ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2010.09.10

多剤耐性アシネトバクター

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 多剤耐性菌が問題になっています。
 要するにほとんどの抗生物質が効かない細菌です。
 多剤耐性アシネトバクターによる院内感染が
帝京大学で発生したり、
インドから帰国した男性から
NDM1といわれる耐性酵素を持つ大腸菌が検出されたとか。
 でも、なかなかこういう事の本質が正確に伝わらない気がする。
 やたら、こう恐怖をあおったり。
 オソロシイデスネー、しか言わないゲストコメンテーターとか。
 報道する側がそもそもきちんと理解してないような気がするなあ。
 新型インフルエンザのときにも感じた、
もやもやを感じてしまいます。
 多剤耐性アシネトバクター、実は当院でも患者さんから検出されてます。
 驚くことは無い。
 アシネトバクターは、そこいらにいる弱毒菌。
 セラチア、緑膿菌、アシネトバクター、キャンピロバクター、エンテロバクターは
その頭文字をとってSPACEと呼ばれる弱毒菌5人衆だ。
(緑膿菌はPsudomonasでPなのだ。)
 まず、耐性菌はどこにでもいる、という認識が必要です。
 しかも、普通は何も悪さをしない。
 健康なヒトに病気を起こすことはまず、ありません。
(ただ、慢性性中耳炎だけは別です。いつも困ってます。)
 問題はこういった耐性菌を世の中に増やさないこと。
 抗生物質の濫用によって、こういった菌が
「選ばれて」いるわけだ。
 健康な人々が抗生剤を飲むことによって、
薬の効く菌は死滅するがその分耐性菌が増える。
 その耐性菌はその人には直接何の影響もないが、
巷に出て行って、社会に潜伏する。
 多くは死滅しちゃうんだろうけど、
数が重なると、そっから病院とかに紛れ込んで、
時に、「免疫弱者」に重大な感染症を引き起こすわけだ。
 セラチアも、ちょっと前、院内感染で問題になりましたね。
 だから、カゼのときは抗生剤は飲んじゃダメよ、
といつも言ってるんだがなあ・・・・。
 また、そのうち機会を見てこのブログで耐性菌のお話をしたいと思います。
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誤解ないように書いときますと、
ウチで出たアシネトバクターと帝京大のやつとは
必ずしも同じものとは限りません。
 というのは、特定病院でしか使っちゃいけない、
切り札的な抗生剤があり、
それに対する感受性検査(薬に対して耐性かどうか)の検査は、
当院では調べてません。
 まあ、そっちに対しても調べたら全部耐性だった、
という可能性もあるわけですが・・・。
 まあ、ともかく検査結果で普通はほとんどが効くはずの、
注射剤を含めた30種類くらいの抗生剤が
全部 効かないマーク 付いてくると、
ううむと思ってしまうなあ。

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