ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

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2013.06.11

またまた急性中耳炎のご質問

11ヶ月児の急性中耳炎の薬について
初めまして。
小児の中耳炎について調べていた際にこちらのブログへたどり着きました。
少し前の記事だったのですが、気になったことがあったのでコメントさせて頂きます。
昨日38.3~39.2℃の熱が出た為に本日小児科を受診したところ、「恐らく中耳炎になっているから耳鼻科へ行くように。多分切開になるから」と言われ「フロモックス」と数種類の鼻水・咳用の薬(今回は必要ないと思われるので薬品名は割愛させて頂きます)が処方されました。
小児科受診後すぐに耳鼻科へ行くと膿が溜まっているとのことで即切開になり、先生から「思ったより沢山の膿が出てきた」と言われました。
昨日~今日の娘は熱でボーッとしていたものの特に不機嫌でもなく痛がっている素振りもなかったからビックリしました。
その後、耳鼻科医に小児科から処方された薬を見せたところ、「フロモックスは少し弱いから中止にして、新しくオゼックスという抗生物質を出すからこちらを他の薬と一緒に飲ませてね」と言われ、帰宅後からそのようにしております。
服用させた後にオゼックスについて気になり調べていると、「第一選択薬ではない」「他の抗生物質が効かなかった時のみ使う」という記載が多かったので、いきなりオゼックスが処方されたことに不安を覚えました。
おぐぐー先生のこちらの記事にてオゼックスなどの処方をする時は「鼓膜切開」のような外科的処置を講じる必要があるとの記載がされているのですが、鼓膜切開をするような場合にはオゼックスを処方することは一般的なのでしょうか?
それとも、やはりいくつかの抗生物質を経てから効かない場合にのみオゼックスを処方するのでしょうか?
もともと鼻水が鼻の奥に溜まりやすいようで週1で耳鼻科に通って鼻吸いと「ムコダイン・アスベリンシロップ」の処方をされている子供です。(家でも寝る前に必ず鼻吸いをしている状況です)
中耳炎になりやすい体質なのかな?っと思うのでオゼックスが効かなくなるのは困るような気がしたので、こちらにてオゼックスについて質問させて頂きました。
お忙しいとは存じますが、ご教授頂けたら幸いです。
長文失礼致しました。


 えー、コメントありがとうございます。
 ご質問の件ですが、毎度申しますが、
実際に患者さんを診てないのであくまで参考程度に考えてください。
 小児急性中耳炎についてはたびたびブログでとりあげておりますが、
この記事も読まれてるでしょうか?
小児急性中耳炎のガイドラインについて
 このお子さんのスコアを考えてみましょう。
 まず、熱が38.5℃以上ですので2点、
耳痛は無いので0点、
啼泣・不機嫌もなしとして0点、
鼓膜所見は診てないのでわかりませんが
鼓膜切開をして大量の膿が出たという事で
発赤4点、鼓膜膨隆8点、耳漏0点、光錐4点
とします。
 これに24カ月未満の3点を追加すると
合計21点。
 軽症:0~9点、中等症:10~15点、重症:16点以上なので
かなりの重症という事になります。

 発熱はあるが耳の痛みや、啼泣・不機嫌などもなく
いかにも母親がみてひどい中耳炎、という印象が無くても
実は中耳炎がすごく重症だったりするわけです。

 この場合、ガイドライン的には
鼓膜切開および強力な抗生剤で5日間の投与
となっています。
 だから、鼓膜切開+オゼックスはこの場合
適切な治療と思われます。
 
 ためらわず鼓膜切開をしたのは、
技術的にも自信がある先生なのでしょう。
 それより、素晴らしいのは小児科の先生ですね。
 所見から中耳炎を疑い、すぐ耳鼻科に紹介してくれる。
 この小児科の先生の適切な判断のおかげで、
お子さんの耳は救われましたね。
 
