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2012.03.13
みなさん、こんばんは。
ドクターおぐぐの「耳鼻科なんでも質問箱」のコーナーです。
(またかよ、しかもタイトル前回と違ってるし。)
今回はこんなご質問を頂きました。
40代の男性の方です。
小倉先生のブログには、耳管狭窄のキーワード検索でたどり着きました。
> 何故そのキーワードで検索しているかと言いますと、話せば長くなりますが
> 聞いてください。
>
> 実は今年の1月28日(土)に左耳にソフトボールが、そんなにきつくない速度で
>
> 当たりました。その瞬間、耳が聞こえずらくなりました。私は、鼓膜が破れた
> くらいの軽い気持ちでしたが、1日たっても何も変わらなかったので
> 月曜日に耳鼻科に行きました。そこで聴力検査の結果、気導が125~500が
> 50でした。骨どうは250が30、500が40でした。右が15、20、20なので相当下がって
> おりました。そこで先生からメニエールの初期症状と診断され2週間イソバイドを
> 飲んで様子を見ました。2週間で30,35,50と少し回復しました。ただ、メニエールとの診断
> が、信じられなかったのでセカンドオピニオン(都内の有名な大病院)で違う耳鼻科に
> かかり、治療を受けました。
> 薬もイソバイドがアデホスとメチコバールと、鼻炎もあったのでムコダインを処方されましたその結果、聴力が、20、25、40(骨どうは20、25)になり、だいぶ聞こえもよくなったのですが、まだ少し自分の声がこもって聞こえると話しても中耳炎もないし鼓膜もきれい
> だからともう来ないで良いですよと言われてしまいました。
> 突発性難聴ではないと言われました。
>
> ただ耳閉感をネットで調べて、耳管狭窄の症状があてはまったので、また違う耳鼻科に
> 行って、検査をしたらやはり耳管狭窄でした。通気もしてもらいました。
>
> ここまでが経過なのですが、心配しているのが耳閉感が思ったより無くならなかった。
>
> 事です。音を聞く分には問題ない(感じない)、話す時の声がこもって聞こえる感じがします。これは、通気治療をすすめて耳管狭窄が収まったら治るものなのでしょうか?
> どれくらい治療にかかりますか?先生に診てもらえば色々話を聞いてもらえそうですが、少し遠いのでもしメールで話を聞いてもらえるのであればと思いメールした次第です。今、耳管狭窄の治療をしている耳鼻科は、どうも診察の数をこなして早く終わらせようとしている節がありちょっと心配になっています。なかなか、親身になってみてくれる所ってないですね。
> 時間の有る時で構いませんので、回答頂ければ嬉しいです。
>
> 追加で症状の説明です。
> ①耳鳴りはありません。
> ②朝は、割と話す声は気にならない。
> ③昼間はその事が気になりなんとなく、しゃべりたくない感じです。
> しゃべるとやはり、こもった感じと、響く感じ。
> ④夜は調子が良いです。
> ⑤風呂も調子が良いです。
> ⑥睡眠もとれています。
> ⑦肩こりがあります。
> ブログをみて
> ⑧小さい頃よく中耳炎になっていました。
>
>
>
おお、さらに長いっ!
