ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.12.14

点耳薬の正しい使い方


 学会で家にいないと急患の方を診られないせいか、
今日は休み中に熱が出たり中耳炎になったりで、
救急や他院にかかられた方がみえましたね。
 さて、そこで、複数の方から出た質問で
「小倉先生は点耳薬を使わないが必要ないのか?」
というのがありました。
 答は
「鼓膜穿孔のない急性中耳炎には全く必要ありません。」
ということです。
 中耳炎はその名のとおり、中耳にバイ菌がいます。
もともと中耳は無菌的な場所ですが、
耳管という管で鼻とつながっており、
ここを経由して細菌感染が起こるのが「急性中耳炎」です。
 一方、外耳道と中耳は鼓膜で境されており、
鼓膜は「防水」です。
そうでなければ、プールに入るたび中耳炎になっちゃいます。
 だから、鼓膜に穴の開いてない耳にいくら水の薬をたらしても
肝心の中耳のバイ菌には届きません。
 目をしっかりつぶって目薬をつけてるようなもの、
いや、目にはそれでもまぶたを開ければ回り込むからそれ以下ですね。
 そればかりか、点耳薬が外耳道の外側の汚い部分を鼓膜の近くに流し込んだり、
鼓膜が破けて耳だれが出たときに、耳だれだか水の薬だかわからず困ります。
 学会の決めた急性中耳炎のガイドラインにおいても、原則、点耳薬は用いません。
鼓膜穿孔のある場合に使用は限られてます。
(改訂前は全く記載がありませんでした。)
 さらに問題なのは、鼓膜穿孔です。
中耳炎で耳だれが出ていれば「鼓膜に穴が開いてる」と考えても悪くないのですが、
普通に水薬をたらして中耳まで行くような大きな穴が開いていることは
まずありません。
 まして、耳だれがたまっていれば、その上からたらしても中耳には行きません。
 少なくとも、鼓膜切開後のようにしっかり開けた穴かチューブ挿入耳で無い限り、
点耳薬のメリットはなく、逆にデメリットのほうが多いと考えられます。
それもできれば、耳漏を吸引し、かつ点耳した薬を、
中耳に流し込むような処置をしてあげたいところです。
 だから私は、通常の急性中耳炎では、たとえ耳だれが出ていても
点耳薬は使うべきでないと考えています。
(いや、オレが言ってるだけじゃなく、実際そうなのよ。
今日来た人は、点耳が処方されて、「オグラ先生はいつも点耳薬使いませんけど。」って言ったら
その病院のところの薬剤師さんに「いろんな考えの先生がいますからね。」と言われたそうな。
どっちの先生を指していったんだろうか。もちろん、耳だれ、穿孔のない子です。)
 一方「外耳道に菌のいる」外耳炎や、
大穿孔のある慢性中耳炎には点耳薬は有効ですが、
それも漫然と使うと、菌交代が起きたり、カビが繁殖することはよく起こります。
 点耳薬などの外用薬は、内服に比べると安全だと錯覚して、
「じゃあ、点耳も使ってみて」、なんてことを、
素人の親御さんばかりか、医者でも軽くいう人がいたらちょっと残念です。
 ただ病名と適応症があってるので
「医学的には不要」でも「保険診療上はOK」なんだわ。

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