 どうぞお大事になさってください。
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2013.06.02

「中耳炎の話」お話してきました


 先日、毎年恒例の友愛幼稚園父母の会で
講演を行ってまいりました。
006_20130601202202.jpg
(タイコは関係ないです。)
 今回のお題は・・・
001_20130601202203.jpg
「中耳炎の話」
 タイトルバックはこの間のJリーグ20周年記念試合ですが・・・。
 いつも熱心に聞いてくださるのでありがたいです。
005_20130601202202.jpg
 スライド原稿は休日や昼休みなどにシコシコ作るのですが、
実際に当院の外来での中耳手術の写真や鼓膜所見の他に
足らないものはインターネットで具合のいい画像をピックアップして
パワポで作っています。
 「急性中耳炎」「起炎菌」などとキーワードを入れて
画像をググると様々な画像が出てきます。
 いろいろ検索していると鼓膜の写真やイラストなどの中こんな画像がヒットしました。
PA030030_ks_20130601202200.jpg
 あっ、これオレじゃん。
 これはワタシ「グラ」と耳鼻科の「エハラ」先生と
ナースの「ヤ」ちゃんで作ってるユニット。
 バンド名は3人の頭文字をとって「OMA」なのですが、
「OMA」とは「Otitis Media Acuta」
ラテン語で「急性中耳炎」という意味でもあるのだ。
 せっかくですのでスライドに入れました。(笑)
 008_20130601202201.jpg
 この画像の出典はこのブログ「ロックな耳鼻科」と思われますが、
一般の人が「急性中耳炎」を検索してこれ出てきたら
なんじゃこら、と思うだろうなあ。
 まあ、そんなわけで子供の急性中耳炎について
まだ教科書にも載っていない最新の知見を交えて
1時間ほどお話させていただきました。
009_20130601202201.jpg
 こういった内容の講演、もしご希望の方がいらっしゃいましたら、
保育園でも公民館でも出張いたしますので
当ブログまでお気軽にご相談ください。
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1件のコメント
2013.05.08

フランスからのご質問、続編

先生 お忙しいところ何度も連絡してしまいすみません。
先生に前回娘の診断が耳管狭窄症であったとお伝した
ココのママです。
(フランス語でcatarrhe tubaire を辞書で調べたら
 耳管カタルとなっていました。これは耳管狭窄症
ということでよいのでしょうか?こちらの先生の説明では、ORLテストは完璧 全く問題なし。ただ右耳に
少々の耳管カタルがあるので耳抜きが上手にできていない。そのさい私の鼻をつまんでごくんと唾液を飲ませ、「こんな感じ^^」と言われ納得しました。ひんぱんに鼻をかみ清潔にすることで改善するでしょう)とのことでした。
先生にお伝えしたように、点鼻スプレーを2ヶ月
しようするとのことでしたが、ここで相談があります。
娘は前回耳の痛みを訴えてから、ここ3週間ほど
鼻水も全くでていなく、本人曰く耳痛も耳鳴りもなくいたって元気です。幼稚園に通いだして風邪のたびにこちらのお医者様には抗生物質と点媚薬が処方されていました。
先生の過去の記事を読ませていただくと、今まで抗生物質を呑む必要がなかったんではないのか・・・と少々後悔してしまいます。
そのせいか今回の点媚薬にも手がでません。
今いたって元気でもともと鼻炎もちでもない娘に
点媚薬は必要ですか?耳管狭窄症は自然治癒ということはないですか?
お忙しいところたびたびの連絡すみません。
何かアドバイスいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
********************

 遥かおフランスのお子様の耳と我が家のパソコンを瞬時につなぐインターネット。
 かのマルコ・ポーロがこの状況を見たら何とおっしゃるか。
 そんなことは、おいといて。
 ①点鼻薬は2カ月必要か
 ②抗生剤は必要であったか

 の2点ですね。
それから、その前に
 ③鼻をかむことについて
 のご質問もありました。
 まず、「点鼻薬」ですが、どのような点鼻薬を使ってるのかが
ちょっと不明です。
 ところで質問者の「点鼻薬」は
誤変換(?)により何やらアヤシイ「テンビヤク」になっており
ちょっとドキドキしちゃいますが、
通常の点鼻薬としてお答えします。
 
