ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.09.04

ロックな大学生アルバイト~その2「涙の素ウドン」


 この夏は女も恋もいらない。
何とか金を稼いで教習所に通い、車を買うのじゃ。
 熱い思いで、出勤したのではあったが、社会はあまり甘くなかった。
 「よろしくおねがいしまーす。」
 班長だか課長だかに導かれて、工場の中に入る。
 がらーんと高い天井の大きな部屋中にリフトみたいのがめぐらされており
そこに無数の金属の箱がつるされて流れていく。
 そう、ここは石油ファンヒーターをつくるラインだ。
 考えればわかることだが、夏用のエアコン、扇風機なんかは冬のうちに
冬用のストーブやファンヒーターは夏のうちに作るのだ。
 時は真夏、頭ではわかってもこの暑いのにファンヒーターっつうのはどうもピンとこねえなー。
 「ハイ、じゃあ、始まるからね。」
 ってなにが始まるかと思いきや、あちこちの拡声器からみょうに明るい音楽が。
そして、アニメの声優みたいに異常にハイテンションなお姉さんの声で
「おはようございまーす。サンヨー体操の時間でーす。
さあっ、今日も一日ガンバリましょう。ハイ、いちにっ。」
 なな、なんだこれは。
始業前に体操をするって言ったのが気になってたけど、まさかオリジナルの体操があるとは。
まあ、見よう見まねですぐ覚えちゃいましたけど。
 しかし、この手のってどこの企業もあるのか?
東芝体操とか日産体操とかちょっとありそうだけど。
ソニー体操とかカシオ体操なんかもあるのかしら。
カシオ体操ってテクノっぽかったりして。
コマツ体操や新日鉄体操はあったらキツそうだけど。
 さて、作業開始。
 最初はラインのつながってないところにファンヒーターの外枠や台座を運ぶ仕事。
 大学受験の浪人生活で体力はかなり落ちてるところに、なれない仕事はきつい。
あっという間に汗だく。
そもそも工場の冷房はラインのところどころに吹き出し口はあるけれど
全体としては天井が高いこともあってほとんど冷房が効いてない。
最初の休憩までが長かったこと。
 10時に休憩があり、ビンの牛乳が配られる。
一気飲みして(もちろん腰に手を当てて飲む)
一息つくとあっという間にまた作業再開。
 12時のサイレンで開放され、仲間と食堂に向かう。
「いやー、キツイ、キツイ。」
「もう体ガタガタだよ。」
「お、何食べるかー。」
「カツどん、定食、なんでもあるぞ。」
「いや、ちょっと待て。カツどん400円、定食500円、こんなもん食ってたら金たまんないぞ。」
「あ。そうか。」
「我々は自宅組なんだから栄養は家で稼いでここは出費を抑えないと。」
と、いうわけでそれから1ヶ月、我々の昼食は毎日「素ウドン150円」だった。
 食券を買おうと並んでるところに女性工員さんたちのグループが。
「あら、こんにちは。」
Oが声をかけられる。
「あ。どーも。」
「おい、O、何で知ってんだよ。」
「いや、オレあのヒトたちんとこで仕事してるから。」
「えー。女のヒトいるの?」
「いや、女ばっかだよ。おばさんが多いけど若いのもいるぜ。
あの人たちオレの横に座ってんだ。」
「ナニ、座って?お前、座って仕事してんの?」
「いや、だってラインだから。」
 Oの行った「製造3課」は、流れ作業のラインで座って簡単な部品を取り付けるらしい。
重いものを持つわけではないので女性が多いわけだ。
 一方、我々の配属された製造1課は、ファンヒーターの本体を溶接やプレスで作るところ。
広い工場内は男しかいない!
 それでバイト代同じかよ、ずりー!不公平じゃん!
 どうやら貧乏くじを引いたみたいだ。
 さて、素ウドンをすすって、午後1時から再び作業。
工場内の気温はさらに上がっている。
3時に牛乳とまた体操。
 時計は壊れてんじゃないかと思うくらいゆっくりとしか進まない。
 へとへとになって1日が終わった。
 うえー、これから帰って夜7時からは家庭教師だ。
まずは風呂はいんないと。
 しかし、ここでへこたれるわけにはいかないのだ。
 
  ~さらに続く

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