ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2019.10.07

メマイの診断

病気の診断法には

視診、打診、聴診、問診、血液検査、画像検査、組織診など

様々な手段があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この中で耳鼻咽喉科は内視鏡を含めた視診による診断が、

もっとも多く用いられる診療科です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日常的に多く遭遇する

外耳炎、中耳炎、アレルギー性鼻炎、咽頭炎、扁桃炎、

などはもちろん、

舌がん、咽頭がん、喉頭がんなどの悪性腫瘍についても

確定診断は組織診断ですが、ぱっと見で大体わかります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その中で、唯一の例外といってもいいのが

「メマイ」関連の疾患で、

これは「問診」が最も大きな比重を占めます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メマイを起こす疾患のなかには

内耳に原因がある耳性メマイはかなりの比率を占め、

聴力検査や、画像診断も行いますが、

診断のよりどころは「問診」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話を訊けば、多くの場合はそれだけでほぼ診断がつくことが多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、その話の訊き方がムズカシイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こちらが最初に知りたいことは、まず、

いつ、何をしている時にメマイがおきたか、

それはどれくらい続いたか、

ということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 患者さんは自分の困ってることや、心配なことをまず訴えます。

なかなか、こちらの質問にストレートに答えてくれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「最初はいつどんな時にめまいがおきましたか」、と尋ねても

「昨日メマイがひどいので夜になって救急車を呼んで日赤で点滴をしてもらいました」

などという答えです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 救急車を呼んだとか、病院に行ったとか、点滴をした、

などということは診断にはちっとも役に立たないのですが、

患者さんにとっては重大なことなので、まずそこから話したいわけです。

ともかく、自分が救急車が必要なほど、

また点滴が必要なほど重症なメマイであった、

ということをわかってほしい、という心理が働くのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのあと、耳鳴や難聴などの耳の症状はあったのか、

メマイは回転性か浮動性か、

初めてのメマイか、以前にもあったのか、

意識消失や、手足のしびれ麻痺などはあったのか、

などなど訊いていくわけですが、

これもなかなかスムーズにいきません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一番困るのは、先に書いたように

質問したことと関係ない答えをされることです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なので、Yes,Noで答えるフローチャート式の問診票ならばうまくいくのでは、

と考えたこともありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相手が紙ならば患者さんはYesかNoかの2択しかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがこれも実際には困難です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たとえば、良性発作性頭位めまい、という

大変頻度の高いメマイの病気があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 内耳の平衡機能のセンサーである

耳石の異常によって起こるこのメマイの特徴は、

寝たり起きたり頭に位置を変えたときに起きる回転性めまい発作が典型的で、

その持続は数秒から数十秒です。

5分も10分も続くことはありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なので、メマイはすぐ止まりますか、

もしくは、そのメマイの持続は5分以内ですか、

という質問を設けても正しい回答が得られない可能性が高い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というのは、一回の回転性メマイ発作の持続時間は数十秒でも、

また頭の位置が動くと同じようなメマイがおきます。

このような場合、患者さんは数十秒でメマイが止った、

とは言わない場合が多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかも、メマイには余韻がありますから、

随伴症状としての悪心や嘔気は持続しますので、

患者さんの訴えとしては半日メマイが続いた、

というものになる場合もあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ともかく最初は、自分がどうかなってしまったんじゃないか、

というようなパニックに陥る方も多いので、

実際には数十秒のメマイ発作の反復でも、

いつになっても止まらない、という認識になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なので、こちらは患者さんの見た目、態度や話し方などから、

患者さんの性格や心理状態を推測して、

それにあった訊き方をしないと、

なかなか真実にたどり着くことができないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なので、問診票ではもちろん、

AIでもこういう問診はムズカシイだろうなあ、と思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 個人的には、謎解き探偵みたいなので、

メマイの初診患者さんを診るのはそれほど嫌いではないんですが、

忙しいときには、マイッタな、と思うこともありますね。

中耳炎や扁桃炎ならばパッと見て診断がつくので、

この時間的ギャップが・・・。

いっそ、メマイ患者さんばっかりのメマイ専門外来ならば、

ストレスはないような気がしますが・・・。

 

 

 

 

 

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