2012.03.02
今飛ぶといひしばかりにスギ花粉、
弥生の月を待ちいでつるかな
【解釈】スギ花粉が今すぐ飛ぶと言ったばかりに、待ち続けついに3月(弥生の月)になってしまったことだ。
【解説】2月にもうすぐ花粉が飛びますよと(オグラセンセイが)言ったので、
その気になって待ち構えていたら
(ロクに飛ばないうちに)3月になってしまったという花粉症患者さんの
ほっとしたやら、しかし、これでいいのかというゆれる心を歌った歌。
初期治療として、花粉情報を見ながら始まりそうになったらら飲み始めてね、と言われ、
早々、1月下旬に薬をとりいって待ち構えていたが、
一向に花粉情報では、関東地方の全体が青色の「少ない」から動かない。
【語訳】「今飛ぶと」:「今」は「すぐに」の意味
「いひしばかりに」:「し」は過去の助動詞「き」の連帯形で、「ばかり」は限定の副助詞。
「まちいでつるかな」:「待ちいづ」は「待っていて出会う」の意。
完了の助動詞「つる」の連帯形と詠嘆の終動詞「かな」が付いている。
(用例)「まちいでつるかな」⇒「待っていて出会ってしまったことだよ。」
「あれはつるかな」⇒「あれはつるなんだろうか。」
「それはかめかな」⇒「それはかめなんだろうか。」
「これはこみねかな」⇒「これはショーグンさまの娘。」
今年の冬はやけに寒く、記録的な大雪や低温を観測してるようだが、
影響でスギ花粉の飛散開始も大きく遅れています。
まあ、1月末から多少なりとも洩れとんではいるのだが、
一般的な飛散開始とはまだ言えません。
梅の花なんかも開花が遅れてるようで、
梅まつりなんかを毎年やってる梅林なんかは、
お客さん来なくて大変みたいですね。
もともと、今年はスギ花粉飛散量は少ないだろう、
と言われたこともあって、患者さんの関心は一般に低く、
薬とリに来る人も少ないみたいです。
一因には昨年は花粉量はそれなりに多かったのだが、
意外とみんな軽く済んだ方が多いという事実。
花粉が一番多い時に地震で原発が爆発して、
特に子供たちに「外出ちゃイカン」ということが徹底したため、
花粉暴露量が少なかった。
しかも、ガソリンも無くなっちゃったので、
おとーさんもゴルフに行かないし、
おかーさんも、買い物はなるべく出ないで
まとめ買い、家にあるもんで何とかする、
なんてことが多かったので、
日本国民(特にここら辺)の人は総じて花粉吸入量が少なかったはず。
みなさん、油断しないでください。
まあ、このまま少なく推移すればいいのですが。
ただし気になることがひとつ。
スギ花粉はもう夏のうちに作られて、できています。
これを、スギの木は春のうちに残らず吐き出すのだ。
開花が遅れた梅は、早咲き、中咲き、遅咲きが一気に開花して、
帰って楽しめる可能性もあるとニュースで言ってました。
もし、気候の関係でたまっていたスギ花粉が一気に放出されたら・・・・・。
花粉量はトータル量も重要ですが、
実はピークの花粉数は発症者数に大きく影響する。
スギ花粉は1個や2個入っても、症状は起きません。
ただし一時に大量に吸って花粉症が発症すると、
その後は、少量の花粉、さらには花粉でなく、
温度、気圧、湿度、機械的刺激(埃っぽさなど)別の刺激でも、
花粉症の発作が誘発されます。
今年は大丈夫じゃんなどと思ってるスギ花粉症の方、
雨の上がった後など、くれぐれも厳重にご注意を。
これを機会に、また花粉症の事をよく知りたい、という方は、
右のカテゴリ内の「花粉症」をクリックしてご覧ください。
「花粉百人一首」の過去作品もあります。
↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。
2011.04.03
筑波嶺(つくばね)の 峰より落つる スギ花粉
ちりぞつもりて 山となりぬる
【解釈】筑波山の峰の方から飛んでくるスギ花粉が積もり積もって山のようになったことだ
【解説】震災後の原発事故の放射能騒ぎで、茨城県筑波山の方では
黄色く積もったチリが放射性物質か、と問題になったが、
実は山から飛んできたスギ花粉であったという。(実話)
「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形で「ぞ」の結び。
<用例>風の音にぞおどろかれぬる
花ぞ散りぬる
(よって)鼻がぬるぬる
桜の花が咲きだしてスギはもうあとちょっとかなあ、
