大人のアデノ
17日月曜日、金曜日夜から38度の発熱、
という患者さんが来院。
のどが痛く、市販薬を飲んでいたが、
熱下がらないために、日曜日に休日診療所を受診したそうです。
どうも、室内に入れてもらえなかったらしく、
お医者さんは駐車場でペンライトでのどを診て
メイアクト、ピーエイ、トランサミンと胃薬処方。
メイアクトは抗生物質、
ピーエイはパブロンみたいな総合感冒薬だから、
患者さんが薬局で買って飲んでたクスリとほぼ一緒です。
薬局で買う総合感冒薬にはトランサミンも入ってることが多い。
ということは、この患者さんは
抗生剤と胃薬を新たにもらったことになります。
でも、熱が下がらないので当院を受診しました。
まず、お話を聞きます。
首都圏や、新型コロナ感染発生地域への立ち寄り、
もしくはそういったところに行った人との接触はない。
主婦の方ですがホストクラブ入店や、キャバクラ勤務もありません。(笑)
家族では先週7歳の娘が37.5℃の発熱、咽頭痛。
小児科でノドが赤いといわれ抗生剤4日間で改善したそうです。
さて、ここまで聞いてノドを診てみます。
両側口蓋扁桃は真っ赤っか。
そして白苔といわれる白い斑点がついていました。
さて、ここで何を考えますか。
少なくとも新型コロナの所見ではない。
娘さんのことも含め、
溶連菌感染症は、真っ先に考えるべきですが、
メイアクトをマル1日飲んで解熱してないので、除外です。
溶連菌は基本的には耐性菌がないので、
このレベルの抗生剤1日飲めばかなり症状は改善してるはず。
そこでアデノウィルス迅速検査をすると
強陽性でした。
夏風邪を起こすウイルスの中では最も強力で、
激しい咽頭痛、嚥下痛と38℃以上の高熱、
場合によって結膜炎などの眼症状、下痢、腹痛、首のリンパ節腫脹を伴います。
小児に多いですが、多くの亜型があるため、
大人にも感染することがあり、
とくに家族内などで濃厚接触があった場合には、
ウイルス量が多量になるので
大人でも重症化することがあります。
おそらく7歳の娘さんからでしょう。
なので、その娘さんも
ちゃんとした小児科にかかっていれば、
お母さんにうつらなかったかもしれないし、
お母さんも休日診療所にいって
無駄な薬をもらわなくて済んだかもしれません。
残念ながら、治療薬はありませんので、
安静、水分栄養補給で回復を待つしかありません。
もちろん抗生剤は百害あって一利なし。
そもそも娘さんにしても
のどの赤み、発熱に対し
4日間の抗生剤、というのは医学的にも大間違いです。
治ったのはクスリのせいではありません。
抗生剤が必要な咽頭炎は、ほぼ溶連菌感染症だけですが、
もし、溶連菌だったとしても4日間では再発します。
なので、感染の注意と安静の必要を指示して、
カロナール錠を頓服で適宜飲んでもらうことに。
学校伝染病の規定では解熱後2日間の自宅待機、
ただしその後も糞便中からは1か月近くウイルスが出ます。
結局この家族は、クスリなんかなくても治ったわけです。
お医者さんの仕事は病気を治すことではなく、
まして、クスリを出すことではなく、
きちっと診断をして、
病気が治る正しい方向に患者さんを導いてあげることです。
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