ご質問をまとめますと、
①ソフトボールがぶつかったことを契機に左耳の聴力低下
②左耳の低音部に中等度の聴力低下
③「メニエール病」の診断で、発症3日後からイソバイドを2週間飲んで軽度聴力改善
④他院にかかり薬をアデホス、メチコバール、鼻炎もあると言われムコダインに変更し聴力さらに改善
⑤聴力は40デシベルになった
⑥しかし、耳のこもり感が取れず、また別の病院で「耳管狭窄症」の診断
⑦耳管通気をしても耳のこもり感が改善せず
⑧朝と夜はいいが昼間はしゃべるとこもる感じ
⑨お風呂は調子いい、夜も寝られる
⑩肩こりあり、小さい頃中耳炎に良くなっていた
うーん、まとめても長いなあ。
なかなか、難しいですね、専門医試験にはちょっと手ごわいかも。
これを一元的に説明することはなかなか困難です。
まずソフトボール受傷をきっかけとして(?)、
「感音性難聴」が起こった。
難聴は、鼓膜や中耳など音を伝える部分の難聴である「伝音性難聴」と
内耳や聴神経など音を感知するする部分の「感音性難聴」
に分類されます。
この場合、どちらの病院でも「骨導聴力」の低下があったので、
「感音性難聴」のあったことは確実です。
しかし、メニエール病は必ず「めまい」を伴うので、
今回はめまいがなくこの診断は正しくありません。
ワタシの診断名は「急性低音障害型感音難聴」です。
この病気はよくわかっていなことも多く、「突発性難聴」の
1タイプとして取り扱われることも多いのですが、
突然の発症、低音部のみの感音性難聴などから、
この病名が考えられます。
ストレスなどをきっかけに内耳の循環不全が起こり、
内耳神経細胞の虚血が聴力の低下を引き起こします。
ただ、「急性低音障害型感音難聴」はその治療に
メニエール病の特効薬であるイソバイドを使うことがあります。
以前「蝸牛型メニエール」と言われた疾患と同一という説もあり、
最初の先生がその意味で「メニエールの初期」と言ったのであれば、
ワタシと同じ意見ということになりますが。
利尿剤であるイソバイドよりさらに治療によく用いられるのはステロイド剤でしょう。
発症早期のステロイド剤の使用で聴力が回復することは多いです。
時間がたつとすべての感音性難聴にいえることですが、
神経細胞が変性、死滅し、聴力が回復しません。
今回治療で、聴力がかなり改善しましたが、
500Hzが40デシベルということは、やや難聴が残ったとみることができます。
もちろん、発症前から(自覚症状なしに)この聴力だった場合も考えられますので、
大体元のレベルに戻ったという可能性も無くは無いのですが。
(耳鳴りが無いという点がその可能性を示唆しています。)
音のこもる感じは低音部の難聴があるとおこる場合が多いので、
今回の症状はこの感音性難聴に起因していると考えることはできます。
本例でも早期にステロイドを使えばもっと聴力が改善した可能性もありますが、
やはり同じだったかもしれません。
しかし一方で別の解釈もあります。
ご自身のおっしゃるとおり、
現在のこもり感が中耳、耳管の関係に由来する可能性も否定できません。
お話の中で
子供の頃中耳炎を反復した、
朝、夜はよいが昼間悪い、
自分の声がこもるとともに響く感じ、
鼻炎があったことを指摘された、
とあります。
これらの項目は耳管機能不全を示唆する事柄です。
ただし、耳管狭窄症よりも耳管開放症をより指示する症状のようです。
通気をしても症状が改善されないのもそのためでしょうか。
通気度はどうなんでしょうか。
小さい頃中耳炎を反復していたので鼓膜のダメージ、
具体的には鼓膜が薄くなり気圧の変化を受けやすいことは、もともとあったかも。
現在の症状はこの耳管開放症のためかもしれません。
そこで、今後は
「急性低音障害型感音難聴」を考え、イソバイドやステロイドの治療を試みる。
ただし、時間がたっているので効果は疑問?
「耳管開放症」があるならそちらの治療。
これも簡単ではありません、ワタシのブログにこの病気の説明がありますが。
もちろん、通気で次第に改善するならそのまま続けていいと思いますが。
うーん、これ以上は、難しいなあ。
やっぱり、主治医の先生によく相談してみてくださいね。
結論でなくてスイマセンが。
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2012.03.02
今飛ぶといひしばかりにスギ花粉、
弥生の月を待ちいでつるかな
【解釈】スギ花粉が今すぐ飛ぶと言ったばかりに、待ち続けついに3月(弥生の月)になってしまったことだ。
【解説】2月にもうすぐ花粉が飛びますよと(オグラセンセイが)言ったので、
その気になって待ち構えていたら
(ロクに飛ばないうちに)3月になってしまったという花粉症患者さんの
