ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2011.11.18

今日は「風邪に抗生物質を使わないように」の日


 今日、11月18日は「EUROPIAN ANTIBIOTIC AWARENESS DAY」です。
antibiotic_3_1.jpg
 「抗生物質に意識を持つ」ということは「風邪などで抗生剤を安易に使わない」
というキャンペーンで2008年から行われています。
 抗生物質の多用により急激に増えた「耐性菌」に対する警告キャンペーンです。
 マスコットキャラクターもあるみたいです。
antibiotic_awareness.gif
 風邪だろうがインフルエンザだろうが抗生物質を使わなくても良くなるよ、
ということです。
 こっちは、風邪もインフルエンザも抗生物質飲まずに安静に、ということです。
pic3-300x168.png
 このキャンペーンはヨーロッパだけでなく
アメリカCDCも同時期にキャンペーンをやっています。
11月14日から20日まで「Get Smart About Antibitics Week」です。
atibioticsweek01_20111118134733.jpg
 女の子のおでこに
「抗生物質、はたしてホントに必要な時にちゃんと働いてくれるでしょうか?」
と、書いてあります。
 抗生物質の無用の風邪やインフルエンザなどの
ウイルス疾患で抗生物質を使っていると
本当に抗生物質が必要なときに効かなくなってしまう、
ということを警告しています。
 カナダでも同様のキャンペーンを展開しているそうです。
 日本ではこんな動きが無くいまだに
「風邪で熱があるから」
という不可解な理由で安易に抗生物質を処方するお医者さんがいるのは
誠に残念なことです。
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2件のコメント
2011.11.14

RSウイルス迅速検査の話

 最近マスコミでRSウイルスに注意、なんてことがよく報道されている。
 NHKの朝の番組でもやっていた。
 RSウイルスは依然とうブログでも紹介しました。
クリックして参照→「RSは何の略?
 要するに「かぜ」のウイルスなんですが、
報道を見るといかにも新手の感染症みたいな扱いで
やたら国民の不安をあおる内容になってました。
 1018_04_shinsatsu.jpg
(NHKホームページより)
 特にキャスターが
「普通の風邪と見分けがつかないところが怖いですね。」
のにはあきれた。
 だって、普通の風邪でしょうが。
 そもそもこの「流行」実際どうなんですかね。
 NHKのこのデータはどこのデータなんだ。
1018_03_graph.jpg
 風邪ひきが全国で1000人や2000人のワケないから、
定点観測施設のサンプルデータでしょうけど。
 まあ、注意するに越したことないし、
病気の存在を知っておくことは大事ですけど、
RSウイルスかどうか調べてください、って患者さんが増えても困る。
 実はRSの迅速検査キットは数年前に発売され、
3歳以下の入院患者に限って検査が認められていた。
 今回、10月17日から外来でも1歳未満の乳児での検査が
保険適応になったようです。
 そんなわけで、当院でも検査キット導入しましたので、
必要があれば検査いたします。
 どっちかっつーと、この「流行」は、検査キットの普及によるものも多いのでは、
とフト思う。
 風邪で入院した子供さんが、それまでは
お医者さんもRSウイルスだなあと思っても、風邪からの気管支炎・肺炎ですね、
などと言われてたのが
「RSウイルスが原因です」と断言されるようになったわけだし。
 ともかく、みんなかかる病気なんだから、
お母さん方や保育園の先生が過敏になって、
RS,RSと騒がないことを望みます。
 3週間くらいは感染力があるので、3週間保育園来るな、
というのはナンセンスだし。
 また逆に調子に乗ってやたらめったら検査しまくる先生が出ても困るなあ。
 インフルエンザと違って特効薬があるわけではないので、
治療法が変わるわけではない。
 わかったところで、せいぜい
「RSウイルスなので抗生物質は無効なのでいりません、
重症化に注意して、乳児に移さないように。」

って話をするくらいでしょうな。
 ところで、RSウイルスには注射がありますが、
これは低体重出生児、先天性心疾患、慢性肺疾患を持つ子供たちに
流行時に月1回予防的に打つものです。
 商品名「シナジス」ですが、これはワクチンではありません。
 ワクチンとは病原体そのものを弱毒化、無毒化したものを体内に入れ、
それに反応して体が病原体をやっつける「抗体」を産生するのを促すものです。
 「シナジス」は無毒化した病原体ではなく、「抗体」そのものです。
 だから打てば、その日から効果がありますが、
自分で作ったものではないのでいずれ体から消えてしまいます。
 フツーの予防接種とは違いますのでご注意を。
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2011.10.27

