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2013.06.11
11ヶ月児の急性中耳炎の薬について
初めまして。
小児の中耳炎について調べていた際にこちらのブログへたどり着きました。
少し前の記事だったのですが、気になったことがあったのでコメントさせて頂きます。
昨日38.3~39.2℃の熱が出た為に本日小児科を受診したところ、「恐らく中耳炎になっているから耳鼻科へ行くように。多分切開になるから」と言われ「フロモックス」と数種類の鼻水・咳用の薬(今回は必要ないと思われるので薬品名は割愛させて頂きます)が処方されました。
小児科受診後すぐに耳鼻科へ行くと膿が溜まっているとのことで即切開になり、先生から「思ったより沢山の膿が出てきた」と言われました。
昨日~今日の娘は熱でボーッとしていたものの特に不機嫌でもなく痛がっている素振りもなかったからビックリしました。
その後、耳鼻科医に小児科から処方された薬を見せたところ、「フロモックスは少し弱いから中止にして、新しくオゼックスという抗生物質を出すからこちらを他の薬と一緒に飲ませてね」と言われ、帰宅後からそのようにしております。
服用させた後にオゼックスについて気になり調べていると、「第一選択薬ではない」「他の抗生物質が効かなかった時のみ使う」という記載が多かったので、いきなりオゼックスが処方されたことに不安を覚えました。
おぐぐー先生のこちらの記事にてオゼックスなどの処方をする時は「鼓膜切開」のような外科的処置を講じる必要があるとの記載がされているのですが、鼓膜切開をするような場合にはオゼックスを処方することは一般的なのでしょうか?
それとも、やはりいくつかの抗生物質を経てから効かない場合にのみオゼックスを処方するのでしょうか?
もともと鼻水が鼻の奥に溜まりやすいようで週1で耳鼻科に通って鼻吸いと「ムコダイン・アスベリンシロップ」の処方をされている子供です。(家でも寝る前に必ず鼻吸いをしている状況です)
中耳炎になりやすい体質なのかな?っと思うのでオゼックスが効かなくなるのは困るような気がしたので、こちらにてオゼックスについて質問させて頂きました。
お忙しいとは存じますが、ご教授頂けたら幸いです。
長文失礼致しました。
えー、コメントありがとうございます。
ご質問の件ですが、毎度申しますが、
実際に患者さんを診てないのであくまで参考程度に考えてください。
小児急性中耳炎についてはたびたびブログでとりあげておりますが、
この記事も読まれてるでしょうか?
「
小児急性中耳炎のガイドラインについて」
このお子さんのスコアを考えてみましょう。
まず、熱が38.5℃以上ですので2点、
耳痛は無いので0点、
啼泣・不機嫌もなしとして0点、
鼓膜所見は診てないのでわかりませんが
鼓膜切開をして大量の膿が出たという事で
発赤4点、鼓膜膨隆8点、耳漏0点、光錐4点
とします。
これに24カ月未満の3点を追加すると
合計21点。
軽症:0~9点、中等症:10~15点、重症:16点以上なので
かなりの重症という事になります。
発熱はあるが耳の痛みや、啼泣・不機嫌などもなく
いかにも母親がみてひどい中耳炎、という印象が無くても
実は中耳炎がすごく重症だったりするわけです。
この場合、ガイドライン的には
鼓膜切開および強力な抗生剤で5日間の投与
となっています。
だから、鼓膜切開+オゼックスはこの場合
適切な治療と思われます。
ためらわず鼓膜切開をしたのは、
技術的にも自信がある先生なのでしょう。
それより、素晴らしいのは小児科の先生ですね。
所見から中耳炎を疑い、すぐ耳鼻科に紹介してくれる。
この小児科の先生の適切な判断のおかげで、
お子さんの耳は救われましたね。
どうぞお大事になさってください。
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2013.04.29
はじめまして。息子が度々中耳炎になるので少しでも詳しく調べようと思っていたら、
先生のブログにたどりつきました。
薬のことなど、とても分かりやすく、母として、本当に勉強になります。
本題は、1才3ヶ月の息子が半年の間に5回も中耳炎を繰り返すのですが、
何故中耳炎になりやすいのでしょうか?
中耳炎にならないように予防する方法はないでしょうか?
