ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2015.02.28

鼻茸について

 

 

いつも楽しく拝見しています。

今日は相談させてください。

75歳になる父が鼻茸の診断を受けました。
症状はひどいらしく鼻の奥まで詰まっているようです。1週間の入院で全身麻酔での手術をすすめられました。

私は、高齢者の父がその手術をうけるべきな疑問です。

ちなみに父は学生時代にもその手術を受けたことがあるようでものすごく嫌がっています。

小倉先生はどうおもいますか?

 

***************************************

 鼻茸(はなたけ)とはいわゆる鼻ポリープのことで

慢性副鼻腔炎の方にできることがあります。

 

 

 

 

 

 キノコというよりプルプルした半透明な寒天とかゼリーみたいな感じで

腫瘍ではなく炎症性の産物です。

 

 

 

 

 

 

 慢性副鼻腔炎の方の全員にできるわけではなく

体質的な素因が関係あります。

 

 

 

 

 

 

 好酸球性副鼻腔炎やアスピリン喘息の患者さんに合併するため

アレルギー性の要因はほぼ確実ですが、正確にはわかっていません。

 

 

 

 

 

 

 大きくなったり、しばしば多発するため、鼻腔に充満して

鼻閉のため呼吸障害や嗅覚障害を起こします。

 

 

 

 

 

 

 薬剤や局所治療により制御できる場合もありますが、

高度のものは切除術を行います。

 

 

 

 

 

 

 外来で切除することも可能ですが、

入院して全身麻酔下に手術することもあります。

 

 

 

 

 

 

 再発性が高く、2回以上手術を受ける方も少なくありません。

 

 

 

 

 

 

 ご質問の件ですが、ポイントがいくつかあります。

 

 

 

 

 

 

 まずは、本人が切除術を望むかどうか。

 

 

 

 

 

 

 鼻茸による症状は先ほど言ったように鼻閉と嗅覚の問題です。

 

 

 

 

 

 

 本人がそれでもいいというのであれば無理に手術する必要はありません。

 

 

 

 

 

 

 ただし、それが、本当にただの鼻茸ならば、という場合に限ります。

 

 

 

 

 

 

 お父様の鼻茸は両側ですか?

 

 

 

 

 

 

 悪性腫瘍であれば放置すると生命にかかわりますが、

がんと鼻茸は視診や画像診断でほぼ鑑別できます。

 

 

 

 

 

 ところが、見た目が鼻茸に似ている内反性乳頭腫という病気があります。

 

 

 

 

 

 実際に、ワタシの経験でも

若いころ他院で鼻茸を手術したが、

数十年して、またできたので手術してほしい、と来院された方の手術をし、

組織検査をしたら内反性乳頭腫だったということがありました。

 

 

 

 

 

 

 乳頭腫は良性腫瘍の一種ですが、このうち内反性乳頭腫は、

良性腫瘍でありながら悪性化する可能性を持った腫瘍です。

 

 

 

 

 

 

 5~20%程度の頻度で悪性化するとの報告があり注意が必要です。

 

 

 

 

 

 ただ、この数字は手術をして鼻副鼻腔乳頭腫と診断された方の悪性化率で、

実際には内反性乳頭腫だったのだが、

鼻茸でしょう、と手術せずに何事もなく一生を終えた方も多いでしょうから、

実際にはもっと低いのかもしれませんが。

 

 

 

 

 

 

 いずれにせよ、その辺のところを含め主治医の先生とよく相談されて

方針を決められた方がよろしいかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメントはまだありません
2014.08.15

耳痛の原因

 病院はお盆休み。

 

 

 

 

 

 

 妻は娘と里帰りと称し福岡の実家に帰省中だが、

途中ちゃっかり長崎ハウステンボスなんぞを組み込んでいる。

 

 

 

 

 

 

