ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2012.11.14

小児急性中耳炎のガイドラインについて

 実は急性中耳炎の治療について、
コメントを頂きましたが、非公開コメントなので、
お答えのみいたします。
 ご質問は10か月のお子さんの中耳炎についてです。
 中耳炎の治療方法、抗生剤の選択は、
ご質問のようにケースバイケースで、
お医者さんの考え方、知識、技量によっても違ってきますし、
ただ一つの正解があるわけではありません。
 しかし、近年の小児急性中耳炎の難治化に伴い、
2009年に小児急性中耳炎治療のガイドラインが
日本耳科学会を中心とした耳鼻咽喉科専門医の委員会により策定されており、
基本的にこのガイドラインを参考にして治療するようになっています。
(でも、読んでない医者も多いかも。)
 インターネットで
「小児急性中耳炎診療ガイドライン2009年版」
を検索すれば閲覧できますが、
素人のヒトがいきなり見ても難しいので、
要点をまとめますね。
 まず、診断編として、小児急性中耳炎の重症度を
軽症、中等症、重症の3段階に分類します。
 発熱、耳痛、啼泣・不機嫌などの自覚症状と、
鼓膜の発赤、膨隆、混濁、耳漏などの他覚所見等をスコア化して点数をつけます。
 例えば、発熱なら37.5度未満は0点、
37.5~38.5度は1点、
38.5度以上は2点などという感じです。
 診察所見で点数が高いのは鼓膜の発赤よりも膨隆です。
鼓膜発赤: 0(なし),2(ツチ骨柄あるいは鼓膜の一部の発赤),4(鼓膜全体の発赤)
に対し
鼓膜の膨隆: 0(なし),4(部分的な膨隆),8(鼓膜全体の膨隆)
と高得点です。
 鼓膜が真っ赤っかでも、腫れが無ければ4点で、
全然赤くないけど全体に膨らんでれば倍の8点です。
 それからこのガイドラインの素晴らしいところは、
24か月例未満(すなわち0歳、1歳)であれば、
それだけで3点加算があるというところ。
 2歳未満の中耳炎がいかに手ごわいかを示しています。
 これらにしたがって、治療法が選択されますが、
まず9点以下の軽症例は抗生物質無しからスタートです。
 そのあと、重症度、経過によって抗生剤が入って来ますが、
ガイドラインでは概ね
①ペニシリン常用量
②ペニシリン倍量、メイアクト常用量、クラバモックス
③メイアクト高用量
④ペニシリン、ロセフィン点滴

の順に上がっていきます。
 途中から、鼓膜切開をする、という選択肢が入って来ます。
 ここには、オラペネム、オゼックスが入っていませんが、
オラペネムが2009年、オゼックスが2010年の発売ですので、
ガイドライン作成時には一般に出回っていませんでした。
 現時点では④に当たるものと考えていいと思います。
 ガイドラインは3~5年で改定となってますので、
そろそろ次の版が出ると思います。
 ワタシは実際にはいちいち所見を厳密にスコア化はしてませんが、
ガイドラインに基づいて重症度を判定し、
治療の選択をするようにしています。
 したがって、抗生剤もここに出ている、
ペニシリン(種類多いけど当院では飲みやすさを考慮して力価が倍で半量で済むワイドシリンを選択)
メイアクト、クラバモックスと
オラペネム、オゼックス以外の抗生剤を使う事は原則的にはありません。
 もちろん、オラペネム、オゼックスは「奥の手」の薬ですから、
なるべく使わずに済むように心がけています。
 また、ガイドラインでは中等症以上の例には途中で
「感受性を考慮し」
の文言が出てくるので、
基本的に2歳以下は初回に培養を取るようにしています。
 ありふれた病気だがキチンと対応しないと、
泥沼にはまり込む事がある、
そんな病気が小児(特に乳幼児)急性中耳炎です。
 ご質問の答えになってるかどうかわかりませんが、
ご参考になさってください。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。



6件のコメント
2012.11.14

リンゴ病

 前原先生のバンド「かものはす」は、今度椎名林檎の曲をやるという。
 この間、CRPの前座をやっていただいたエミちゃんとこの
「Rad Union」も椎名林檎の曲を数多くレパートリーに入れている。
 実は、ワタシの2コ下の弟は泌尿器科医であるが、
やはりバンドをやっていて、椎名林檎の曲をやっていたと聞いた。
 「ラリアッツ」のkozzyさんもブログで
椎名林檎の東京事変の事にふれていた。
 「かものはす」兼「北朝鮮飯店」のメンバーであるアヤちゃんも
椎名林檎が大好きでいつも車でかかってる。
 うーーーーーん、フシギ。
 前原先生はジャズやフュージョンが好き、
エミちゃんは普段何聴いてるか知らないが、
kozzyさんはメタル~ハード・ロックのヒトである。
 ウチの弟は、今はどうか知らないが、
ニック・ロウやブリンズレイシュワルツなんか好きだったような。
(ワタシもその辺、好きです。)
 アヤちゃんはクラッシック好きでカラオケではミーシャとか歌ってる。
(ところで、ワタシはミーシャって人を知りません。)
 一見バラバラ、でも、なんで、みんな椎名林檎なのか?
 これは「リンゴ病」?
いわゆるミュージシャン受け、っていうのだろうか。
 万人受けするのは確かに才能ですね。
 ワタシも好きか嫌いかと訊かれれば、
別に嫌いじゃないけど、
自分から聴いたことは一度もないなあ。
 バンドでやることも多分ないし。
 ちなみにワタシの持ってる「リンゴ」のCDはこの2枚のみ。
ringo.jpg
「RINGO/Ringo Starr」(1973)
ringo2.jpg
「Goodnight Vienna/Ringo Starr」(1974)
 いずれも名盤です。
 来年、来日するようです。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。



