研修医の身分
ちょっと前にNHKの「あさイチ」に医者で漫画家のさーたりさんが出演していました。
彼女の漫画は以前、ブログで見たことがあり、
本職のお医者さんなので「あるある」があって大変面白い。
特に、研修医関係のネタは、ハゲシク同意、なネタ多し。
彼女は私立大学医学部出身の勤務医で、
田舎の開業医の日常とはかなり違うわけですが、
こと、研修医の話になると、これは私立でも国立でも大差ないようです。
「あさイチ」でさーたりさんの
「研修医の身分は病棟の最下層。」
という言葉に、スタジオの皆さんはびっくりしていましたが、
これは、まぎれもない真実。
ワタシと妻はテレビの前でアタマをブンブン振ってうなづいていました。
一般に人には理解されていませんが、医者と看護師さんは、
大きな病院ではまったく別の組織に帰属しています。
たとえば、大学病院の耳鼻咽喉科の病棟を考えたとき、
何人もいるお医者さんは、大学の耳鼻咽喉科学教室に属しており
そのトップは、耳鼻咽喉科の教授です。
いっぽう、耳鼻咽喉科の病棟で働いている看護師さんは、
看護部に所属しており、その上司は師長さんであり、
そのまた上には総師長さんという人がいます。
耳鼻咽喉科のお医者さんは通常、
ずっと耳鼻咽喉科のお医者さんですが、
耳鼻咽喉科の看護師さんはたまたま耳鼻科に配属されているだけで
何年かすると異動があり、
整形外科に移ったり、中央手術部の配属になったりします。
それは、師長さんも同じで他の病棟に移る場合もあります。
一般の会社ならば、○○課で働いている人は
すべてその課の課長の部下、ということになりますが、
耳鼻咽喉科の看護師さんは耳鼻咽喉科教授の部下ではありません。
なので、基本的に看護師さんは
師長や、主任のいうことは無条件にきくが、
医者のいうことは自分に納得がいかない限りきいてくれません。
たいがい、反発されます。
この辺の関係をよく誤解されていましたが、
海堂尊先生の小説では。さすがにきちっと書いていましたね。
ドラマ化されたら、脚本家は理解してい無いようで
やっぱし描き方がヘンでしたけど。
そして、研修医というのはまったく無力な存在です。
医学部を出て国家試験に受かっても、注射1本打ったことがありません。
診断や治療はおろか、薬の名前も、検査のオーダーの仕方も知りません。
いっぽう、看護師さんは新人でも
注射や採血の実習も学生時代にバッチリこなしており、
検温や、血圧測定、配膳、清拭、など
いきなり病棟の仕事をバリバリこなすことができます。
なので、研修医は病棟でもっとも「役に立たない」存在。
病棟で、早朝から深夜まで看護師さんに叱咤され、
キビシイ指導医からは罵倒されるという存在が研修医です。
ただ、幸いにも群大耳鼻科には
当時はおっかない指導医はいませんでしたが・・・。
ちなみにワタシの入局当時、
病棟の看護師さんの平均年齢を同僚と「試算」したら、
どう見積もっても40歳は越えている、という結論でした。
まあ、そうやって鍛えられて、一人前の医者になってきたわけです。
あの頃は、大変だったなあ。
でも、それなりに楽しかったけど・・・・。


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