2013.10.08
教えてください。
幼い頃から、耳垢が湿っています。中耳炎などは患った事がありません。
なので、耳鼻科にお世話になった事がないのですが、
これは一生このままなのでしょうか。
お忙しいところ、すみません。ご教示いただけますか?
いろんなご質問いただきますが、
これは答えやすいです。
耳垢には2種類あって、カサカサした乾いたタイプと、
べとべとした湿ったタイプがあります。
前者は粉耳とか、後者はヤニ耳などと呼ばれることもありますが、
これは遺伝的、生まれつきのもので通常は一生変わりません。
日本人では乾いたタイプのヒトが多く、
湿性のタイプは15,6%といわれていますが、
中国・韓国ではさらに少なく湿った耳垢は5~7%程度といわれています。
逆に欧米では90%以上、特に黒人では99.5%が湿性耳垢です。
英語で耳垢を
「Ear Wax」と呼ぶのもこの辺のイメージです。
ヒトの汗腺にはエックリン汗腺という全身に分布し、
サラサラの汗を出す汗腺と、
アポクリン汗腺といって腋の下などの体の限られた部分に存在し
脂肪たんぱく質を含んだ汗を分泌する2種類の汗腺があります。
このアポクリン汗腺は外耳道内にも存在し、
それが多いヒトとほとんどないヒトがいます。
アポクリン汗腺が多く、活発なヒトは湿った耳垢になります。
腋臭の原因もアポクリン汗腺といわれており、
この2つは合併します。
日本人に比べ欧米人は体臭がキツイのはこの事が原因です。
日本人ではいわゆる
「縄文人」の系統がアポクリン型、
「弥生人」が非アポクリン型ということらしいです。
だから、湿った耳垢はDNAに刻まれた情報なので、
一生変わることはありませんし、
ご両親やお子様に同じ耳垢のヒトがいるはずです。
ちなみにワタシは
「湿ったタイプ」です。
ヒト以外の哺乳類はアポクリン優位なので、
湿った耳垢のヒトはケモノに近いのか。
でもアポクリン汗腺は、いわゆるフェロモンとしての機能なので、
湿性の耳垢のヒトはセクシーだ、
といえない事もない?
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2013.01.24
今回は拍手コメントの方にいただいたコメントです。
個人を特定する情報が載ってないので、
一応、転載させていただきます。
いつもとっても興味深いお話と、私も小さい子供がいますので、勉強になるなあと思いながら拝見しております。息子は風邪を引き金に咳喘息になります。かかりつけの先生をとても信頼していますが、とにかくすごい患者さんの数でお昼に受け付けしても受診が夜10時をまわるこも。そんな時はよそを紹介されてしまうのですが、いくつかの他院は必ずリンサンコデインやアスベリン酸などの咳止めを処方されます。しかし、かかりつけの先生は咳止めは出しません。咳は止めずメプチンやプランルカスト、ムコダインといった感じです。本当のところ喘息の場合咳止めは使用しないほうがいいのでしょうか?だとすると、あまりにも咳止めを出されるお医者さんが多いです。ちなみに、現在6歳です。アレルギー数値は高いものの、項目別には該当せず、はっきり喘息と診断できないとの事です。お忙しいと存じますが、ご意見をお聞かせいただけると幸いです。
お昼に受付して、受診が夜10時過ぎ!