毎回、中耳炎と診断されて、完治したので、通院しなくても良いですと言われるまで通っているのにまた、二週間くらいの間で通院しなくてはいけなくなるという繰り返しで、心配になります。
年子の姉は2才ですが、いまだに中耳炎になったことはないので、
姉のように少しでも強くなってくれればと願うばかりです。
先生のご意見、よろしくお願いします。
さて、なぜ、中耳炎は繰り返すのか?という、素朴だが、大変難解な疑問です。
中耳炎はなる子は何回でもなるが、
ならない子は全然ならない、
この辺が問題ですね。
では、まず中耳炎のメカニズムを考えましょう。
中耳炎は鼻の細菌が耳管という管を通って
中耳内に侵入、そこで繁殖することにより起きます。
その細菌は中耳炎の時に感染したもので無く、
もともと患者さんが鼻の中に「飼っていた」ものが多い。
中耳は無菌的な場所ですが、
鼻腔は必ず何らかの細菌が住んでいます。
風邪の病原体はウイルスですが、
風邪のウイルスによって鼻の粘膜が障害を受けると、
鼻の中にもともと住んでいた菌が増殖を始め
いわゆる青っパナになります。
そこで、普段鼻の中に「飼っている」菌が
肺炎球菌やインフルエンザ菌なのどの中耳炎をおこしやすい菌である場合、
中耳炎を起こすリスクが高いといえます。
この菌は抗生剤で中耳からは消えても、
鼻腔からは消えないのでリスクは残ります。
逆に、普段から抗生剤を頻繁に使っていると、
抗生剤の効きにくい、いわゆる「耐性菌」が鼻の中に
常在するようになるため、中耳炎が治りにくくなります。
風邪の時に「中耳炎になると困るから」と抗生剤を用いるのは
かえって中耳炎を悪化させる要因です。
抗生剤で中耳炎は「治療」できますが「予防」することはできません。
また、中耳に菌が入りやすい、中耳に入った菌が排泄されにくい条件として、
鼻の慢性の炎症があります。
副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の存在は、
反復性中耳炎の最も重要な因子です。
1歳、2歳ではまだ副鼻腔そのものができてないので
真の意味での副鼻腔炎はありませんが、
ハナが出なくてもセキやタンが続く場合は
鼻腔粘膜の繊毛運動が阻害されている場合が多く、
副鼻腔炎に準じた扱いが必要です。
また、鼻が少しでも出ると中耳炎を繰り返していた子供が、
ある時を境に中耳炎を起こさなくなるという事もあります。
中耳にはある程度「自浄作用」があって
多少のばい菌の侵入は洗い流して処理してくれます。
例えば風邪の時鼻を強く噛みすぎて
耳がブチブチっとなった経験はありませんか。
でも、たいがいはそのまま、何も起こらず治ります。
ところが中耳炎のあとは、中耳の粘膜がまだむくんでいて
侵入した外敵を排除する働きがにぶっています。
中耳炎は完全に治っても
しばらくは、またなりやすい状態が残る、という事です。
だから、お母さん方には中耳炎治った直後は、
少々のハナ風邪でも受診してください、とお話しています。
反復性中耳炎でチューブ留置の効果があるのは
チューブによって耳管機能が改善し、
中耳の粘膜が機能をを回復する時間が稼げるという事です。
そこで一般的には反復性中耳炎の危険因子として
①1歳前での初回中耳炎
②集団保育
③母乳栄養が無いか不十分
④上に兄弟あり
⑤おしゃぶりを使っている
などがあげられますが、
⑥両親にアレルギー性鼻炎の体質が強い
⑦風邪の時に抗生物質を多用していた
なども考慮すべき因子でしょう。
いずれにせよ、中耳炎はまず、「発見」してあげて、
キチンと「治癒」させることが重要です。
何回なっても、そのつど最後まで治っていれば
難聴が残ることはありません。
繰り返し申し上げますが母親は一番の「主治医」ですので。
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2013.03.25
今日は、こんなご質問です。
先生、こんばんは。
中耳炎を調べていてこのブログにたどり着きました。
三歳男児(まだ幼稚園へは通っていません、この4月から通園予定です。上に五歳の幼稚園児の兄がいます。)について質問させてください。
今までに4回鼓膜切開(左耳)しています。
3月頭に風邪から鼻水が長引き、発熱と左耳の耳だれで中耳炎になっていました(約10ヶ月ぶりです)。
メイアクトとビオフェルミンの混合(1日3回)とメチスタDS33.3とプランルカスト(朝晩2回)を処方され、一昨日受診すると右耳は治っていましたが左耳はまだ治っていませんでした。
今回は、前回鼻汁培養でブランハメラが検出されました。
薬は、ワイドシリンとビオフェルミンの混合(1日3回)、オーグメンチン配合錠250RSと白糖の混合(朝晩2回)、プランルカストとメチスタDS33.3(朝晩2回)が処方されました。
が、先生のブログを読ませていただくとブランハメラにワイドシリンは効かないのでは?と思いますし、以前別の耳鼻咽喉科へ行った時にワイドシリンが処方され下痢しているので飲ませたくないのもあります(下痢については明日、病院に電話して伝えようと思っています)。
そこで質問なのですが
1.ワイドシリンとオーグメンチン配合錠250RSといったペニシリン系の薬を同時に処方することは、普通にあるのでしょうか?
