ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

ブログトップに戻る

2010.04.27

「肺炎球菌ワクチン」についてのお話~その1


 最近、問い合わせの多い「肺炎球菌ワクチン」ですが、
ここで、ご説明しましょう。
 今回から数回にわたってご説明しますので、
興味のある方は、是非お読みください。
第1章 肺炎球菌とは
 私が、医学生の頃「細菌学」の授業の最初に聞いた話です。
 その、最初に教授が言ったことは、
「諸君は細菌というと、赤痢菌やペスト菌を連想するだろうが、
そんな菌に日常遭遇することはまずありません。」
 要するに「細菌」には3つのグループがあり
①体に入れば必ず病気を起こすもの(赤痢菌、ペスト菌etc.)
②通常は病原性を持たないもの(いわゆる常在菌)
③場所によっては「常在」するが、臓器に進入して病気を起こすもの
に分けて考えることができる。
 我々が通常の臨床で遭遇するのは③のグループの菌が多い。
 そんなわけで、講義の第1回は 「黄色ブドウ球菌」 だった。
んで、次に習ったのが「溶連菌」として有名な 「溶血性連鎖球菌」。
 もう、30年も前の話だが良く覚えています。
 肺炎球菌は、この③のグループに属する菌で、
その名のとおり「肺炎」の原因菌としては最重要ですが、
ヒトの鼻咽腔に「常在」することがあり、特に幼小児と老人で問題になります。
「中耳炎」の原因菌としては頻度がもっとも多い菌です。
 肺炎球菌が引き起こす病気として、もっとも危険なのは
「細菌性髄膜炎」 です。
 発症率は 5歳未満の10万人に2.9人 といわれていますが、
3分の1程度は死亡や重い後遺障害が残るといわれており大変危険です。
「細菌性髄膜炎」の原因としては「インフルエンザ菌B型(ヒブ)」の方が
頻度は高いですが、重症度は肺炎球菌のほうが高いといわれています。
 次に 「菌血症」 があります。
 発症率は 5歳未満の10万人に328人
 菌が血液の中に入ることによって多くの臓器にうつります。
 そしてもちろん 「肺炎」 です。
これはぐぐっと頻度は上がります。
 で、「中耳炎」 ですが、これはさらに3桁くらい頻度が上がります。
 まあ、そんなわけで「肺炎球菌感染症」を日頃一番診てるのは我々耳鼻科医なんです。
 毎日のように、
「うーん、こりゃ、肺炎球菌ですね、」
というセリフを口にしてます。
 肺炎球菌はインフルエンザ菌と並んで急性中耳炎の2大起炎菌ですが、
インフルエンザ菌と比べて、臨床症状が激しいのが特徴ですね。
 そして、その「肺炎球菌」が、近年、大きく変貌しています。
 ~第2章に続く
 次回は近年の肺炎球菌の問題点についてお話します。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

コメントはまだありません
2010.04.20

「おしゃぶり」の危険性

 問診は診察の基本。
 耳鼻咽喉科は主として「目で見て」診断する科なのですが、
やはり訊かねばわからないことも多い。
 乳幼児の発熱のとき初診で必ず訊くことは
①保育園に行っていますか
②母乳栄養でしたか、ミルクでしたか
③上に兄弟がいますか
④今まで中耳炎したことがありますか
⑤風邪で小児科等でよく薬をもらってましたか
 まあ、これらが要するに
子供の風邪、そして中耳炎が治りにくくなるリスク・ファクターなわけだ。
 他には、家族、特に母親の喫煙とか、
両親のアレルギー素因とか、
アトピー、喘息の合併とか、いろいろありますが。
 そして、中耳炎のときにもうひとつ大事なのが
「おしゃぶり使ってますか?」
という点です。
 実は「おしゃぶり」は中耳炎の誘発因子です。
 これが意外と盲点だったりします。
 常に口から吸い込むことによって鼻咽腔が陰圧になることが原因です。
 小児歯科領域でも「おしゃぶり」は良くないみたいですな。
 インターネットで調べるとまずそっち関係がいっぱい出ます。
小児歯科学会」←こんなのとか
 まあ、歯のことはわかりませんが、中耳炎やった事ある子(滲出性中耳炎を含む)は
おしゃぶりやめといて頂きたい、です。
 ちなみに私の「おしゃぶり」のイメージは
「ひみつのアッコちゃん」の「少将」です。(古っ!)
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

