ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2019.12.20

抗生剤の使用目的

いったい日本の医者のうち、どれくらいの割合が

抗生物質を使うとき、対象となる原因菌の種類を想定してるんでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他科のことは知らないが、耳鼻科領域では

想定される菌はある程度限られています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多くの人が誤解していることだが、

細菌感染とは、誰かにもらった菌が発病することよりも、

普段自分が「飼っている」菌が、

何らかの機転で感染症を起こすことの方が多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たとえば、傷が化膿した、などという場合は、

皮膚の表面にもともといる菌が繁殖するのだから、

想定される菌は「黄色ブドウ球菌」が最も多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中耳炎や副鼻腔炎は鼻腔内にいる菌が

無菌的な中耳腔や、副鼻腔に侵入し、増殖して起こるので、

鼻の中にいる「肺炎球菌」「インフルエンザ菌」「モラクセラ」

のどれかであることがほとんどなのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口腔内はもともと菌がいる環境なので、

そこで増殖するのは侵襲性の強い「溶連菌」が多いのだが、

「溶連菌」にしても咽頭、鼻腔、皮膚に常在することがある細菌です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扁桃周囲膿瘍や急性副鼻腔炎において、

しばしば「嫌気性菌」が起炎菌になることがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぺプトストレプトコッカス、フソバクテリウム、バクテロイデスなど、

普段はお目にかかることのあまりない菌が、

嫌気培養すると起炎菌として検出される。

通常の検査では検出されないので、

嫌気性菌を疑って検査する必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつらは、どっから来たのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんてことはない、これらもワレワレが普段「飼ってる」菌なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

細菌はウイルスと違い細胞外でも自活できるので、

ワレワレは体の内外のいたるところにそいつらを飼っています。

だが、微生物というものはすべからく1匹や2匹では何もできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一定の条件のもとに急激に、大量に増殖する場合に、

宿主の身体になにか危害を加えることがあり、

それを「感染症」というのわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペスト菌やコレラ菌は病原性、侵襲性が高く、

少数でも侵入したら要注意だが、

ワレワレが日常相手にする細菌感染は

そういった「顔なじみ」の菌によって起こる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、その知ってる菌のうち、

今回はどいつが悪さしてるかを推定し、

抗菌剤を選択することは、感染の起きている場所と症状を考えれば、

それほど難しいことではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たとえば、鼻腔に常在し、急性中耳炎や副鼻腔炎、

ときに気管支炎、肺炎の原因菌となる頻度の高い肺炎球菌、

これらは現時点では7~8割がマクロライド系抗生物質に対して、

耐性です。

つまり、効かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風邪のたびにクラリスやエリスロマイシンを出す内科、小児科医は、

そのこと知ってるんでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風邪はウイルスなのでクラリスやエリスロマイシンは全く効かないばかりか、

そういった抗生剤の投与により、

それに対して耐性を持つ肺炎球菌が一層元気になって、

中耳炎、副鼻腔炎などの二次感染を起こしやすくなる、

ということを考えたことがあるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに、そういった無意味な抗生剤を出すことが、

世の中の薬剤耐性菌を増やすことにつながるということを

わかってるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワレワレの身体にはいろんな菌が常在していて、

それらはお互いけん制し合い、また体の免疫機構もあるので、

特定の菌が爆発的に増えることは無いが、

抗生物質でライバルの菌が死んでしまえば、

生き残った菌はのびのびと増殖することができ、

二次感染を引き起こすのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当院ではなるべく細菌の培養検査を行い、

薬歴を見、また、兄弟から分離された菌検査の内容を参考にして

原因菌にアタリをつけて、抗生剤を処方します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たぶんこの子の中耳炎は肺炎球菌だろうなあ、とか、

先週まで、この薬を飲んでいたのでモラクセラが出そうだ、とか。

ずっと〇〇小児科にかかっていたから

多分出るのはPRSPかBLNARだろう、とか・・・・・。(^_^;)

かなり、当たりますよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで、今日も鼓膜切開したり、

チューブ入れたりの年末なのであった。

 

 

 

 

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