ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.11.06

滲出性中耳炎の手術


 あー、今日の午後は疲れたぞ。
 インフルエンザは依然として猛威をふるってるし、
風邪引き、ハナタレから中耳炎になる子も増えて来た。
 しかも、金曜の夕方は滲出性中耳炎の子の手術が多い。
 鼓膜切開をした場合、耳だれなんかが出ちゃうことがあるので、
翌日診察をすることにしてる。
 すると、親の仕事の関係で平日なかなか来院できない子は、
金曜日の夕方切開して土曜日に再診、なんてパターンが多いのだ。
 特に今日は鼓膜切開が1歳と2歳の2名3耳あったが、
あらかじめ予定手術として4歳児の鼓膜チューブ留置が入ってた。
 Sちゃんは4歳の女の子だが滲出性中耳炎がずーっと治らない。
 これまでに鼓膜切開を両耳3回づつしたけど、
いずれも粘っこい滲出液が満タン。
 そして、その穴が開いてるうちは良いが閉じるとともに水がたまっちゃうのだ。
 それで、チューブ留置を勧め、2週間前に右側を手術。
左は先週の金、土でやるはずだったが、
先週私のほうでお通夜に行く用事が入っちゃったので今日になった。
 問題はSちゃん、あばれ方が半端じゃない。
 診察で耳を見るだけでも大暴れ、お父さんはいつも汗だくだ。
 普段はおとなしいが診察台に座ると突然豹変する。
エクソシストとかあんな感じだ。
2週間前の手術もそれはそれは大変だった。
 それでいて、家では妹(今日の鼓膜切開の2歳児)と一緒に
「ジビカごっこ」をしてるらしい。
「ハイ、お耳、みてみますね。」なんて。
実はこの妹も大暴れムスメなのだ。
 今日もSちゃん、鼓膜麻酔まではおとなしくさせるのだが、
いざ診察台に来ると大暴れ。
 麻酔をすると耳の痛みは全くないのだが、
恐怖心で激しく全身を使って抵抗する。
 スタッフ4~5人で抑えるが一瞬たりともじっとしていない。
ものすごい力だ。
 ちなみに家での「ジビカごっこ」では、あばれるシーンは入ってないらしい。
 何とか耳垢を取り、まず鼓膜切開。
 視野を確保するまでが一苦労だ。
 顕微鏡を動かしながらタイミングを待つ。
 コンマ何秒の隙を見てメスを入れる。
 果たしてドロドロの滲出液が充満。
吸引管でもなかなか吸いきれない。
やっぱ、こりゃ、チューブ必要だよねー。
 さて、こっからが問題だ。
 子供の細い耳の穴の奥の鼓膜に正確にチューブを入れるのはなかなか至難の業だ。
 研修医では全身麻酔で20分で入れられれば上出来だが、
局所麻酔ではそんな悠長なことは言ってられない。
 私は訓練の甲斐あって3秒あれば入れられるようになった。
 しかし、今日のSちゃんの動きは半端じゃない。
3秒間も止まってはくれないのよ。
「オウチ、カエルー」
「ほら、もうちょっと、がんばってー。」
「ぎゃー。」
「Sちゃん、みーっつ数えようか。いーち、にー・・・」
「イーヤダー、おかね、ハラウー。」
 ちなみに「お金払う」とは、いつも診察後お会計すると帰れるので、ということらしい。
金でこの一件を示談に持ち込む、という意味ではないようだ。
 みんなで押さえること2~30分。
私は顕微鏡を動かしながら、ずっと鉗子をもって、チャンスを待ってる。
 そして、一瞬止まった隙を見てチューブを挿入。
その間1秒足らず。
「よし、入った、みたい。」
 しかし、その後もチューブがちゃんと入ってるか確認するのに
大暴れが止まらず、またしばしみんなで格闘した。
 無事入ってました。
 めでたくチューブの入った鼓膜の写真を撮り、
同じファイルにSちゃんのピースサインをしてる顔写真も取り込んだ。
2週間前の写真は泣き顔だったけど、
今度チューブが入ったらピースサインするって、お母さんと約束してきたらしい。
 いやー、Sちゃん、良かったねー。
これでお耳がよく聞こえるようになるぞー。
ピアノも上手になるぞ。
 それにしても、粘り強くがんばったスタッフの皆さん、そしてお父さん、
大変ご苦労様でした。
 きっと、明日はみんな筋肉痛だ。
 Sちゃん姉妹、今夜は「ジビカごっこ」、するんだろか。
きっと、疲れて、すぐ寝ちゃうね。
 おやすみなさい。

8件のコメント
医療系をまとめました。
2009年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  
最近の投稿 最近のコメントカテゴリー アーカイブ