来てもらって診察してタミフル出しました。
薬剤師さんとこにも電話して来てもらって。
もちろん診察で中耳炎、その他の発熱の原因等の無いことをチェックしますが
インフルエンザの簡易検査はしませんでした。
 そもそも、これは、その救急の医者が、きちんと
「インフルエンザです」、と診断すれば
もっと簡単に済んだ話。
 厚労省の8月の通達を知らないのか、
こんなん症状も状況も、インフルに決まってるじゃん。
 まして小さい子だし、何より 翌日も休日 だってことはわかってるはず。
 その前も、夜間に救急病院かかったのに、
3時間も待たされて検査陰性ですと返された園児がいた。
そこんちも1日前にウチでお兄ちゃんがインフルエンザと診断されてる。
こういう子は検査いらないでしょ。
 検査キットができてから確かに診断は簡単になったけど、
医者は、いや人間は何千年も前からインフルエンザを診断してきたわけだ。
 まさに検査結果だけ見て患者さんをみない医者って事です。

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2009.11.23

専門医講習会、大変勉強になりました。


 そんなわけで、土日は専門医講習会で仙台に行ってきました。
 いやー、いろいろ勉強になったです。
 1日目は、好酸球性疾患を中心にアレルギーとの関連の話をいくつかと、
ショートステイ・サージェリー、つまり日帰りや短期入院手術の話を聞いてきました。
 この分野は次々に新しい知見や技術、器具なんかが開発されてる分野なので、
最新の講演を聴くと大変タメになります。
 中には、おー、あの機械使ってみたいなー、なんて手術器具もあるんですが、
「これはまだ日本に輸入されてなくもちろん保険も通りません」、
などという話で、悔しかったりする。
 まあ、花粉症や、アレルギー性副鼻腔炎などの話で、
以前と違った概念や新しい治療の方法・方針も
いっぱい聞いてきたので、これは即実践したいと思います。
 だから、当院の治療指針もモノによって微修正が入ります。
今までと違う説明、投薬もあります。
医学って難しいですね。
 2日目は、ウイルス性疾患の話をいくつか聞いてきましたが、
なんといっても、いわゆる「新型インフルエンザ」のすばらしい話を聞いてきました。
 演者は日本のインフルエンザ、ウイルス関連では第1人者の喜田先生でした。
 このセンセイ、初めて話を伺いましたが、スゴイです。
 まず、話がわかりやすい。
 アタマ悪い人ほど話が難しくわかりにくい。
難しい話をわかりやすく説明できるってのは「できる」人の証拠です。
 そして、モノの見方がすばらしい。
 この方は、話を聞くと研究室でパソコンやってるんではなく
アラスカやモンゴルや中国に自ら出かけていって、
そこで、渡り鳥の糞や死体を調べたり、豚を実際に解体したりしてる
現場の人、なのだ。
 だから、モノを見て、考える、
その筋道が非常にしっかりしてる。
 だから、厚生労働省の役人や政治家のダメなとこが我慢ならない。
こんな事やってちゃダメだ、とはっきり指摘する。
ホントはもっといいたいことイッパイあるんでしょうが、
公の場なのでやんわり皮肉交じりに言ってましたが・・・。
 ともかく、私が、インフルエンザに対して持ってた疑問やなんかが、
この先生の話を聞いてことごとく、氷解した。
 「やっぱり」、とか、「なるほど」、とか、「ごもっとも」、とかの連続でした。
 結局、今のままのインフルエンザ対策ではダメってことです。
 なぜ、新型インフルエンザはすぐ熱が下がるのか、
なぜ、新型の予防接種は1回でいいのか(1回でいいんです!)、
なぜ、鳥インフルエンザは高病原性になったのか、
なぜ、新型インフルエンザは豚から始まったのか、
なぜ、今のままのインフルエンザ対策ではダメなのか、
今後季節型インフルエンザはどうなっていくと考えられるのか、
 みーんな、納得のいく説明ですべて理解できました。
 今後、機会あるごとに、外来での説明や当ブログでお話します。
 どうして、こういうことが、マスコミできちっと伝えられないんだろ。
 ちなみに、今回の「新型」インフルエンザという名前は正しくないそうです。
正しくは「パンデミック・インフルエンザ」と呼ぶべきなのですが、
適当な訳がないまま、「新型」とよばれるようになってしまったとか。
 このウイルスが確認された時、喜田先生はこのワクチンを従来の季節性ワクチンに
組み込むべきだと主張したそうですが、
厚労省がわけのわからん理屈をつけて却下したらしい。
 その時にきちんとワクチン対策ができてれば、
現在のワクチン騒動は防げた可能性が高いですね。

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