ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2010.08.30

目にはさやかに見えねども


 気象情報では、相変わらずの猛暑とか、暑さの記録更新を告げ、
9月もまだまだ暑いですのでご用心、なんていっています。
 しかし、お盆過ぎから外来患者さんには異変が。
「今週になってから、急に鼻水、くしゃみが。」
「この2,3日、妙に目をかゆがっていて。」
 なんてヒトが続出。
 カルテをひっくり返すと、
以前のアレルギー検査で、ブタクサやイエダ二が強く反応している。
 鼻を見ると明らかにアレルギー性鼻炎の所見が。
 ああ、生物学的反応は感覚的印象より正確だ。
 秋来ぬと目にはさやかに見えねども、
   ヒトの鼻にぞおどろかれぬる。

 【解釈】(毎日暑くて)秋が来たという様子ははっきり目には見えないけど、
     (アレルギー性鼻炎の患者さんの)鼻の中を見ると自然にはっと気付いた。
 【解説】 夏の間は花粉症にしろダニ・ハウスダストにしろアレルギー性鼻炎の患者さんは
     症状、所見が軽快する。まだ、夏だと思っていた作者は、
     患者さんの鼻粘膜の状態を見て秋の訪れに気付くのである。
     「ぬる」は、おなじみ「~ぞ」を受けての係り結びである。
    「おどろかれ」は「おどろく」に「られ」がついた形。
     「おどろく」は「はっと気付く」の意。
     「られ」は、可能、尊敬、受身、自発の4種類があるが、
     ここでは「おどろく」の心情表現があるので「自発」である。
     「自然と~」「思わず~」などの訳を当てる。
     「おどろかされる」と受身で訳すと減点ですので気をつけましょう。
     
      <用例>山岸ならPKをとめられると思った。(可能)
         ポンテ様がいい時間帯にゴールを決められた。(尊敬)
         ロスタイムにやられた。(受身)
         サポーターの気持ちがしのばれる。(自発)
        ・・・・・・・なんか、引きずってるなあ。
 
 なんだかんだで、過ぎゆく夏。
 
 そーいや、ツクツクボーシやコオロギの声が・・・。
     (ナニ、コーロギだと?あのやろー)
 まあ、夏休みも終わり。
 この土日は、夏休みの宿題で大変だった、という家も多いんだろうなあ。
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2010.03.19

ひさかたの光のどけき春の日に

ひさかたの光のどけき春の日に しずくとばしてくしゃみするらむ
【解釈】こんなに日の光がのどかにさしている春の日に、
    なぜ私はしずくが飛ぶほど激しいくしゃみをしてるのだろう。
【解説】「ひさかたの」は天、雨、月などのかかる枕詞。ちなみに「久しぶりの」という意味はない。
    「するらむ」の「らむ」は推量を表す助動詞で「どうして~だろう」という意。
   <用例>「思ふらむ」⇒「どうして、思うのだろう」
      「知らむ」⇒「どうして、わかるのでしょう」
      「あぐねすらむ」⇒「どうしてあぐねするのでしょう」


 今年は花粉が少ない少ないといいながら、患者さんが多いらむ
 ポイントは花粉の本格的飛散が遅かったこと、
雨や雪が多く、飛ばない日が多かったので飛ぶ日に集中して多くの花粉が飛んでるため、
でも、一番は患者さんの油断だろうなー。
 マスコミが騒がないので、なんとなくその気にならないまま
漫然とシ-ズンに突入してる人が多いような気がします。
 きちっと準備して臨んだ方はそれなりに良い春を迎えてるはず。
 もう一度、注意事項をおさらいして残りのシーズンを正しく過ごしてくださいね。
 それにしても、
「花粉症がひどいです。」
とか
「他の病院でもらった薬が効かないです。」
といって受診する患者さんの服装を見てがっかりするコトがしばしばあります。
 親子してモコモコ、フワフワの フリース 着てたりして。
 それで、この間の日曜日子供のサッカーでマスクなしで一日外いたんです、とか。
 昨日天気がいいんで布団干してから薬が効かなくなって、とか。
 まるで、外来でくわえタバコで椅子に座って
「毎日40本タバコ吸ってるんだけど、ずーっとタンが絡んで咳がとまらねんで。」
という患者さんに説明する時のようなむなしさを感じます。
 花粉症の時に家族に花粉症の方がいれば、たとえ本人がそうでなくても
フリース、ニットでの外出はやめてくださいね。
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2010.03.04