 点鼻薬については過去にもこのブログで何回かとりあげています。
いまどきの点鼻薬
花粉症の市販薬(点鼻薬編)
点鼻薬にご用心
 これは、花粉症患者さんのみならず、
薬剤師さん必読です。
(そんなことよく知ってる、という薬剤師さんには失礼しました、
でもお医者さんでも意外と知らない人は多いぞ)
 この場合、点鼻薬は鼻腔というより、その奥の上咽頭にある
耳管開口部付近の炎症をとってやろうちゅうのが目的でしょうね。
 多分、抗アレルギー剤の点鼻薬かステロイドの点鼻薬でしょう。
 また、アデノイド増殖症に対して点鼻ステロイドが有効、
とする報告もあります。
 血管収縮剤で無ければ続けてみていいのでは、と思います。
 抗アレルギー剤にしろステロイド剤にしろ
点鼻薬は「続けること」が重要なので。
 ただし、風邪をひいて膿性の鼻汁がある時には、
ステロイドはかえって悪化させることがありますのでやめときましょう。
 ②抗生剤は必要であったか
 については、さらに分かりませんね。
 急性中耳炎で化膿が強い場合には抗生剤を様々なレベルで使いますが、
その決め手は「鼓膜所見」が多くの比重を占めていて
痛みや熱が無くても使用する場合もありますし、
逆に発熱や耳痛があっても使わない事もあります。
 各国にガイドラインがありますが、
ちなみにオランダのガイドラインは世界一きびしく、
かなりの中耳炎でも抗生物質を使わないようになっているそうです。
 ③鼻をかむことについて
 鼻をかむことは、鼻腔をよい状態に保つために重要で
正しい擤鼻(こうび、と読みます。ハナをかむことです。)は
中耳炎や副鼻腔炎を予防します。
 ただし、こいハナを強くかみすぎると
耳管から中耳へ鼻腔の細菌を送り込んで
急性中耳炎の直接の原因になります。
 繰り返しかむ、そっとかむ、ハナがたまったらかみたくなる、
という習慣を早く身につけることが重要です。
 ちなみに最初にあった「カタル」というのは
粘膜が炎症を起こして水分が分泌される状態で
「耳管カタル」「中耳カタル」の他、
アレルギー性結膜炎の一種である「春季カタル」、
水様性下痢の「大腸カタル」などの言葉がありますが
古い医学用語で今は一般的には使われません。
 中東の産油国で「ドーハの悲劇」で有名な
カタールとはもちろん関係ありません。
(ラモスーーーー。)
 日本も暖かくなってきて、
子供さんの中耳炎もだいぶ減りました。
 フランスは日本より寒いんでしょうか。
 これからはシーズン的に中耳炎が良くなるチャンスですね。
 新婚旅行の時にパリに1泊しただけなので、
またそのうち行ってみたいです。
 ル・マン24時間レース観てみたいなあ。
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1件のコメント
2013.04.29

何故、中耳炎になりやすいのか?


はじめまして。息子が度々中耳炎になるので少しでも詳しく調べようと思っていたら、
先生のブログにたどりつきました。
薬のことなど、とても分かりやすく、母として、本当に勉強になります。
本題は、1才3ヶ月の息子が半年の間に5回も中耳炎を繰り返すのですが、
何故中耳炎になりやすいのでしょうか?
中耳炎にならないように予防する方法はないでしょうか?
毎回、中耳炎と診断されて、完治したので、通院しなくても良いですと言われるまで通っているのにまた、二週間くらいの間で通院しなくてはいけなくなるという繰り返しで、心配になります。
年子の姉は2才ですが、いまだに中耳炎になったことはないので、
姉のように少しでも強くなってくれればと願うばかりです。
先生のご意見、よろしくお願いします。



