ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2010.10.26

耳管開放症の治療

 さて、途中に緊急連絡が入ってしまいましたが、
耳管開放症の話をするんでした。
 治療ですが、これが、かなり難しい。
 そりゃ、そうだ、
中島美嘉さんがツアーをキャンセルするくらいですから。
 簡単に治るものなら、とっくに治してるわけだ。
 病態としては耳管が開いちゃってるわけなので、
それを閉じればいいのだが、
耳管は、開きっぱなしでもダメだが閉じたきりでも困るのだ。
 今度は耳管狭窄症から滲出性中耳炎を起こしてしまう。
 現在よく使われているのが
漢方薬の「加味帰脾湯」だ。
 そもそも、耳管開放症の原因として、
急激な体重減少による場合が多い。
 極端なダイエット等で、組織のヤセが生じると、
耳管が閉じなくなることがあるのだ。
 この加味帰脾湯による、耳管周囲の血流増加作用によって、
組織をむくませ、開きっぱなしを軽減しようというものだ。
 有効性を示す文献もいくつか出ており、
漢方薬内服という、簡便さもあって、広く行われている。
 当院でも処方例は多いが、まあ、中等症異常には難しいですね。
 その他に、鼓膜の響きを抑える意味で、
鼓膜にテープを貼ったり、チューブを入れることもあります。
 軽度の伝音性難聴があると耳管開放症の症状が軽減するという説もあります。
 そして、物理的に耳管開口を塞いじゃう方法として、
生理食塩水の点鼻も用います。
 鼻の穴から水を垂らして耳管に流れ込むようにしてあげる。
 効果は一過性ですが、連続使用によって改善、という報告もある。
 通気管を用いて鼻腔から耳管に薬剤を注入する方法も試しましたが、
あまり効果ありません。
 耳管開放症のポイントは中耳に近い側での耳管の最も細いところが、
開いてるせいなので、鼻の方からいろいろやっても効果が少ない、
と、この間学会で聴いて来ました。
 と、以上は当院の外来でも行ってるいろんなですが、
うまく行く人もいれば、そうでないヒトもいる、という感じです。
 なかなか決め手になる治療が無いのが現状なのです。
 この他に今のところ、かなり効果のある療法として「耳管ピン」があります。
 中耳からシリコン製の「ピン」を耳管に挿入し、
開放している耳管を充填する、というものです。
 ここまでの治療は外来でも行えますが、
「耳管ピン」となると、病院、それも国内でも数か所の限られた施設でのみしかできません。
 まだ、手技が確立しておらず、発展途上の手術ですが、
最近の「改良型耳管ピン」は成績もいいようです。
 耳管開放症は悩んでいる方が多く、このようなホームページもあります。
耳管開放症情報交換の場」(←クリック)
(このサイトのリンクに当院も載ってます。)
 この病気の解決法が早く確立するといいです。
 私も、日々あれこれ悩んで考えてるのですが。
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