春は悲しき

 奥山にスギを踏みわけ入る人の くしゃみ聞くときぞ春は悲しき 
【解釈】山の奥のスギの中に分け入っていく人が(スギ花粉症があるので)大きなくしゃみをして山に響き渡る。
その音を聞くとああ、春が来てしまったんだなあと悲しくなるのだ。
【解説】静かな山に響き渡る花粉症患者のくしゃみ。
その音に作者は、春が来たこと、花粉症の季節が来たことを実感している。
悲しい思いになるということは、作者自身が花粉症患者、あるいは耳鼻科医であることをしのばせる。
「春ぞ悲しき」は「~ぞ…しき」の係り結びである。
係助詞「ぞ」は意味を強める言い回しで連帯形の「しき」にかかる。
<用例>君ぞ恋しき⇒あなたが(特に)恋しいのだ
   散るぞ悲しき⇒散ってしまうことが悲しいなあ
   鼻ぞ苦しき⇒鼻が苦しいよう
   でぞめしき⇒でがめしいなあ


 結局今シーズンは私の予想通り季節性インフルエンザは流行しないまま、
春を迎えましたね。
 スギ花粉も昨年より約1週間遅くシーズンインしました。
 外来も発熱者より、花粉症疑い&急性中耳炎が多いですね。
 特に花粉症は、マスコミが今年は軽い、といって話題にしなかったせいで
油断した人たちがあわてて薬を取りに来ています。
 耳鼻科医は苦しい季節だ。
 午前中も遅くまでかかるが昼休みは午後の外来に備えてひたすら寝ている。
 しかし、まだ「花粉症の注射」をしてる施設があると聞いてビックリ。
 以前も書きましたけど「シーズン前に一本打っとけばOK」ってのは
ステロイドの筋肉注射だから、絶対打ってはダメよ。
 免疫抑制されて、花粉症も出ないけど他の病気に対する抵抗力もなくなっちゃう、
「人工エイズ」 みたいなもんだからねー。
 まあ、花粉症のシーズンは始まったばかり。
 皆さん、くれぐれもマスクなしで奥山に入らないように。
(それよりわざわざそんなとこ行くんじゃねー)
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2010.02.23

眠くならない薬

 君がため春の野にいでて若菜摘む、わが衣手で鼻をかみつつ
 【解釈】あなたに差し上げるために春の野に出て草を摘んでいると(花粉が飛んでいるので)私の着物の袖でしきりにハナをかみつづけている。
 【解説】作者は意中の人のために野草(通常春の七草の類)を摘んでいるのだが、花粉症を持ってるため
鼻水が出て、大変つらいさまをわかってほしいな、との思いを込めている。
  「きみがため」:「きみ」とは意中の恋人と考える。あなたのために。
    <用例>わがため⇒わたし(自分)のために
       子がため⇒(我が)子のために
       回転エビがため⇒回転エビのために
    <比較>きみかため、白身とろとろ温泉たまご
 衣手に降っていた雪も上がり、そろそろ花粉症に季節が来そうです。
 今週から、花粉が飛びそうです。
 花粉症の薬というと眠くなる、という人が多く、これで治療をあきらめてる人もいるようです。
 実際、かつては花粉症の第1選択である「抗ヒスタミン剤」は眠いものが多く、
今も市販の薬はほとんどこの眠くなる古いタイプ
(分類上は第1世代の抗ヒスタミン薬)ですが、処方される薬は
いわゆる「第2世代の抗ヒスタミン薬」と効き目が強く、眠気の少ない洗練された薬です。
 中には全く眠気のでないタイプの薬もあります。
 一般には薬の注意書きに「自動車等の運転に対する注意」が記載されているのですが、
この薬に関してはそれが無く」、一応航空機のパイロットの人が飲んでもいい、となってます。
 まあ、効き方と眠気の出方はある程度比例関係にありますので、
耳鼻科医と相談して「自分にちょうどいい薬」を見つけることが大事です。
 まあ、花粉の飛ぶ時期はあったかくてネムイので、
「眠気」が必ずしも薬のせいでない場合も少なからずあるのでご注意を。
 さて、以前こんな話がありました。
 患者さんは花粉症ではなくハウスダストなどの通年性アレルギーのご年配の女の方なんですが。
 ある薬を出したところ、効果はいいけどちょっと眠い、というお話だったので、薬を変更しました。
「じゃあ、こっちの薬にしましょう。この薬は全然眠くなりませんから。」
 と、先ほど述べた薬を処方しました。
「本当に眠くならないんですか?」
「ゼッタイ、眠くなりません。」
 ・・・2週間後、
「どうでした。眠くならなかったでしょう。」
「先生、やっぱり前の薬にしてください。」
「効果が弱かったですか?」
「いえ、それはいいんですけど、
この薬、眠くならないという薬なので、これ飲むと夜眠れなくなっちゃうんです。」
 いや、眠くならない薬って、コーヒーとか覚せい剤みたいに
眠くならなくする薬じゃないんですが。
 ゼッタイ、眠くならない、ってそーゆー意味じゃ無かったんだがなー。
 なんか変な暗示がかかっちゃったみたいだけど、
患者さんのご希望で元の薬に戻しました。
 うーん、日本語、難しいです。
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2010.02.07