 さて、なぜ、中耳炎は繰り返すのか?という、素朴だが、大変難解な疑問です。
 中耳炎はなる子は何回でもなるが、
ならない子は全然ならない、
この辺が問題ですね。
 では、まず中耳炎のメカニズムを考えましょう。
 中耳炎は鼻の細菌が耳管という管を通って
中耳内に侵入、そこで繁殖することにより起きます。
 その細菌は中耳炎の時に感染したもので無く、
もともと患者さんが鼻の中に「飼っていた」ものが多い。
 中耳は無菌的な場所ですが、
鼻腔は必ず何らかの細菌が住んでいます。
 風邪の病原体はウイルスですが、
風邪のウイルスによって鼻の粘膜が障害を受けると、
鼻の中にもともと住んでいた菌が増殖を始め
いわゆる青っパナになります。
 そこで、普段鼻の中に「飼っている」菌が
肺炎球菌やインフルエンザ菌なのどの中耳炎をおこしやすい菌である場合、
中耳炎を起こすリスクが高いといえます。
 この菌は抗生剤で中耳からは消えても、
鼻腔からは消えないのでリスクは残ります。
 逆に、普段から抗生剤を頻繁に使っていると、
抗生剤の効きにくい、いわゆる「耐性菌」が鼻の中に
常在するようになるため、中耳炎が治りにくくなります。
 風邪の時に「中耳炎になると困るから」と抗生剤を用いるのは
かえって中耳炎を悪化させる要因です。
 抗生剤で中耳炎は「治療」できますが「予防」することはできません。
 また、中耳に菌が入りやすい、中耳に入った菌が排泄されにくい条件として、
鼻の慢性の炎症があります。
 副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の存在は、
反復性中耳炎の最も重要な因子です。
 1歳、2歳ではまだ副鼻腔そのものができてないので
真の意味での副鼻腔炎はありませんが、
ハナが出なくてもセキやタンが続く場合は
鼻腔粘膜の繊毛運動が阻害されている場合が多く、
副鼻腔炎に準じた扱いが必要です。
 また、鼻が少しでも出ると中耳炎を繰り返していた子供が、
ある時を境に中耳炎を起こさなくなるという事もあります。
 中耳にはある程度「自浄作用」があって
多少のばい菌の侵入は洗い流して処理してくれます。
 例えば風邪の時鼻を強く噛みすぎて
耳がブチブチっとなった経験はありませんか。
 でも、たいがいはそのまま、何も起こらず治ります。
 ところが中耳炎のあとは、中耳の粘膜がまだむくんでいて
侵入した外敵を排除する働きがにぶっています。
 中耳炎は完全に治っても
しばらくは、またなりやすい状態が残る、という事です。
 だから、お母さん方には中耳炎治った直後は、
少々のハナ風邪でも受診してください、とお話しています。
 反復性中耳炎でチューブ留置の効果があるのは
チューブによって耳管機能が改善し、
中耳の粘膜が機能をを回復する時間が稼げるという事です。
 そこで一般的には反復性中耳炎の危険因子として
①1歳前での初回中耳炎
②集団保育
③母乳栄養が無いか不十分
④上に兄弟あり
⑤おしゃぶりを使っている
 などがあげられますが、
⑥両親にアレルギー性鼻炎の体質が強い
⑦風邪の時に抗生物質を多用していた
 なども考慮すべき因子でしょう。
 いずれにせよ、中耳炎はまず、「発見」してあげて、
キチンと「治癒」させることが重要です。
 何回なっても、そのつど最後まで治っていれば
難聴が残ることはありません。
 繰り返し申し上げますが母親は一番の「主治医」ですので。
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2013.04.19

中耳炎の痛み

********************
始めまして。****と申します。大変ずうずうしいご連絡申し訳ありません。。中耳炎について情報収集していましたら先生のブログにたどり着きました。何かご意見頂けたら嬉しいです。現在フランスに在住で去年の9月から
娘が幼稚園に通いだし(現在3才3ヶ月です。)冬の間中風をひいていました。そのたびに黄緑色をした鼻水を
出していて現在までに4回中耳炎にかかってしまいました。お医者様からは毎回抗生物質と痛み止めを処方して
頂き翌日には耳の痛みもひいていたようです。
4月の頭にまた黄色い鼻水を出し耳が痛いというので
いつもと同じようにお薬を処方してもらいすぐに元気になりました。その後風邪もすっかりよくなり2週間ほど過ぎたところ、おとといから突然耳をすごく痛がりまた先生に診てもらうと「まだ中耳炎が残っている」とのことで耳鼻科の紹介状を渡されました。ところが診察
の予約が取れたのが2週間後で3日経っても耳を痛がる
娘が心配でなりません。。。こちらの病院は予約が取れるまで1ヶ月待つということも普通です。海外の病院とということで状況が詳しく分かり辛いというのも心配です。耳垂れなどは一切でていません。鼻水もでていなく
元気な状況で今まで以上に耳を痛がっているのは、急性中耳炎の悪化でしょうか?お忙しいところ本当にすみません。。よろしくお願いいたします。