 ワタシは留守番で朝晩の犬の散歩をしてるが、

部屋で音楽聴きながらプラモデルなんぞ作ってると

ちょいちょい病院の電話が鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

 ほとんどは「診察やってますか。」という問い合わせだが、

ごくたまに子供が耳が痛いの、熱出たのなどの問い合わせがあり

電話口の指示で済むことも多いがたまに診察する羽目になることもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日も、19歳の耳痛を診ることになった。

 

 

 

 

 

 宇都宮まで免許の本検受けに行ったが、耳痛がひどくなったので診てほしいとのことであった。

 

 

 

 

 

 この年頃の急性中耳炎は少ないので、

耳かきしすぎて外耳炎になった男の子かなと漠然と思っていたら

今年大学生になった女の子だった。

 

 

 

 

 

 右耳痛を訴えるが、耳を見ると左右とも外耳道、鼓膜に異常はなし。

 

 

 

 

 

 そして、喉を見てみると、案の定独特の所見が。

 

 

 

 

 

 

 熱を測ってみると38度を超えていた。

 

 

 

 

 

 

 その場で、迅速検査を行い、診断は溶連菌感染症。

 

 

 

 

 

 

 扁桃炎はしばしば、のどの痛みではなく耳の痛みとして認識されることがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 以前、やはり急患で見た2~3歳の男の子。

 

 

 

 

 

 急に耳が痛いと泣き出したため、夜受診されました。

 

 

 

 

 

 

 風邪症状はなく、やはり鼓膜外耳道に異常なし。

 

 

 

 

 

 

 きけば、食事中に急に右耳を押さえて泣き出したとのこと。

 

 

 

 

 

 

 その時、ぴかっとワタシの頭の中で電球が光り、もう一度喉をよく見て目的のモノを発見

 

 

 

 

 

 扁桃腺に刺さった魚の骨を摘出しました。

 

 

 

 

 

 のどに刺さった骨の痛みを耳痛と認識していたわけです。

 

 

 

 

 

 

 家族の方は大変ビックリしてましたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、昨日の女の子、もう熱も下がったころだと思うが、

昨日は1点足りずに本検落ちちゃったらしいけど、

今日はまた受けに行ったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2件のコメント
2014.08.06

今週金曜日、土曜日の外来について

 8月8日(金)及び9日(土)は、副院長不在のため外来は院長のみとなります。

 

 

 

 

 

 副院長が以前手術した股関節の定期診察にいくためです。

参照⇒「手術無事済みました」

 

 

 

 

 

 一診で診察スピードが半分のため、待ち時間等の点等で

来院された方に少なからずご迷惑をおかけする可能性がありますが

何卒ご了承ください。

 

 

 

 

 

 

 

 それにしても、診察とはいえ北海道かあ。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・いいなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメントはまだありません
2014.06.17

6月20日(金)診察開始時間変更についてのお知らせ

すでに、待合室に掲示しておりますが、

以下の点、ご了承ください。

 

P6170020

 

 

 

まあ、皆さんテレビ見てるでしょうから、

来院される方はまず、いないかとは思いますが、念のため。

 

 

 

 

 

 

 

受け付けはネットは通常通り7:30から順番取りできます。

外来も開いてますので、テレビ見ながらお待ちいただいてもけっこうです。

 

 

 

 

 

 

万一、負けても診察はします。

 

 

 

 

 

 

