2010.03.19
ひさかたの光のどけき春の日に しずくとばしてくしゃみするらむ
【解釈】こんなに日の光がのどかにさしている春の日に、
なぜ私はしずくが飛ぶほど激しいくしゃみをしてるのだろう。
【解説】「ひさかたの」は天、雨、月などのかかる枕詞。ちなみに「久しぶりの」という意味はない。
「するらむ」の「らむ」は推量を表す助動詞で「どうして~だろう」という意。
<用例>「思ふらむ」⇒「どうして、思うのだろう」
「知らむ」⇒「どうして、わかるのでしょう」
「あぐねすらむ」⇒「どうしてあぐねするのでしょう」
今年は花粉が少ない少ないといいながら、
患者さんが多いらむ。
ポイントは花粉の本格的飛散が遅かったこと、
雨や雪が多く、飛ばない日が多かったので飛ぶ日に集中して多くの花粉が飛んでるため、
でも、一番は患者さんの
油断だろうなー。
マスコミが騒がないので、なんとなくその気にならないまま
漫然とシ-ズンに突入してる人が多いような気がします。
きちっと準備して臨んだ方はそれなりに良い春を迎えてるはず。
もう一度、注意事項をおさらいして残りのシーズンを正しく過ごしてくださいね。
それにしても、
「花粉症がひどいです。」
とか
「他の病院でもらった薬が効かないです。」
といって受診する患者さんの服装を見てがっかりするコトがしばしばあります。
親子してモコモコ、フワフワの
フリース 着てたりして。
それで、この間の日曜日子供のサッカーでマスクなしで一日外いたんです、とか。
昨日天気がいいんで布団干してから薬が効かなくなって、とか。
まるで、外来でくわえタバコで椅子に座って
「毎日40本タバコ吸ってるんだけど、ずーっとタンが絡んで咳がとまらねんで。」
という患者さんに説明する時のようなむなしさを感じます。
花粉症の時に家族に花粉症の方がいれば、たとえ本人がそうでなくても
フリース、ニットでの外出はやめてくださいね。
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2010.03.04
奥山にスギを踏みわけ入る人の くしゃみ聞くときぞ春は悲しき
【解釈】山の奥のスギの中に分け入っていく人が(スギ花粉症があるので)大きなくしゃみをして山に響き渡る。
その音を聞くとああ、春が来てしまったんだなあと悲しくなるのだ。
【解説】静かな山に響き渡る花粉症患者のくしゃみ。
その音に作者は、春が来たこと、花粉症の季節が来たことを実感している。
悲しい思いになるということは、作者自身が花粉症患者、あるいは耳鼻科医であることをしのばせる。
「春ぞ悲しき」は「~ぞ…しき」の係り結びである。
係助詞「ぞ」は意味を強める言い回しで連帯形の「しき」にかかる。
<用例>君ぞ恋しき⇒あなたが(特に)恋しいのだ
散るぞ悲しき⇒散ってしまうことが悲しいなあ
鼻ぞ苦しき⇒鼻が苦しいよう
でぞめしき⇒でがめしいなあ
結局今シーズンは私の予想通り季節性インフルエンザは流行しないまま、
春を迎えましたね。
スギ花粉も昨年より約1週間遅くシーズンインしました。
外来も発熱者より、花粉症疑い&急性中耳炎が多いですね。
特に花粉症は、マスコミが今年は軽い、といって話題にしなかったせいで
油断した人たちがあわてて薬を取りに来ています。
耳鼻科医は苦しい季節だ。
午前中も遅くまでかかるが昼休みは午後の外来に備えてひたすら寝ている。
しかし、まだ「花粉症の注射」をしてる施設があると聞いてビックリ。
以前も書きましたけど「シーズン前に一本打っとけばOK」ってのは
ステロイドの筋肉注射だから、
絶対打ってはダメよ。
免疫抑制されて、花粉症も出ないけど他の病気に対する抵抗力もなくなっちゃう、
