ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.08.28

インフルエンザワクチンについてわかってること


 新型インフルエンザのワクチンについての問い合わせがここんとこ多いです。
 結論としては
「現段階では確実なことはほとんどわかりません。」
というところです。
 どれくらいの数がいつ入るのか、料金も何もわかりません。
 わかってることは、多分相当少ない本数しか生産されないため
圧倒的に足んなくなるだろうということ。
 当然、危険度の高い人、透析や慢性肺疾患、妊婦などが優先されるわけですが
その順位も基準もまだ未定です。
「ノアの箱舟」か「蜘蛛の糸」かといった事態にならないようにしなければなりません。
まあ、フツーの健康な人は接種しないもの、と考えてください。
 でも、多分いろいろ混乱するんだろーなー。
 大事なことは、地域の医療機関が正しい知識を持って適切な対応をすることだと思います。
 しかし、医療機関の昨年までの通常のインフルエンザの対応を見ると
こりゃ、相当ヤバイなーと思わざるを得ません。
以前「本能的処方」「よくみて、よく考えよう
なんかで書いたような見識しかないお医者さんがいると思うと・・・・。
 そーいや、この間NHKの「クローズアップ現代」で新型インフルエンザの特集をやってました。
その番組で、インフルエンザの疑いが強い子供が来院して検査を受ける場面を放送してました。
お医者さんが子供の鼻にちょこっと綿棒を入れるのですが、せいぜい2,3cmだけ。
そして「このように疑いが強くても結果が陰性のことがあります。」
というナレーションが入る。
 おいおい、そんな検査じゃ陰性で出るにに決まってるぞ。
テレビ見てて思わず突っ込みいれたくなりました。
綿棒は7~8cm、鼻の突き当りまで入れないと検査の信頼度が上がらないです。
 まあ、この夏の低温で、来シーズンはスギ花粉があまり飛ばないだろうことが救いですが
この冬は、相当がんばらねばと思っています。
 あ、あともう一点インフルエンザワクチンについてほぼ確定的な事項があります。
今年はレッズの優勝はまず無いので、
当院の「レッズ優勝記念インフルエンザ予防接種半額セール」も多分無い、ということですね。
   くーーーー(泣)。

1件のコメント
2009.05.01

新型インフルエンザについて(その2)

 さて、インフルエンザの話を、もう少ししときますかね。
 今回のインフルエンザは「H1N1」です。
 インフルエンザウイルスにはその表面に2種類の蛋白抗原があります。
1つはヘマグルチニンでこれはウイルスが細胞に侵入する時に使います。
もう一個がノイラミニダーゼといい、増殖したウイルスが細胞から出るときに使います。
 これに種類がありヘマグリチニンの「H」を取って「H1,H2,H3・・・」
ノイラミニダーゼの「N」をとって「N1,N2・・・」とあり、この組み合わせで名前がついてます。
Hが16種類Nが9種類あるといわれてますので
理論的には16×9=144種類のウイルス型があるわけです。(実際にはまだないですが)
 実は「H1N1」はAソ連型といわれる、毎年流行るおなじみのインフルエンザです。
もう一つの流行するA型はA香港型でこれは「H3N2」です。
 ということは、今回の新型インフルエンザは
インフルエンザ迅速キットでA型に陽性が出て、
タミフル、リレンザは多分、効く。
ということが推測されます。
 もちろん、迅速キットでは新型か従来のソ連型かはわかりません。
そもそも、ソ連型と香港型の区別もできず「A型」ということがわかるだけです。
 新型インフルエンザになるかも、といわれてたのは
「鳥インフルエンザ」といわれている「H5N1」というウイルスです。
これは、強毒性であることがすでに知られてます。
 というのは「H5」ってヤツは、全身の細胞に侵入できる。
 先に「H」は細胞に侵入する時に使う、って話をしましたが、
「H5」や「H7」ってヤツは全身の細胞で増殖できる。
しかし、「H1」や「H3」は気道、呼吸器の細胞にのみ侵入できる、ということです。
 ということは、今回の「新型」は理論的には「弱毒性」で、
致死率6割を越えるといわれる「鳥インフルエンザ」ほど強力ではないはず。
 ただ、従来型のインフルエンザで、毎年我が国でも1000人近くの人が亡くなっており
合併症や2次感染などインフルエンザが原因となった数を加えるとその10倍になります。
 今回の「新型」が弱毒型であっても、免疫を持ってないわけですから、
かかっちゃう人の数は相当数にのぼり
その結果、死亡者数もかなり多くなるとは考えられます。
 だから、ポイントは、きっちり診断して、それ以上広げない。
 今回のインフルエンザは「新型」っていっても、
普通の健康な人がかかっても、タミフル飲んでフツーに治っちゃうと思います。
でも、感染を広げてはいけない。
 いつものインフルエンザのとき、いい加減な診断や、いい加減な隔離で
どんどん流行が広がっちゃうので、きちっと事情のわかってる人が
適切な処置を講じて、みんなが、まじめにそれを守ることですね。
 さて、たまたま「豚インフルエンザ」が一足早く「ヒト⇒ヒト感染」を獲得して
新型インフルエンザとなったわけですが、
もちろん「鳥インフルエンザ」も、まだいつ新型インフルエンザになるかもしれません。
こっちは、相当怖いと思います。
 そういえば、本日も当院でインフルエンザ陽性者が1人出ました。
「B型」だったので、少なくとも新型の可能性は、なしです。

