ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2016.07.29

気管切開

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今年は関東地方は梅雨明けが遅れ、

昨日やっと梅雨明けになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

梅雨明けが遅い影響か、夏休みになっても思ったほど患者さんの数が減らず、

130人ペースが連日続いていたが、昨日は梅雨明け宣言効果か102人。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日はいよいよ100人切るかもである。

 

 

 

 

 

 

 

 

外来がヒマだと、患者さんの途切れる時間帯もあるわけで、

手元にある学会誌などをパラパラ見てみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳鼻咽喉科臨床の今月号、来たばっかりの雑誌を見ると目を引く投稿論文があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「体重200㎏を超える呼吸不全症例に対する気管切開術の経験」

 

 

 

 

 

 

 

 

これを読んで、ふと思い出した、ムカシの話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気管切開術は呼吸管理のためにしばしば行われる手術で、

首の前のところに穴をあけ、カニューレと呼ばれる管を通して

そこから呼吸をしてもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

多くは呼吸不全の方で、人工呼吸器を使う場合に施されることが多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

外科入院中の方は外科の先生が自前でやっちゃう場合が多いが、

内科入院中の方の手術は一般に耳鼻咽喉科に依頼が来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大体、患者さんの病室に出向いてベッドサイドで行うことが多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタシが勤務医のころもよく依頼があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

大概は朝、耳鼻科外来に内科の先生から依頼の電話がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みに病棟に下見にいって、看護師さんと打ち合わせをし、

午後は耳鼻科の手術があるので、ワタシはそのままオペ室に入っちゃうのだが、

1個目の手術のあと、麻酔科の先生に手術した患者さんの全身麻酔を覚ましてもらい、

その後、次の患者さんの麻酔をかけてもらってる時間を利用して、

病棟に上がって、気管切開をしてまたオペ室に戻る、というような手順でやっていた。

 

 

 

 

 

 

 

ある日、内科から気管切開の依頼が入った。

 

 

 

 

 

 

 

いつもは病棟から内科の先生が電話かけてくるのだが、

その日はドクターが自ら耳鼻科外来に出向いて依頼してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

当時のワタシより一回り以上年輩のその先生は

病棟の患者さんの病状を簡単に説明し、気管切開をお願いします、と告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして帰りぎわに、振り返り、申し訳なさそうに小声で、

「先生、その患者さん、ちょっとオべシティあるんで、よろしく。」

と、言い残していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みに回診に行って、なぜ内科の先生がわざわざ直接外来に見えたかわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オべシティ」とは「肥満」のことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

病室に行ってみた女性の患者さんは、どう見ても100㎏級、

ベッドいっぱいにめり込むように横たわっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

首を触ったが、どこが気管やら。

 

 

 

 

 

 

 

マイッタなあ、と思いながらオペ室に行き、

1個目の手術を終え、病棟に上がる。

 

 

 

 

 

 

 

型のごとく、助手の先生と手術開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドサイドの手術はオペ台と違って、幅が広いので術野が遠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで、ベッドに乗りかかるように手術するのだが、

患者さんの巨体があるので、なかなかそれも困難である。

 

 

 

 

 

 

 

 

首はわけてもわけても脂肪の海でなかなか目指す気管にたどり着かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、普段の2倍以上の時間と3倍以上の汗をかいて、

なんとかかんとか気管切開を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の論文は体重が200㎏以上の体重計で測定不能の方とのことなので、

ワタシの経験したものとはケタが違うが、

論文読んでて勤務医時代の記憶がよみがえった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今や気管切開をする機会はまずないが、

今でも時々大相撲見てると、このヒトたちの気管切開は大変そうだなあ、

などと思うことがあるのであった。

 

 

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