1件のコメント
2014.03.26

副鼻腔炎と抗生剤に関するご質問

はじめまして。 4歳の娘の症状、薬のことで質問させてください。

現在、蓄膿(副鼻腔炎?)のため10日ほど薬を飲んでいます。

3月3日・・・しばらくでていた鼻水を放置していたところ、だんだん色がつき始め、詰まりだし、夜寝苦しそうになってきたため、鼻吸いをしてもらおうと耳鼻科を受診。『フロモックス、サジテン、ムコダイン』を処方される。自己判断で、服用させず。 3月8日・・・耳の聞こえが悪いような気がして、受診。「鼓膜がパンパン。中耳炎一歩手前」と言われ、『クラリシッド、サジテン、ムコダイン、オノン』処方。鼻を強くかみ過ぎたのが悪かったようです。6日間服用。この間、鼻吸いにたびたび通っています。 3月14日・・・鼻は出るものの、詰まりや鼻水の色はだいぶマシになってきていました。「もうひと押ししておこう」と、抗生剤をメイアクトに変更し処方。 3月17日・・・鼻詰まりがまたひどくなり、受診。(寝る時に少し咳き込むことも)耳の方は心配なさそうだが、鼻が良くないとのことで、抗生剤をオラペネムに変更し処方。帰宅後、調子が良くないようで、珍しく昼寝をして、今3時間近く寝ています。「寒い」「暑い」と言って元気もあまりなかったのですが、熱はないようです。(オラペネムはまだ飲んでいません)

このような経緯なのですが、いくつか質問させてください。

①オラペネムですが、先生のブログの中に最終手段とあったため、娘の場合、中耳炎というわけでもないですし、そんなに強い薬が必要なのかな・・と心配になっています。 この薬の処方は妥当なのでしょうか? 実は、抗生剤がこんなに頻繁に変更されるものだとは知らず、最初のフロモックスを飲んでいないことを伝えていません。 やはり、フロモックスを先に試してみるべきでしょうか?

②娘はあまり病気をしない方で、風邪をひいてもあまり熱が出ることもないのですが(出ても元気で、一晩で回復することがほとんどです)、鼻にきやすいです。 3ヵ月か4ヵ月に1回くらい、鼻水に色がつき始め、鼻づまりになり、夜寝づらくなり、耳鼻科受診というパターンです。 今まで、けっこう素直に出される薬を飲ませていたのですが、今回は治りが悪いです。 今までは、4日か1週間くらい飲めば治っていました。 抗生剤が効かなくなっているのでしょうか? 抗生剤が効かないというのは、娘の体のほうの問題でしょうか? それとも菌が強すぎてどうしようもないということもあるのでしょうか?

③鼻水がドロドロネバネバの色つきになってしまった場合、抗生剤を飲んで治すしかないのでしょうか?

④出来るだけ抗生剤にかかわらず薬を飲ませたくないなあと思っているのですが、鼻水が出始めた段階ですぐに受診するのが一番いいのでしょうか? 鼻水が出たから病院、というのもどうなんだろう・・と思いますし、病院にいけばなんらかの薬は出されますし・・。 どの段階で病院に行こうか、いつも迷います。

質問ばかりで、申し訳ありません。 どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

 

********************************************************************************************************************************************

忙しくてご返答が遅れました。

 

 

 

 

しかも、長いし(汗)。

 

 

 

 

順にお答えしますね。

 

 

 

 

 

まず①抗生剤の選択の件ですが、これは、この段階では答えようがありません。

 

 

 

 

 

 

 

何となく、ころころ変えすぎの感はありますが、何かエビデンスや考えがあってのことかもしれませんので。

 

 

 

 

 

中耳炎なくてオラぺネム使う状況もないとは言えないし。

 

 

 

 

 

 

 

ただし、一般にお医者さんは過去に出した薬を患者さんが飲んでるもの、

として、その反応を踏まえて次の手を考えますから、

飲まなかったことを伝えなかったのはマズいです。

 

 

 

 

 

 

フロモックスを飲んでて鼓膜がパンパンなので、

例えばセフェム耐性インフルエンザ菌の感染を疑って

マクロライド系のクラリシッドに変えた可能性はありますから。

 

 

 

 

 

 

②も難しいですね。

 

 

 

 

抗生剤が効かないのは菌側の問題の場合と、宿主側、すなわち患者さんの問題があります。

菌側の問題は、菌の種類と菌量の両方の問題がありますが、

一般に菌の種類、抗生剤に対する感受性の問題が多いです。

 

 

 

 

 

間違えないでいただきたいのは「菌が抗生剤に対して強い」と「菌が強い」は全く別の話です。

 

 

 

 

むしろ一般には

「抗生剤に対して強い」薬剤耐性菌は、

増殖力や毒性などの侵襲性は薬が効く菌より弱い、

ということがいえます。

 

 

 

 

 