コメントはまだありません
2010.04.16

ジェネリック医薬品ってどうよ

 最近ジェネリック薬を希望される患者さん結構いますね。
 「ジェネリック薬」とは、医薬品の発売から年数がたって、
特許が切れたため、開発メーカー以外にも製造を許された「後発品」です。
 いわゆる「コピー薬」で、かつては通称「ゾロ」といわれてました。
 「主成分」は「先発品」と同じですが、
製薬会社の開発にかかったコストや、
認可をとるために必要な様々なテストがカットされ、
データの提出が免除されるので、
「先発品」に比べ、安い価格になってるわけです。
 厚労省は医療費削減の一つの目玉として、
近年、ジェネリック薬を大いに推奨してるのは周知のことです。
 当院も患者さんの要望によって薬局でジェネリック薬に変えてもいいですよ、
という趣旨の処方箋を出しています。
 
 かつては「ゾロ」は安く仕入れられるので
「儲け」が多く開業医が利益重視で使っていた時代がありました。
 最近は「薬価差」が無くなり、院外処方が普及したため、
薬で利益を稼ごう、というお医者さんはまあ、あまりいないでしょう。
(そもそも医者が設け主義では困りますが。)
 だから、以前のように
「ゾロばっかり使ってる医者はちょっとなあ…」
というイメージは今はありません。
 多くの先生が積極的に「後発品」を使っています。
 ただし、一般的にはお医者さんは本当はジェネリック薬、
あんまり好きではないのではないか、と思います。
 問題はジェネリック薬は「先発品」と完全に同じ薬ではない、
という点です。
 「主成分」が、同じならばいいので、薬の製法上違う成分もあったりするわけです。
 特に子供用のドライシロップ製剤などは「主成分」はもちろん大事ですが、
「味付け」の成分も大きな要素を占めます。
 だから、当院は必ず「味見」をして、先発品と遜色ないものを
近くの薬局にはお願いしています。
 たとえば抗生剤の「クラリス」「クラリシッド」は、もともと、とても苦い薬で、
開発したメーカーは、発売後、研究に研究を重ね、3回味付けを変更して、
今の味になっています。
 ところが「後発品」は、主成分は同じでも
味付けの「秘技」はコピーできないので、
かなり飲みにくい薬になっています。
 また、もう一点はメーカーにより製品の質にばらつきがある、ということもあります。
 まあ、中にはちょっと怪しいメーカーもあるので、
完全に「コピー」しきれて無い奴もあるようで。
 実際にステロイドの軟膏を「ジェネリック」に変えたら、
ぐんと効きが良くなって、実はステロイドの濃度は同じだが基材が違ったので
元の薬より吸収良くなって実質的には強いステロイドを使ってることになっていた、
なんて噂も聞きます。
 また、皮膚に貼る気管拡張剤のテープも、基材が違って、
血中濃度が通常より高く上がってしまい、その分早く下がってしまうということもあるようです。
 そんなこともあって、薬剤師さんになるべく信頼できるメーカーの製品を勧めてもらうようにしています。
 最近は「先発品メーカーの子会社」や「先発品メーカー」そのものが
「ジェネリック医薬品」を作っているところも多く、
まあ、この辺なら信頼できるかなー、と思っています。
 ただ、処方箋はどこの薬局に持って行ってもОKなので、
なかなか難しい面もあるのですが。
 あと、心配なのは、ジェネリックが優遇されてくると、
メーカーはワリの悪い新薬の開発より、
リスクの無いジェネリック生産に走るようになり
良い薬ができないのでは、ということも感じます。
 まあ、適切に使えば、これはメリットも大きいわけで、
我々も勉強しますので、皆さんも正しい知識を持って使用してください。
「センセイ、なんでも最近は『ジェネリック』とかいういい薬が出たんだって?」
「いや、ジェネリック、薬の名前じゃありませんから。」
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