日本聴覚医学会に行ってきました


 水、木と休診にして、日本聴覚医学会に行ってきました。
 会場は福岡。
 
 実は、妻の実家が福岡なのでちょっと実家にあいさつ。
ワタシ、6,7年ぶりに福岡の実家にお邪魔しました。
 税務署の人読んでたらおこられちゃうなあ。
 いや、ちょっと寄っただけでこういうのふつーはナイですので・・・。
 聴覚医学会は耳鼻咽喉科学会の分科会の一つで、
実はあまり出たことが無かったのだ。
 耳鼻科は関連学会が多く、
耳関連だけでも「耳科学会」「めまい平衡学会」「聴覚医学会」などがある。
 耳鳴り治療の最前線などを聴いてきました。
(学会のスライドです。)
009_20111027210223.jpg
 結構知らないことも多く、ああ、この分野、もっと勉強せなあかん、
と痛感いたしました。
 いろいろもっと聴きたいのもあったけど、
飛行機の時間があるので・・・。
 017_20111027210223.jpg
 例によって搭乗前に空港で昼食。
今日は「博多もつ鉄板焼き定食」!
019_20111027210222.jpg
 これでスタミナを補給。
 それで、飛行機、地下鉄、東武線と乗り継ぎ午後6時半に足利市駅に着き、
タクシーで自宅に帰ってその足ですぐに、今度は自分の車で
7時から足利医師会館で開催された「小児科診療医師研修会」に参加してきました。
 ああ、今日は勉強しすぎじゃ。
 さすがに疲れましたわ。
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2011.10.25

今週は休診でご迷惑をおかけします。

 誠にご迷惑をおかけしますが、今週、水曜日と木曜日、そして土曜日が休診です。
 26日、27日は日本聴覚医学会のため。
 そして、29日は、もちろんナビスコカップ決勝のためです。
 前者は前から行く予定だったのですが、
後者は浦和レッズのまさかの決勝進出で臨時休診になってしまいました。
 そんなわけで、医院の待合室には張り紙がしてあります。
 学会による休診のお知らせ。
002_20111025133044.jpg
 ナビスコカップはちゃんとその旨を明記。
001_20111025133045.jpg
 全部サッカーだと誤解されないように
院長の指示により、学会編には「注意書き」が加えられています。
004_20111025133043.jpg
 ご迷惑おかけしますが何とぞ御容赦ください。
 頑張って応援してきますので。
(いや、もちろん、学会の方では「勉強」してきますので。)
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2011.07.22

ただいま9人待ち

 朝、犬の散歩に出ると、ひときわ交通量が少ない。
 木金の自動車関連企業の休業シフトに加え
学校関係が夏休みに入ったためだな。
 小、中、高校生は徒歩ないしは自転車で通うわけだから、
学校関係の職員ってのもかなり多いってことだ。
 学校の先生は夏休みあっていいなあ、などと言うと
必ず、いやセンセイだって夏休みも学校行くのよ、休みじゃないのよ、
などと世の教育者の方々は事あるごとにおっしゃるが、
やっぱり朝から毎日時間通りにいくわけではないのだ。
 まあ、社会全体が「夏休みモード」「バカンスモード」になるこの時期は大好き。
最も今年は、震災の影響で例年のような能天気なムードはないが。
 ともかく、この時期、耳鼻科もヒマになる。
 花粉も飛ばず、ダニホコリのアレルギーも落ち着き、
風邪や中耳炎やインフルエンザなどの主要な耳鼻科疾患がこの時期最低になるので、
外来もガラガラ、え、受け付けやってんの?という感じになる。
 唯一増えるのはヘルパンギーナなどの夏風邪と外耳炎だが、
夏風邪も学校幼稚園が夏休みに入ると流行が終わるのだ。
 一方、この時期忙しいのは皮膚科で
日焼け、あせも、虫さされ、トビヒ、湿疹、水虫、・・・・みんな夏に多いようだ。
 多分野口先生んとこはこの時期、毎日、修羅場なのでは・・・。
 ちょうど、冬から春先の耳鼻科みたいに。
 耳鼻科と皮膚科はおそらく患者数の季節的な変動が最も多い診療科で
北半球と南半球、スキー場と海の家みたいに
そっくり逆になってるのだ。
この話、以前も書いたなあ。
参照⇒「夏の耳鼻科
 朝ごはんを食べてると病院の電話が鳴った。
 「あの、久しぶりにインターネットで受け付けしたんですけど、
うまく受付できなくて。」
 「どんな感じなんですか。」
 「受付すると、いま9人待ち って出ちゃうんですけど、これでいいんでしょうか。」
 時計を見ると8時。
 確かに冬から春にかけては金曜日といえども
朝7時半からのネット受け付けで、4,50人待ちにはなってる時間だ。
 ピークのころは7時半から7時31分までの1分間で30人以上予約が入って、
ほとんど「チケぴ」状態だったりする。
 しかし、この時期、耳鼻科すいてるのだ。
 9人はそれでも少ないが、金曜日だし8時の時点ではまだそんなもんかも。
 「ええと、たぶん、それで受け付け出来ていると思いますので、大丈夫です。
今時分は、すいてますから。」
 さーて、今日もゆったり(?)仕事するぞ。
 何人待ちになってるかなー。
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2011.07.05