でもヒノキがあるしなあ、という今日この頃。
めっきり気温が上がり、S2000をオープンで走りたいが、
家族に花粉症がいるのでダメ。
我が家の車は2月からずっと窓も開けず、
エアコンも内気循環である。
さて、当院では様々な花粉症の薬を使っています。
そこら辺の市中病院よりは はるかに多く、
大学病院よりも多いかも、というのは
オレがアレルギー性鼻炎薬オタクだからだ。
(調剤薬局には負担かけてますかね。)
しかし、数あるアレルギー性鼻炎の治療薬の中で唯一といっていいほど
ワタシが処方しない薬がある。
一般的には結構出てる薬だが、そのワケは・・・。
実はワタシ、大学病院時代、専門はアレルギー性鼻炎で、
アレルギー外来を担当していた。
(群馬県で初めてスギ花粉を測定したのはこのオレなのだ。)
そんな頃、ある製薬会社から新薬の治験の依頼があった。
新薬が世に出るためには、フェイズⅠからフェイズⅢまでの段階的試験がある。
そのうちフェイズⅡ、フェイズⅢの治験の一部を担当した。
具体的には患者さんに説明と同意を得たのち、
新薬と偽薬を用いて薬の効果を調べる実験である。
原則的に他の薬剤は使わず、単剤で行くわけだ。
新薬だからきっとすごく効くんだろうなあ、
などと思いつつ、患者さんにもそんな思いを含めて説明し、
実際に試してもらった。
しっかし、これが、
効かね~!!
薬を出した相手の誰に実薬で、誰に偽薬かはこっちにはわかんないんだけど
(これを二重盲検試験という)
ともかく
みんなハナぐじゅぐじゅ。
それでも、す、すいません、もう1週間ナントカ飲んでください、
と平身低頭でお願いする。
今思えば、その年は花粉も多かったし、
いかに効く薬でも、マスクやその他の防御をしないと
症状を抑えられないのは当然なのだが、
期待した分、(あるいは患者さんに期待させた分)
ワタシの中でその薬の印象は非常に悪いものになった。
それでも、治験成績集計の結果、
薬剤の有効性が認められ、
その薬はその後晴れて世に出たわけだが・・・・・
・・・・未だにオレとしては処方できないんだなあ。
その薬の名前は・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
いや、さすがにここには書けないので、
知りたいヒトは個人的には教えてあげます。
誤解無きよう、もちろん、アレロックやザイザルほどではないけど、
リザベンなんかよりはちゃんと効く薬ですよ、一般的には。
(リザベンをケロイド以外で処方する先生は、さすがにもういないだろうなあ、)
ただ、オレにとっては「PTSD(Post Traumatic Stress
Drug)」なのだ。
↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。
2011.03.11
やすらはで寝なましものを さ夜更けて
かたぶくまでのティッシュを見しかな
【解釈】(こんなことなら)さっさと寝てしまったのに、
鼻をかみ過ぎてゴミ箱に山と積もったティッシュが傾くまで
(ずっと鼻をかみながら)夜を明かしてしまったよ。
【解説】「寝なましものを」「まし」は反実仮想(現実には起こらなかったことを、
もし起こればと想像すること)の助動詞で、「ものを」は逆接の接続助詞。
「さ夜ふけて」 「さ」は言葉の調子を整えるための接頭語で、
全体で「夜は更けて」という意味になります。
「ティッシュをを見しかな」「かな」は詠嘆の終助詞で
「ティッシュの山を見たことですよ」という意味。
(用例)「のどけからまし」⇒「のどかであろうに」
「うれしからまし」⇒「うれしかったであろう」
「無いよりはまし」⇒「スギ花粉の時のガ-ゼマスク」
「無いほうがまし」⇒「小学生がアゴにかけてる花粉用マスク」
今年も例年通り当院の玄関にはしばらく前から張り紙が。
近づいてみるとこう書いてあります。
皆さん、よろしくお願いします。
気温もだんだん上がって来ましたが、
もちろん病院の窓は開けるわけにはいきません。
今年は花粉が特に多いので、大変です。
しかも、本番はまだまだこれからです。
過去最高だった平成17年に迫る勢いです。
幼稚園生は外遊び禁止、小学生もお昼休みに外に出てはダメです。
学校や幼稚園の先生にも事あるごとに言っています。
卵アレルギーの子に無理やり卵食べさせますか?