4件のコメント
2010.04.03

「メス系」

 メス系という言葉をご存知でしょうか。
 オス、メスのメスではなく手術で使うメス。
 いわゆる「外科系」の診療科を「メス系」の科といいます。
 医者の間ではメスザイテなんて言ったりした。
 「ザイテ」はドイツ語で”seite”、英語で言うと”side”ですな。
 ただし「メス」は実はオランダ語でドイツ語では「Messer」だから
「Messerseite」なんだが、これは和製ドイツ語らしい。
 ちなみに「メス」は別に手術用に限らず「小刀」を指し、
英語では「Knife/ナイフ」です。
 まあともかく、「メス系」とは「外科系」、「手術をする診療科」の意味ですね。
「外科」「整形外科」「産婦人科」「泌尿器科」「脳外科」「形成外科」「眼科」「皮膚科」
そしてわれらが「耳鼻咽喉科」も「メス系」です。
 一方「内科」「小児科」「放射線科」「精神科」などは「内科系」ですが、
特にメス系に対応するような呼称はないと思います。
「聴診器科」とかね。
 まあ、切らないで治せるんならその方がエライ、という意見もありますが、
いざとなれば「手術」という手段のある外科系が私は性にあってます。
 卒業時進む科を選ぶ時、
ともかく「手術をする科」をやりたい、と思ったものです。
 群馬大の当時の「第1外科」と「耳鼻咽喉科」のどちらにするか、
最後の最後まで迷い「耳鼻咽喉科」に入局しました。
 勤務医時代はそれこそ朝から晩まで手術してましたが、
開業後もできる範囲の手術は必要に応じてなるべくするようにしています。
 まあ、日常一番身近な手術は鼓膜切開。
 うーん、どうしようか、鼓膜、切っちゃおうか。
 毎日、悩むわけです。
 患者さんにとっていちばんいい治療法が「内科的治療」か「外科的治療」か、
自分の経験と技量で決められるとこが「外科系の魅力」ですね。
 鼓膜切開もろくにしない
「草食系男子」ならぬ「内科系耳鼻科医」では耳鼻科医の意味がないですからね。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

1件のコメント
2010.04.02

似て非なるもの

 眼科と耳鼻科って、よく並べられるけど。
 外科系でマイナーで細かいし、首から上の感覚器を扱うってことで。
 まあ、眼(め)医者、歯医者、耳(みみ)医者なんて。
 んで、今日は「点耳薬」のお話。
 眼科では「点眼薬」を多用します。
 ひょっとして、内服薬より多いのでは。
 それで、世の中には「点耳薬」なんてのがあってすごく似た存在に思われてる。
 「中耳炎だから点耳薬」みたいな。
 間違いです。
 急性中耳炎では通常、点耳薬は治療に用いません。
 なぜか。
 それは鼓膜が基本的に防水だからです。
 目の結膜は「粘膜」ですから、薬の吸収はいいです。
 だから眼薬はよく効くわけです。
(白内障の点眼はちょっとどうかと思ってますが・・・。)
 ところが鼓膜は「皮膚」なので、外から薬たらしても中にはいかないのだ。
 「中耳炎」は鼓膜の向こう側で細菌が繁殖していますから、
外からつけても意味がない。
 点耳薬は「外耳炎」「(鼓膜穿孔のある)慢性中耳炎」「チューブ留置や鼓膜切開後の中耳炎」には有効ですが、
「痛がってる中耳炎」には無効です。
 痛いってことは鼓膜が腫れてるわけで、ということは穴開いてないわけだ。
 チューブ留置耳や、鼓膜切開後も耳だれが多ければ、その上からつけても意味ありませんから、
実際には急性中耳炎における点耳薬の出番ってほとんどないわけです。
 さらに、点耳をつけてると鼓膜が自壊した時に、
耳だれなのか点耳薬なのかわからないので、診断の妨げになります。
 漫然とつけると外耳道に「耐性菌」や「カビ」がはえてしまい、
またこれが治療に難渋します。
 そんなわけで、8カ月の子供が耳だれ出たといって、
耳も見ないで(もっとも耳垢充満で見ても見えなかったと思うが)
タリビッド点耳出す先生、やめてほしいなー。
 確かに1歳未満の子で耳だれっていうと外耳炎が多くて、
そーゆーのは点耳ですぐ良くなるんですけどね。
人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

コメントはまだありません
2010.03.30

地域医療貢献加算?

