ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2018.04.17

朝ドラ「半分、青い。」はムンプス難聴のお話

NHK朝の連ドラ「半分、青い。」はムンプス難聴の女の子がヒロイン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムンプスはおたふくかぜのことで、

おたふくかぜではごく稀ですが難聴が生じることがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頻度は、無菌性髄膜炎の1~10%、睾丸炎の20~40%に比べると

自然感染で0.01~0.5%と極めて少ないものですが、

多くは治癒する他の合併症と違い、

ムンプス難聴は基本的に治らない、ことが知られています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨年、日本耳鼻咽喉科学会が大規模調査をを行い発表したばかりですが、

2015-21016年の2年間に5565施設で348人がムンプス難聴と診断されております。

そのうち、317人が一側性の難聴ですが、

15人が両側難聴になり、

そのうち12人が人工内耳あるいは補聴器が必要なレベルであったとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラマの設定は1980年で、

おたふくかぜのワクチンの予防接種が開始されたのが1981年ですので、

この辺考証されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初は「任意接種」でしたが1989年から「MMRワクチン」として国の定期接種になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、このワクチンでの「無菌性髄膜炎」の発生が効率に起こり、

MMRワクチンは中止、

以後ムンプスワクチンはわずか4年で再び任意接種となってしまいます。

定期接種の時に接種率が上がり流行が抑制されたが、

任意接種に戻って再び流行するようになったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おたふくかぜの感染力は強く

しかも耳下腺が腫脹する1週間ほど前から、感染力があるといわれ、

潜伏期間が2週間前後と長いのと、

不顕性感染(ほっぺたが腫れないおたふくかぜ)もあるため、

なかなか流行を阻止しにくい、という面があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 耳鼻咽喉科学会のレポートは、

このおたふくかぜの難聴の恐ろしさを世間一般に認知させること、

また、先進国の中で唯一定期接種化されていないおたふくかぜの予防接種を

定期接種にすることの重要性を述べています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聞いた話では、

保育園でおたふくかぜの子がいたとき、

わざと近づけさせて

自分の子にタダでおたふくかぜの免疫をつけさせようとした母親がいた、

なんてトンデモナイ噂も耳にします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その意味ではこのドラマが良い啓発になればいいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、専門医ならではのツッコミたくなるポイントもまた多々あり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんで、子供が耳鳴りを訴えたときに産婦人科の余貴美子先生のとこに連れて行くのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、何でこのセンセイはいきなり大学病院を紹介するのか?

まず疑うのは突発性難聴と機能性難聴だから開業の耳鼻咽喉科でいいのでは。

もちろん、ムンプス難聴も血液検査ですからどこでもできますし、

この時代、まだCTやMRIはありませんので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんで、大学病院なのに担当の医者が自ら聴力検査してるのか?

普通は検査技師の方が検査しますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 診断に2週間もかかったのはムンプスの抗体検査してたためだと思うが、

ちょっと長すぎるし、そもそもステロイド剤、いきなりやめていいのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両親に診断の説明をしてるこの部屋は何の部屋なのか?

少なくとも耳鼻科の診察室ではないし、

説明だけならカンファレンスルームみたいなところでもいいのだが、

ここは明らかに他科の診察室風である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それにこのお医者さん、御両親に対して不安をあおり過ぎ。

あれだけ畳みかけるようにいわれりゃ、そりゃお母さん、泣くわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たしかにいろいろな問題は今後想定されるが、まずは

「片耳聴こえなくても、今後反対の耳が聞こえなくなることはまずありませんし、

片耳だけでも十分コミュニケーションをとることができます。

生まれつき、片耳聴こえない方はほとんど普通の暮らしができますし、

将来の職業や資格に対する制限もそれほどありません。

まわりが、そのことを理解して、子供さんを見守りましょう。」

ぐらいなことが言えないのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 治らない病気なんだから、

まずは患者さんの不安を取り除いて勇気づけてあげるのが大事でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、地上波のドラマですから・・・。

 

 

 

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