********************
 ぬわんと遥かフランスからご質問いただきました。
 フランスと日本では大きく医療体制が違うので
実際よくわからないところもありますね。
 ワタシの知ってる範囲では一般に海外では
いわゆる「家庭医」が何でも診てその判断で専門医に紹介するような
システムになってるケースが多いようです。
 だから、内科・小児科といっても日本と違って
キチンと子供の鼓膜がみられるトレーニングを受けていると聞いています。
 「反復性中耳炎」は全世界的に今大きな問題ですので、
フランスでもそういった例が増えているのかなあと思います。
 さて、ご質問の「耳痛」についてです。
 急性中耳炎の主症状である耳の痛みは、
どこから来るのでしょう。
 中耳炎の痛みは中耳の痛みでは無く、鼓膜の痛みです。
 鼓膜はその性質上、外傷を受けると困るので
何かが耳に入った時に素早く逃げるように痛みの神経が集中しています。
 眼球と同じく、接触による痛みにきわめて敏感な部位です。
 中耳炎で中耳に膿がたまり鼓膜が押されて膨隆すると
激しい痛みに見舞われます。
 逆に鼓膜の腫れが限界に達し、耳だれが出た場合には
痛みや発熱は無くなるわけです。
鼓膜切開と同じことです。
 ただ、ホントに激しい痛みは3日も4日も続くことはありません。
 鼓膜は「腫れてくる時」が痛いので
「腫れきって」しまえば、断続的に鈍い痛みはありますが、
泣き叫ぶような激痛は無いものです。
 ただし、横になったりすると
重力の関係で痛みが増加することはあります。
 そんなわけで、耳が痛いうちは中耳炎は治ってないのはもちろんですが
痛みが取れたのは治ったことではないので要注意。
 ご質問の方は3歳なので
ある程度痛みなどの表現ができるので
滲出液の貯留で痛みを訴えていると思いますが、
痛みの程度を良く訊いてみることが必要です。
 激痛で無ければ2週間後の専門医でもよろしいと思いますし、
素人考えで抗生物質を飲ませたり、はかえって状態を治りにくくする恐れがあります。
 もし、痛みが激痛であればとりあえず「痛み止め」が有効です。
 アセトアミノフェンなどの成分を含んだ「消炎鎮痛剤」を使いますが、
なければいわゆる「頭痛薬」で緊急的にはオッケーです。
 ただ、その場合は中耳炎が「Hot」の状態ですので、
できれば早めに家庭医に診てもらった方がいいかもしれません。
 それにしても2週間先、1カ月待ちも普通ですか・・・・。
 休日でも夜中でも耳が痛ければ専門医のオグラセンセイに
電話がつながっちゃう日本の医療制度はたいしたもんだなあ。
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2件のコメント
2013.03.31

臨時休診のお知らせ

 すでに以前から院内には掲示し、
来院された方にはご説明していますが・・・
 明日、4月1日月曜日は休診になります。
 私用で申し訳ありませんが妻と娘の入学式に行ってまいります。
 娘を一人暮らしさせるのは心配だが、
まあ、しかたが無い。
 お兄ちゃんは受験勉強好きになったのか、
もう1年勉強するらしい・・・・。

 ともかくいろいろご迷惑おかけしますが
ご了承ください。
 あの、この記事エイプリルフールじゃないですから、
念のため。
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コメントはまだありません
2013.03.25

小児急性中耳炎における抗生剤について

 今日は、こんなご質問です。



先生、こんばんは。
中耳炎を調べていてこのブログにたどり着きました。
三歳男児(まだ幼稚園へは通っていません、この4月から通園予定です。上に五歳の幼稚園児の兄がいます。)について質問させてください。
今までに4回鼓膜切開(左耳)しています。
3月頭に風邪から鼻水が長引き、発熱と左耳の耳だれで中耳炎になっていました(約10ヶ月ぶりです)。
メイアクトとビオフェルミンの混合(1日3回)とメチスタDS33.3とプランルカスト(朝晩2回)を処方され、一昨日受診すると右耳は治っていましたが左耳はまだ治っていませんでした。
今回は、前回鼻汁培養でブランハメラが検出されました。
薬は、ワイドシリンとビオフェルミンの混合(1日3回)、オーグメンチン配合錠250RSと白糖の混合(朝晩2回)、プランルカストとメチスタDS33.3(朝晩2回)が処方されました。
が、先生のブログを読ませていただくとブランハメラにワイドシリンは効かないのでは?と思いますし、以前別の耳鼻咽喉科へ行った時にワイドシリンが処方され下痢しているので飲ませたくないのもあります(下痢については明日、病院に電話して伝えようと思っています)。
そこで質問なのですが
1.ワイドシリンとオーグメンチン配合錠250RSといったペニシリン系の薬を同時に処方することは、普通にあるのでしょうか?
またブランハメラにオーグメンチン配合錠250RSは有効でしょうか?
そして有効であるならオーグメンチン配合錠250RSだけ飲んでも中耳炎には効果があるのでしょうか?
2.去年5月に中耳炎(左耳)になった際に抗生剤を飲んでも完治に至らず、チューブも検討しようか…との話しになり、薬を全く飲ませずに、約2週間後に再診した際は、なぜか治っていました。
なので、今回も自然に治るのでは…と期待したりしています。
中耳炎が自然に治ることは頻繁にありえますか?
自己の免疫力か細菌に勝ったということになるのでしょうか?
成長と共に体が大きくなり体力がつけば、中耳炎も起こさなくなるのでしょうか?
いろいろ質問してすみません。
深く悩んでいて今に至ります…