「人工エイズ」 みたいなもんだからねー。
まあ、花粉症のシーズンは始まったばかり。
皆さん、くれぐれもマスクなしで奥山に入らないように。
(それよりわざわざそんなとこ行くんじゃねー)
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2009.12.16
えーと、まだ先の話なんですが、
早めに知っといてイイことなのでお話しときます。
毎年スギ花粉症で治療されてる皆様にお知らせです。
花粉症のときは、症状が出る前から薬を飲んだほうがいいという
ことは、もう一般にはかなり浸透しましたね。
これ、もう20年近く前から始まったやつで、
当初は「季節前投与」といわれてましたが、
近年は「初期療法」といわれ、ガイドラインにも記載されてます。
ケミカル・メディエーター遊離抑制という作用を持つ薬が開発されたとき、
この考え方が起こり、のちに治験も行われその有用性は
実証されています。
かつては「抗アレルギー剤」と呼ばれましたが、最近はこの呼び方はなくなりました。
その後、この作用を持った薬が出るたびに治験が行われ、
その効果も確認され、
「初期療法」はもはや常識化しました。
ただ、「遊離抑制薬による細胞膜の安定化」が、その主たる作用機序だとされ
その効果が出るのに2週間程度かかるので、
「スギ花粉の飛ぶ2週間前から飲む」
というのがこれまでの考え方でした。
ところが、最近の研究によって新たな事実がわかりました。
初期療法の効果の多くは、拮抗剤がヒスタミンレセプターをブロックすることによって起こる
細胞の沈静化によって起こる効果であることがわかってきました。
ちょっと話が難しくなりましたが、要するに結論はこれです。
「花粉症の薬は花粉が飛び始めてから、
もしくは症状が出始めてから飲み始めればよい」
2週間前から飲まなくても大丈夫。
なぜなら遊離抑制剤の効果と違い拮抗剤はすぐ効果が出るからです。
(病院で出るアレルギーの薬は大体、遊離抑制効果と拮抗剤の両方の作用のある薬です。少なくとも当院では。)
今までは、節分過ぎたらそろそろ薬始めましょう、
って言ってましたが、来年からはその必要ありません。
周りの人にも教えてあげましょう。
もちろん、症状がひどくなっちゃってからでは薬がなかなか効きませんし、
良くなってもシーズン中は飲み続ける、ってのは以前と同じです。
まあ、毎年当院で治療されてる方は例年1月末から2月初めに来院いただいて
1シーズン2~3か月分の薬をまとめてお出ししているので、
その時に、飲み始めの時期について説明させていただきますが。
(年1回しか会わない患者さんが結構多いのだ)
このこと、すごく大事なことなので、各メーカーはお医者さんのところに行って
新たな知見の説明をしなきゃいけないとこですが、
メーカーにとっては2週間分、あるいはそれ以上売り上げが落ちるわけですから
わざわざ、ちゃんと、説明するかなー。
少なくともオレんとこには来てないけど。
2009.12.01
今日から「師走」。
「師走」は各月の古称の中でも、ダントツに知名度が高いだろう。
「皐月」や「弥生」はまだしも「文月」や「長月」はあまり日常に出てこない。
「師走を迎えてあわただしいですが・・・」なんてのはよく聞くが
「卯月になり新年度を向えて・・・」なんてのは聞いたことが無い。
ここんとこ、毎日インフルエンザの話しばっかですが、
今日は別の話を。
最近、外来でよくあるパターン。
「なんか、先週から、くしゃみやノドがイガイガして、せきや鼻水が出ます。」
「ああ、そうですか診てみましょう。」
「お願いします。」
「ノドなんともないなー。熱はどうですか。」
「熱っぽい感じもなくは無いですが、計ってみると熱はありません。」
