ミミズの鳴き声
先日来院されたおばあちゃん。
「なんか、ミミズが鳴いてる、と思ってたんだけど、
ずっと消えないので耳鳴りだった。」
そういえば、春になって暖かくなると、
夕暮れどきに何処からともなくジーっという音が聞こえます。
これを「ミミズの鳴き声」と称することがあり、
俳句でも「蚯蚓鳴く」という言い回しがあります。
しかし、ミミズは鳴きません。
発声器官もセミやコオロギのような音を発生する機構もないので
地面から聞こえる「ジー」っという音は
実際にはケラの鳴き声と言われています。
だが「蚯蚓鳴く」は秋の季語だそうで、
春の季語では「亀鳴くや」となるそうです。
いや、カメも鳴かないぞ。
我々が春の宵に耳にする「ジー」という音は、
「クビキリギリス」という
バッタの仲間の声だと思います。
いかにも耳鳴りっぽい無機質な音で、
同じバッタ目でもスズムシやコオロギのような風情はありませんね。
秋に成虫になり冬眠して冬を越すので、
他の虫より早く春から鳴きだすらしいです。
耳鳴りの音を「セミの鳴き声のよう」
と表現される患者さんは非常に多いですが、
「クビキリギリスのような耳鳴りがします、」
と言って来院された患者さんには
耳鼻科医になって40年近くたちますが
いまだに一人も逢ったことがありません。
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