いまどきの点鼻薬


 小倉さん、小峰の薬局も心あらば、なるべくよく効く薬をくれなむ
 【解釈】小倉先生も、薬局の小峰さんも人の心があるならなるべくよく効く(花粉症の)薬をくれて欲しい
 【解説】小倉さんは「小倉山」、小峰の薬局はその「山の峰」をかけてある。(参考:小倉山 峰のもみぢ葉心あらば)
     花粉症の薬はいろいろな種類があるが、よく効く薬をもらいたいなあ、という作者の願望が表現されている。
     「くれなむ」の「なむ」は未然形動詞との組み合わせで(他者への)願望を表す終助詞。
 {用法}梅咲かなむ⇒梅が咲いてほしい
     待たなむ⇒待っていてほしい
     きむじょんなむ⇒きむじょんしてほしい
 なわけで、花粉症の薬を取りに多くの患者さんが来院されてます。
 みなさん、検査結果に合わせて「スギ」の人は2カ月分、
「スギ+ヒノキ」の人は二ヶ月半から三ヶ月も薬を持ってくわけで、
年末の買い出しみたいだ。
 いやでも、ほんとに「冬籠り」ならぬ「花粉籠り」をしてもらうのが一番。
 初期療法が2週間前でなくてもいい、というのでその説明が多少違いますが、
ポイントは毎年同じ。
 ともかく、花粉を家に入れないこと。
 患者さんからのコメントで一番困るのは
「薬が効きません。」 だ。
 そんなはずはないんだがなー、とよく訊くと、
子供のサッカーで一日河原にいた、とか、
マスクをしないで買い物に行った、とか、
天気がいいので洗濯物を外に干した、とか・・・。
 そりゃ、無理 です。
 傘をさしても、台風の暴風雨の中に出りゃびしょぬれです。
糖尿病の薬飲んでても三度三度ケーキ食べてりゃ血糖値は下がりません。
 今年、花粉が少なめといわれてますが、
くれぐれも油断しないように。
 さて、初期療法について、考え方が変わってきたことは
お話しました。
 今回は「いまどきの点鼻薬」の話です。
 以前「花粉症の市販薬(点鼻薬編)」でも触れたように、花粉症の点鼻薬といえば「ステロイド」です。
 最近、この「局所ステロイド」はずいぶん見直され改良が進みました。
 以前は「つまった時に使う」というイメージがありましたが、
それは間違いです。
 ステロイド剤は、 「花粉症の初期から毎日使いましょう」。
 ステロイドの持つ「抗炎症作用」で、粘膜の状態を正常に保つことが、ステロイドの狙いです。
 この点、近年の喘息治療がテオドールなどの「気管支拡張剤」の対症的治療から、
「抗ロイコトリエン剤」と「吸入ステロイド」の抗炎症治療に変わってきたことによく似てます。
 「一日一回」の点鼻ステロイドの新薬が最近相次いで開発されました。
 全身に対する影響もほとんどなく、シーズンを通して使って何の問題もないことも
データで証明されています。
(そういえば、いまだ「ステロイド注射」をやってる悪質な病院もあるみたいなのでご用心)
 薬飲んでるんだけど、毎年ダメ、という方は、
今年はステロイド点鼻の併用をお勧めします。
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2010.02.05