スゴイ、超人気医院ですね。
患者さんも大変だけど、
どっちかというとその先生のお体の方が心配になっちゃいます。
さて、今回のお話は「咳止め」です。
咳止めの可否については、咳そのものについて考える必要があります。
咳は本来、体の防衛反応で、
気道に入った異物等を排除する仕組みです。
間違って、気管に水が入っちゃったりすると、
咳こんで、むせます。
気管支や肺に水が入ると困るので体が防衛しているのです。
脳血管障害や加齢で咳反射が極端に低下した場合は、
食物が気管に流入していわゆる「誤嚥性肺炎」をおこしてしまいます。
咳が体を守っているのです。
痰は気道の分泌物が増えて性状がやや粘稠になったものですが、
感染がある時は白血球が攻撃した細菌やウイルスの残骸を含んでいます。
とすれば、これは咳で出してあげた方がいい。
また、喘息の場合はアレルギー反応により気道の分泌が過剰になり、
しかも気道が狭くなってたまっている状態。
とすれば、これは気管支拡張剤(メプチンやホクナリン)で気道を拡張し、
ムコダインやムコソルバンなどの去痰剤をつかい、
咳とともに外に出してあげた方がいい、
という理屈です。
よく「ホクナリンテープ」を
「咳止めのシールください」
と言ってくるお母さんがいますが、咳止めではありませんので。
この辺の仕組みは「急性胃腸炎」の下痢止めに似てますね。
ノロウイルスやロタウイルスによる感染性のウイルス性胃腸炎の時は
下痢によって早くウイルスを体外に出した方がいいので、
「ロぺミン」などのいわゆる下痢止めは「禁忌」です。
さて、咳止めの話に戻りますが
それでは、咳止めは常に使うべきではないのでしょうか。
ウイルスや細菌によってのどや気管の粘膜が障害されると、
気道の過敏性が亢進します。
すると少しの刺激で咳が出て、
激しく咳こんでしまいます。
実際にはそんなに痰などは無いのに、
炎症があるために咳センサーが誤作動するためです。
このような咳は苦しいですし、
咳こみによってさらののどの粘膜が荒れてしまいます。
こういう咳の時には中枢性の鎮咳薬、いわゆる咳止めを使います。
実際にはこれらが混在する場合もあるので、
気管支拡張薬を使いながら咳止めを使う、という場合もありますが、
純粋な喘息の咳には原則咳止めは使わないと思います。
プランルカスト(オノン)はアレルギー反応の化学物質である
ロイコトリエンの働きを抑える物質ですが
平滑筋収縮抑制などの効果から咳の場合にも時に使用します。
もちろん、喘息をお持ちの場合には発作予防として長期服用することもあります。
ただ、血液検査の数値などチェックせず、
喘息の診断があやしいのに、
咳の風邪をひいた後、発作予防と称して
延々と長期にわたって出す先生が時にいらっしゃるので、
これはちと問題だな、と思いますが。
コメントいただいた方のかかりつけの先生は、
そこらへんのところをきちっと考えられている先生のようで、
長時間待ちの人気クリニックであるのも頷けますね。
ま、そんなわけで、最近は昔と違って、
「咳は止めない」「下痢も止めない」「熱も下げない」
といった風邪への対処が主流になっています。
PL顆粒とかあのたぐい、最近処方されないでしょ。
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2013.01.21
先週のスキーツアー、ブログで書いたように
日本海周りで6、7時間ほどかけて帰ってきたわけだが、
日帰り、自家用車参加のモヤシ大原は大変だったらしい。
彼は関越道も止まってると思い高速を使わず、
18号、碓井バイパス経由でのルートを試みた。
結果、午後1時半に斑尾スキー場を出て、
ひたすら渋滞にはまり、深夜12時の時点で
まだ、小諸!
結局、佐久に宿をとり、翌日朝イチで帰ったという。
後で、計算したところスキー場から小諸まで
時速4キロとのこと!
ご苦労さまでしたあ。
さて、話変わりますが、
先日こんなメールを頂きました。
はじめまして。
> ブログからたどり着きました、××と申します。
> もうすぐ2歳になる娘がいます。
>
> 保育園に通ってるのですぐに風邪をひき、ほとんどが鼻水の風邪です。
> 外には出て来ずに溜まってることが多いです。
>
> 病院ではムコダイン、ムコサールの粉の混合薬(2回/日)、ホクナリンテープ、
> ジキリオン3ミリ (夜のみ/日)
> の処方をしてもらってます。
> アレルギー性鼻炎の診断はついてません。
> ジキリオンは朝飲ませると、眠くなって保育園でご飯が食べれなくなることがあ
> るので夜のみです。
>
> ・去痰の薬と抗ヒスタミンの薬を一緒に飲ませると、かえって排出しにくくなる
> とネットで見たことありますが、
> 実際はどうなのでしょうか?
>
> ・鼻水が鼻から外に出ないで喉や奥で溜まってしまうのは何故でしょうか?