2件のコメント
2012.11.11

マイコの迷い道


 先週、中学生でマイコプラズマだと修学旅行行けないので、
マイコプラズマで無い証明をしてほしい、
という患者さんが来ました。
 厳密にマイコプラズマでないことを証明するのは
極めて難しく、少なくともその場でわかるものではないのですが、
熱もなく咳も治まってきていたので、
もちろん修学旅行大丈夫ですよとお話をしましたが、
この「マイコプラズマ」やっかいです。
 何が、やっかいって、マイコプラズマという病名が出たとたんに、
状況がややこしくなる。
 保育園で、マイコプラズマが流行ってます、
学校でマイコプラズマかどうか調べてこいと言われました、
マイコプラズマじゃないんでしょうか、
先週小児科でマイコプラズマといわれました・・・・・、
この手の話が多く、うんざりです。
 マイコプラズマはマイコプラズマ・ニューモニエという病原体により
引き起こされる疾患ですが、
この病原体はウイルスよりは大きいですが一般細菌よりは小さく、
肺炎球菌などのように通常の培養検査では診断できません。
 インフルエンザキットのような迅速診断キットもありますが、
健常者でも抗体陽性で出るため、
ほとんど当てにならず、使われていません。
(じゃあ、なんで、こんな製品があるんだ?)
 確定診断はペア血清といって、2週間程度の間をおいて2回採血し、
その間の抗体の上昇を見て診断しますが、
時間も手間もかかり一般的ではありません。
 そこで、マイコプラズマかも知れない、とか
マイコプラズマの疑いもあり、とか
マイコプラズマっぽいねー、
などという感じで診断されてるものがほとんどです。
 医療機関でマイコプラズマといわれた方のうち、
本当のマイコプラズマは一部だと思うし、
逆にマイコプラズマでも病院にかからず
自然に治っちゃってる人もいっぱいいるでしょう。
 マイコプラズマはいわゆる「咳の風邪」のひとつで
通常は4歳以下はかかりにくく、
かかっても多くは不顕性(症状が出ない)か軽症です。
 これは、マイコプラズマの病原性が、
病原体そのものよりも感染したヒトの免疫の過剰反応によるものが
多く関与するためといわれています。
 一般的には自然治癒しますが、
マクロライド系の抗生物質が効くため、
高熱などの重症例、症状が遷延する例などには、
クラリスやジスロマックなどを使います。
 ただ近年、このマクロライドの濫用によると思われる
菌の耐性化が急速で、7割以上に効かない、というデータもあります。
 テトラサイクリン系のミノマイシンやニューキノロン系のオゼックスは
耐性マイコプラズマにも効果がありますが、
最初から使う薬剤ではありません。
 特に、2歳以下の子供の咳の風邪で、
マイコプラズマかも知れないから、ということで
いきなりオゼックスなんか飲ます必要は全くありません。
 この「マイコプラズマ」という病名に、
周囲、特に学校の保険の先生が敏感になり、
過剰反応を示すのは、マスコミの影響が大きいのでは。
 RSウイルスも普通の風邪なのに、
特殊なとらえられ方をして説明に苦労する。
 当院でもRSの検査キットは一応おいてますが、
まだ、使ったこと無いなあ。
 幼稚園児でRS調べても意味無いし、
そもそも、0歳児以外は保険とおりませんです。
 特に、インフルエンザに迅速診断キットが導入されてから、
マイコプラズマやRSウイルスなどの病名が独り歩きし、
混乱を招いているように思えてなりません。
 うーん、咳が長引いてるが、
副鼻腔炎等もないのでマイコプラズマも疑って、
抗生物質出してみます、
などと説明するんだけど、
マイコプラズマっていう言葉を出すと、
また騒ぎになるといやだなあ、と思い
どうやって説明しようか迷ってしまう。
 これぞ、迷子プラズマ。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。




