ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2021.04.17

ウイルスの命名

新型コロナウイルスは正式には「SARS-Ⅽov2」と呼ばれます。

これは2003年に

「SARS:Severe acute respiratory syndrome」(重症急性呼吸器症候群)

を起こしたコロナウイルス(Ⅽov)の類縁と考えられるので、

その2番目で2がついています。

新型コロナウイルス感染症は同じくCOVID-19。

これはコロナⅭorona(ⅭО)ウイルスⅤirus(VI)による病気Ⅾisease(Ⅾ)で

2019年に発見された、という意味です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでこんなメンドクサイ名前になったかというと

WHОが2015年に制定した

ヒト新興感染症に対するルールに基づきます。

それは貿易・旅行・観光・動物愛護に及ぼす無用の悪影響を極力防ぎ、

あらゆる文化・社会・国家・地域・職業集団・民族集団の

感情を害さないようにするために

特定の地名、人名、動物名、食品名、文化・集団・職業名、

および不当な恐怖をかきたてる用語は

新規の病原体、疾患名に使用しない、というものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去の例を挙げれば

・ 地名:中東呼吸器症候群(MERS),、スペイン風邪、ウエストナイル熱、エボラ出血熱
・ 人名:クロイツフェルト・ヤコブ病、シャーガス病
・ 動物や食品の種名・種類名:鳥インフルエンザ、野兎病、ベネズエラ馬脳炎、サル痘
・ 文化・集団・業界・職業的言辞:レジオネラ症

などは、今の基準ではアウトです。

ただし、過去の病名は原則、変えないみたいです。

あー、在郷軍人病も、そうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 近年はウイルスが発見された土地の名前が

つけられるのが習わしで、

エボラウイルス、マールブルグウイルス、

ウエストナイルウイルス、ジカウイルス・・・

怖いウイルスもみんな地名です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なので、今回の新型コロナウイルスも、

武漢ウイルス、武漢呼吸器症候群などと呼ばれて当然だったのですが、

先のような理由でこの名称は公式には用いられません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今でも、右寄りのヒトはネットでも

あえて武漢ウイルス、武漢肺炎などと呼んでいますが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2015年に制定されたルールなので、

2012年のMERSには「中東」と地名が入ってるのですが、

2003年のSARSは中国広東省が起源でしたが、

「広東ウイルス」や「中国呼吸器症候群」とならなかったというのは、

やはり一部の人が言ってるように

WHOは中国に忖度してるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつてスペイン風邪はパンデミックを引き起こしましたが、

この病気の起源はスペインではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に起こったのはアメリカ合衆国、

それもアメリカ陸軍内といわれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当時アメリカは第1次世界大戦に参戦したところであり、

これによってヨーロッパにこの新型インフルエンザがもたらされ

大流行に至ったとされています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当時はヨーロッパ中が戦争中であったため、

感染の状況は情報の検閲により外部に出ることはありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが、スペインは当時中立国として

戦争に参加していないため、報道の規制が無く、

スペイン国での感染者の増大が世界中に発信され、

スペイン風邪の名前で呼ばれることになってしまったのです。

なんということだ。

本当はアメリカ風邪なのに、とんだ濡れ衣です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15世紀の新興感染症である梅毒は

コロンブスのアメリカ大陸発見によって

ヨーロッパにもたらされた病気ですが、

病気が広まったのはやはり戦争でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当時コロンブス隊の水夫が帰国後、

フランス軍に参加し、ナポリ攻略戦に参加したそうです。

ここでフランス軍にこの病気が広まり、

フランス軍はこの病気を「ナポリ病」と呼び、

ナポリの人々は「フランス病」と呼んだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また梅毒がヨーロッパ中に広まったとき、

ポーランドの人はこれを「ロシア病」

ロシア人は「ポーランド病」と呼び、

イスラム教徒であるトルコ人は「キリスト病」と呼んだらしい。

なんか、わかるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スペイン風邪は、もはや時効なのかとも思いますが、

アメリカにもロッキー山紅斑熱というのがあります。

わが国も日本脳炎というのがありますねー。

診たことは無いけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実はセンダイウイルス、トーキョーウイルス

というのも存在するのですが、

これはヒトに深刻な病気を起こすウイルスではなく、

むしろ発見地、発見者の誇りを持って名づけられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回の新型コロナウイルスも

流行が落ち着いて脅威で無くなったら、

やっぱ武漢ウイルスでもいいんじゃないかなあ、

いつまでも新型じゃないんだし、

そのほうが断然分かりやすい。

とは、思いますが、今の中国が相当にヤバい国になっちまってるので

ちょっとムリかな。

 

 

 

 

 

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