ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2013.12.18

他覚的耳鳴りについて

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ちょっと前にいただいたご質問です。
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初めまして。
耳鼻科医さんのブログを見つけて少しお答え頂きたいと思い、コメをしました。
他覚的耳なりの治療法の事ですが答えられる範囲でお願いします。
蝦牛形メニエールの後遺症と思われますね。と耳鼻科医に言われました。治療法はないですとも言われました。
24時間バキバキやボキボキと鳴っております。
はや1年になります。
一般的に、他覚的耳なりの治療法はないのでしょうか?
もし、治療法があるようならば、どういった病院で通院したらよいですか?
なにか、アドバイスがあれば、頂きたいです。
お答え、宜しくお願いします。
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さて、他覚的耳鳴りとは一般の方には耳慣れない言葉かもしれません。
耳鳴り自体はポピュラーな現象で
多くの難聴の方が悩まされていますし、
大きな音を聞いたあとなどには健常耳の人でも「キーン」という耳鳴りを経験することが
しばしばあります。
しかしそれらは自分では聞こえても、
周囲の人にはわからない感覚です。
これに対し、他の人にも認識できるような耳鳴りを
「他覚的耳鳴り」と呼ぶことがあります。
多くの耳鳴りはこれに対し「自覚的耳鳴り」と言えますが、
耳鳴りは本来「自覚的」なのであえてこの言い方はしません。
「他覚的耳鳴り」を他人が聴く方法は、
その人の外耳道に耳を寄せて聴きとりますが、
耳鼻科では耳管通気に使うオトスコープというゴムのチューブがありますので、
これを患者さんと自分の耳に入れて確認します。
「自覚的」耳鳴りはキーン、ジーン、ゴーゴー、ジージーなどさまざまな音ですが
一般的には金属音にしろモーター音にしろ「連続的」な音です。
これに対し「他覚的耳鳴り」としては、
パキパキ、ピチピチ、サッザッ、などの断続音、クリック音がほとんどです。
多角的耳鳴りは耳の周囲の音が
外耳道経由でも聞き取れるわけで、
その原因はいくつか考えられます。
一つは筋肉由来。
口の開け閉めや、嚥下による耳管の開閉音が
鼓膜に反響して聴こえるもの。
これらは多くは「随意的」で自分で鳴らすことができます。
ただ、鳴らしたくないのに鳴っちゃうわけで、
不快に感じる方もいらっしゃいます。
また、耳管周囲筋や顔面筋、耳小骨についているアブミ骨筋の
「けいれん」でもカチカチ音、クリック音がします。
こちらは「不随意的」で24時間連続の方もいますし、
なったり治ったりという方もいます。
しゃっくりとか、疲れるとまぶたの筋肉がピクピク痙攣する、
あの現象を考えてもらうとわかりやすいです。
もうひとつのメジャーな要因は「血管性」です。
耳の近くには動脈が走っており、この血管雑音が聞こえる場合があります。
心臓の鼓動と同期していればそれと確認されます。

これは、自覚的にとどまってる場合が多いですが、
他覚的に感知できるほど大きい場合は、
心臓や脈管の異常がないか内科で調べてもらう必要があります。
その他、以前ブログで紹介した「耳管開放症」でも
まれに他覚的耳鳴りが聴取できる場合があります。
さて、他覚的耳鳴りの治療ですが、これは難しい。
そもそも、自覚、他覚を含めて耳鳴りの薬というものはありません。
自覚的耳鳴りはそのほとんどが内耳性難聴によるものなので
内耳性難聴が改善すればそれにつれて耳鳴りは改善します。
他覚的耳鳴りのうち、筋肉性、血管性のものはほとんど治療されていないのが現状でしょう。
ご質問の方の場合、どういったものが原因か不明ですが、
蝸牛型メニエールの後遺症で他覚的耳鳴りが起こる、
というのはワタシは聞いたことがないのでさらによくわかりません。
蝸牛型メニエールは内耳の病気なので、
普通、後遺症としての耳鳴りは「自覚的」なものですが。
耳鼻咽喉科で鼓膜の状態、難聴の有無等を調べてもらっているのなら
あとはさしあたって脳内CT,MRI等の画像診断でしょうか。
動静脈瘻や血管性腫瘍などは一応除外しておく必要があるでしょう。
あまりお役に立てずスイマセン。

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