東風吹かば 花粉飛ばすぞ

 立春を迎えても、まだまだ寒いのですが、
いつも散歩に行く織姫山は一部でもう満開の梅があります。
(この写真1月31日、まだ病に倒れる前に撮りました。)
P1310016_convert_20100204141447.jpg
 梅が咲くんだから・・・・
東風吹かば花粉飛ばすぞスギの花、手袋忘れてもマスクな忘れそ
【解釈】春風が吹いたらいよいよスギが花粉を飛ばすぞ、手袋なんか忘れても、
    マスクだけは絶対忘れてはなりませんよ。
【解説】東風は「こち」と読み、東から吹く暖かい春風の意。
    実際に春風といえば「南風」だが、これは五行説の「木」が「東」「春」をあらわすためであるという説が有力。
    ちなみに「青」がやはり「木」なので「青春」という。(【比較】/「朱夏」「白秋」「玄冬」)
    「~な・・・・そ。」は否定の命令文であるが、
    やや婉曲な禁止「・・・・してくれるな。」という表現を表す。
  {用法}雪な踏みそ⇒雪を踏みなさるな
      物な思わそ⇒あれこれ思いめさるな
      マルコメなみそ⇒マルコメを見てはならん
      ぶるきなふぁそ⇒ぶるきをふぁしちゃだめ
 そんなわけで、アフリカのブルキナファソ代表のサヌ選手のレッズ入りが確定して、
ようやく、今シーズンの体制が整った。
 梅も咲くし、スギも始まるし、Jリーグの日程も発表になって、
いろんな意味で春が来るぞー、という立春なのだった。
 毎年のことながら、このJリーグの日程を見るのが楽しみ。
 お、アゥエイはこことここなら行けそうだ。
ここは、寝台特急かなんかで月曜の朝までに戻れれば、
いや、高速深夜バスを検索してみよう、
などと悪だくみが・・・。
 そして、
ここはワールドカップで、相手に岡崎と中沢がいないからラッキーかも、
このころはアジア・チャンピオンズ・リーグでこのチームは疲れてるはず、
などというセコイ考えが・・・。
 さらには、
この辺で、優勝が決まるかも、ということはここ臨時休診か?
いや、最後までもつれて埼スタで優勝、がいいかも、
予防接種のセールはいつから・・・、
などという妄想が・・・。
 あれ、今日は花粉症の話を書こうと思ったのだが・・・・。
 明日にします。
 おまけ
「梅なんかどうでもいいから、早く帰って朝メシにしようよー。」
P1310018_convert_20100204141639.jpg
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2010.01.26

はげしかれとは祈らぬものを


 せまり来る、スギの花粉の山おろしよ、はげしかれとは祈らぬものを
【解釈】もうすぐやってくる、スギ花粉をのせた山風よ、ひどくなってくれとは祈らなかったのに
【解説】毎年花粉症になるが、今年は少なそうだ、と安心している作者が、
    予想外に早く起こった症状に、話が違うじゃないかと恨みがましく思ってる様。
    「はげしかれ」は形容詞「はげし」のカリ活用命令形、はげしくなれ、の意。
    「ハゲし、彼」だと「ハゲてしまった彼」になるので要注意。
   〔用法〕幸多かれ⇒幸せが多くあれ
       うつくしかれ⇒美しくありなさい
       チキンカレー⇒鶏肉でありなさい
 さて今年も花粉症の季節がやってきます。
恒例の「花粉和歌集」も再開しました。
 花粉症については、一般的な注意は過去のブログにかなり網羅されてるので、
花粉症をお持ちの方は右のカテゴリ「花粉症」をクリックして
今一度復習されることをお勧めします。
 先週末の毎日新聞栃木版に私の書いた花粉症コラムがありますので、
これもあわせて読んで頂くと良いです。
 もう、資源ごみに出しちゃいました?
 先日の暖かさで少し症状の出た方もいるようですが、
まだまだ本隊は先ですので、ご安心を。
 いずれにせよ、早く耳鼻科に行って、薬を十分もらっておいてください。
 そして、飛散開始とともにスタート。
 防御もしっかり抜け目なく。
 そうすれば今年くらいの花粉量ならほぼ症状なく過ごせるはず、です。
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2009.12.16

