ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2018.07.09

セキはどこから

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セキというのは日常ありふれた症状だが、

これを正確に診断し、治療することはなかなかに難しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレルギー性や、逆流性食道炎、心不全によるセキなど、

教科書的にはその原因はさまざまありますが、

ここでは感染性のセキ、いわゆる風邪のセキの話をします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何となく、風邪のセキといえばノドか、肺の方だろう、

と考えるのはシロートであって、実は風邪のセキの多くは鼻が原因です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風邪をひくと、鼻水なんかが出るのは誰でもわかりますが、

そのあと、鼻の中でばい菌が増えると、いわゆる「アオッパナ」になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼻の中にたまった「アオッパナ」は

鼻の線毛運動によって後方に運ばれのどに落ちていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これを「後鼻漏」といいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、喉を刺激して、あるいは気管に流れ込んで出るセキが非常に多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

典型的なのはタンが絡んだゼロゼロしたセキですが、

意外と患者さんがタンや後鼻漏を自覚していないケースがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

患者さんにタンがからみますか、

などと訊いて、たとえ「からみません」といわれても、

ファイバースコープを入れて鼻の奥、上咽頭を見てみますと、

そこに粘性な鼻汁が流れ落ちたり、はりついているのが観察できます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供や赤ちゃんの場合はさらにです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分でハナをかむことができないので容易にこの状態になりますし、

症状を自分から伝えることができないので、

なかなか親や、小児科の先生にもわからないことがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気管支炎は確かにあるのですが、

その気管支炎のもとの原因はハナからの後鼻漏なので、

吸入薬や拡張剤を使っても元を止めないとなかなかよくなりません。

雨漏りの時にたらいを置くようなもので

おおもとの雨漏りを止める必要があるわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、さらに炎症が副鼻腔に進むと副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼻炎だけの場合は、これは気管支炎だよねー、

といって内科・小児科の先生がその治療してるうちに治ってしまいます。

副鼻腔炎も、医者がそれと気づかなくても

その手の治療で治ってしまうことも、程度によってはあります。

だが、本格的な副鼻腔炎になってしまうと、なかなかそうはいきません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 副鼻腔炎が慢性になるとさらに厄介。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2か月も3か月も内科でセキの治療をして診たら蓄膿症だった、

というケースはざらです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間には自然治癒力もあるので

的外れな処方でも免疫力で治ってしまうこともよくありますし、

マイコプラズマだ、百日咳だ、などと間違った診断をしても

結果的に鼻の方に薬が効いて鼻の病気が治ってしまうことも多いので、

内科・小児科医と耳鼻咽喉科医の数の比率を考えると、

鼻が原因のセキは医療統計的な記載より実際ははるかに多いような気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

2件のコメント

コメント/トラックバック (2件)トラックバック用URL:

  1. 後鼻漏のお言葉があったので教えてください。
    私は慢性的な後鼻漏による上咽頭炎のようで、Bスポット療法(塩化亜鉛を口から上咽頭部に塗る)という治療をしたことがあります。
    塩化亜鉛を塗った綿が、治療後は血と痰?膿?が着いています。
    数回通院して症状はかなり良くなりますが完治はせず、風邪などをひくとすぐになってしまいます。

    小倉耳鼻咽喉科では、後鼻漏や上咽頭炎の治療はどのような療法でしょうか?
    以前、マクロライド少量長期療法(栃木県はマクロライド少量は2週間以上まとめて出せない)も書いてありましたが、こちらが主流でBスポット療法は行っておりませんか?

  2. […] 以前も「セキはどこから」で書きましたが […]

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