ヘルパンギーナ、始めました。

 暑くなると一般に耳鼻科の病気はよくなり、
副鼻腔炎の子も、中耳炎の子も
「はい、治ったので、もう来なくていいですよー。」
と、めでたく卒業、がここのところ多い。
 しかし、今日は、朝から発熱の子ばっかし。
 それも39度、40度といった高熱だ。
 で、のどを見ると、扁桃腺が赤く腫れ、
その周囲にポチポチと口内炎がゴマをふったよう。
 あー、ヘルパンギーナですねー。
 今年もこの季節が来たか・・・・。
 ヘルパンギーナとは夏風邪の一種で
コクサッキーウイルスによる感染症だ。
 突然の高熱とのどの痛みが主症状だが、
特徴的なのどの所見があれば診断は容易である。
 実はこの間までは「溶連菌感染症」が多く、
それとの鑑別がビミョーな症例も多く、
迅速診断キットを要する子が結構多かった。
 それが、今日は典型的な所見ばかりで、
お口、あーんしただけで、はい、ヘルパンギーナ、が連発。
 で、ヘルパンギーナは効く薬がない。
 せいぜい痛みの強い子は消炎剤、鎮痛剤を使うくらいで、
もちろん抗生物質は無効、不要である。
 溶連菌は抗生剤10~14日必要なので、
その辺、症状、所見が似てても治療は行って帰るほど違うわけだ。
(たまにヘルパンギーナですと言って抗生剤出すトンデモ医者がいるけど。)
 ヘルパンギーナは飛沫や糞便からうつり、
潜伏期間は数日。
 コクサッキーウイルスは多くの型があり、
手足口病を起こすのもこいつらである。
 そのためいったん治っても別のヘルパンギーナにまた罹る、ってこともあるわけだ。
 幸いなことに高熱も通常2日以内に自然に下がっちゃうので
重症化することはまずない。
 3日過ぎても高熱が続く場合や、いったん下がった熱が上がる場合は
別の病気や合併症を考えます。
 アデノウイルスは「プール熱」の原因として問題ですが、
眼症状がない場合ヘルパンギーナや溶連菌と間違われることがあります。
 典型的なものは咽頭の所見からこの3者は鑑別できますが、
疑わしいものはアデノウイルスの迅速検査をします。
 まあ、アデノにしても抗生剤は無効なので
治療はヘルパンギーナと変わんないんですけど。
 40度の熱があっても、痛みや全身症状が軽ければ
薬なし、ってわけで、
お母さん方に、薬なしですっていうと、
えー、大丈夫ですか、などとおっしゃる方もいるんだけど、
いらない薬飲む方がよっぽど体に悪いんだから。 
 しかし、ヘルパンギーナ、流行りだすと梅雨明けも近いなあ。
 「冷やし中華始めました」や「土用丑の日のウナギ屋のポスター」のように
子供の口の中に夏の訪れを感じる耳鼻科医なのであった。
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2011.06.02

全米医師連盟の提言


 最近インターネットで見た興味深い記事に次のようなものがあった。
全米医師連盟の提唱するプライマリケアのガイドライン、
いわゆる初期治療に当たる医師への「べからず集」である。
 日常診療で不要な検査、やってはいけない治療をまとめ
そのトップ5を発表したものである。
 なかなか面白いので見てみましょう。
 まずは「一般内科」編から。