> 一見風邪をひいてないように見えます。個性みたいなものでしょうか?
>
> 現在は少し乳白色で喉がガラガラ言うほどではないですが、
> ハァハァしながらご飯を食べてます。
> 元々食に貪欲なタイプではないので、食欲が落ちてるというよりも食べづらくて
> 食べることが落ちてます。
> 夜も寝苦しそうな場面があります。
>
> ご意見頂けたら幸いです。
>
いやあ、大変そうです。
でもこういうのは良くあるんです。
さて、ご質問は
・去痰の薬と抗ヒスタミンの薬を一緒に飲ませると、
かえって排出しにくくなる
とネットで見たことありますが、
実際はどうなのでしょうか?
ジキリオンとはザジテンの後発品で一般名はケトチフェン。
発売当初は抗アレルギー剤の分類でしたが、
今では第2世代の抗ヒスタミン剤に分類されます。
一般に抗ヒスタミン剤は鼻汁の分泌を抑えるので、
鼻汁や痰などの気道分泌液が粘稠になり
喘息などの場合喀痰の排出を妨げる、
という先生もいます。
アクセルとブレーキを同時に踏んでる、などとおっしゃる先生も・・・。
ただ一般的に抗ヒスタミン剤の気道分泌に対する問題点は、
抗ヒスタミン剤が併せ持つ抗コリン作用によることが多いと思われます。
市販の風邪薬や花粉症の薬を飲むとやたら口が乾く、あれです。
古い、いわゆる第1世代の抗ヒスタミン剤にはこのような作用が強く、
痰の排出を妨げる要素はあると思われますが、
新しい世代の抗ヒスタミン剤になればなるほど、
そのような作用は軽減されています。
だから私自身はそれほど大きな影響があると思っていませんが、
どろどろのハナが出ていて、アレルギーでもなければ、
第2世代とはいえ抗ヒスタミン剤の効果はあまり期待できないでしょうね。
(しかも、ザジテンは第2世代の中では最も古いグループなので、
第1世代ほどではないにしろ抗コリン作用はあります。)
・鼻水が鼻から外に出ないで喉や奥で溜まってしまうのは何故でしょうか?
一見風邪をひいてないように見えます。個性みたいなものでしょうか?
個性ってこたあないよね。(笑)
これは、いくつかの事が複合しています。
まず、最初の風邪によりハナの中の粘膜の抵抗力、
具体的には繊毛運動といって粘膜を自分で掃除する力、
が阻害されます。
そのためにハナ水や塵埃がいつまでもハナにとどまり、
ハナの中にもともといるバイ菌が増殖します。
それを白血球が攻撃した残骸がいわゆる青っ洟です。
小さい子はそれを自分でハナをかんで除去することができないので、
またそれによって粘膜があらされ、鼻の繊毛運動が阻害されます。
以下、その繰り返し。
しかも、こういう状態の鼻粘膜は
ウイルスや細菌を自浄する機能が落ちてるわけですから、
またすぐ風邪をもらっちゃう。
寒冷によってハナ水が増えても同じ道をたどります。
乾燥は鼻水の水分を奪いかたいハナになってこれも粘膜を傷害します。
いつまでたっても治らない・・・・。
そこで、対策は
温かく、湿潤な環境をつくり、なるべく鼻汁を吸引除去、
あるいは鼻がかめるように訓練をして、
できるだけ、保育園を休ませる。(笑)
実際、年末年始のお休みで1週間保育園に行かないと、
特に2歳以下の子はぐっと良くなることが多いです。
まあ、ご家庭の事情で難しい面もありますよねー、
ウチだって下の子は6か月前から保育園預けてたし。
風邪も、また人生の経験なので、
そのうちきっとだんだん強くなりますが、
中耳炎だけは知らないうちになってる事もありますので要注意です。
それと、2歳くらいからだとアレルギー性鼻炎の合併、
3歳を過ぎると副鼻腔炎の合併にも気をつけましょう。
てなわけで、まだまだ寒い日が続きます。
みなさま、お大事に。
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2012.12.01
こなさん、みんばんは。
(おー、これ知ってるヒト古いわあ。)
「とりあえず、おぐぐ先生に訊いてみよ」のコーナーです。
こんかいは、これ。
ちょっと教えてください。
急にスイマセン。小児副鼻く炎で検索してたら見つけちゃいました
4歳の子供が副鼻腔炎と診断されて早半年以上
黄色いドロッとした鼻が出たり出なかったりという感じなので
酷くなる時にだけ病院へと言った対応をしています。
あまり私に知識がなく、薬が終われば(7日分)終わりと思っていて
後は、自然に任せて…
最近鼻水でないね♪あぁ治ったのかな?といった具合です
風邪ひきになると、一日目から黄色い鼻水が出だすと言った感じです
一時期は副鼻腔炎が気になり、鼻水が出るとすぐに病院へいっていたのですが
行きつけの先生は副鼻腔炎には触れず、
「はい!風邪だね。たんと鼻水、
咳の薬出すね」
私「あの~前に副鼻腔炎っていわれたんですが…」
と言うと
「ちゃんとその薬に副鼻腔炎にも効くの入ってるからね♪」
という感じで軽い対応だったので、私があまり深刻には考えていないんですが…
また鼻が出だして酷くなったら連れていくと言う対応でいいのでしょうか?
