ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2019.05.06

アメリカばかりがなぜ赤い~遠藤ミチロウ氏の死を悼む

 5年前のゴールデンウィークに飛び込んできたのは

58歳で亡くなった忌野清志郎氏の訃報であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、また、今年の同じ時期、

日本の偉大なパンクロッカー、遠藤ミチロウ氏の死亡のニュースが、

新元号令和のスタートに相前後して伝えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1950年11月生まれ、というから享年68歳。

1980年ザ・スターリンを結成。

その先鋭的なパンクサウンドと、過激で暴力的なステージパフォーマンスで、

たちまち日本全国で賞賛と非難の嵐を巻き起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当時ワタシは、大学2年生、数年前にパンクロックの洗礼を受け、

パンク~ニューウェーブに夢中で、バンドを結成し、

四六時中ロックのことばかり考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実は、ザ・スターリンの典型的なパンクロックのスタイルは、

その時、すでに若干色あせた、時代の先端からはちょっと遅れた音楽であった。

セックス・ピストルズはとっくに過去のもになり、

ザ・クラッシュはその半年前に名盤「ロンドン・コーリング」を発表し、

ストレートな古典的パンクから、

レゲエ、ダブをとりこんだ方向にその音楽性を広げていた。

ところが、そんなザ・スターリンのデビューアルバム「STOP☆JAP」を聴いて

その完成度の高さに愕然として、ワタシはあっという間に虜になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロンドン・パンクのスタイルだけを単に模倣して

日本語の歌詞をのせたグループもあったが、

そのあまりの歌詞の幼稚さに、どうも入りこめないワタシがいた。

もともと、洋楽至上主義のワタシとしては、ロックは英語という概念があり、

例えば日本のパンクバンドとしてはそこそこ成功した「アナーキー」などは、

あー、コイツら、ホント、アタマ悪そう、という感じで、

聴いててハズカシイ歌詞も多く、

とても聴きこんだり、演奏したりする気は起きなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところが「ザ・スターリン」は、違った。

サウンドの切れ味、レコーディングの音圧のかけ方もスバラシイが、

ともかく、遠藤ミチロウの書く歌詞の切り口、

単語の選び方、カッコ良さは、どれも新鮮で

こんな書き方があったのか、という衝撃であった。

まさに、詩人、文学といっても良い「作品」であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠藤ミチロウ氏は、実は福島県一番の進学校、

福島県立福島高校から国立山形大学人文学部卒業、

アタマ、良いのである。

そして、文学センスは抜群。

この辺、ワタシがやはり大好きだったバンド「INU」のことにも重なる。

1981年の「INU」のデビューアルバム「メシ喰うな!」は

ポスト・パンク的なサウンドで、チョーハマったが、歌詞もカッコよかった。

リーダーの町田町蔵は、のちに町田康として芥川賞作家となる。

歌詞を書く、ということは音楽的才能ではなく、文学のセンスが必要だということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワタシの一番の思い出といえば「ザ・スターリン」の前座である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのあまりの暴力的、破壊的なステージから、

各地のライブ会場の多くは彼らには会場を貸さない、

ということになったザ・スターリンだが、

なんと、群馬大学荒巻キャンパスの学園祭でのコンサートが実現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らを呼んだのは教育学部の学生、コイトくんという男で、

パンク、ニューウェイブの大ファン。

自分では演奏しないが、その前年にはやはり群馬大の学園祭に

東京のパンク~ニューウェイブのバンドをいくつか呼んで、ライブを行った。

アンダーマーケット・ギグと銘打ったそのイベントは

ゼルダなどの有名バンドも出演し盛況であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コイトくんは、ワタシが当時やっていたバンド

「LANDSALE」の大ファンでもあり、良くライブに来てくれていた。

その彼から、相談を受けたのである。

今度の学園祭でザ・スターリンを呼びたいんだけど、

その前座を「LANDSALE」でやってくれないか、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「スターリン、来るのか?」

「来る、10万円で来てくれる。

ただし、他のバンドはブッキングできないので

オグラくんとこのバンドにお願いしたい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 伝説のバンド、ザ・スターリンの前座か・・・・、

正直かなりビビったけど、けっきょく受けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、学園祭の当日。

荒巻キャンパスは前橋駅からバスで20分ほど。

前橋教習所前停留所で降りるが、その日そのバス停は、

バスが停まるたびにつぎつぎ吐き出されてくる

異様な風体のヒトビトで普段とは全く違う風景になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その革ジャン、ハナピアス、カラフルなトンガリヘアー、の一群は

まっすぐ群馬大正門に向かい、学生ホールに吸い込まれていく。

限られた場所でしたコンサートを行えないザ・スターリンを見に、

日本各地から、過激なパンクスが集合したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うわー。怖え~~~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開演時間。

オールスタンディングの学生ホールは、パンクスたちで満員。

照明が落ちるとともに、スターリン、スターリンの大合唱。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに出てくのか・・・・・・(@_@。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えいやっと、ばかりにステージに飛び込んだワレワレ。

わーっという歓声は、なんだスターリンじゃねねのかよ、というどよめきに変わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 演奏を始めると、会場全体がうねるようだ。

すると真っ暗な中に、パッとライターの火が見えた。

とその次の瞬間、放物線を描いてステージに投げ込まれた物体が、

激しい音とともに炸裂、火薬のニオイがハナを衝く。

爆竹である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると、それが合図のように会場のあちこちで火がともり、

次々に爆竹が投げ込まれる。

アブナイ、アブナイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、もっとヤバいものがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あそこで火がついたなと思ったら、こんどは放物線ではなく

ヒューという音とともにライナーでこちらに飛んでくる。

それが足元で、爆発。

ロケット花火である。

爆竹なら避けようがあるが、これがまっすぐ飛んで来たら避けようがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでも何とか、予定の5曲を演奏し、

もう最後は逃げるようにステージ裏に避難した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楽屋では出番を待つ遠藤ミチロウ氏が、うずくまって

ブツブツなにやら独り言を言っている。

実に、物静かでクライ感じ。

何か、精神を集中しているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バンドが演奏はじめてから、遅れてステージに向かったミチロウ氏は、

大声で、観客をあおると、いきなりスピーカーにのりかかって、

客席に水をぶちまけ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきまでのおとなしい姿とは、全く別人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、プロのロッカーだ、スゲエ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後ワレワレは、ステージに押し寄せる観客を必死に抑え、

PAなどの機材を守る側になったので、

ちゃんと曲を聴けたわけでは無いが、ともかくすごいステージでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後ほどなく、ザ・スターリンは解散してしまたわけだが、

あの日のライブは今でも夢のような経験です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠藤ミチロウ氏のご冥福をお祈り申し上げます。

 

https://youtu.be/CGyDr39VpTA

 

 

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