耳垢の話のついで
耳垢といえば、よく外来で
「子供の耳垢はどれくらいのペースで取ればいいんでしょう?」
などと尋ねられることがよくある。
答えは
「しなくて、イイです。」
などというと、たいていのお母さんはビックリした顔をする。
耳垢は汗腺、皮脂腺、、耳垢腺のある外耳道の入り口付近で
作られるため、ほっておいても自然に出てくる。
見た感じ相当たまっていても、聴こえには支障が無いし
あえて取る必要はない。
むしろ取ろうとして、奥へ押し込んだり、外耳道や鼓膜を傷つけてしまう場合もある。
きれいに取れたとしても皮膚のバリアである皮脂層を除去しちゃうと、
かえって外耳道の皮膚で細菌が繁殖して外耳炎の元になる。
そもそも耳垢は弱酸性で殺菌効果があるのだ。
そんなわけで、ほっておく、が正しい。
さて、人間を含めてほとんどの哺乳類の耳垢はほっとけば勝手に出てくるが、
唯一そうでない動物がいる。
さて、何か?
答えはクジラ類である。
彼らの耳垢は年齢とともに堆積し、
年輪のようになるのでクジラの年齢はその耳垢からわかるそうだ。
博物館で見たことあるが、なかなか立派なものである。
ところで、クジラは耳垢つまって困らないの?
これは、全然困らないはずだ。
次のうち、鼓膜がある生物¥はどれか
1.フナ 2.カエル 3.ワニ 4.スズメ 5.ネズミ
答え、1以外すべて。
そもそも、鼓膜というのは生物が進化の過程で陸上に上がったことにより、
空気を伝わる音を聴くために進化したものだ。
だから、両生類以上にあり、魚類にはない。
水中は空気中に比べてはるかに音がよく伝わるが、
それをとらえるのに鼓膜は無効で、
頭の骨に伝わる振動が直接内耳に伝わる。
これを、医学用語で気導聴力に対し骨導聴力という。
(看護学生諸君、テストに出すよ。)
クジラはいったん陸に上がった哺乳類が再び水中に戻ったモノなので
鼓膜も中耳もあるがつかわれることはなく外耳道は耳垢でふさがれてるわけだ。
ところで、サーファーなど、通年冷たい海水に入るヒトの外耳道は
骨増殖によって狭小化しこれを「サーファーズ・イヤー」と呼ぶ。
冷たい水から鼓膜を守るため、といわれてるが、
海洋哺乳類への進化なのだろうか?
あまちゃんは、どうなのかなあ?
(ちなみに「進化」とは世代を超えて情報が伝達されなければならないので
一代限りの形態的変化は「進化」と呼びません。念のため。)
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先生の以前のブログで耳垢はとっちゃダメなのは
知っておりましたが、いやあ今回のお話も面白かったです!
タイトルに『ついで』とありますが、学生の時の授業でも
こういうお話の方がみんな聴いてましたもんね~(笑)
看護学生の皆様もがんばってください!
[…] 「夏に増える耳鼻科の病気」「耳垢の話のついで」 […]