それと、お義母さんから通っているプールはもう辞めた方がいい!副鼻腔炎の原因だと言われたのですが
プールとの関係ってあるのでしょうか?子供も楽しみで行っているので、出来たら辞めたくないんです
実は、小児の副鼻腔炎の取り扱いは、
この投稿のあったブログ「
小児副鼻腔炎の治療について」(←クリック)に詳しく書きましたので、
それをお読みいただくとして、
今回の質問に絞ってお答えしますね。
まず、どういうタイミングで受診するか、
いつまで治療を続けるか、
という点です。
そりゃ、まあ、青パナドロドロで大変なら来てください、
ですが、副鼻腔炎を心配するなら、
痰がらみの咳が続く時は要注意です。
ハナが(前には)出てなくても、
のどにまわって咳の原因になることはきわめて多い。
昼間はそれほどでもなくても、寝入りばな、起きぬけ、
走った後などに咳こむのは重要なサインです。
お母さんが「ハナは全然出ないんです。」といっても、
吸引してみると奥の方に濃いハナが充満、なんてことはざらです。
逆に、ハナが止まっても咳や痰が続いていたら、
副鼻腔炎は治ってないかも、ということです。
そこで、いつまで通院するかですが、
レントゲンで副鼻腔炎が確認されたヒトは、
もう一度レントゲンを撮り、陰影が無くなっていることを確認するまで、
というのが常道です。
もちろん、中断したけど、あとで確認したら治ってましたー、
なんてことは多いんだけど、
本人や家族は治った気になっていたが、
実は治って無かった、なんてことも間々あるので。
以前レントゲンで副鼻腔炎だったなら、
どこかで治っているかどうか確認する必要があります。
以前も書いたけど、子供のうちは治りやすいが、
中学生以上の副鼻腔炎は慢性化するとなかなか治らない場合も多く要注意です。
さて、次に水泳に関してです。
実はこの問題は専門家の間でも意見が分かれるところです。
ワタシは、基本的にはスイミング肯定派ですが、
中にはプールいかんという先生がいる事も事実です。
はっきりしたエビデンスは無いのが現状です。
ワタシとしては、スイミングにより
呼吸器系が鍛えられ、風邪をひきにくくなれば、
副鼻腔炎にかかりにくくなり、また治りも早いと考えています。
喘息の子にスイミングが推奨されるのと同じ理由です。
それに温かい湿度の高いスイミングプールでの環境は、
寒風の中、あるいは花粉がイッパイとんでる中のサッカーに比べると
鼻やのどに対して行って帰ってくるほどプールの方がいいわけです。
ただし、青っパナで完全にふさがってしまうような急性期は、
中耳炎を誘発する恐れも高いのでプールお休みしてもらいます。
寒くなってきて、外来にも急にこの手のお子さんが増えてきました。
何より、風邪をひかない、ひかせない事が、
一番のポイントです。
ま、注意しててもひくときゃ、ひくんだけど。
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