 4月になるとまた保健改定があってメンドクサイ。
 といっても、私は事務にお任せだし、
何が何点ってのもほとんど把握してないので、
薬屋さんが持ってくる「点数早見表」を見てもどこがどう変わったかじぇんじぇんわかりましぇん。
 事務員の話によると今回は「地域医療貢献加算」なんてのがあるそうだ。
 彼女が「ウチ、該当しますかねえ、」ってんで調べてみてと言っておいた。
 これは、夜間や休日、電話連連絡を受けたり、
急患診療をしてる施設が対象になるようだ。
 確かに当院は病院と同じ番号の電話が、
自宅のリビングと、私の寝室にあるので、
24時間対応ではある。
 食事中でも出ますが、外に食事に出たり、トイレやお風呂ん時は出られませんが。
(時々、トイレで電話の音が鳴ってあわてて出ると切れてたりする。)
 急患もそんなわけで随時診てる。
 足利市の消防署では小倉先生んとこは診てくれるって噂になってるらしく、
よく救急隊から急患の電話がかかってくるし、
中には、119番できいたんですけど、っていう電話が患者さんから直にきたりする。
 大晦日もお正月も必ず何人か診るはめになります。
 元旦に明治神宮で初詣の時、救急隊からの携帯が鳴ったこともあったし。
 でも、今回の算定基準は、
「必ず」24時間連絡が取れ、
留守番電話も携帯等にすぐ転送されるようになっており、
必要に応じて診察または往診ができる体制をとっておくこと

なので、こりゃ全然できませんね。
 っていうより、こんなことできる開業医っているんだろか。
 1年中どこも行けないじゃん。
 埼玉スタジアムで携帯なったら、帰んなきゃいけないの?
 アウェイの時は代診頼まなきゃなんないし。
 そもそもオレ、家にいれば休日でも夜中でも枕元でなる電話は出るが、
たとえば土曜の午後とか
 レッズの試合テレビ観戦中は、たとえリビングにいても電話出ませんから。
 そんなわけで、この件に関しては今まで通り当院は加算なしです。
 以前にも書きましたが、かつてレッズサポのSさんは子供の急変に
浦和の試合の前半終了まで待って電話をかけてきた。
「もしもし、先生、ハ-フタイムになるまで待ってたんですけど・・・。」
 さすが、よくわかってらっしゃる。
「・・・じゃあ、後半終わったら来てください。」
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

