ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2017.02.07

耐性菌による耳漏

 

 コメント欄に投稿ありました。

 

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 子供の中耳炎で困っており、調べるうちにこちらへと行き着きました。
御多忙の所、恐縮ですがどうぞよろしくお願いします。

5歳5ヶ月の娘
2歳0ヶ月より滲出性中耳炎で投薬治療。
改善が見られない為、3歳11ヶ月で両側にチューブを全身麻酔下で入れ、
その際アデノイドも切除。
経過良好でしたが、5歳0ヶ月より左側急性中耳炎後より、
耳だれが止まらず5歳3ヶ月で左側チューブは除去。
チューブ除去後も耳だれは止まらず、
5歳4ヶ月で入院し1週間点滴で抗生剤投与しました。
入院点滴投与後、ようやく耳だれは止まりました。
しかし、退院1ヶ月で左側耳だれ再発。
細菌培養でMRSAが検出され現在クラリス投薬中。
また、自宅でも毎日生食で耳洗浄しております。

かかりつけ耳鼻科では、これまでの経過から、投薬で改善が見られない場合、
また入院点滴投与と言われております。

今後、再発のたびに入院は24時間付き添いが必要な為家族の負担が大きいですし、
何よりも風邪を引くたび入院では先が見えません。
就学すれば、休むのも心配です。

また、現在の耳だれの量はそれ程多くありませんが、
入院前は1日に何度かティッシュで拭かなければ追いつかないほどの量でした。
聴力等の発達への影響も心配です。

この様なケースの場合、やはり毎回の入院点滴投与しか治療法はないのでしょうか?

現在はかかりつけ耳鼻科と市立病院に受診しておりますが、
セカンドオピニオンを大きな病院等で受けた方が良いでしょうか?

どうぞよろしくお願いします。

 

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 耐性菌ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 MRSAとは「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」のことで

1990年代から抗生物質の効かない菌として問題になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょうど、今日の朝のNHKのニュースでも特集が組まれていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チューブ留置後の耳だれからMRSAが出たらどうするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 MRSAの中にはペニシリン、セフェムが効かなくても、

ニューキノロン系に感受性があるものがあるので

感受性を調べ、効くようであれば使うわけですが、

おそらくこの場合はニューキノロン系にも耐性だったのでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チューブを抜く、というのは重要な選択です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チューブの周りに細菌がバイオフィルムを作り治療を困難にする例は少なくないからです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この場合もチューブは抜去されていますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、入院しておそらくは強力な注射剤の点滴で中耳から菌が無くなったのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、退院後1カ月でまた耳だれ、MRSAが検出。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここで確認したいことは鼓膜穿孔が閉じたのか、残存してるか、という点です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いったん、鼓膜穿孔が閉じたのなら、中耳に菌が残っていたので、

また、入院の可能性は高いかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 穿孔が残っていたのなら、外耳道からの感染です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なぜなら、中耳は無菌的な場所ですが、鼓膜からこっちの外耳はもともと菌がいる場所。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たとえ、入院して注射点滴しても外耳道には必ずMRSAが残っていると考えた方がいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 MRSAは外耳道に常在してもそれだけでは病気を起こしません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鼓膜穿孔を通して外耳道の菌が中耳に感染を起こすことは主として

水が入る場合と耳掃除による場合です。

鼓膜穿孔があれば中耳から無菌的な浸出液があり、

それがまた外耳道の菌とともに中耳に流れ込んで感染、

という可能性も考えられなくはありません

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 病原菌に抗菌薬が効かない場合、抗菌薬の使用は他の菌を殺菌し、

耐性菌の増殖を助けることになりかえって病状を悪化させます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで、推奨されるのは「放置プレイ」(!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 MRSAはもともと他の菌に比べて繁殖力の弱い菌のため、抗生物質をやめると

他の菌が増殖をはじめ、MRSAの縄張りが減っていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく様子を見て、菌の検査を採ると別の病原菌が生えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その菌に効く抗生剤で再治療、という手段に出ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 局所の洗浄、清拭はもっと大事な治療です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この場合、消毒薬や抗菌剤を使ってはいけません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 粘膜の再生を妨害したり、白血球などの免疫細胞の作用を減弱させることがあるので、

生理食塩水がおススメです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 要は、相手の威力をそぐのではなく、こちらの防御力を高める、という発想です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この場合も生食で洗浄されているようでいいのですが、

どのような方法でされているかわかりませんが、自宅では手技的に難しい面もあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 できれば、耳鼻咽喉科で顕微鏡下に洗浄をするのが理想です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自宅でする場合はくれぐれも「愛護的」に行ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大病院に行っても有効な治療があるとは思いません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かかりつけ医に頻繁に様子を見てもらい、

お子さん自身の抵抗力、睡眠とか栄養、風邪をひかないなどの管理が重要だと思います。

 

 

 

 

 

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