 うーん、今回の質問はなかなか興味深いですね。
 まず、最初に耐性菌の話をします。
 ペニシリンやセフェム系の抗生物質はその構造から
βラクタム系と総称されます。
 βラクタム環という化学構造が基本骨格になってるためです。
 1980年代になり、このβラクタム環を破壊する
「βラクタマーゼ」という酵素を産生する細菌が登場し、
薬の効かない耐性菌として問題になりました。
 そこで、高域ペニシリンにβラクタマーゼをブロックする物質を組み合わせて
作られた薬が「オーグメンチン」です。
 耐性菌のさらなる増加によって2000年代に入って
小児の中耳炎に特化した薬「クラバモックス」が開発されましたが、
これも成分はオーグメンチンと同じ
アオモキシシリン(ペニシリン)とクラブラン酸(βラクタマーゼ阻害剤)
の合剤です。
 そののち、インフルエンザ菌や肺炎球菌は
βラクタマーゼとは別のメカニズムで薬剤に対する抵抗性を獲得していきました。
 なんとなく、ミサイルとミサイル防衛システムの軍拡競争みたいです。
 ただし、ブランハメラは昔ながらの(?)
βラクタマーゼ1本槍がほぼ100%なので、
ペニシリン単独では効かないがβラクタマーゼ阻害剤があれば効く、
というところです。
 では、質問者の主治医の処方はおかしいのか?
という点です。
 ここで、注目すべきは
ペニシリンと、βラクタマーゼ阻害剤の配合比率です。
 1985年に発売されたオーグメンチンでは
ペニシリンとクラブラン酸の配合比が2:1、
しかし2006年に発売されたクラバモックスは
その比が14:1なのです。
 以前に比べて市中の菌の耐性化が進んだ結果、
中耳炎の難治例にはそれまで体重1kg当たり30mg程度で
処方されていたペニシリンをその倍量以上での投与が推奨されています。
 クラバモックスではペニシリンの力価は
体重1kg当たり90mgになっています。
 そうです、この先生はオーグメンチンで足らないペニシリンの力価を
単剤のペニシリンで補おうとしたのでしょう。
 かなり「オタク」な処方と言えよう。
 ここは、クラバモックスを出しちゃえば済む話なのだが、
そうしないのは何かあるんですかね。
 クラバモックスは独特の飲みにくさがあるので、
それを回避するため、こんな手の込んだことしたのか。
 しかし、この処方は一般的ではないので、
少なくとも薬剤師さんはその意味を説明すべきですね
 しかし、この処方、保険とおるんですかねー。
 審査の先生がオーグメンチンと、クラバモックスの
成分だけでなく配合量も知らないと・・・。
 1番目の質問に対してはこんなとこです。
 2番目に関しては・・・・
 もちろん病気が治るのは人間の自然治癒力で、
ほっといて治ることは、少なからずあります。
 が、ほっといて悪化することもさらに多くありますので、
よく経過を見た方がいいでしょうね。
 成長とともに中耳炎は起こしにくくなるのは事実ですが、
保育園に行くようになると中耳炎をおこしやすくなることも
また事実です。
 そんなわけで、お大事に。
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2013.02.21