 

患者側の問題としては免疫低下状態がありますが、

がん末期やステロイド使用中など重篤な問題のほかに、

疲れ、寝不足、病後などの一時的な問題も作用します。

 

 

 

 

 

③については「NO」です。

 

 

 

 

 

鼻水がドロネバの状態はたしかに細菌の増殖ですが、

鼻腔は「体の外」ですのでいわゆる細菌感染の状態ではありません。

 

 

 

 

体力を維持して鼻をかんだり、吸引したりしてあげて、

せいぜい消炎剤、去痰剤などの投与でコントロールできます。

 

 

 

 

 

ただし、小さい子で自己での鼻腔管理がなかなかできない場合は

抗生剤を使って菌量を減らしてあげることもありますし、

副鼻腔炎になれば副鼻腔は「体の中」ですので、

細菌感染として抗生剤の使用はあります。

 

 

 

 

しかし、副鼻腔炎なら必ず使う、ということはもちろんありません。

 

 

 

 

 

④については状況次第です。

 

 

 

 

 

鼻水だけならばほっておけばよいという考え方はあります。

 

 

 

 

 

 

 

ただし、副鼻腔炎になってしまうと後に後遺障害を残す場合があるので

どろどろのハナが長く続く、

タンが絡んで咳き込みが多い、

などの場合は耳鼻科を受診した方がいいでしょう。

 

 

 

 

 

 

注意すべきは急性中耳炎が治った直後

ハナが出ると再発の可能性大ですから

特に症状を伝えられない小さいお子さんの場合は

早めの受診がよいと思います。

 

 

 

 

 

コメントはまだありません
2014.01.15

アデノイド手術後に起きた夜間の咳嗽

はじめまして。 突然の質問で恐縮ですが、ご意見をお伺いできましたらと思いまして。 私達はイタリア在住です。昨年4月ごろ3歳の娘の夜間の無呼吸に気づき、10月にアデノイドのみの摘出手術を受けました。アレルギー検査は全て陰性でしたが、炎症を抑える効果があるとのことで7~8月にあシングレアを服用していました。9月から術前ということで服用をやめると夜間に鼻水が落ちてか咳込むようになったのですが、術後1週間はそれもなくなり寝息もたてずに眠っていました。

ところがその1週間過ぎるとまたイビキをかきはじめ無呼吸になるようになりました。また夜間の咳も酷く殆ど眠れない状況です。

12月に一ヶ月点鼻薬を使いましたが改善されず、小児科医からは、アデノイドがすぐ再肥大したか、アレルギー反応があるのかもしれないと言われ、3日前から再度シングレア2ヶ月とジルテック15日間で様子を見るようにと診察されました。

苦渋の決断での手術の効果がたった1週間しかみられず、毎晩寝苦しく咳こみすぐに病気になる娘がとても不憫です。

他に考えられる病気がございますでしょうか?

日中は全く咳もなく、鼻水もでませんが、術後からよく指を鼻に入れるようになりました。

お忙しいところ大変恐縮ですが、ご意見を頂ければ嬉しいです。宜しくお願いします。

 

********************************************************************************

ということで、新ブログになって初めてご質問いただきました。

 

 

 

 

しかも、イタリア!

 

 

 

 

ガンバレ、本田!

 

 

 

 

・・・の話はあとでするとして、このご質問。

 

 

 

 

症状は夜間の無呼吸、イビキ、鼻水が落ちて咳き込む、

日中は咳もなく、アレルギー検査は陰性。

アデノイド術後1週間ほどよかったが、また再発。

 

 

 

 

さあ、ナニが考えられるでしょう?