またブランハメラにオーグメンチン配合錠250RSは有効でしょうか?
そして有効であるならオーグメンチン配合錠250RSだけ飲んでも中耳炎には効果があるのでしょうか?
2.去年5月に中耳炎(左耳)になった際に抗生剤を飲んでも完治に至らず、チューブも検討しようか…との話しになり、薬を全く飲ませずに、約2週間後に再診した際は、なぜか治っていました。
なので、今回も自然に治るのでは…と期待したりしています。
中耳炎が自然に治ることは頻繁にありえますか?
自己の免疫力か細菌に勝ったということになるのでしょうか?
成長と共に体が大きくなり体力がつけば、中耳炎も起こさなくなるのでしょうか?
いろいろ質問してすみません。
深く悩んでいて今に至ります…
うーん、今回の質問はなかなか興味深いですね。
まず、最初に耐性菌の話をします。
ペニシリンやセフェム系の抗生物質はその構造から
βラクタム系と総称されます。
βラクタム環という化学構造が基本骨格になってるためです。
1980年代になり、このβラクタム環を破壊する
「βラクタマーゼ」という酵素を産生する細菌が登場し、
薬の効かない耐性菌として問題になりました。
そこで、高域ペニシリンにβラクタマーゼをブロックする物質を組み合わせて
作られた薬が「オーグメンチン」です。
耐性菌のさらなる増加によって2000年代に入って
小児の中耳炎に特化した薬「クラバモックス」が開発されましたが、
これも成分はオーグメンチンと同じ
アオモキシシリン(ペニシリン)とクラブラン酸(βラクタマーゼ阻害剤)
の合剤です。
そののち、インフルエンザ菌や肺炎球菌は
βラクタマーゼとは別のメカニズムで薬剤に対する抵抗性を獲得していきました。
なんとなく、ミサイルとミサイル防衛システムの軍拡競争みたいです。
ただし、ブランハメラは昔ながらの(?)
βラクタマーゼ1本槍がほぼ100%なので、
ペニシリン単独では効かないがβラクタマーゼ阻害剤があれば効く、
というところです。
では、質問者の主治医の処方はおかしいのか?
という点です。
ここで、注目すべきは
ペニシリンと、βラクタマーゼ阻害剤の配合比率です。
1985年に発売されたオーグメンチンでは
ペニシリンとクラブラン酸の配合比が2:1、
しかし2006年に発売されたクラバモックスは
その比が14:1なのです。
以前に比べて市中の菌の耐性化が進んだ結果、
中耳炎の難治例にはそれまで体重1kg当たり
30mg程度で
処方されていたペニシリンをその倍量以上での投与が推奨されています。
クラバモックスではペニシリンの力価は
体重1kg当たり
90mgになっています。
そうです、この先生はオーグメンチンで足らないペニシリンの力価を
単剤のペニシリンで補おうとしたのでしょう。
かなり「オタク」な処方と言えよう。
ここは、クラバモックスを出しちゃえば済む話なのだが、
そうしないのは何かあるんですかね。
クラバモックスは独特の飲みにくさがあるので、
それを回避するため、こんな手の込んだことしたのか。
しかし、この処方は一般的ではないので、
少なくとも薬剤師さんはその意味を説明すべきですね
しかし、この処方、保険とおるんですかねー。
審査の先生がオーグメンチンと、クラバモックスの
成分だけでなく配合量も知らないと・・・。
1番目の質問に対してはこんなとこです。
2番目に関しては・・・・
もちろん病気が治るのは人間の自然治癒力で、
ほっといて治ることは、少なからずあります。
が、ほっといて悪化することもさらに多くありますので、
よく経過を見た方がいいでしょうね。
成長とともに中耳炎は起こしにくくなるのは事実ですが、
保育園に行くようになると中耳炎をおこしやすくなることも
また事実です。
そんなわけで、お大事に。
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