1.発症早期の腰痛の画像撮影は原則行わない
2.無症状かつ健康な成人へのスクリーニングを目的とした血液生化学検査、尿検査は行わない
3.無症状かつ低リスク者への心電図を含む冠動脈スクリーニングをしない
4.脂質異常症の初期治療にはジェネリックのスタチンのみを用いる
5.65歳未満の女性または70歳未満の男性で危険因子がない場合には、DEXAによる骨粗しょう症スクリーニング検査を実施しない


 「スイマセン、昨日から腰がすごく痛くて、立てないんです。」
「(ぎっくり腰だと思うけど)レントゲンとって見ましょう。」
は、ダメ!
 「最近、酒の量が多いので肝機能調べてほしいんですけど。」
もダメ!
「親が心筋梗塞で死んだんで、最近胸が気になるので心電図とって見てください。」
もダメ!
「最近は若いヒトでもダイエットなんかで骨粗しょう症多いんですよね、調べてみますか。」
もダメなのだ。
 もちろん人間ドックや検診では問題ないが、日常診療ではダメよ、ということだ。
 まあ、この辺はワタシがかかわることが少ないので、
なるほどそういうものなんだなあ、
という感想ですが。
 続いて、耳鼻科に大いに関係のある小児科領域の「べからず集」


1.streptococcus陽性でない限り、咽頭炎への抗菌薬処方を行わない
2.意識消失やその他の危険因子がない軽症の頭部外傷例に画像診断を行わない
3.滲出性中耳炎では専門医への紹介を早期に行わない
4.小児の親に市販の咳止めや感冒薬を使わないようにアドバイスする
5.喘息を適切にコントロールするための吸入ステロイドを使用する


 なるほど、そうだよねー。
こちらはおおいに納得。
 streptcoccusは溶連菌のこと。
当院では疑わしい子には溶連菌検査をして
陽性なら抗生剤を出すけど陰性なら出しません。
 熱が高いからと言っていきなり抗菌剤を子供に出す先生わりといるんだよなあ。
この間は、0歳の子の発熱に初回から出ててびっくり。
カゼ薬と言われたそうだ。
 「風邪」であれば抗菌薬は不要なわけで、自分で言ってることが矛盾してるぞ。
風邪ならば39度あっても40度あっても抗菌剤はいらないわけだ。
 この記事には患者側のプレッシャーに負けて抗菌剤を出さないように
このガイドラインを見せて親に納得してもらう、とある。
 しかし、医者のほうからさしたる説明も無く
抗菌剤出しちゃうんでは話にならんな。
 3番の「滲出性中耳炎」に関しては日本と米国で事情が違うので
ちょっと説明します。
 アメリカでは小児科医はすべてのプライマリケアを担当するために
ちゃんと、子供の滲出性中耳炎を診断するトレーニングを受けてます。
いわば小児科医と耳鼻科開業医を合わせた存在です。
専門医ってのはもう病院にいて中耳炎の手術をする段階。
 日本の小児科医は、ワタシの知る限りでは、
きちんと滲出性中耳炎(場合によっては急性中耳炎も)の診断をできるヒトがあまりいないので、
(いや、いるとこにはいますよ、そりゃ)
やはり耳鼻科にかかってください、といいたい。
 咳はむやみに止めてはいけないし、
市販の感冒薬には解熱剤が入っているので
症状をマスクして悪化させてしまうことがあるからだろう。
 でも、見てると風邪で「ロキソニン1日3回」とか
「二フラン1日3回」なんて処方する先生もいるので困ったもんだ。
(まあこれは大人の場合だけど)
 子供の喘息⇒吸入ステロイドはもう常識みたいなんだけど
いまだに子供の喘息にテオドールから出す先生って、いるんだよなあ。
 日本でもこういった「べからず集」が浸透すれば
膨れ上がる医療費に歯止めをかけたり、
耐性菌の出現が抑えられたり、
患者さんが適切な医療を受けられると思います。
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2011.04.12

ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンの検討


 再開したヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンですが、
今回の検討についてある程度手元に資料を集めましたので、
ご報告いたします。
 報告された死亡例は7例。
 6ヶ月未満が3例、
6ヶ月以上1歳未満が2例、
1歳代が1例、
2歳代が1例。
 重篤な基礎疾患があったのは3例。
 このうち、剖検されてるのは6例。
 死因について、誤嚥による呼吸不全が疑いを含め2例。
急性循環不全が1例、ヒトメタニューモウイルスによる急性感染疑いが1例。
その他乳児突然死症候群、原因不明など。
 いずれも、ワクチン接種との因果関係は不明。
 見たところ、多分これは関係ないかなあというのもあるが、
あとは正直、ワカラナイが、関係がいかにもある、というのは見当たらない。
 そもそも海外のデータで10万接種あたりの死亡例は
肺炎球菌ワクチンで0.1~1、
ヒブワクチンで0.02~1
ということで、
今回我が国の例だと両ワクチンとも10万接種あたり0.1~0.2になるそうだ。
 一方ワクチン接種前の細菌性髄膜炎は年間1000人程度発症で、
死亡率5%であるから、
年間50人くらい亡くなってるということだ。
 しかも死なないまでも25%に、麻痺、発達の遅れ、てんかんなどの
重篤な後遺障害が残るのでこの数は年間250人に上る計算だ。
 となると、冷静に考えれば、ワクチンを打ったほうが絶対安全、
ってわけで、今回の専門委員会の判断も正しいわけだ。
 しかし、あくまで、これは確率上の問題。
 全体としてどんなに小さい確率でも、わが子に起こったら100%なのだ。
 ワクチンを打った後、死んじゃったら、たとえワクチンのせいじゃない
と言われても、親は自分を責めるかも知れない。
 一方、ワクチンを打たずに髄膜炎になった場合も、
これは間違いなく、やはり、打っておけばよかった、と自分を責めるだろう。
 難しいのは、何かして不都合が起こるほうが、
何かしないで不都合が起こることより因果関係を想定しやすい、
ということ。
 でも違うんです。
 ワクチンについては因果関係が不明だが、
ワクチンを打たずに髄膜炎になったときは因果関係が明らかだって事。
 個人的には、ワクチン、打つべきだと思います。
 特に合併症を持ったお子さん、
乳児期から保育園、託児所に預けなきゃならないお子さん、
上に兄弟のいる赤ちゃんは、打つべきでしょう。
 少なくとも自分の子だったら打ちます。
 我が国で1970年代に死亡例の報告後「百日咳ワクチン」が一時接種中止になった。
安全性が確認された再開後も接種率が数年間は上がらず、
その間100人以上の乳幼児が百日咳で死亡したそうです。
 今のところ、当院には再開後、
ヒブ、肺炎球菌ワクチンの接種予約が、あまり来てないみたいだけど、
全国的にそんなことで、髄膜炎で不幸な経過をとる子供たちが増えると、
残念なことですね。
 しかし、今回ある程度、死亡例の経過、合併症についてなどの記載がある資料を入手して検討したのだが、
厚労省から送られてきた再開のお知らせには、
ほとんど「大丈夫です」「安全です」しか書いてなくて、
具体的な症例の検討はまったく書かれてない。
 ホント原発事故に対する政府発表みたいで、
これ見て大丈夫だから、って言われてもちょっと、と言う内容だった。
 個人情報等の問題で、公にしにくい面もあるかもしれないが
少なくとも専門家たる医者のとこにはもうちょっと詳細な資料が欲しいとこだがなあ。
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2011.04.08

スプデルの呪縛

 先日、来院されたご年配の女性の患者さん、
長年、近所の内科に血圧や不眠症とかでかかっており、
花粉症の時期にはそこで花粉症の薬ももらっていた。
 しかし、その先生が、医院を閉めちゃったので、
内科は他でかかったが、耳のことで耳鼻科に来たので
今シーズンの薬をもらいたいということで、
2月に薬を出している。
 ご本人が言うには、自分は花粉症の薬を飲むと
必ず口が渇くので、「スプデル」が一番いい、とのこと。
 確かに旧世代の抗ヒスタミン薬は抗コリン作用が強く、
眠気や口の渇きが強烈である。
 えーっと、スプデル、って何かなあ、と調べると
「ザジテン」のジェネリックであった。
 ザジテンは第2世代の抗ヒスタミン薬の中でも、最も初期の薬なので、
タベジールやポララミンなど第1世代に比べれば
確かに、マシかも知れないが、
けっこう眠気や口渇が出る薬だ。
 オレ自身、この薬飲んで車運転中、危うくトラックに追突しそうになったことがある。
 でも、まあ、本人がこれがいいんであれば、
と、「ザジテン」を処方。
 もちろん、同じ薬であることを説明した。
 