 

 

 

 

専門医の試験問題になりそうですね。

 

 

 

 

 

まあ、第一候補は副鼻腔炎の存在を疑う、でしょうね。

 

 

 

 

 

鼻の中、すなわち鼻腔に連続する空洞である副鼻腔は、

新生児、乳児にはありませんが、3歳過ぎ、体重にして12kgを超えるころから

目の下の上顎洞や、目と目の間の篩骨洞などが形成され始めます。

 

 

 

 

 

ここに炎症が及ぶと副鼻腔炎といい、

膿性鼻汁がたまった状態を俗に「蓄膿症」と呼びます。

 

 

 

 

 

症状は、鼻閉のほか後鼻漏によるタンがらみのセキが特徴で、

昼間よりもとくに夜間、寝入りばな、明け方、起床時、

また、走った後などに悪化します。

アデノイド肥大がある子は合併しやすいです。

 

 

 

 

 

 

術後の抗生剤投与により一時的に改善したものが、

完治してなかったために後に再燃した、という可能性はありそうです。

 

 

 

 

 

鼻のレントゲンで副鼻腔陰影の有無を確認する必要はあるでしょう。

 

 

 

 

 

そうでなかった場合、

喘息の合併発症、

検査項目になかった未知のアレルギーの存在、

いわゆるアレルギーの機序を介さない血管運動性鼻炎などの気道過敏症の存在、

扁桃肥大の影響、感冒の反復罹患による咳嗽の遷延、

等々、いろいろ可能性は考えられますので

一つ一つ確認する必要があります。

 

 

 

 

 

 

また、大きな声では言えないが「アデノイドの取り残し」ということも

ないとは言えない。

 

 

 

 

 

アデノイドは扁桃腺と違って被膜におおわれていないので、全摘出ではなく、

「削り取る」手術をします。

 

 

 

 

 

減量が不十分だと、すぐ再増殖で上咽頭をふさいでしまう、

という残念な結果も無きにしも非ず。

 

 

 

 

 

まあ、アデノイドは年齢とともに退縮するので、

少しでも減量できた、ということで再手術はしないことが多いですが。

 

 

 

 

 

レントゲンは簡単に撮れるので

手術後に検査をしてないのなら、一度確認してみてもいいでしょうね。

 

 

 

 

では、お大事に。

1件のコメント
2013.12.18

他覚的耳鳴りについて


ちょっと前にいただいたご質問です。
********************
初めまして。
耳鼻科医さんのブログを見つけて少しお答え頂きたいと思い、コメをしました。
他覚的耳なりの治療法の事ですが答えられる範囲でお願いします。
蝦牛形メニエールの後遺症と思われますね。と耳鼻科医に言われました。治療法はないですとも言われました。
24時間バキバキやボキボキと鳴っております。
はや1年になります。
一般的に、他覚的耳なりの治療法はないのでしょうか?
もし、治療法があるようならば、どういった病院で通院したらよいですか?
なにか、アドバイスがあれば、頂きたいです。
お答え、宜しくお願いします。
********************

さて、他覚的耳鳴りとは一般の方には耳慣れない言葉かもしれません。
耳鳴り自体はポピュラーな現象で
多くの難聴の方が悩まされていますし、
大きな音を聞いたあとなどには健常耳の人でも「キーン」という耳鳴りを経験することが
しばしばあります。
しかしそれらは自分では聞こえても、
周囲の人にはわからない感覚です。
これに対し、他の人にも認識できるような耳鳴りを
「他覚的耳鳴り」と呼ぶことがあります。
多くの耳鳴りはこれに対し「自覚的耳鳴り」と言えますが、
耳鳴りは本来「自覚的」なのであえてこの言い方はしません。
「他覚的耳鳴り」を他人が聴く方法は、
その人の外耳道に耳を寄せて聴きとりますが、
耳鼻科では耳管通気に使うオトスコープというゴムのチューブがありますので、
これを患者さんと自分の耳に入れて確認します。
「自覚的」耳鳴りはキーン、ジーン、ゴーゴー、ジージーなどさまざまな音ですが
一般的には金属音にしろモーター音にしろ「連続的」な音です。
これに対し「他覚的耳鳴り」としては、
パキパキ、ピチピチ、サッザッ、などの断続音、クリック音がほとんどです。
多角的耳鳴りは耳の周囲の音が
外耳道経由でも聞き取れるわけで、
その原因はいくつか考えられます。
一つは筋肉由来。
口の開け閉めや、嚥下による耳管の開閉音が
鼓膜に反響して聴こえるもの。
これらは多くは「随意的」で自分で鳴らすことができます。
ただ、鳴らしたくないのに鳴っちゃうわけで、
不快に感じる方もいらっしゃいます。
また、耳管周囲筋や顔面筋、耳小骨についているアブミ骨筋の
「けいれん」でもカチカチ音、クリック音がします。
こちらは「不随意的」で24時間連続の方もいますし、
なったり治ったりという方もいます。
しゃっくりとか、疲れるとまぶたの筋肉がピクピク痙攣する、
あの現象を考えてもらうとわかりやすいです。
もうひとつのメジャーな要因は「血管性」です。
耳の近くには動脈が走っており、この血管雑音が聞こえる場合があります。
心臓の鼓動と同期していればそれと確認されます。

