ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2012.11.11

マイコの迷い道


 先週、中学生でマイコプラズマだと修学旅行行けないので、
マイコプラズマで無い証明をしてほしい、
という患者さんが来ました。
 厳密にマイコプラズマでないことを証明するのは
極めて難しく、少なくともその場でわかるものではないのですが、
熱もなく咳も治まってきていたので、
もちろん修学旅行大丈夫ですよとお話をしましたが、
この「マイコプラズマ」やっかいです。
 何が、やっかいって、マイコプラズマという病名が出たとたんに、
状況がややこしくなる。
 保育園で、マイコプラズマが流行ってます、
学校でマイコプラズマかどうか調べてこいと言われました、
マイコプラズマじゃないんでしょうか、
先週小児科でマイコプラズマといわれました・・・・・、
この手の話が多く、うんざりです。
 マイコプラズマはマイコプラズマ・ニューモニエという病原体により
引き起こされる疾患ですが、
この病原体はウイルスよりは大きいですが一般細菌よりは小さく、
肺炎球菌などのように通常の培養検査では診断できません。
 インフルエンザキットのような迅速診断キットもありますが、
健常者でも抗体陽性で出るため、
ほとんど当てにならず、使われていません。
(じゃあ、なんで、こんな製品があるんだ?)
 確定診断はペア血清といって、2週間程度の間をおいて2回採血し、
その間の抗体の上昇を見て診断しますが、
時間も手間もかかり一般的ではありません。
 そこで、マイコプラズマかも知れない、とか
マイコプラズマの疑いもあり、とか
マイコプラズマっぽいねー、
などという感じで診断されてるものがほとんどです。
 医療機関でマイコプラズマといわれた方のうち、
本当のマイコプラズマは一部だと思うし、
逆にマイコプラズマでも病院にかからず
自然に治っちゃってる人もいっぱいいるでしょう。
 マイコプラズマはいわゆる「咳の風邪」のひとつで
通常は4歳以下はかかりにくく、
かかっても多くは不顕性(症状が出ない)か軽症です。
 これは、マイコプラズマの病原性が、
病原体そのものよりも感染したヒトの免疫の過剰反応によるものが
多く関与するためといわれています。
 一般的には自然治癒しますが、
マクロライド系の抗生物質が効くため、
高熱などの重症例、症状が遷延する例などには、
クラリスやジスロマックなどを使います。
 ただ近年、このマクロライドの濫用によると思われる
菌の耐性化が急速で、7割以上に効かない、というデータもあります。
 テトラサイクリン系のミノマイシンやニューキノロン系のオゼックスは
耐性マイコプラズマにも効果がありますが、
最初から使う薬剤ではありません。
 特に、2歳以下の子供の咳の風邪で、
マイコプラズマかも知れないから、ということで
いきなりオゼックスなんか飲ます必要は全くありません。
 この「マイコプラズマ」という病名に、
周囲、特に学校の保険の先生が敏感になり、
過剰反応を示すのは、マスコミの影響が大きいのでは。
 RSウイルスも普通の風邪なのに、
特殊なとらえられ方をして説明に苦労する。
 当院でもRSの検査キットは一応おいてますが、
まだ、使ったこと無いなあ。
 幼稚園児でRS調べても意味無いし、
そもそも、0歳児以外は保険とおりませんです。
 特に、インフルエンザに迅速診断キットが導入されてから、
マイコプラズマやRSウイルスなどの病名が独り歩きし、
混乱を招いているように思えてなりません。
 うーん、咳が長引いてるが、
副鼻腔炎等もないのでマイコプラズマも疑って、
抗生物質出してみます、
などと説明するんだけど、
マイコプラズマっていう言葉を出すと、
また騒ぎになるといやだなあ、と思い
どうやって説明しようか迷ってしまう。
 これぞ、迷子プラズマ。
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