ほっとしたやら、しかし、これでいいのかというゆれる心を歌った歌。
初期治療として、花粉情報を見ながら始まりそうになったらら飲み始めてね、と言われ、
早々、1月下旬に薬をとりいって待ち構えていたが、
一向に花粉情報では、関東地方の全体が青色の「少ない」から動かない。
【語訳】「今飛ぶと」:「今」は「すぐに」の意味
「いひしばかりに」:「し」は過去の助動詞「き」の連帯形で、「ばかり」は限定の副助詞。
「まちいでつるかな」:「待ちいづ」は「待っていて出会う」の意。
完了の助動詞「つる」の連帯形と詠嘆の終動詞「かな」が付いている。
(用例)「まちいでつるかな」⇒「待っていて出会ってしまったことだよ。」
「あれはつるかな」⇒「あれはつるなんだろうか。」
「それはかめかな」⇒「それはかめなんだろうか。」
「これはこみねかな」⇒「これはショーグンさまの娘。」
今年の冬はやけに寒く、記録的な大雪や低温を観測してるようだが、
影響でスギ花粉の飛散開始も大きく遅れています。
まあ、1月末から多少なりとも洩れとんではいるのだが、
一般的な飛散開始とはまだ言えません。
梅の花なんかも開花が遅れてるようで、
梅まつりなんかを毎年やってる梅林なんかは、
お客さん来なくて大変みたいですね。
もともと、今年はスギ花粉飛散量は少ないだろう、
と言われたこともあって、患者さんの関心は一般に低く、
薬とリに来る人も少ないみたいです。
一因には昨年は花粉量はそれなりに多かったのだが、
意外とみんな軽く済んだ方が多いという事実。
花粉が一番多い時に地震で原発が爆発して、
特に子供たちに「外出ちゃイカン」ということが徹底したため、
花粉暴露量が少なかった。
しかも、ガソリンも無くなっちゃったので、
おとーさんもゴルフに行かないし、
おかーさんも、買い物はなるべく出ないで
まとめ買い、家にあるもんで何とかする、
なんてことが多かったので、
日本国民(特にここら辺)の人は総じて花粉吸入量が少なかったはず。
みなさん、油断しないでください。
まあ、このまま少なく推移すればいいのですが。
ただし気になることがひとつ。
スギ花粉はもう夏のうちに作られて、できています。
これを、スギの木は春のうちに残らず吐き出すのだ。
開花が遅れた梅は、早咲き、中咲き、遅咲きが一気に開花して、
帰って楽しめる可能性もあるとニュースで言ってました。
もし、気候の関係でたまっていたスギ花粉が一気に放出されたら・・・・・。
花粉量はトータル量も重要ですが、
実はピークの花粉数は発症者数に大きく影響する。
スギ花粉は1個や2個入っても、症状は起きません。
ただし一時に大量に吸って花粉症が発症すると、
その後は、少量の花粉、さらには花粉でなく、
温度、気圧、湿度、機械的刺激(埃っぽさなど)別の刺激でも、
花粉症の発作が誘発されます。
今年は大丈夫じゃんなどと思ってるスギ花粉症の方、
雨の上がった後など、くれぐれも厳重にご注意を。
これを機会に、また花粉症の事をよく知りたい、という方は、
右のカテゴリ内の「花粉症」をクリックしてご覧ください。
「花粉百人一首」の過去作品もあります。
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2012.02.28
皆様、こんにちは。
さあ、ドクターおぐぐの、 なぜなに医療相談 の時間です。
(そんなもん、いつからできたんじゃ。)
今日はこんなご相談を頂きました。
こんにちは。千葉在住の二人の男の子の母です。いろいろ調べていてこのブログにたどり着きました。お忙しいとは思いますが、ご相談にのっていただければ大変うれしいです。
7才になる男の子ですが、熱はなく咳がひどいので、小児科か耳鼻科か悩んで、結局耳鼻科に行ってきました。
息子はアレルギー性鼻炎があり、朝晩は毎日鼻をかむような状態なのですが、ここ数日はあまり鼻水は出てなかったのですが、以前耳鼻科にいったとき、鼻水がのどのほうにおりてきていて咳がでていることがあったのを思い出し、受診しました。こういう症状の場合、耳鼻科でよかったのでしょうか。
診察後、クラリシッド、ムコダイン、アクディームを処方されました。鼻水がひどい症状だとだいたいこのセットの処方をされ、1週間ではよくならないので2週間ほど飲みます。こんなに抗生物質を飲み続けても大丈夫なのでしょうか。
もともと中耳炎になりやすいほうなのか、去年の冬は2回、急性中耳炎になりました。今年はなっていません。乳児の頃は保育園に行ってたこともあり、滲出性中耳炎でした。その後、1才~4年間をアメリカで過ごしていたのですが、そのあいだには中耳炎にはかかることがなかったです。日本はなりやすいとかそういうのってありますか?