これは、自覚的にとどまってる場合が多いですが、
他覚的に感知できるほど大きい場合は、
心臓や脈管の異常がないか内科で調べてもらう必要があります。
その他、以前ブログで紹介した「耳管開放症」でも
まれに他覚的耳鳴りが聴取できる場合があります。
さて、他覚的耳鳴りの治療ですが、これは難しい。
そもそも、自覚、他覚を含めて耳鳴りの薬というものはありません。
自覚的耳鳴りはそのほとんどが内耳性難聴によるものなので
内耳性難聴が改善すればそれにつれて耳鳴りは改善します。
他覚的耳鳴りのうち、筋肉性、血管性のものはほとんど治療されていないのが現状でしょう。
ご質問の方の場合、どういったものが原因か不明ですが、
蝸牛型メニエールの後遺症で他覚的耳鳴りが起こる、
というのはワタシは聞いたことがないのでさらによくわかりません。
蝸牛型メニエールは内耳の病気なので、
普通、後遺症としての耳鳴りは「自覚的」なものですが。
耳鼻咽喉科で鼓膜の状態、難聴の有無等を調べてもらっているのなら
あとはさしあたって脳内CT,MRI等の画像診断でしょうか。
動静脈瘻や血管性腫瘍などは一応除外しておく必要があるでしょう。
あまりお役に立てずスイマセン。

コメントはまだありません
2013.10.23

臨時休診のお知らせ


 先月、日本鼻科学会のため休診を頂きましたが、
明日、10月24日(木)は日本聴覚医学会出席のため
休診になりますので、ご注意ください。
001_20131023083934a60.jpg
 受付の上の目立つ所に掲示し、
また、来院された方にもご説明しておりますが・・・・。
004_201310230839323f2.jpg
 おや、横にもう1枚掲示がありますね。
003_2013102308393325d.jpg
 スイマセン、そういう事ですんで・・・・。
 ・・・・・大変ご迷惑おかけいたします。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。



