夏の風物詩
毎度ながら耳鼻科は季節商品。
インフルエンザ、花粉症、ときて学校検診の健診票を持った子供がプール開きとともに来なくなると、
耳鼻科は平穏な季節を迎える。
そんな中、今週目についたもの。
1歳児、昨夜からの高熱、ハナやセキはそうでもないんですけど、熱は40度近く。
保育園いってますかー、などとききながらまず耳をチェック。
急性中耳炎なし。
で、口の中を見てみると赤く腫れた扁桃腺、
さらによく見ると口蓋垂(のどちんこ)のわきに小さい口内炎様のポツポツが2,3個。
手や、足の発疹のないのをみて、
ヘルパンギーナですね。
という、展開が続きました。
ヘルパンギーナは「夏風邪」の代表的疾患でコクサッキ―ウイルスなどのエンテロウイルス族によって発症します。
毎年、6月中旬から8月上旬の「夏のはじめのころ」に流行します。
ちなみに「夏風邪」は一般に「ヘルパンギーナ」「手足口病」「プール熱」を指し、
夏にひく風邪のことではないし、逆にこれらは冬にかかっても「夏風邪」です。
主として、感染経験のない4歳以下に多いですが、ヘルパンギーナを起こすウイルスは何種類もあるので
反復して感染したり、大人が感染する場合があります。
診断キットはありませんが、その目で見れば耳鼻科医や小児科医ならばすぐわかる所見です。
とくに耳鼻科のライトは最近はLEDやらでチョー明るいので、見逃すことはまずありません。
症状は、高熱とのどの痛み。
全身状態は悪くないのですが、のどの痛みは激しく飲み込みが困難になり
小さいお子さんは、熱、不機嫌のほかに「よだれが増える」ということが主症状だったりします。
特効薬はありませんが、熱は2日以内に下がることがほとんどです。
場合によっては解熱剤を使いますが、それも状態によりけり。
もちろん、ウイルスには抗生剤は効きませんから、どんなに高熱でも夏風邪に抗生剤を出すことはありません。
中耳炎などの2次感染予防といっても、抗生剤で急性中耳炎の予防はできませんし、
なってしまったときに治りにくくなるだけです。
ただ、口内炎がヒドイ場合は、水分が足りなくなり脱水を起こさないように注意が必要です。
感染経路は飛沫が多いですが、解熱後も3週間ほどは糞便中にウイルスが排出されるため、
とくに「おむつ世代」に多いので、親も含めた手洗いが大事です。
鑑別診断として先に上げた「手足口病」「プール熱」のほかに
「溶連菌感染症」があります。
見ただけで分かるものが多いですが、
「溶連菌感染症」の場合は充分な抗生剤投与が必要になるので、疑わしい場合は迅速検査をします。
今年は、どうも流行の年みたいです。
我々耳鼻科医は、季節の移ろいを外来で感じます。
ヘルパンギーナをみると、あ、そろそろお中元を贈らなければ、と思うのです。
この次の風物詩は土用丑の日前後の「のどに刺さったウナギの骨」ですね(^-^;


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