ステロイド、セレスタミンに対する質問

 
 先日、またコメント欄にご質問いただきました。
 一般閲覧不可なので、転載はしませんが、
5歳のお子さん(アトピーあり、喘息でキプレス、キュバール使用中、入院歴あり)が
副鼻腔炎の加療中であったと。
 最初3カ月はマクロライド少量長期療法していたが
1月の風邪をきっかけに悪化、
その後家族にコメントなくセレスタミンシロップが
処方に追加され体重増加、顔がパンパンになったとのことで、
ステロイドの使用がわかり中止したという経緯です。
 コメントの方はステロイドの使用で、
心配になったとのことです。
 うーん、こりゃ、難しいですね。
 いろいろ問題にする点もありますが、
今回はステロイドとセレスタミンの話題で行きましょう。
 一般にステロイド剤というと副腎皮質ステロイドの事なので、
それに限った話をします。
(ドーピングなどで問題になるアナボリック・ステロイドは関係ありません。)
 副腎皮質ステロイドは副腎から分泌されるホルモンで、
誰でも体内に持っています。
 ステロイド剤は強力な抗炎症作用や免疫陽性作用を持ち、
アレルギー性疾患、膠原病、神経細胞の修復、臓器移植時等々
さまざまな疾患に使用されています。
 耳鼻科領域だと突発性難聴や顔面神経マヒの症例には
特別な事情が無い限りほほ100%使われます。
 しかし、ステロイドという薬、
これが、なかなか使い方がムズカシイ。
 ちなみに代表的なステロイドである
プレドニゾロンの添付文書における用法用量を見ると
「通常成人には1日5ミリグラムから60ミリグラムを
1回から数回に分けて内服、症状、年齢に応じて適宜増減」
とあります。
 普通は
「1回に1錠を一日3回に分けで服用」
などと書いてあるのが普通で、
せいぜいその半分とか倍量になるくらい。
 しかし、5ミリから60ミリでは10倍以上の差があるし、
実際にはもっと少ない量を隔日で飲んだり、
逆に100ミリをドーンと使う用法もある。
 こんな薬は他にはないです。
 基本的に用法はお医者さんの裁量でなんでもあり、
ただし、副作用の関係でむやみに使うわけにはいかないのだ。
 短期的には、胃腸症状、便秘あるいは下痢、食欲増進、
血圧上昇、糖尿病悪化、易感染性、
長期的には若年者の成長障害、骨粗鬆症、中心性肥満、胃潰瘍、白内障など多彩で、
中には不可逆的、重篤なものも多い。
 でも、使い方によっては、これしかない、
というくらい有効な薬なので、
ここ一番に使う事は大いにアリなのだ。
 ステロイドを上手に使う、
というのはある意味医者の技量の見せどころともいえる。
 コメントの方はお話からアレルギー体質がかなり強そうなので、
「通常兵器」では無く、ステロイドが使われたんでしょうが、
残念ながらこればっかりは第3者には使用の適不適は判定できません。
 ステロイドと聞いただけで過敏に反応する方が
たまにいらっしゃるが、それはマスコミの悪い影響ですね。
 まあ、今回ステロイドの説明が無かったのは問題かもしれませんし、
2カ月近くというのはギリギリちょっと長いかなあ、という気がします。
 ワタシだったら多分出しませんが、絶対出しちゃダメかっていうと
そうとも言えない。
 あえて難治例にお医者さんが大丈夫と考える線を
勝負をかけて狙ったのかもしれません。
 ところでセレスタミンという薬です。
 これはベタメサゾンというステロイドと
抗ヒスタミン薬の合剤です。
 ステロイドの強さをはかるのによくプレドニゾロン換算をしますが
セレスタミンのステロイド量はプレドニゾロン2.5ミリ分です。
 少ない量ですので単発的に飲むにはまず問題ありませんが
数カ月にわたると副腎抑制をきたすと言われています。
 ただ、合剤ゆえ、これをステロイドと説明しないで
処方される先生は時にいるようですが、
ワタシとしては説明すべきだ、と思います。
 今回のトラブルもここにあるかもですね。
 あるいは話したつもりになって忘れちゃったのかも。
院外処方なら薬局で説明があるはずですから院内処方だったんですかね。
 キュバールもステロイドですが、
吸入薬なので全身的にはステロイドの影響は問題ないと思います。
 同じく、最近の点鼻薬である
「アラミスト」「ナゾネックス」「エリザス」も
全身的な副作用を気にせず安心に使えるステロイドです。
 そんなわけで、ことステロイドに関しては
画一的な事がいえませんので
今回の件に関しては明確なコメントは差し控えます。
 ただし、花粉症の治療に
ステロイドの筋注をしたり、セレスタミンだけを
1か月も2カ月も飲むというのは
明らかに正しくないと思います。
 うーん、何となく答えになってねー。
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10件のコメント
2013.02.06