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2009.04.30

新型インフルエンザについて

 
パンデミックとかエンデミック、エピデミックなんて言葉は
大学時代、「公衆衛生学」の授業で習いました。
「懐かしいー」なんていってる場合ではないぞ。
 さて、今回の豚インフルエンザは一応、新型インフルエンザと認定されたようです。
 WHOもフェーズ5を宣言し、いよいよパンデミックか、というところですが、
心配なのは、情報が正確に伝わり、正確に認識されるか、というところ。
 我が国でも、この調子だと近々患者発生、となる可能性は高い。
 その時の、国、地方自治体、医療機関、会社、学校その他もろもろの対応が
きちんと行くかどうか。
 何せ、見えない相手だからその辺が大変。
 狂牛病や鳥インフルエンザなどでも、間違った認識で見当違いの反応をしたり、
納豆ダイエットでいきなり納豆がスーパーから消える国だから、
今後、相当慎重に行かないと、大変なことになりますよ。
 そもそも、ウイルスってのがまず難しいヤツです。
 病原微生物として、よく細菌(バクテリア)との混同が見られますけど
ウイルスは細菌よりずーっと小さいもんで、
そもそもウイルスは生物ではない。
 細胞を持たず、それ単体では増殖できない。
 例えば、細菌を培地といって、栄養のある場所(寒天を引いたシャーレなど)におけば
増殖してコロニーをつくる。
 ところが、ウイルスはいくら栄養があっても動物の体の外では増殖できない。
他の動物の細胞内に侵入してはじめて増殖することができます。
 簡単に言うとウイルスは殻に入った遺伝子そのもの。
 生物はDNAに書かれた遺伝情報によって自己を複製しますが、
ウイルスはその遺伝情報だけを持って渡り歩いてるのだ。
他の動物の細胞に侵入し、そこにあるものを使って自らの複製をつくる。
そして、増殖して細胞を破り、またそれぞれが別の細胞に侵入する。
 例えて言うと、ある料理のレシピだけ持ってる人が、
マンションに入ってきて、勝手にある家に上がりこんで、そこんちの冷蔵庫を勝手にあけて
よそのキッチンを勝手に使って自分の好きな料理を作って、食い散らかしていくようなもの。
 いやー、こりゃ迷惑だわ。
 ちなみに免疫とは、一回そんな被害にあったマンションの住民が覚えていて
「あー、あのヒトよー。ダメダメ、追い出しましょう。」
といって、料理を作る前に追い出しちゃうこと。
 ワクチンとは、本人ではないが、写真とか扮装で
「こんな風体の人が来たら、危ないので追い返してください」
と予習すること。
 で、今回の新型インフルエンザで困るのは、誰もまだそいつを見た事がないので
とりあえず、マンションに入り、家の中まですぐ入っちゃうって事。
 ただ、どれくらい侵入しやすいとか、どれくらい食い荒らされるかは、まだわかんないわけだ。
つまり、ウイルスで問題になるのは
1.ウイルスの感染力
2.ウイルスの毒性