光化学スモッグ注意報が出たら子供を教室に入れますよね?
花粉症に関して、まだその辺をよく理解していない先生がいらっしゃるのが嘆かわしいです。
被害者は子供です。
これを読んだ教育、保育関係のセンセイ方は速やかに適切な処置をとってください。
↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。
2011.03.02
あしひきの山鳥の尾のしだり尾の
長々しハナを一人かむなむ
【解釈】(花粉症で)山鳥の尾のように長い長いハナ水がいつまでも切れず一人かむのだなあ
【解説】「あしひきの」は「山(山鳥)」にかかる枕詞
「山鳥の尾の」山鳥」はキジ科の鳥で雄の尾が非常に長いと言われ
「長いこと」を表す時に使われる。
「の」は連体格助詞で「…で」や「…であって」の意味。
全体で「山鳥の尾であって」のような意味になります。
「しだり尾の」「しだる」は「下に垂れる」という意味の動詞で
連用形「しだり」に「尾」が付いた名詞。
「の」は「のような」の意味の格助詞で「下に垂れる尾のような」の意味。
最初からここまでが、「長々し夜」を導き出す序詞になります。
大変くどい言い回しですが、
それが、花粉症のかんでもかんでも出てくるハナの忌まわしさを
強調した形になっています。
枕詞は次の語句を引き出すもので決まっています。
<用例>「あしひきの」⇒「山、峰」
「あおによし」⇒「奈良」
「ぬばたまの」⇒「髪、黒、夜、夢」
「おぐじびの」⇒「ロックな耳鼻科」
「むなげぶる」⇒「ガッツなベース」
先週木金あたりから、この地方でも花粉の本格飛散が始まり、
いよいよ来た、という感じであるが、
やはり飛散開始は「平年並み」だったので、
2月の中旬くらいだと思うから、その辺から薬始めてねー、
と呼びかけてた患者さんたちはちょうど良かったことと思います。
さて、バンドの話ばかりでは申し訳ないので、
少しためになる話を。
病院に行くと血液をとってアレルギーの検査をすることが多いと思います。
これは
IgE という物質を測定しています。
IgEは免疫グロブリンの一分画で本来体を守る免疫系のパーツなのですが、
体の「誤解」により、無害な物質を攻撃してしまう物質です。
この「無害な物質」がスギ花粉だったりヒノキ花粉だったり、
ハウスダストやイエダ二などで、これらは「抗原」と呼ばれます。
「抗原」なんて言うと「悪の元凶」みたいなイメージですが、
被害妄想に陥った人体が誤解のもとに
「くしゃみ」「鼻水」「鼻詰まり」「流涙」で「攻撃」を加えるものなので、
花粉側にしてみれば迷惑千万な話です。
さて、ここで今回言いたいのは、
スギIgE抗体価が高い≠スギ花粉症
ということです。
スギ花粉の侵入によって体がIgE抗体を作っても、
まだそれだけでは花粉症になったとはいえないのです。
完全に解明されてない面もあるのですが、
アレルギー発症のためには、もうワンステップが必要です。
多くの方は抗体上昇から速やかに発症しますが、
抗体が陽性のまま発症しないヒトもいます。
だから、血液検査で「スギ花粉症です」といわれても
今まで花粉症の症状が出たことが無ければ、
花粉症の薬を飲む必要はありません。
そのかわり、さらなる花粉の吸入によって、すぐにも発症する可能性があるので
花粉症のヒトと同様に、マスク、コート、帽子、眼鏡などの
「花粉防御」は厳重にすべきです。
一旦発症しちゃうともう、戻れませんから。
その最後のステップにインターロイキンという物質がかかわってるという説があるので、
これをブロックする「アイ・ピー・ディー」という薬は、
この時点の患者さんにひょっとして有効ではないかと個人的には考えているんですが、
確証が無いので特にお勧めしていません。
(高い薬だし、マスクの方がゼッタイお勧め)
この間聴いた講演では、
抗体陽性者のアレルギー発症は50歳を境にぐっと確率が減る、そうです。
実は、家族内で唯一花粉症の無い私、
今、51歳なので、もはや、逃げ切ったか?
(そりゃもうトシだってことで、ちょっとサビシイ面も・・・・。)
↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。