3件のコメント
2010.03.29

突発性発疹かも。

 1歳前後の赤ちゃんが発熱で来院。
 39度を超える熱で昨夜夜間救急にかかったという。
 担当の先生は
「うーん、耳が赤いかなー。」
といって、中耳炎の診断で抗生剤が出たという。
 今朝になっても全然熱下がりません。
 じゃあ、診てみましょうかね。
 鼻水も咳もない。
 熱は39度を超えかなり高いが、その割に機嫌は悪くない。
 で、鼓膜を診ると何ともない。
 胸部聴診も異常なし。
「風邪かねー、突発性発疹かもなー。」
 ということで、お母さんに説明し経過を見ましょうと。
 薬はなにもなし。
 鼻も咳もないし、出す薬が無い。
 抗生剤なんてもってのほかだ。
 担当の先生はよくわからないので
「中耳炎だといいなあ。」
と思ったに違いない。
 鼓膜が見えたかどうかわからないが、
「鼓膜が赤いといいなあ。」
と思ったに違いない。
 すると、何となくそう見えてくる。
 でもその気持ちはわからないでもない。
 オレだって鼓膜所見よくとれないころは、そーいう時期があった。
 まあ、熱があってぎゃあぎゃあ泣いてればフツー鼓膜は赤いし。
 でも、たとえホントに「急性中耳炎」で鼓膜が赤くて熱があっても、
それだけでは抗生物質は使わず、数日経過をみる、
というのが今日(こんにち)の急性中耳炎のガイドラインですけど。
 突発性発疹は4カ月~1歳前後の子がかかる感染症で、
ヒトヘルペスウイルス6型7型の感染であるということがわかっています。
(私が学生のころは「原因不明だがウイルスと思われる」と教わった。)
 高熱が2~3日続き下がると全身に発疹が出る、
ということなので、
「診断がついたときには治ってる」というとこが厄介ではある。
だから「突発性発疹かも」としか言えないわけだ。
中には発疹が出ない子もいるので、これに至っては診断不能だ。
(おたふくもあるでしょ、腫れたことないけど調べたらかかってた、ってやつ。)
 どっちにしろウイルス性の「風邪」なので治療は抗生剤など使わず、対症的でいいわけだ。
まあ、症状あれば、鼻水の薬とか、整腸剤とか。
 まあ、赤ちゃんが最初に熱出すのはこれ、ってパタ-ンは多い。
 薬は必要ないが下痢とけいれんに注意。
 さて、この子も数日高熱がありましたが、
救急でもらった薬、どれも飲まないでいいからと説明し、
その後、無事に(?)発疹が出て治りました。
(実はこの子、半月前にも高熱で受診し、
「突発性発疹かもねー。」といって、
なにも薬ださず熱も下がったが、そん時は発疹出なかった。)
 夜、4か月~1歳前後の赤ちゃんが熱を出したら、
全身状態を観察して 翌日に、医療機関(なるべく耳鼻科)を受診しましょう。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

コメントはまだありません
2010.03.26

8年ぶりの鼓膜

 長いこと同じ場所で開業医やってると、
久しぶりに来院する患者さんがいる。
 今日来た女性は、24歳の方。
 カルテを見ると8年ぶりの受診で、その時は当院で手術をしていた。
 滲出性中耳炎で小学生の時、総合病院で鼓膜にチューブを入れる手術をして、
その後、チューブが脱落したのだが、
大きな鼓膜穿孔が残ってしまった。
 8年前のその時、当院には花粉症でかかったのだが、
その話を聞いて、じゃあ、鼓膜塞いでみようか、と手術を持ちかけたのでした。
 外来手術で鼓膜は無事塞がり、その後ずっと来院してませんでした。
 まあ、手術がうまくいけばその後は耳鼻科に通う必要はないので、
そういう方の経過ってその後あまり見る機会がありません。
(逆にうまくいかなかった人は時々受診するわけだが・・・)
 もちろん、そんな手術した方はいっぱいいるので、
その子も全然記憶になかったのですが、
ついでに8年ぶりに鼓膜を見てみました。
 癒着も石灰化もなく穿孔の痕跡すらないきれいな鼓膜になってたので、
ホッとするとともに嬉しかったですね。
 その後は耳だれもなく聞こえもよいとのこと。
 うーん、医者やっててよかったと思う瞬間ですね。
 ついでにジャージ姿だった高1の女の子はすっかりきれいなお姉さんになってました。
 
