ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2010.06.07

「水ぼうそう」の頃(最終話)

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~前回からの続き
 さて、緊急入院した「T君」は、私とほぼ同じ経過をとったが、
周囲も2回目となって慣れている分もあり、
またまた若いせいか私より軽症だったようで、じきに元気になった。
 ものがものだけに感染の恐れがあるわけで、
元気になっても病室を出て出歩くわけにはいかない。
 それより、全身にできた水疱は、次第にカサブタになって来て、
顔中に スイカの種 を貼りつけた状況なので、
とても恥ずかしくて、外なんか出られない。
 足の裏にも水疱ができて歩くのも一苦労だし。
 まあ、そんなこんなで、歳の近い「ルームメイト」は、
格好の話相手で我々はじきに仲良くなった。
 それでも、一日中話してるわけではない。
 静かな昼下がり。
 昼飯も終わり、夜の点滴までは間がある。
 個室と言ってもテレビやビデオがあるわけではない。
 ボーっとして過ごしている。
  ・・・・・・・・・・・
 
「かさっ。」
「あっ、先生、今の音、カサブタむしってゴミ箱に捨てたでしょ。」
「わかった?」
「皮膚科の先生が、カサブタとると『あばた』が残るからダメっていってましたよ。」
「でも、なんとなく、気になるし、ヒマだしなあ。」
「実は僕もついむしっちゃうんですよ。」
「だろ?ちょっと位大丈夫よ。」
   ・・・・・・・・・・・・・
      ・・・・・・・・・・・・・
「がさっ。」
「センセイ、今のは、ちょっとデカくなかったすか。」
「ん、・・・うん、ちょっと・・・・。」
 まあ、そんなこんなで、約1週間で無事退院できた。
 しかし、耳鼻科の部長からは、もうヒトに感染しないとはいえ
そのスイカタネ顔では患者が怖がるからもう1週間休めと言われた。
 かくして、新人イケメン独身ドクターとして病院デビューするつもりだった私は、
赴任早々水ぼうそうになったオマヌケドクターとして病院中に知られてしまった。
 さらに、入院中、親以外見舞い客がいなかったため
「彼女がいない」ということも、みんなにバレてしまった。
 それでも、入院生活を共にした「T君」とは、仲良くなり、
その後も、一緒に飯食ったり酒飲んだりした。
 偶然、同じ時期の、同じ病気が取り持った二人の若者の縁。
 そんな二人の事を、誰が名付けたか
 人呼んで 「ぼうそう族」。
   ~完~
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2件のコメント

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  1. SECRET: 0
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    う、うまいぼうそう族。
    水商売に就職決定。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ア○ク○ビルがいかにありがたい発明かわかりますね。

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