ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2021.09.01

新型コロナの抗原検査

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 ここにきて新型コロナの抗原検査キットというものが

話題に上がることが多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先のフジロックでは来場者に抗原検査を施行したとか、

ここ足利市でも新学期にあたり小学生全員に

抗原検査キットを送付したと聞きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 抗原検査とPCR検査の違いは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 抗原とはウイルスを構成するタンパク質のことで、

検体をこのタンパク質に結合する物質を含ませたろ紙に拡散させて

反応を見るイムノクロマトグラフィーという方法によるものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 PCRとはポリメラーゼ・チェーン・リアクションの略で

ウイルスのDNAをポリメラーゼという合成酵素を使って何回も複製し、

微量の遺伝子を増やすことによって検出しやすくするものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なのでPCR検査は抗原検査に比べてはるかに感度が良く、

微量のウイルスでも検知できるので、

今のところ新型コロナウイルス感染の確定診断に用いられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つまり、ウイルス量がよっぽど多ければ、

抗原検査に反応するが、

抗原検査陰性でもコロナウイルスに感染してる場合は

かなりある、ということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まして、自分で鼻の奥から検体を採取することは

(特に子供さんは)かなり難しいので、

個人的には自己検査はほとんど意味が無いと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨年の時点での厚生労働省のガイドラインでは

・発症から2⽇⽬以降9⽇⽬以内では除外診断でも使⽤可能

• 定性抗原検査では、唾液の検体は(現時点では)使⽤不可

• 無症状者では検査前確率が低いことが想定されることから、

現段階において、使⽤は推奨されない。

• 緊急⼊院を要する患者で症状の有無の判断が困難な場合については、

有症状と判断される

となっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 要するに抗原検査は

症状のない人にやっても意味はない

症状のある人が陰性であっても感染していないことにはならない

ということになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 では抗原検査が陽性であった場合、

ウイルス量が相当多いのでかなりヤバい状態である、

ということになりますが、

実はそうとばかりも言えないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは「偽陽性」の存在です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あらゆる検査には「偽陰性」「偽陽性」というものがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「偽陰性」とは、本当は陽性なのに間違って陰性に出てしまう場合。

先に述べたウイルス量の関係で

感染していても検査に必要な量に達していない、

というケースがこれにあたります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 問題は「偽陽性」です。

本当は感染していないのに陽性と反応が出てしまう場合で

実はこれが結構あるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この原因は個々のケースで様々で

科学的に解明することは困難のようですが、

要するに検体中に含まれている何らかの成分が、

検査キットの試薬中の抗体に結合してしまうためと考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一説には風邪のウイルスである「ライノウイルス」が

これに反応してしまうのではないかという説もありましたが

これについては以下のような検証実験がありましたが

関連ははっきりしませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 抗原キットのライノウイルス交差反応性の検証

試験ウイルス︓ライノウイルス標準株 48株

Rhinovirus A 38株

Rhinovirus B 7株

試験キット︓エスプライン® SARS-CoV-2(富⼠レビオ)

クイックナビCOVID19 (デンカ)

結果︓いずれのキットにおいても全て陰性

国立感染症研究所:感染病理部(2020年)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 他には粘度の高い検体に対して

誤って陽性に出る場合が多い、といわれていますが、

これも科学的検証は得られてないようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 国立感染症研究所からは

偽陽性疑い例をできるだけ防ぐために

1. 簡易抗原定性検査の陰性判定を含めた確定診断への適応は、

発症2⽇⽬から9⽇⽬までの患者だけである。

2. 無症状者(濃厚接触者を含む)や発症10⽇以降の患者に対しては、

陰性確定診断のための検査として適さないことを再確認する必要がある。

3. 使⽤できる検体は⿐咽頭拭い液と⿐腔検体である。

簡易キットでは、唾液は使⽤できない。

4. 検査キットごとの注意点を厳守する。

例えば、エスプラインでは、

(1)綿球を挟みもみながら綿棒を10回程度回転、

(2)綿棒を取り出したのち5分静置、など。

5. 粘度の⾼い検体では偽陽性を⽰しやすいので注意する必要がある。

6. 臨床症状、疫学情報

(接触歴、地域の流⾏状況や他の地域を訪問した場合はこの⾏動歴など)を参考に、

COVID-19 が疑わしい症例に対して簡易抗原定性検査を実施することが重要。

7. 特に⼩児例において、

新型コロナウイルス以外の病原体(ライノウイルスなど)

との交差反応の可能性が指摘されており

(現時点では、明確に証明はされているわけではない)、

これに関して今後詳細に検討していく必要がある。

⽇本感染症学会.COVID-19 簡易抗原定性検査の偽陽性に関するアンケート結果

という提言がなされています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 抗原簡易検査は結果がすぐ出るので

当院でも有症者に対し当初は抗原検査を行ったことがありましたが、

発熱はあるが接触歴のない方で陽性反応が出て、

さらにPCR検査をしたところ陰性が確認されたのため、

抗原検査は陰性の証明にも陽性の証明にもならないということで

現在は施行していません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なので、今回の足利市の抗原検査キット配布は

混乱を招く恐れはあるが新型コロナ対策としては

たぶん意味が無い、と思います。

何か、対策してます、という姿勢を見せたかったのかもしれませんが、

税金、無駄になってるぞ。

 

 

 

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