またアレルギー性鼻炎ということでエバステルという薬を飲んでいましたが、あまり飲んだからといって症状の改善がみられないので最近は飲んでいませんが、この薬は飲んだほうがいいのでしょうか。でもこれからずっと飲み続けないといけないのでしょうかか。
いろいろととりとめなく質問させていただいて申し訳ございません。お時間あるときで結構ですのでご意見を伺いたいです。よろしくお願いします。
長っ!
・・・・・・いや、失礼、
要約しますと、
①熱が無くて、咳がひどい時受診するのは耳鼻科でいいか?
②クラリシッド、ムコダイン、アクディームのセットが出るが抗生剤を2週間も飲んでいいか?
③日本は中耳炎になりやすい国か?
④効果がないようだがエバステルを飲み続けないといけないか?
の4点でよろしいでしょうかね。
順番に行きましょう。
まず、
①熱が無くて、咳がひどい時受診するのは耳鼻科でいいか?
ワタシはそれでいいと思います。
ご指摘のように鼻が原因の副鼻腔気管支症候群など、耳鼻科的な疾患の場合は、
子供には多いですし、耳鼻科でも聴診はします。
もっとも多いのは風邪の咳ですが(RS、マイコプラズマを含む)
風邪の専門医は耳鼻咽喉科なので。
ただし、喘息の診断を受けている方は、小児科の方がいいかなあ。
呼吸機能検査などを受けて長期のフォローが必要になりますから。
喘息気味、とか、喘息の「ケ」がある、位ならいいでしょうが。
(しかし、この喘息の「ケ」がある、ってよく言う先生いるけど、
気持ちは分からないでもないが、なんだかなあ、と思ってしまう。)
熱があった時は必ず耳鼻科に来てくださいね。
7歳ならまだいいけど、乳幼児、ことに0歳1歳の発熱は耳鼻科を受診してください。
②クラリシッド、ムコダイン、アクディームのセットが出るが抗生剤を2週間も飲んでいいか?
これはケースバイケースですね。
まず「クラリシッド」が何のために出ているのか?
風邪であれば抗生剤は不要ですが、咳の続く場合にマイコプラズマ感染症を疑って、
クラリシッドなどマクロライドの薬を処方することがあります。
この場合、効果がなければ耐性菌などを考え4,5日で薬を変えます。
効果があれば、およそ2週間までは薬を続けることはあります。
一般に内服抗生剤の効果は3日で判定、有効限度は約2週間と考えています。
ただし、マクロライドには「少量長期療法」というのがあり、
通常量の半量以下の薬を2~3か月連続で飲むことがあります。
びまん性汎細気管支炎や、慢性副鼻腔炎の治療で使われます。
③日本は中耳炎になりやすい国か?
ははは、これはわかりませんね、ワタシ海外で耳鼻科やったことないし。
まあ、そういうことは無いと思いますが。
乳幼児期に中耳炎を反復した患者さんが大きくなって体の抵抗力がついて
風邪をひきにくくなると中耳炎になりにくくなりますが、
成長につれアレルギー性鼻炎が悪化してくると再び中耳炎になることはあります。
④効果がないようだがエバステルを飲み続けないといけないか?
アレルギー性鼻炎と言われていてしかも症状がコントロールされず
急性中耳炎になってるわけでしたら、
アレルギー性鼻炎の治療はした方がいいでしょう。
しかし、効果がないのでは困ります。
エバステルは第2世代の抗ヒスタミン剤のなかでも、
効き目はややマイルドな部類の薬です。
お子さんのアレルギーが強いなら
薬をもう少しランクアップする必要があるでしょう。
もちろんアレルギー検査でスギ花粉が陽性なら、
これからの季節は2カ月ほど薬を飲みます。
ただし、アレルギーは原因となる「抗原」の回避が最も大事なので、
薬の効果が不十分な場合に生活環境を見直す必要もあるかもしれません。
さて、千葉のお母様、こんなトコロでよろしいでしょうか。
去年はレイソルが強くてまいりましたが、今年はどうでしょうか。
そういえば、ジェフ、戻って来ませんね。
それでは、皆様、ごきげんよう。
また、お会いしましょう。
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