花粉症の初期治療に関する新しい考え方


 えーと、まだ先の話なんですが、
早めに知っといてイイことなのでお話しときます。
 毎年スギ花粉症で治療されてる皆様にお知らせです。
 花粉症のときは、症状が出る前から薬を飲んだほうがいいという
ことは、もう一般にはかなり浸透しましたね。
 これ、もう20年近く前から始まったやつで、
当初は「季節前投与」といわれてましたが、
近年は「初期療法」といわれ、ガイドラインにも記載されてます。
 ケミカル・メディエーター遊離抑制という作用を持つ薬が開発されたとき、
この考え方が起こり、のちに治験も行われその有用性は
実証されています。
かつては「抗アレルギー剤」と呼ばれましたが、最近はこの呼び方はなくなりました。
 その後、この作用を持った薬が出るたびに治験が行われ、
その効果も確認され、
「初期療法」はもはや常識化しました。
 ただ、「遊離抑制薬による細胞膜の安定化」が、その主たる作用機序だとされ
その効果が出るのに2週間程度かかるので、
「スギ花粉の飛ぶ2週間前から飲む」
というのがこれまでの考え方でした。
 ところが、最近の研究によって新たな事実がわかりました。
 初期療法の効果の多くは、拮抗剤がヒスタミンレセプターをブロックすることによって起こる
細胞の沈静化によって起こる効果であることがわかってきました。
 ちょっと話が難しくなりましたが、要するに結論はこれです。
「花粉症の薬は花粉が飛び始めてから、
もしくは症状が出始めてから飲み始めればよい」

 2週間前から飲まなくても大丈夫。
なぜなら遊離抑制剤の効果と違い拮抗剤はすぐ効果が出るからです。
(病院で出るアレルギーの薬は大体、遊離抑制効果と拮抗剤の両方の作用のある薬です。少なくとも当院では。)
 今までは、節分過ぎたらそろそろ薬始めましょう、
って言ってましたが、来年からはその必要ありません。
周りの人にも教えてあげましょう。
 もちろん、症状がひどくなっちゃってからでは薬がなかなか効きませんし、
良くなってもシーズン中は飲み続ける、ってのは以前と同じです。
 まあ、毎年当院で治療されてる方は例年1月末から2月初めに来院いただいて
1シーズン2~3か月分の薬をまとめてお出ししているので、
その時に、飲み始めの時期について説明させていただきますが。
(年1回しか会わない患者さんが結構多いのだ)
 このこと、すごく大事なことなので、各メーカーはお医者さんのところに行って
新たな知見の説明をしなきゃいけないとこですが、
メーカーにとっては2週間分、あるいはそれ以上売り上げが落ちるわけですから
わざわざ、ちゃんと、説明するかなー。
 少なくともオレんとこには来てないけど。