花粉症の注射について


 いつもブログご愛読いただきアありがとうございます。
 また、温かいコメントを頂く方にはさらに感謝です。
 さて、先日の記事に関してのコメントに
チラッと「花粉症の注射」に関する
お話がありましたので、ここで捕捉させていただきます。
 花粉症を含めたアレルギー性鼻炎に対する
ステロイド局注は大変危険ですので、
絶対おやめください。

 以前も、このブログでとりあげた事ありますが
ずいぶん前でしたね。
注射」←クリックしてご覧になれます。
 海外では重篤な感染症になった事例もあるとの事ですし、
命にかかわらないまでも筋注部位の筋肉が委縮するので、
注射部位の肉がえぐれたように陥凹することはかなり多いようです。
 脂溶性のステロイドなので、いったん注射しちゃうと数カ月続くので
途中でなんかおこった時に中止できない、
というのも困る点です。
 若年者では成長障害が、高齢者では骨粗鬆症、高血圧、糖尿病の悪化が懸念されます。
 眼圧上昇、女性の方は不正出血等々、
他にも色々な副作用があり、
もちろんガイドライン的には「禁忌」です。
 最近では、鼻粘膜にこのステロイドを注射する病院もあり、
九州で1件、近畿で数件の失明の事例があり、
耳鼻咽喉科学会の医事問題委員会からの注意喚起が出ているところです。
 花粉症の治療で、失明しちゃったのでは、
わりがあいませんね。
 くれぐれもご注意を。
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3件のコメント
2013.02.04

アレルギー性鼻炎、花粉症のトピック


 なぜか数日間、ワタシのパソコンがインターネット不通になってしまった。
 病院のパソコンやいiPadに関しては大丈夫だったので、
概ね日常生活には影響ないが、
ブログ更新が滞ってしまった。
 先週のガッツの結婚式からさかのぼること3日。
 ワタシは足利や佐野の耳鼻科や内科、小児科の先生が集まる
さる講演会で座長を仰せつかった。
 座長というのは、ま、学会の司会進行役である。
 その日のメインの特別公演は
福井大の耳鼻咽喉科の教授である藤枝先生の講演であった。
 アレルギー性鼻炎の分野では日本の権威であり
ワタシの尊敬する先生の一人である。
 開会前の打ち合わせや、終了後の懇親会で
いろいろお話させていただき光栄でした。
008_20130204142816.jpg
 全くガッツの結婚式を含め1週間で2回もスーツ着ちゃった。
(実はこの研究会の協賛で開会前に「製品紹介」をしてたのは、
結婚式を2日後に控えた添野君その人でした。
オレもガッツも普段はまじめに働いているんだよ。)
 なんてったって、この先生の講演は面白い。
 ユーモアやウイットに富み、
専門的な話を実にわかりやすくお話しされる。
 大体、ムズカシイ話を難しく話す事は誰でもできるのであって、
ムズカシイ話を簡単に説明できるのがホントに頭の良い人だと常々思っている。
 しかも、世の中には簡単な話を、
あえて難しく話すアホウどもが多くて困る。
 特に、政治家とか、お役所からの書面による連絡、通達とか。
 学校の先生にもいたなあ。
 やや、話それましたが、
その夜もいろいろ藤枝先生にタメになるお話伺いました。
 その中でニュースを2つ。
 以前「減感作療法」といわれていた、毎週アレルギーの原因物質を注射していく
いわゆる「体質改善」の方法。
 藤枝先生をはじめとした研究グループの努力によって、
注射でなく「舌下」による免疫療法が
いよいよ日の目を見そうです。
 今シーズンの花粉症には無論間に合いませんが、
ワタシも勉強してそのうちこのブログで詳細をお知らせいたします。
 9月に藤枝先生が主幹となる日本鼻科学会が開催されますので
是非詳細を聴いてこようと思っています。
 注射せずにできるなら、免疫療法の適応も
ぐっと広がるはず。
 あと、もう一つ、これは「おまけ」としておっしゃってましたが、
いろんな民間療法のうち、
これまでは「ヨーグルト」以外は効果が無い と言われてましたが、
最近の研究により「甜茶」の効果も実証されたようです。
 毎日とることにより、アレルギー性鼻炎に効果あり、とのことですが、
もちろん甜茶飲んでれば花粉症出ない、というわけにはいきませんので、
くれぐれもご用心くださいね。
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