ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2021.04.16

在郷軍人病

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かつてアメリカの造船所で大流行した「shipyard eye」は

職業病ではなく造船所とは何の関係もありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 特定の職業が原因でおこる病気で

この手の職業名がつく病気はけっこう多く、

耳鼻咽喉科領域でも声を酷使する歌手の声帯にできる

「歌手結節」とか、

冷たい海水が繰り返し耳の穴に入って

外耳道が狭くなる「サーファーズイヤー」

柔道、相撲、レスリングなどで耳介血腫を反復して

耳介が変形する「力士耳」などがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここで思い出されるのが在郷軍人病という病気です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1976年7月アメリカ東海岸のフィラデルフィアのホテルで

米国在郷軍人会の総会が開かれました。

在郷軍人とはかつて軍隊に所属したいわゆる予備役の軍人で、

今は別の仕事をしているが、

有事や戦争の際には軍隊に復帰することがあるというものです。

その総会に参加した在郷軍人に

通常の肺炎に効くはずのペニシリン系の抗生剤がまったく効かないという

謎の肺炎が多発しました。

その死亡率は15%にも達したということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後患者から未知の病原体が発見され

「在郷軍人会」すなわち「レジオン」から名前を取って

「レジオネラ菌」と名付けられました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この「レジオネラ菌」がホテルの冷却塔内で増殖し、

それがエアコンのダクトを通ってエアロゾルとなって

ホテルの宿泊客に伝染した、

ということがのちの調査で明らかになったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この一件は公衆衛生学的に大変重要な出来事なので、

公衆衛生の授業では必ず取り上げられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにレジオネラ症はヒト-ヒト感染はありません。

ペニシリンは効きませんが

マクロライドやニューキノロン系の抗菌剤が有効で、

日本でも温泉施設などで毎年1000人以上の報告があるようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで在郷軍人病もシップヤード・アイと同じく、

在郷軍人に特有の病気というわけではなく、

たまたま発生した場所、状況に由来した病名でした。

もし、そのホテルで開かれていたのが

全米コメディアン大会だったら、「コメディアン病」

エルビスプレスリーのショーだったら「プレスリーファン病」

スイカの種とばし大会だったら「スイカ種とばし選手病」になったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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