 数週間して、ともかく鼻が止まりません、
って事で来院。
 診てみると、花粉症がひどく、膿性の鼻汁も大量だ。
 今年の花粉が大量であることを説明し、
薬をアレロックとオノンに変更。
 膿性鼻汁がひどいため抗生剤と、ムコダインも加えた。
 そして、再診時。
 訊けば、こないだ出した薬は全部やめて、
弟さんが前もらったスプデルを時々飲んでるという。
 しかも(当然)鼻の具合はワルイ。
 下痢をしたため、薬の説明書に下痢と書いてある薬、
抗生剤、オノン、ムコダインは自己判断ですべて中止し、
同じく「口の渇き」の記載があるアレロックもやめちゃったそうだ。
 うーん、困った、どっから説明しようか・・・。
 まず、下痢に関しては、抗生剤が原因であることはほぼ確実、
整腸剤も出てたのだが、ムコダイン、オノンの関与は可能性としてかなり低い、
ということを説明。
(オノンは時々、おなかのことを訴える方がいるけど。)
 それで、アレロックはヒトによっては口渇あるけど、
ザジテンよりは少ないはず、
ということを説明。
 しかし、患者さんはこんどは、ザジテンの時も口渇があった、
スプデルはなかった、と主張。
 さあ、困った。
 いや、前も言ったけど、ザジテンとスプデルは同じ薬なんですよ。
 すると、実は以前、他のお医者さんにかかったときも、
スプデルと同じだ、といわれて別の名前の薬が出たが、
それでも口が渇いて困った、という。
 んー、なるほど。
 おそらくこのおばあちゃんは、以前第1世代しか無いころに、
その強烈な口渇にずっと悩み苦しんでいたんだろう。
 そして、スプデルが処方され、その違いを実感し、
その印象が強烈に刻まれたんでしょうな。
 いわば、信仰めいた「暗示」にかかちゃってるんで、
説明してわかってもらうのに、相当の時間を費やした。
 そういや「スプデル」って名前、
なんかドラクエの呪文かなんかみたいな響きがあるかも。
 しかし、あの説明書きも、ホント良し悪しだなあ。
 内科からはそれこそ体が悪くなるくらい、コレデモカって量の薬が
ずーっと出てるんですけどねえ・・・・。
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2011.03.21

リスクの評価


 土曜日は計画停電が行われず、
おかげさまで混乱なく外来診療が行えました。 
 明日火曜日は、計画停電が午後の時間帯なので、
午後は休診になります。
 一方、水曜日は本来午後休診ですが、
臨時に診療を行います。
 ただし、前回書いた「Dパターン」なので、
診察開始は午後4時ころだと思います。
 しかもコンピューターの設定上、
水曜の午後は停電が解除されてもインターネット受付ができませんので、
直接来院して受付してください。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 さて、先日の土曜日は普段の花粉症の時期よりは
かなり患者さんが少なかったようです。
 その要因は
①停電を見越して前日までに受診を済ませていた
②ガソリンが無く車で行けないので、近くの病院に行った、
 もしくはガマンすることにした
③家の中がめちゃくちゃで病院行ってるヒマが無い
などが考えられますが、特に②が大きかったような。
 しかし、ここで重要なのは
④放射能が心配で屋外に出なかったら花粉症が良くなった
というもの。
 話に聞くと、学校などでは校庭に出ないよう指示があったとか。
 助かるー。
 っていうか、普段から花粉症の時にはそれやって欲しいです。
 ちょうど一昨年から昨年にかけて、新型インフルエンザが流行したせいで
ロタウイルス、ノロウイルス、中耳炎関係が激減したと同じような
思わぬ恩恵が持たされてるかも。
一昨年のブログ参照⇒「新型インフルエンザがもたらしたイイこと?
 以前から花粉症の子には
「昼休み外遊び禁止です。」
とか、
「保育園の先生に連絡して、外遊びをさせないでください。」
 などと事あるごとに言ってるのですが、
真面目に訊いてくれるヒトもいるけど、
ちゃんと守ってなかったヒトも多いみたいで。
 スゴイ症状になってて、クスリくださいなどとおっしゃる方がいるので、がっかりします。
 最近は
「放射能はすぐ人体に影響出るレベルじゃあないけど、
いまの花粉量はすぐ重大な影響が出るレベルですから。」
などとお話しています。
 そんなこと言っても、
花粉じゃ死なないけど、がんになったらコワイわよねー、
などといいながらタバコ吸ってるあなた。
 現時点の放射線量より、
今吸ってるタバコとその副流煙の方が、
あなた自身とお子さんの発がんに与えるリスクはケタ違いに高いってこと、わかってます?
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