2件のコメント
2009.12.01

師走の花粉症


 今日から「師走」。
「師走」は各月の古称の中でも、ダントツに知名度が高いだろう。
「皐月」や「弥生」はまだしも「文月」や「長月」はあまり日常に出てこない。
「師走を迎えてあわただしいですが・・・」なんてのはよく聞くが
「卯月になり新年度を向えて・・・」なんてのは聞いたことが無い。
 ここんとこ、毎日インフルエンザの話しばっかですが、
今日は別の話を。
 最近、外来でよくあるパターン。
「なんか、先週から、くしゃみやノドがイガイガして、せきや鼻水が出ます。」
「ああ、そうですか診てみましょう。」
「お願いします。」
「ノドなんともないなー。熱はどうですか。」
「熱っぽい感じもなくは無いですが、計ってみると熱はありません。」
「ハナ診てみましょう。あ、こりゃ、花粉症ですね。」
「花粉!ブタクサですか?」
「いえ、ブタクサはとっくに終わってます。原因はスギです。」
「えー!もう、スギなんですか?」
 実は「もう、スギ」ではなく「今が、スギ」なのだ。
 スギはご存知のように春先2月下旬から3月を中心として4月上旬まで花粉を飛ばします。
 ところが、今頃、花粉を飛ばすことがあります。
 スギの花粉は夏の間に作られます。
そして一冬越して、来春あたたかくなってくると飛散するわけです。
 一方、11月後半の気候はちょうどスギが花粉を飛ばす3月の気温に近い。
 今年のように11月の前半に寒い日が続き、その後気温が上がると
スギは「だまされて」花粉を飛ばしちゃうことがあります。
 もちろん、量も少ないし、期間も短く、範囲も限定されています。
 ただし、もともとスギ花粉に対する体質が「強い」ヒトが、
「運悪く」ハマッちゃうと、発症しちゃうわけです。
 もうそろそろ終わると思いますが、思い当たるフシのあるヒトは、ご用心を。

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2009.03.19

ガマンしちゃイカン

 忍ぶれど 次々出にけり 我がくしゃみ 花粉症かと 人の問うまで
 【解釈】今まで花粉症であることを隠してガマンしてきたが、
      くしゃみが連発で出てしまい人に気づかれてしまった
      「花粉症なのですか」と人に尋ねられるほどに。
 【解説】「忍ぶ」は「隠す」「ガマンする」ですね。しかし花粉症はガマンしてはいけません。
     マスクしないでいると、かえってくしゃみが連発で出て、周りの人に迷惑をかけます。
     この歌の構造は「倒置法」です。
     「忍んでたんだけど、花粉症かと人の問うまで、次々と~出にけり」という構造ですね。
     和歌には多い手法で「ちはやぶる 神代も聞かず・・・」などでも使われています。
     印象を強めたり、ドラマチックな展開になります。
  〔用例〕「愛しています、心からあなたを。」
      「大キライだ、花粉症なんて。」
      「もしもし、今?耳鼻科、小倉。ちょー混んでるし。」
 昨日は各地で卒業式が行われたはずです。
良い天気でポカポカ暖かく、
「ああ、お母さん方、ちゃんとマスクしてったかなー。」
と、朝から不安で仕方ありませんでした。
 昨年も、早くからきちんと薬を飲み、マスク、帽子、ウインドブレーカーもかかさず、
ずっと調子良かった花粉症の患者さんが、
娘の卒園式で、半日マスクをしなかったばっかりに、その後ずっと症状が続いた、
ということがありました。
 花粉症、アレルギーとは免疫の暴走です。
体に全く無害な「花粉」を「体に有害な物質」と誤解し、
くしゃみで吹っ飛ばそう、鼻水や涙で洗い流そう、ハナを詰まらせて体に入らないようにしよう、
としてるわけです。
 花粉症の人は花粉に対する抗体という物質を持っています。
抗体はマスト細胞という白血球にくっつきます。
これは、まあ地雷みたいなもんでここに花粉がくっつくと
マスト細胞が破裂して、くしゃみや鼻づまりを起こす化学伝達物質を撒き散らすわけです。
 抗体は血液中をめぐってますが、スギ花粉襲来の情報を受けると
鼻や目の粘膜に集結します。
「地雷」を敷設してスギ花粉の侵入に備えるのです。
さらに花粉をいっぱい吸い込むと体が指令してこの「地雷」の数を増やします。
軍備を増強するわけです。
そうすると少しでも花粉が来ると次々に爆発。
 場合によっては花粉以外の刺激でも「誤爆」します。
温度変化とか、機械的刺激とか。
お風呂から出たあとにくしゃみ止まんないとかね。
 一旦、この戦争状態になっちゃうと、武装解除までかなり時間がかかります。
 だから花粉症は、「ひどくなったら薬を飲む」ではダメです。
「症状が出ないようにコントロールしていく」のが大事。
 半日くらい、大丈夫だろう、と甘く見ると命取りです。

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医療系をまとめました。
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