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

コメントはまだありません
2010.03.24

「殺菌」と「静菌」


 花粉症も多いのですが、季節の変わり目なのと、
冬の風邪シーズンの最終盤なのでここのところ中耳炎の方が多いですね。
 内科小児科で風邪といわれて薬を飲んでいたが、
急に耳が痛くなって来院、というケースが多い。
 大概の方が「風邪薬」と称して抗生剤を処方されているのには、
今更ながらあきれます。
 「風邪のときには抗生剤は無効」というのが今の常識なんですが。
 もう一つ気になるのが「抗生剤の併用」です。
 βーラクタム系の抗生剤とマクロライド系の抗生剤を同時に処方されてることがあります。
 これ、ちょっと疑問です。
 確かに抗菌スペクトル(対象とする細菌)が異なるので、
原因菌がはっきりしない時には「守備範囲」が広くなるような気がします。
 しかし、これらは同時に使うと効果を打ち消しあう恐れもあります。
 抗生剤はその作用機序から大きく分けて「殺菌的」な薬と「静菌的」な薬に分かれます。
 「殺菌的」な薬の代表はペニシリン系、セフェム系で、薬の名前だと
「メイアクト」とか「トミロン」「フロモックス」「セフゾン」「パセトシン」などが多く使われています。
 細菌の細胞壁の合成を阻害し溶菌させます。
 動物細胞には細胞壁がないため細菌への選択性が高く有効です。
 しかし、それゆえ細胞壁をもたない病原体、具体的には「マイコプラズマ」には無効です。
 一方「静菌的」なくすりの代表としてはマクロライド系、薬としては
「クラリス」「クラリシッド(これはクラリスと同じ薬です)」「エリスロシン」などがあります。
 これらは細菌のタンパク合成を阻害し増殖を抑えます。
 菌を殺すわけではありませんが、体の免疫、菌の寿命によって治療につながります。
 細胞壁をもたない「マイコプラズマ」にも有効ですが、その作用機序から
切れ味はやや悪いです。
 で、これらを併用するとどうなるか。
 ペニシリンやセフェムは細菌が細胞壁を合成する「増殖」の時に効果を発揮します。
 ところがマクロライドが増殖にストップをかけるとその効果を発揮する機会が無くなります。
 それで、実際より効果が弱くなってしまう可能性があります。
 ただしこれは、「試験管内」ではその作用がはっきり確認されてますが、
「生体内」では確かめるのがなかなか難しい。
 専門家は「薬を飲む時間をずらせば大丈夫」としていますが、
どれだけずらすかも、なかなか難しいですね。
 ただでさえ、子供さんにお薬飲ませるのは大変ですし。
 まあ、われわれ医者としては、なるべくデータを集め、所見を検討して
病原菌を想定した上で薬を処方すべきでしょう。
 これだけ出しときゃ、どれか当たるだろう、では困りますからね。
 
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

コメントはまだありません
2010.03.19

ひさかたの光のどけき春の日に

ひさかたの光のどけき春の日に しずくとばしてくしゃみするらむ
【解釈】こんなに日の光がのどかにさしている春の日に、
    なぜ私はしずくが飛ぶほど激しいくしゃみをしてるのだろう。
【解説】「ひさかたの」は天、雨、月などのかかる枕詞。ちなみに「久しぶりの」という意味はない。
    「するらむ」の「らむ」は推量を表す助動詞で「どうして~だろう」という意。
   <用例>「思ふらむ」⇒「どうして、思うのだろう」
      「知らむ」⇒「どうして、わかるのでしょう」
      「あぐねすらむ」⇒「どうしてあぐねするのでしょう」


 今年は花粉が少ない少ないといいながら、患者さんが多いらむ
 ポイントは花粉の本格的飛散が遅かったこと、
雨や雪が多く、飛ばない日が多かったので飛ぶ日に集中して多くの花粉が飛んでるため、
でも、一番は患者さんの油断だろうなー。
 マスコミが騒がないので、なんとなくその気にならないまま
漫然とシ-ズンに突入してる人が多いような気がします。
 きちっと準備して臨んだ方はそれなりに良い春を迎えてるはず。
 もう一度、注意事項をおさらいして残りのシーズンを正しく過ごしてくださいね。
 それにしても、
「花粉症がひどいです。」
とか
「他の病院でもらった薬が効かないです。」
といって受診する患者さんの服装を見てがっかりするコトがしばしばあります。
 親子してモコモコ、フワフワの フリース 着てたりして。
 それで、この間の日曜日子供のサッカーでマスクなしで一日外いたんです、とか。
 昨日天気がいいんで布団干してから薬が効かなくなって、とか。
 まるで、外来でくわえタバコで椅子に座って
「毎日40本タバコ吸ってるんだけど、ずーっとタンが絡んで咳がとまらねんで。」
という患者さんに説明する時のようなむなしさを感じます。
 花粉症の時に家族に花粉症の方がいれば、たとえ本人がそうでなくても
フリース、ニットでの外出はやめてくださいね。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。

コメントはまだありません
医療系をまとめました。
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
最近の投稿 最近のコメントカテゴリー アーカイブ