ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2020.07.21

処方せんについてのコメント

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コメントいただきました。

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PL顆粒1包、ロキソニン1錠、クラビット100mg 1錠を1日3回、頓服でカロナール内服、
さて、この処方のマズイ点はどことどこでしょう4つ挙げなさい

→ クラビット 風邪に抗生物質は必要ない。
ロキソニンとカロナールが重複している?
そもそも、風邪に薬は必要ない?

素人には、これしかわかりません。答えをご教示ください。

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そうでした。

この記事書きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なかなか、答えスルドイです。

①の風邪に抗生剤は不要

は、あっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風邪という診断であれば、抗生物質は効きませんね。

素人の方でもご存知なのに、

いまだにそのことがわからない医者は意外といます。

困ったものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかもクラビットという抗生剤は、

正確には抗生物質では無くて合成抗菌剤ですが、

特殊なクスリですから、やみくもに使うクスリではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

②解熱鎮痛剤の重複、も正解です。

ロキソニン、カロナールは同薬効ですが、

さらにPL顆粒にはカロナールとまったく同成分の

アセトアミノフェンが配合されています。

薬価が安いので査定されませんが、不適切な処方です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、③番目はロキソニンが1日3回で処方されていること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 整形外科領域の痛みのコントロールでは、

解熱鎮痛剤を1日3回毎食後で処方することはありますが、

風邪のような、急性熱性疾患ではこれはいただけません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 熱を下げることは風邪の治療につながりませんし、

むしろ発熱そのものがウイルスに対して攻撃的な効果があります。

何より実際には発熱したり、痛みが増しているのに

解熱剤で症状がマスクされてしまうと、

病気の進行を見誤ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風邪などの急性感染症には、

解熱鎮痛剤は、どうしても熱や痛みがつらいときに

頓服的に使うべきものです。

また、そういった機会が増えてくれば、

病気の悪化や、合併症の発現などを疑い、

再度医療機関を受診して、診察を受ける必要があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ④番目は、ちょっと難しいのですが、

クラビットという薬は発売されてもう20年以上たちますが、

当初の用法用量は1回100mgを1日3回でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、その後、

このクラビットのようなニューキノロンと呼ばれる抗菌剤の

薬物動態や薬効の研究が進み、

この種のクスリは1回に大量に投与した方が、

分けて投与するより効果的である、ということがわかり、

10年ほど前に1回500mgを1日1回だけ飲む、

というように投与方法が変わりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ抗生物質でも

ペニシリン系やセフェム系のクスリは「時間依存性」

クラビットなどのキノロン系のクスリは「濃度依存性」

だということがわかったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なので、いまだにクラビットを1日3回で出す先生は、

その他の医学的知見のアップデートもされてないことが考えられ、

ちょっと医者としてはどうかなあ、と思われるわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで、こんな処方せんをもらったら、

石原さとみさんは、どんな行動に出るだろうか、

ちょっと気になるところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、「そもそも風邪に薬はいらない」

というのは、大正解でして、

総合感冒薬のPL顆粒は、ワタシはもう20年以上処方していません。

 

 

 

 

 

 

2件のコメント

コメント/トラックバック (2件)トラックバック用URL:

  1. ご回答ありがとうございます。
    風邪で薬をくれない→なんの為の医者なのか!!
    と、素人判断で思ってしまいます。
    いっぱい薬を処方してくれる先生→いい先生。と勝手に思い込んでいます。

    石原さとみさんのドラマは見ていませんが、薬剤師の石原さとみさんなら
    きっと「私の笑顔で元気になって下さいね」と言ってくれそう。
    勝手な妄想(笑)

  2. コメントありがとうございます。
    医者の側から見ると、いつも見ていた患者さんが、
    風邪ひいて他のお医者さんにかかったあと、
    「そこで何か薬出ましたか?」ときいて、
    「いえ、何も出ませんでした。水分とって安静にして様子見て、といわれました。」
    と聞くと、ううむ、なんてデキる医者だ、と一目置いてしまいます。
    ヘタなクスリは飲まない方がいいし、
    それこそ石原さとみさんの笑顔の方が何十倍も効くでしょう。

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