の2点です。
 まだ、この辺正確にわかってません。
またその毒性なんかも途中で変化する場合もあります。
最初は、サラダくらいだったけど、途中からフルコース作るようになっちゃったとか
または、その逆とか。
 いたずらに騒ぎすぎるのはいけないが、甘く見るのはもちろんダメです。
 きちんとした情報のコントロールが大事でしょうね。
 かつての「タミフルが消えた冬」のことを考えると(過去の私のブログを見てください)
すっごい不安です。
 大体、インフルエンザだけど0歳でタミフル飲めないからメイアクトを出します、
なんてことを言う医者がいるくらいだから・・・。

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2009.04.07

インフルエンザ、もうちょっと

 
 インフルエンザも沈静化、昨日は2人だけ、今日はまだ出てないぞ。
 医師会から週間インフルエンザ発生の報告書が来た。
足利市内でインフルエンザの発生を知るために
昨年から、足利市内の医療機関が連携してインフルエンザ患者の発生状況を
毎日カウントし、医師会に報告する。
 医師会ではそれをまとめて、1週間分の患者数、年齢分布、地域を報告書にして
各医療機関に届けてくれる。
 それによると先週1週間の足利市内のインフルエンザ発生は41人。
おー、ずい分減ったのー。
 ん、待てよ。
「看護婦さん、ウチでインフルエンザ陽性、先週何人だっけ。」
「ええと、11人です。」
 そうだよねー、毎日1~2人出てたから。
 と、いうことは、市内のインフルエンザ発生の4人に1人はウチで診断してるんだ。
4人に1人はいくらなんでも、比率が高すぎる。
 やっぱ、見落とし多いんじゃねーの?
 インフルエンザばっかりが当院に来るとも思えない。
「先週、熱が出て小児科かかったんですけど、インフルエンザではありませんでした。」
あー、そう。
まあ、いいか、とも思うんだが、やっぱそん中にはインフルエンザの場合も少なからずあったろうな。
鼻の入り口にチョコッと綿棒入れたくらいじゃきちんと判定できないぞ。
もちろん、インフルエンザはタミフルやリレンザ使わなくちゃ治んない病気じゃないし、
熱下がっちゃえば、それでいいんだけどね。
 ただ、じゃあ、ってんで抗生剤出す先生が多いので、それだけはカンベンしてよ。
インフルエンザはもちろん、風邪だって抗生剤は無効なんだから。
 でも、患者さんはその抗生剤で熱が下がったと誤解してんだよなー。
 