2件のコメント
2013.10.11

耳垢の話のついで


 耳垢といえば、よく外来で
「子供の耳垢はどれくらいのペースで取ればいいんでしょう?」
などと尋ねられることがよくある。
 答えは
 「しなくて、イイです。」
 などというと、たいていのお母さんはビックリした顔をする。
 耳垢は汗腺、皮脂腺、、耳垢腺のある外耳道の入り口付近で
作られるため、ほっておいても自然に出てくる。
 見た感じ相当たまっていても、聴こえには支障が無いし
あえて取る必要はない。
 むしろ取ろうとして、奥へ押し込んだり、外耳道や鼓膜を傷つけてしまう場合もある。
 きれいに取れたとしても皮膚のバリアである皮脂層を除去しちゃうと、
かえって外耳道の皮膚で細菌が繁殖して外耳炎の元になる。
 そもそも耳垢は弱酸性で殺菌効果があるのだ。
 そんなわけで、ほっておく、が正しい。
 さて、人間を含めてほとんどの哺乳類の耳垢はほっとけば勝手に出てくるが、
唯一そうでない動物がいる。
 さて、何か?
 答えはクジラ類である。
 彼らの耳垢は年齢とともに堆積し、
年輪のようになるのでクジラの年齢はその耳垢からわかるそうだ。
 博物館で見たことあるが、なかなか立派なものである。
 ところで、クジラは耳垢つまって困らないの?
 これは、全然困らないはずだ。
 次のうち、鼓膜がある生物¥はどれか
1.フナ 2.カエル 3.ワニ 4.スズメ 5.ネズミ
 答え、1以外すべて。
 そもそも、鼓膜というのは生物が進化の過程で陸上に上がったことにより、
空気を伝わる音を聴くために進化したものだ。
 だから、両生類以上にあり、魚類にはない。
 水中は空気中に比べてはるかに音がよく伝わるが、
それをとらえるのに鼓膜は無効で、
頭の骨に伝わる振動が直接内耳に伝わる。
 これを、医学用語で気導聴力に対し骨導聴力という。
(看護学生諸君、テストに出すよ。)
 クジラはいったん陸に上がった哺乳類が再び水中に戻ったモノなので
鼓膜も中耳もあるがつかわれることはなく外耳道は耳垢でふさがれてるわけだ。
 ところで、サーファーなど、通年冷たい海水に入るヒトの外耳道は
骨増殖によって狭小化しこれを「サーファーズ・イヤー」と呼ぶ。
 冷たい水から鼓膜を守るため、といわれてるが、
海洋哺乳類への進化なのだろうか?
 あまちゃんは、どうなのかなあ?
(ちなみに「進化」とは世代を超えて情報が伝達されなければならないので
一代限りの形態的変化は「進化」と呼びません。念のため。)
 
人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。




2件のコメント
2013.10.08

乾いた耳垢、湿った耳垢



教えてください。
幼い頃から、耳垢が湿っています。中耳炎などは患った事がありません。
なので、耳鼻科にお世話になった事がないのですが、
これは一生このままなのでしょうか。
お忙しいところ、すみません。ご教示いただけますか?


 いろんなご質問いただきますが、
これは答えやすいです。
 耳垢には2種類あって、カサカサした乾いたタイプと、
べとべとした湿ったタイプがあります。
 前者は粉耳とか、後者はヤニ耳などと呼ばれることもありますが、
これは遺伝的、生まれつきのもので通常は一生変わりません。
 日本人では乾いたタイプのヒトが多く、
湿性のタイプは15,6%といわれていますが、
中国・韓国ではさらに少なく湿った耳垢は5~7%程度といわれています。
逆に欧米では90%以上、特に黒人では99.5%が湿性耳垢です。
 英語で耳垢を「Ear Wax」と呼ぶのもこの辺のイメージです。
 ヒトの汗腺にはエックリン汗腺という全身に分布し、
サラサラの汗を出す汗腺と、
アポクリン汗腺といって腋の下などの体の限られた部分に存在し
脂肪たんぱく質を含んだ汗を分泌する2種類の汗腺があります。
 このアポクリン汗腺は外耳道内にも存在し、
それが多いヒトとほとんどないヒトがいます。
 アポクリン汗腺が多く、活発なヒトは湿った耳垢になります。
 腋臭の原因もアポクリン汗腺といわれており、
この2つは合併します。
 日本人に比べ欧米人は体臭がキツイのはこの事が原因です。
 日本人ではいわゆる「縄文人」の系統がアポクリン型、
「弥生人」が非アポクリン型ということらしいです。
 だから、湿った耳垢はDNAに刻まれた情報なので、
一生変わることはありませんし、
ご両親やお子様に同じ耳垢のヒトがいるはずです。
 ちなみにワタシは「湿ったタイプ」です。
 ヒト以外の哺乳類はアポクリン優位なので、
湿った耳垢のヒトはケモノに近いのか。
 でもアポクリン汗腺は、いわゆるフェロモンとしての機能なので、
湿性の耳垢のヒトはセクシーだ
といえない事もない?
人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。


医療系をまとめました。
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  
最近の投稿 最近のコメントカテゴリー アーカイブ