「ハナ診てみましょう。あ、こりゃ、花粉症ですね。」
「花粉!ブタクサですか?」
「いえ、ブタクサはとっくに終わってます。原因はスギです。」
「えー!もう、スギなんですか?」
実は「もう、スギ」ではなく「今が、スギ」なのだ。
スギはご存知のように春先2月下旬から3月を中心として4月上旬まで花粉を飛ばします。
ところが、今頃、花粉を飛ばすことがあります。
スギの花粉は夏の間に作られます。
そして一冬越して、来春あたたかくなってくると飛散するわけです。
一方、11月後半の気候はちょうどスギが花粉を飛ばす3月の気温に近い。
今年のように11月の前半に寒い日が続き、その後気温が上がると
スギは「だまされて」花粉を飛ばしちゃうことがあります。
もちろん、量も少ないし、期間も短く、範囲も限定されています。
ただし、もともとスギ花粉に対する体質が「強い」ヒトが、
「運悪く」ハマッちゃうと、発症しちゃうわけです。
もうそろそろ終わると思いますが、思い当たるフシのあるヒトは、ご用心を。
2009.03.19
忍ぶれど 次々出にけり 我がくしゃみ 花粉症かと 人の問うまで
【解釈】今まで花粉症であることを隠してガマンしてきたが、
くしゃみが連発で出てしまい人に気づかれてしまった
「花粉症なのですか」と人に尋ねられるほどに。
【解説】「忍ぶ」は「隠す」「ガマンする」ですね。しかし花粉症はガマンしてはいけません。
マスクしないでいると、かえってくしゃみが連発で出て、周りの人に迷惑をかけます。
この歌の構造は「倒置法」です。
「忍んでたんだけど、花粉症かと人の問うまで、次々と~出にけり」という構造ですね。
和歌には多い手法で「ちはやぶる 神代も聞かず・・・」などでも使われています。
印象を強めたり、ドラマチックな展開になります。
〔用例〕「愛しています、心からあなたを。」
「大キライだ、花粉症なんて。」
「もしもし、今?耳鼻科、小倉。ちょー混んでるし。」
昨日は各地で卒業式が行われたはずです。
良い天気でポカポカ暖かく、
「ああ、お母さん方、ちゃんとマスクしてったかなー。」
と、朝から不安で仕方ありませんでした。
昨年も、早くからきちんと薬を飲み、マスク、帽子、ウインドブレーカーもかかさず、
ずっと調子良かった花粉症の患者さんが、
娘の卒園式で、半日マスクをしなかったばっかりに、その後ずっと症状が続いた、
ということがありました。
花粉症、アレルギーとは免疫の暴走です。
体に全く無害な「花粉」を「体に有害な物質」と誤解し、
くしゃみで吹っ飛ばそう、鼻水や涙で洗い流そう、ハナを詰まらせて体に入らないようにしよう、
としてるわけです。
花粉症の人は花粉に対する抗体という物質を持っています。
抗体はマスト細胞という白血球にくっつきます。
これは、まあ地雷みたいなもんでここに花粉がくっつくと
マスト細胞が破裂して、くしゃみや鼻づまりを起こす化学伝達物質を撒き散らすわけです。
抗体は血液中をめぐってますが、スギ花粉襲来の情報を受けると
鼻や目の粘膜に集結します。
「地雷」を敷設してスギ花粉の侵入に備えるのです。
さらに花粉をいっぱい吸い込むと体が指令してこの「地雷」の数を増やします。
軍備を増強するわけです。
そうすると少しでも花粉が来ると次々に爆発。
場合によっては花粉以外の刺激でも「誤爆」します。
温度変化とか、機械的刺激とか。
お風呂から出たあとにくしゃみ止まんないとかね。
一旦、この戦争状態になっちゃうと、武装解除までかなり時間がかかります。
だから花粉症は、「ひどくなったら薬を飲む」ではダメです。
「症状が出ないようにコントロールしていく」のが大事。
半日くらい、大丈夫だろう、と甘く見ると命取りです。
。