 さて、今日こそはインフルエンザいないかと思ったら、夕方、最後の最後でまたB型出ました。
 あーあ。

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2009.02.26

よくみて、よく考えよう

 いや、インフルエンザすごいですねー。
今日午前中だけで、陽性者10数人!すべてB型!
しかし、そのほかに、中耳炎や溶連菌感染症も、それぞれ数人、混在。
 先日、小児科のS先生と話しをした時、S先生が
「最近の若い医者は、所見をみて診断する能力が落ちている。」
と、いってました。
 近年、迅速検査の普及で、診断の方法が変わってきました。
すぐ、その場で答えが出ます。
 以前S先生に、なんで耳鼻科医は中耳炎の所見がわかるの?ときかれました。
 わたしの答は
「鼓膜切開するからです。」
というものでした。
 外から見てあれこれ考えて、お母さんにも説明して、それで鼓膜切開すると答あわせが出来ます。
ああ、あの鼓膜の向こうはこうなってたのかー。
そして、経験値が上がり、鼓膜所見と実際の中耳の状態との関係がつかめてくるのです。
 じゃあ、インフルエンザやRSウイルス、溶連菌も、その場で答あわせが出来れば、
診断の訓練になるのではないか、迅速検査でかえって診断力が上がるんじゃないの?
とも思えます。
 S先生に言わせると
「たいしてみもしないで、すぐ迅速検査しちゃうから。」
ということでした。
 なるほど、耳鼻科医が鼓膜切開する前は、何回も鼓膜をみて適応を考えます。
よく診て、考えて、これはしたほうがいいだろう、となったらお母さんにも納得してもらって手術をします。
何せ、人の体にメスを入れるわけですから、慎重にならざるを得ません。
 鼻やのどに綿棒を入れるのは、もっとずっと簡単です。
だから、あれこれ考えるより先に調べてみよう、となるわけです。
 以前はインフルエンザなどはペア血清といって、時間をおいて2回採血し、
その変化を比べなければ正確な診断は出来ませんでした。
 どうも、この辺に問題があるらしい。
 問題集をやって答あわせをするのではなく、先に解答集を見ちゃうみたいです。
 なるほど・・・。
 今日来た患者さん。
わたしではなく、妻が診たんですが、
昨日お昼に熱が出て、のどが痛いといって某小児科を受診。
「熱が出てすぐでは、インフルエンザの検査が出来ないから夕方来てください」といわれ
夕方、再診。
結果、インフルエンザ検査は「陰性」。
「でも、疑わしいのでタミフル飲んでください。」
と言われ、タミフル出たそうです。
不安になったお母さんが、帰って子供ののどをみると、まっかっかで白いポチポチが・・・。
で、本日当院受診。
診断「溶連菌感染症」。
 うーん、お母さんの方が、のどよくみてるんじゃ、ダメだな。
ちなみにこの先生わたしより年上ですから「最近の若い医者は」というのは当てはまらないかも。
 タミフルは飲んでなかったそうで、
まあ、今後インフルエンザにかかることなんかもあるかもしれないんで、とっといて下さい、
と妻が説明してました。
 やれやれ。

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2009.02.06

始業時間を遅らせる意味って?

 今週、朝、犬の散歩に行くと、登校する小学生の姿が見えない。
最初は休校かと思ったが、火曜日から今日で4日目なので、さてはあれだなと思い当たる。
 おそらくはインフルエンザ等の流行により「始業時間を遅らせる措置」をやってるわけだ。
 これ、全く誰が考えたんだか。
私自身はあまり効果があるとは思えないのだが。
 そもそもインフルエンザの流行を断ち切りたいのなら土日を絡めて3~4日休校にすれば早い。
大体インフルエンザ1~2日の間隔で感染ってくんだから、3日休めば鎮火する。
 流行するのはインフルエンザの子が学校に来るからで、
始業時間が遅れれば、
ちょっと具合悪いけど短い時間だから行っちゃおうか
なんて子供が増えれば、かえって感染が広がる。
 どう考えても、学級閉鎖や、学校閉鎖に踏み切れない学校側の
日和見的な、お役所的な、お茶濁しの対策といった感じは否めない。
給食だけは食べてもらわないと面倒だ、みたいな。
 夫婦共働きで、子供を送り出してから仕事に行く、なんて家庭は困るだろうな。
いっそ休みのほうが対応しやすいんじゃないかなー。
 満員電車やバスで通学してるなら、時差通学で感染の機会は減るけど、
この田舎じゃあ、その辺はカンケーないでしょ。
教室で全員にマスク配るくらいのことはしてんのかな。
してねーだろーなー。

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