2件のコメント
2012.11.09

くるりとオルタナ

 先日、ポール・ウェラー日本公演を聴きにいったわけだが、
その時の前座が「くるり」というバンドであった。
 名前は何と無く聞いたことがあるが、
曲を聴いたことはなく、
どんなバンドか全く知らなかった。
 ライブで偶然話しかけられた人の話では
けっこう有名なバンドらしく、
今回同行するはずであったKさんも
実は大ファンとのことであった。
 実際に聴いてみて、
なかなかいい感じのバンドだなあ、
と思ったのだが、
どんなバンドだったかというと、
これが説明できない。
 我々世代は音楽をジャンル、スタイルで語るのに慣れている。
 パンクとかメタルとかファンクとかブルースとか。
 アマチュアバンド、特にオヤジバンドの大会なんかいくと
それはさらに顕著で、
もう、バンドが音を出す前から
このバンドはハードロックとか、ディスコとかフォークとか
演奏する音楽が予想できるし、
中にはビートルズだ、キャロルだ、ベンチャーズだ、
などとバンド名が特定できるものも稀ではない。
 「くるり」の演奏を聴きながら、
お、ここはバーズみたいだとか、
この曲は第2期ジェフ・ベック・グループ風だ、
などと一生懸命自分の中で考えるのだが、
一向に捉えきれない。
 我々の頃はロックというのは「舶来品」であり、
本当の意味での国産ロックはなかったのだが、
若いヒトビトは小さい頃からロック的なものを
イロイロ聴いて当たり前の存在なのだなあ。
 帰ってきて「くるり」をウィキペディアで調べると
ジャンルは「オルタナティブ」と書いてある。
 「オルタナティブ」っていうと私の中では、
「ポップ・グループ」「キャバレー・ボルテール」
「スロッビング・グリッスル」などのバンドのことで
式で表すと
(ニュー・ウエイブ-ポップ)×ノイズ
みたいな音楽という認識なので
かなり意外でした。
 ワタシの「オルタナ」ってこんな感じ、昔こんなの結構聴いてました。


 まあ、音楽をジャンル分けしようとする発想が
そもそも、やはり、オジサンなのだ。
 でも、ロックバンドのリードボーカルは
やっぱメガネかけてちゃダメだと思う。
(除くイアン・ハンターやピーター・ウルフなどのグラサン族およびエルビス・コステロ)
  人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。



コメントはまだありません
2012.11.08

運も実力のうち


 今シーズンもあと残り4試合となったが、
今週は週末は無く、水曜日開催である。
 なんで?
 週末はアジア・チャンピオン・リーグの決勝だという。
 我が国のチームはとっくに負けちゃって、
決勝は韓国の蔚山現代とサウジアラビアのアルアハリ、
全然カンケーねー。


 2012年J1第31節
 川崎フロンターレ    4-2     浦和レッズ   (等々力陸上競技場)
         (前半   3-0)
         (後半   1-1)


 わずかに優勝の可能性を残すレッズ。
 もちろん残り全試合の勝利は必要だ。
 そして、レッズの目指すパス交換からの崩しで、
幸先良く先制点を奪う。
 ここまでは理想的な展開に見えたが、
その直後のフロンターレ、レナトの左足のミドルレンジからの強烈なフリーキックは
壁のマルシオにあたり、コースが変わってレッズゴールに吸い込まれる。
 うう、なんたる不運!
 しかし結果的にこのゴールがその後の試合の流れを変えてしまった。
 思いがけぬ「もらい事故」に戸惑うレッズに追い打ちをかけるような、
2点目のフリーキック、しかも同じレナト。
 わずか4本のシュートで2点を挙げたフロンターレは、
精神的にも優位に立ち、のびのびとプレーをし
一方、勝利がマストであるレッズはどんどん追い詰められていく。
 レッズは良いサッカーをしていたと思う。
 ラインを下げてブロックをつくる相手に、
今まではなすすべがなかったが、
今回は、くさびのパスからのワンタッチプレーと、
ペナルティエリア近くでの強引なドリブル突破
2通りの方法で状況を打開しようという「約束事」が
おそらく監督から指示されていた様子が見て取れた。
 実際に、それらは有効で、決定的なシュートに結びついたり、
良い位置でのフリーキック奪取に結果が表れていた。
 でも西部の好セーブやらで、得点に結びつくには至らず。
 それにしても、GKの西部といい、途中交代の山瀬といい、
こういう「よく知ってる選手」にやられるのは痛いなあ。
(元レッズです、もしかしたら知らない人もいるかと思いますので、参考までに。)
 さあ、これで広島が勝ったので、レッズは優勝はまずないと言ってよく、
次節の埼スタの広島戦の日、心おきなく福岡の専門医講習会に行ける?
 というより、前節心配した下からの脅威は、
ついに4位グランパスと勝ち点差で並んじゃったじゃないかあ。
 アジア・チャンピオンズ・リーグ出場枠は3位以内。
(これもそのうち減っちゃうかもだがなあ。)
 最終節のグランパス戦で目の前でいやなことがおきませんように。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。


医療系をまとめました。
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  
最近の投稿 最近のコメントカテゴリー アーカイブ