適応と効果
さて、以下のようなコメントがありました。
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あなたのコメント
こんにちは。いつも楽しみにしております。
先日アドナでの適応と言う文字がありましたが、
適応で、以前から疑問に思っていることがあるので、
質問させていただきました。先日10歳の息子にキプレス細粒4mgが
処方されました。その時は咳が出ていたのですが、鼻詰まりはありませんでした。
ですが、夜になって鼻詰まりが出てきたので、キプレスは
鼻詰まりも治ると思っていましたら、調べると小児は
鼻詰まりの適応は無いと書いていました。
適応??効果??大人は鼻詰まりに効いて、小児は効かないのでしょうか?
そして10歳で4mgは少ないようにも思いました。
お忙しいところ申し訳ございませんが、先生の目に止まって貰えるとうれしいです。
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なるほど。
さてここのまず一番のポイントは「適応」≠「薬効」ということです。
「適応」は「保険適応」のことで、保険診療を行って薬を処方した時に
レセプトにあげる「保険病名」と薬剤の「適応症」が合致していないと
認められない、ということです。
その場合は、保険診療がカットされ、薬剤費はみな医院側の負担になります。
適応症はしかるべき治験を製薬会社が行い、厚労省が認めるものですが、
モノによっては同一成分でも剤型の違いによって適応症が異なるものもあります。
小児用製剤と大人用などの場合は、治験が比較的容易な大人の適応をとってから
小児の適応をとる薬もありますし、そのままのモノもあります。
治験には莫大なお金と時間と手間がかかるからです。
キプレスは抗ロイコトリエン剤なので、アレルギーに効くのですが、
同じ成分でも
キプレス錠・キプレスOD錠の適応疾患は気管支喘息、アレルギー性鼻炎
キプレス細粒・キプレスチュアブル錠の適応疾患は気管支喘息です。
キプレス細粒も当然アレルギー性鼻炎に効くはずですが効能にはない。
ちなみにキプレス細粒は4mgしか製剤がなく、通常は1歳以上6歳未満が適応。
6歳以上はキプレスチュアブル錠ですがこれは5mgです。
で、成人はキプレス錠、OD錠を5~10mgで使います。ムズカシイ。
たしかに10歳に4mgやや少ないかもですが、
5mgと4mはそんな大きい差ではないともいえる。
ともかく、摩訶不思議な保険診療ですが、
まあ、お上に従うしかない。
ウチもうっかりずい分切られました。
一番ひどかったのは同じ抗ロイコトリエン剤であるオノンの時。
これも、当初は小児用のドライシロップには気管支喘息の適応しかなく
アレルギー性鼻炎の適応ありませんでした。
それでも効くので喘息の病名をつけて処方したりしてました。
やがて、オノンDSにアレルギー性鼻炎の適応を追加することを厚労省が認めたので、
やっと、堂々と使い始めたのですが、
それが決まってから、実際に適応が施行されるまでの数か月間のオノンが全部切られました。
なんと、卑怯なり。
もう適応になることは決まっていたのに、あえて査定するとはなんと意地の悪い。
しかも、もともと子供に安全に使えて有効な薬であることは査定する側もわかっていたはず。
しかも、数か月後の「事後報告」なので防ぎようがない。
ハンパない金銭的な損失がありました。
他にも適応外処方はままあり、虚々実々の駆け引きがあるわけですが、
適応外の処方で薬害を防ぐというよりは、
患者さんのためを思った病院側の意志を
コストカットだけの理由で査定する構図が多い様です。
ちなみにご質問のキプレスには平滑筋収縮抑制、抗炎症作用があるので
風邪のセキにもある程度の効果がありますが、
風邪の鼻閉、すなわち粘膜の血管が拡張したり、
濃い鼻汁がたまるような鼻閉には効きません。


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